全ては世界を救う為に!   作:やがみ0821

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ノリが良い先輩と悪ノリする後輩

「あーあー、もしもし? 中々愉快なレイシフト先を選んでくれたじゃないのよ?」

 

 にっこり笑顔で麻菜はカルデアへと問いかけた。

 今日の担当であるロマニは恐怖に引き攣ったが、彼は自分のせいではないと告げる。

 

『一番大きい都市、ウルクに送ったんだ! 本当だ!』

「私とかぐっちゃんパイセンは地面とキスしても問題ないけど、マシュが怪我でもしたらどうするのよ!?」

「おい後輩ぃいい! 責任追及の前に何とかしろぉおおお!」

 

 意気揚々と紀元前2655年のメソポタミアへと麻菜達はやってきたのだが――レイシフト先は空中で、そこから真っ逆さまに落下していた。

 

「はいはい、ちょっと待ってね」

 

 そう前置きして麻菜が一言唱えれば一瞬にして落下速度が緩やかになる。

 集団に対する飛行魔法だ。

 

「パイセンは大規模な空想具現化って使えないの?」

「何度も言うが、私は真祖と似ているが違うから。どっかのヤバい真祖と一緒にしないで頂戴」

「似ているが違うって便利な言葉よね……いっそのこと、私が本物の真祖にしてあげる? 吸血衝動とかそういうの無しにしてあげるからさ」

「余計なお世話だバカ」

 

 ふよふよとゆっくり落ちながら口喧嘩する麻菜と虞美人にマシュは思わず笑ってしまう。

 

「何を笑っているのよ?」

「いえ……あの芥さんがこんなに変わるなんて……改めてびっくりしたというか……」

「私は変わっていないわ。全部そこのバカのせい」

 

 ビシッと虞美人は麻菜を指差して告げるが、麻菜も負けてはいない。

 

「人をバカって言ったらそいつがバカだって小学校で習わなかったの?」

「はぁ!? 小学校とか行くわけないだろ!」

 

 虞美人の言葉に麻菜は察してしまった。

 

「あっ……そうか、ぐっちゃんパイセン……」

「おい待て、何だその生暖かい目は?」

「今からでも遅くはないわ。私が小学校から大学まで行かせてあげるから……もしいじめてきた奴がいたら、殺してくださいって泣くまで私がいじめっ子を拷問してやるから……」

「人間の常識を私に押し付けるな! というか、人外が学校になんて通うわけがないだろう!?」

「それもそうだったわね。ところでパイセン、私、学歴マウンティングしていい?」

「は? 殺すぞ」

「あまり強い言葉を使うな、真祖もどき。爆発しかできなくなるぞ」

「ぶっ殺す」

 

 いがみ合う2人にマシュは思いっきり笑ってしまった。

 

 

 

 虞美人と麻菜はギャーギャー言い合っていたが、どうにか無事に地面へと降り立った。

 

「さぁ責任追及の時間だコラァ! ロマニ! 首を洗って待ってたか!?」

「そうだ! 今回は後輩に同意するぞ! よくもあんなところに!」

「まぁまぁ、先輩も芥さんも落ち着いて……」

 

 がるるると殺気立つ2人にマシュは宥める。

 

『そのことだけど、どうやら結界みたいなものが張られていたようだ』

『流石に予想外の事態だったから、許して欲しいわ』

 

 ダ・ヴィンチとオルガマリーの言葉に麻菜と虞美人は口を閉じる。

 

「というか、今更ですけど……ドクターって医療部門のトップなのに管制室にいても……?」

『マシュ、本当に今更だね』

 

 ダ・ヴィンチは呆れた声だった。

 

『ロマニも別にできないってわけじゃないのよ。何だかんだで彼は優秀だから。医療以外のこともね』

 

 オルガマリーの言葉になるほど、とマシュは納得する。

 

「知ってたか後輩?」

「知らなかった。特異点修復の時、いつも極自然に管制室とか会議とかにいたから、聞くのもあれかなって」

「他人のアレコレを詮索すると何があるか分からないからな」

 

 ぼそぼそと小声で会話する2人。

 しかし、カルデアから支給された通信機は性能が良いので、管制室に丸聞こえだ。

 

『何だか僕の扱い、酷くない?』

『ロマニはいじられ系愛されキャラだからね。仕方ないさ』

『ダ・ヴィンチちゃん!?』

『嫌われるよりは良いでしょう』

『所長!?』

 

 ロマニは泣いた。

 

 

 

 

 ともあれ気を取り直して、周囲の状況確認である。

 

「廃墟ばかりで人はいないようですね」

「ええ、そうね……」

 

 マシュと虞美人に麻菜は自信満々の笑みを浮かべている。

 

「廃墟と化した街……だが、こういうところにこそお宝があるわ。地下への扉とか隠し金庫とかそういうのが必ずあるはず。あとタンスとツボの中身も確認よ」

「先輩、ゲームじゃないんですから……」

「ないの?」

 

 この世の終わりみたいな顔で問いかけてくる麻菜にマシュは心が傷んでしまう。

 その様子を見て、虞美人はピンときた。

 

 彼女はこそこそと2人から離れて、比較的マシな状態の建物の中へ。

 中には何も無かったが、そこで虞美人は自らの剣を魔力でもって作り上げて、地面に突き立てた。

 

 仕込みは完了である。

 虞美人は建物の中から麻菜とマシュを呼ぶ。

 

「ねぇ、剣が刺さっているわよ」

 

 虞美人の言葉に麻菜はウキウキ気分で、マシュは信じられないといった顔でやってきた。

 地面に突き刺さった剣を見て麻菜は目を輝かせた。

 一方でマシュは察してしまった。

 その剣の見た目や装飾、それはとても見覚えがある――というか虞美人が普段使っているものだった。

 

「おお! これこそカリバーンに違いない! ぐへへ、これで私が騎士王だ……!」

 

 分かっているのかいないのか、よくもまあここまで盛り上がれるものだ、と虞美人は呆れと感心が混ざった複雑な表情となる。

 とはいえ、後輩を一泡吹かせるチャンスを逃す彼女ではない。

 

 麻菜が剣を引き抜いて、掲げた瞬間に――その剣は花になった。

 魔力の無駄遣いであるが、麻菜の目が点になったので虞美人としては大成功である。

 

「かかったな! アホが!」

「え、えらいことになった……戦争じゃ……アルトリアの皆ァ! カリバーンが花になった! 世界に一つだけの花リバーンになったぁ!」

 

 なお、このやり取りは全てカルデアの管制室に届いており、またエルサレムの時と同じく各所に映像で流されている。

 アルトリア達は苦笑する者、鼻で笑う者など様々だ。

 

「花リバーンって使うとどうなるの? 世界中を花で埋め尽くすの?」

「先輩、それ全部芥さんの悪戯ですから」

 

 マシュのツッコミに麻菜は虞美人へと視線を向ける。

 腹を抱えて笑っている虞美人に麻菜は怒り心頭となった。

 

「花リバーンを喰らえ! 世界に一つだけの花アタック!」

 

 ぺしぺしと虞美人の頭を叩く麻菜。

 しかし、虞美人は笑うのをやめない。

 

「許せねぇ……!」

「引っかかるお前もお前だろう! 私の悪戯だって気づけ!」

「万が一ってことがあるかもしれない。私は僅かな可能性に期待した。分の悪い賭け、仕事以外なら嫌いじゃない」

「ないない」

 

 手をひらひらさせる虞美人に麻菜は頬を膨らませ――そのとき、周囲に寄ってくる気配を探知した。

 虞美人とマシュもまた気が付き、一瞬にして真面目な顔となる。

 

「どうやらお仕事の時間ね」

『敵性反応が周囲に多数あるよ。たぶん魔獣、およそ100体程』

 

 ロマニの声に麻菜は感心する。

 

「優秀っていうのは本当みたいね。今までにはなかった見事な情報提供」

『これまでの特異点って基本的に麻菜君が突っ走って、ドッタンバッタン大騒ぎして解決したから、カルデアからの情報提供もへったくれもなかったよね?』

「過去のことは水に流そう。未来志向って大事だと思うの」

 

 しれっとそう言って、麻菜は建物から飛び出した。

 

 

 

 廃墟を取り囲むように位置している魔獣達。

 今のところ、数はロマニからの情報通りだ。

 

「後輩、どうする?」

「先輩、どうしますか?」

 

 基本的には自分の意見を尊重してくれるらしい、と麻菜はそこで気がついた。

 ならばと彼女は告げる。

 

「私にいい考えがある。これは名軍師である陳宮に教えてもらった秘伝の戦法よ」

「ねぇ後輩、すごく嫌な予感がするんだけど……?」

「大丈夫、私流のアレンジを加えているから」

 

 満面の笑みを浮かべて、麻菜はそう告げ――素早く虞美人の後ろに回り込んだ。

 そして、麻菜は虞美人の首根っこを掴んで、魔獣が一番多い場所に目掛けて思いっきりぶん投げた。

 

「パイセン! 突撃だ!」

「やっぱりかぁあああ!」

 

 見事な弾道を描いて、虞美人は狙い過たず魔獣達の中に――

 

「そこです! 自爆しなさい!」

 

 陳宮に習った通りの指示を麻菜は発した。

 それを受けてか、あるいはタイミング的な問題か。

 虞美人は魔獣達を巻き込んで爆発した。

 

 だが、彼女は不死身でおおよそ元通りに再生するので実質的に死傷者はゼロ、それでいて敵を多数殺傷したという赫々たる大戦果である。

 

 

「おまえ……おまえぇ! 殺すぅ!」

 

 虞美人は両手に剣を持って振り回しながら、麻菜のところへ駆け戻ってきた。

 

「流石はパイセン、見事な戦果だわ」

「死ねぇ!」

 

 ぶんぶん剣を振り回すが、憎たらしいほどに当たらない。

 

「あのー、それよりも魔獣を……」

「マシュ! あんたが片付けときなさい! 私はそこのバカを始末するから!」

「というわけでマシュ、たぶん私よりは弱い魔獣達だから程良く始末しといて」

 

 駆け足でどっかへ行ってしまう2人にマシュは苦笑しながらも、盾を構える。

 

「今まで先輩にお任せしてばかりでしたが……マシュ・キリエライト、行きます!」

「あばよー! パイセンー!」

「待てー! 後輩ー!」

 

 遠くから聞こえてくる泥棒と警部の鬼ごっこみたいなやり取りに、マシュは気が抜けてしまいそうになるが、残った魔獣達へと攻撃を開始するのだった。

 

 

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