全ては世界を救う為に!   作:やがみ0821

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ウルクにて

 麻菜達一行はギルガメッシュが築いたという巨大城壁――北壁を遠目に見たところで、それなりの魔獣達が城壁へと向かっているのを見つけた。

 魔獣達を横合いから思いっきり殴りつけてウルクの皆さんにアピールしよう、と麻菜が提案したのだ。

 

 そんなわけで横から魔獣達をぶっ飛ばし、指揮を取っていた現地に召喚されたサーヴァントであるレオニダスと合流し、彼によってギルガメッシュへと取り次いでもらうことになった。

 

 なおマーリンが宮廷魔術師としてギルガメッシュに仕えているということが、ぶっ倒した後に明かされたのだが、本当かどうか信用できないという言葉で切り捨てられた。

 マーリンは泣きながら、レオニダスとともにギルガメッシュの下へと向かった。

 

 

 そんな状況下で麻菜は魔獣の死体を指差して、真顔で告げる。

 

「これは新鮮なので食べられます。魔獣は貴重なタンパク源です」

「おい馬鹿後輩! 魔獣を食おうとするな!」

 

 虞美人に止められて、麻菜はしょんぼりしながらもアナのところへと行く。

 そして、彼女はアナをじーっと見つめる。

 

「あの、何か……?」

「あなた、姉が2人いたりしない? ステンノとエウリュアレって名前で……髪色とか顔つきとか彼女達に似ているんだけど」

 

 アナは無意識的に身体をびくっと震わせた。

 麻菜にとっては十分過ぎる反応である。

 

「ふーん、そっかー」

 

 ニヤニヤと嫌味ったらしい笑みを浮かべながら、麻菜は何度も頷く。

 

「上姉様と下姉様からは駄メドゥーサがやんちゃしていたらとっちめていいわよっていう許可を密かに貰っているのよね」

「何もしていませんよ!?」

 

 両手をわたわたと振るアナことメドゥーサに麻菜はイヤラシイ笑みで問いかける。

 

「ぐへへ……姉様方に私が色々と無いことを吹き込むこともできる……そうされたくなければ私と……」

 

 麻菜は最後まで言うことができなかった。

 背後より肩を手で叩かれ、振り返るとそこにはにっこりと笑う――目だけは笑っていない――マシュがいたからだ。

 

「先輩、真面目にやりましょうね?」

「あっはい……ただ私は姉様方からメドゥーサのことを報告するよう言われているので」

「それは本当ですか?」

「実は本当なのよ。嘘だと思うなら2人に確認をとって欲しいわ」

 

 それならば仕方がない、とマシュとしては認めざるを得ない。

 そのとき、麻菜はレオニダスがこちらへと駆け足でやってくるのを見つけた。

 

「あ、レオニダスが戻ってきたわ」

「先輩、くれぐれも変なことをしないでくださいね」

 

 マシュの言葉に麻菜は頬を膨らませたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく来たな」

 

 そう言ってギルガメッシュは深く――それはもう深く溜息を吐いた。

 そして、彼は麻菜を真っ直ぐに見つめて問いかける。

 

「つい先程、カルデアの我からマーリンめが書状を差し出してきたのだが……お前達は事情をどこまで把握している?」

「三女神同盟っていうのがあるらしいので、とりあえずそいつらを潰しておこうかなと思っているわ。イシュタルは三女神同盟とは違うみたい」

 

 麻菜の言葉にうんうんと頷くイシュタル。

 彼女からすれば三女神同盟なんて本当に知らないことだ。

 

「……どうしてイシュタルが一緒にいるのだ?」

「どっかの金ピカと違って麻菜は気前が良いわ」

 

 満面の笑みを浮かべて答えるイシュタルにギルガメッシュは追求することをやめにした。

 面倒くさいことになりそうな予感がしたからだ。

 

 ともあれイシュタルが麻菜に協力しているのならば話が早いのも確かである。

 

「シドゥリ、そいつらの面倒を見てやれ。特に麻菜には要注意だ。ある意味ではイシュタルよりも厄介であるからな」

「酷いことを言う王様ね。私、味方にはとても寛容よ?」

「ああ、そうか。ならば尚更大人しくしていろ。民に被害を出さなければ行動の制限はしない」

 

 ギルガメッシュの言葉に麻菜は肩を竦めて頷いた。

 そして彼女は問いかける。

 

「ところで私があなたに工事を発注することってできるかしら?」

 

 突然の問いにギルガメッシュは訝しげな視線を麻菜へと向ける。

 

「何の工事だ?」

「城壁よ。私が金塊で代金を支払うから、ウルクを取り囲む既存の城壁の外側に、もう一つ城壁を作って欲しい。北壁みたいな高さはなくてもいいから、幅が欲しい」

「その理由は?」

「魔獣達が迂回して、北部以外から攻めてきても対処できるようにかしら。獣だっていつまでも馬鹿じゃない。学ぶ個体がいてもおかしくはないと思う」

 

 ギルガメッシュは真意ではないと見抜くが、麻菜の言ったことは事実でもある。

 ましてや麻菜がカネを負担してくれるならば、言うことはない。

 

 何よりも麻菜という手札は使い方さえ間違わなければ、何にでも使える非常に強力なものだ。

 

 カルデアのギルガメッシュから届いた書状には麻菜をよく使え、過程は酷いが結果は良いというようなことが書かれていた。

 

「工事を引き受けよう。代金は完成後で良い。その代わりにこちらの仕事も引き受けよ」

「内容は?」

「ニップルをはじめ、孤立した都市などから民をウルクへ避難させよ。手段も方法も問わん」

「分かったわ。救援対象の都市とかの一覧表と大雑把でいいから地図を頂戴。すぐに動けるけど、どうする?」

「受け入れ準備を3日以内に終わらせる。それまでは待て」

 

 そう告げてギルガメッシュはシドゥリへと視線をやる。

 彼女は王の意向を受け、告げる。

 

「では空いている住居へご案内します」

「あ、その前に」

 

 麻菜は無限倉庫から1本の瓶を取り出して、それをギルガメッシュへと放り投げた。

 それを受け取る。

 ラベルや色合いから見るに酒のようであった。

 

「これは?」

「気付け薬よ。あなた、どれくらい休んでいないの? 顔には出していないけど、何となく分かるわ」

 

 麻菜に問われギルガメッシュは溜息を吐く。

 そして告げる。

 

「たわけ。王は我しかおらぬ」

「もしもあなたが非常時にぶっ倒れて尻拭いに奔走させられた私に国が傾くほどの莫大な金額を請求をされるのと、今ここで10日間くらい休むのとどっちがいい? なお、休んでいる間、神や魔獣が押し寄せたとしても全て私が潰すという前提で」

 

 さすがのギルガメッシュもすぐには答えられない。

 防衛に関しては麻菜に任せても良さそうだが、問題はそれ以外のことだ。

 ウルクの内政を彼女に任せるなんてことはできない。

 

 しかし、そこでシドゥリが口を開いた。

 

「王よ、彼女の言う通りです。彼女達の実力は魔獣との戦いを間近で見たレオニダス殿も保証すると仰られていましたし……何よりも王不在であったとしても10日間程度で傾くウルクではありません」

「そうです。王よ、どうかお休みください」

 

 彼女に続き兵士長までもがそう告げて、ギルガメッシュは観念したように両手を挙げた。

 

「分かった分かった、では明日より10日間、我は休む。シドゥリには内政を、兵士長には防衛に関する権限を一時的に与える。我でなくば判断がつかないこと以外は2人の権限で決裁せよ。なお緊急時は別である」

 

 そこで言葉を切り、ギルガメッシュは麻菜へと視線を向ける。

 彼女はドヤ顔であった。

 やれやれとギルガメッシュは溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 麻菜達はシドゥリに空いている住居――説明によればかつては酒場だったらしい――へと案内された後、頭を下げられた。

 

「ありがとうございます。王を気遣ってくださって」

「いいのよ。彼に倒れられると困るのはこっちも同じだし。あと、あなたみたいな美人がいるから私が絶対に護るわ。安心して」

「まあ、お上手ですね」

 

 シドゥリと麻菜の会話に虞美人とマシュ、イシュタルはこそこそと小声で会話する。

 

「絶対シドゥリさんのポイント稼ぎですよねアレ」

「間違いない。あの馬鹿は欲望一直線だから」

「え、何? 麻菜ってそっちでも大丈夫なの?」

「むしろガチです」

「嘘か本当か知らないが、両性具有になれるらしい」

「ふーん、じゃあ問題ないわね」

 

 何が問題ないのか、とマシュと虞美人はイシュタルに問いかけたかったが、そこでアナが口を開く。

 

「あの、これからどうしますか?」

 

 アナの問いかけに麻菜はズバッと手を挙げた。

 

「魔獣狩り、女神狩り、世界征服……どれにしよっか?」

「どれも却下だ!」

 

 虞美人の言葉に麻菜はさらなる提案を行う。

 

「地形把握と観光の為に街を見回る感じにしたい。ぐっちゃんパイセンも項羽と共に街巡りとかいいんじゃない? 簡単に言うと自由時間ってことで……あ、抜け駆けして女神狩りなんてしちゃ駄目だからね」

「先輩じゃないんですから、誰もそんなことしません」

「最近の後輩、きついや……」

 

 マシュの言葉に麻菜はしょんぼりしながら、そう言うのだった。

 




※ちょっとしたネタ


麻菜「ラフムは生まれたばかりなので寄生虫もおらず、新鮮なので食べられると思います。貴重なタンパク源ですので、食べてみましょう」

ラフム達「q^@uew@e7q@diqhue」

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