救出作戦は予定通りに始まり、それは麻菜が言った通りのやり方で行われた。
すなわち彼女が現地へ単独で赴いて、そこで位置情報を元にカルデアから騎士王達を投入すると同時に
門から虞美人とマシュ、アナが出てきてそのまま誘導にあたり、騎士王達は周辺警戒を行いつつ、同じく民を誘導する。
休暇に入る前にギルガメッシュが各地に連絡してあったこともあり、それらはスムーズに進んだ。
救出作戦開始から僅か2日でリストアップされていた北部方面の都市や街などから生き残っていた住民や兵士達の救出が完了した。
途中でエルキドゥと名乗る輩が襲いかかってきたが、警備していた騎士王2人――セイバー、ランサーのアルトリア――と円卓の騎士達が張り切って迎撃した為、救出作戦に支障は全く無かった。
戦闘場所となったところは地形がかなり変わってしまったが、人的被害は無いので問題はない。
ともあれ、麻菜は北部の救出作戦が完了後、ただちに南部の救出作戦に取り掛かった。
いつも通りに空を飛んでウルの入り口へ降り立った麻菜、しかし、彼女の前に密林から飛び出してきたのは――
「空を飛ぶなんて卑怯なり!」
「えっと……日本人? 出身は? あなたの名前は? なんかタイガーっぽい気がする」
「タイガーと呼ぶなぁ! 私は森の女神、ジャガーマン!」
「きぐるみを着た成人女性にしか見えないんだけど、そこんところどうよ?」
「それに触れるな! くっ……この私がツッコミに回るなんて……こやつ、できる……!」
ツッコミ役となる虞美人とマシュがいない為、麻菜のやりたい放題である。
「で、ジャンジャンバリバリジャガーマン」
「ジャンジャンバリバリって私はパチンコ屋じゃないから! 何よぅ!?」
「古代メソポタミアできぐるみを着た謎の日本人女性が出現って感じで、テレビに特集されたくなければ知っていることを洗いざらい吐け」
にっこり笑顔で告げる麻菜にジャガーマンは不敵な笑みを浮かべる。
「テレビ特集は勘弁だけど、そう簡単に吐くわけにはいかねぇ! というか、そんなことしたら私がククルんにぶっ殺される!」
「ククルん? ああ、それなら私、知り合いだから。くっちゃんまっちゃんって呼び合う仲だから」
「ふぁっ!? マジで!?」
「嘘に決まっているじゃないの」
けらけら笑う麻菜にジャガーマンはどこから取り出したのか、先端に肉球っぽいものがついた棍棒らしきものを取り出した。
それを器用にくるくる回して、その先端である肉球を麻菜へと向ける。
「おのれぇ! このジャガーマンを騙そうとするなど、不届き者め!」
「いや私もまさかそんな簡単に信じるとは思わなかった。ごめんね」
麻菜はそう言って、頭を軽く下げた。
「え、いやまあ……そう謝られると……ってそれって、私のことを遠回しに馬鹿って言ってる!?」
「被害妄想激しすぎでは? 円形脱毛症になるわよ?」
「ぐぬぬ……このままでは埒が明かない……我が一撃を食らえ!」
ひらりと麻菜はジャガーマンの一撃を躱したが、その一撃は鋭いものだった。
故に麻菜は告げる。
「意外と強そうね。気に入った、私のペットにならない? 三食昼寝おやつ付き」
「三食とおやつの種類は!?」
「和洋中どれでもいけるわよ。エミヤって専属料理人がいるから」
「どっかで聞いたことがあるような名前……ともあれ、私に勝ったなら考えてやろう!」
「決まりね」
麻菜は満足げに頷くが、ジャガーマンは胸を張る。
「ここは既に螺旋描く蛇の大地……! 森の守りがある限り、我ら太陽は無敵なり!」
「逆に言うと森の守りがなければ無敵じゃないってことね」
分かりやすく弱点を教えてくれるなんて優しい人だ、と思いながら麻菜はうんうんと頷く。
そして、イイ笑顔となる。
「ジャガーマン、ジャングルに潜むゲリラってどうやって処理するか教えてあげるわ」
「へ?」
「これから毎日ジャングルを焼こうぜ!」
麻菜はジャガーマンではなく、ジャングルに向けて火炎系の広範囲魔法を連続してぶっ放した。
「ぎゃああああ! やめっやめろぉー! 森がぁ!」
「はーっはっは! ほらほら負けを認めないと、どんどん燃やすわよ!」
ジャガーマンは麻菜へと飛びかかり連続して攻撃を加えるも、それをひらりひらりと回避しながらも、麻菜はジャングルに向かって魔法をぶっ放す。
生木である為、燃えにくいが燃えないというわけではなく、また草花は普通に燃える。
「ちょこざいなっ!」
「ほらほらタイガー! 私をどうにかしないと山火事よ!」
「タイガーって呼ぶなぁ!」
ジャガーマンは必死になって麻菜に攻撃を加えるが、全く当たらない。
それに加えて麻菜はものすげぇイキイキとした笑顔であることが更にジャガーマンを苛立たせる。
「さぁ、どっちが音を上げるか勝負よ!」
「ええい! コンチクショウ! やってやるぅ!」
そして、麻菜はジャングルにせっせと放火しながらジャガーマンの攻撃を煽りながら回避し続け、ジャガーマンが諦めたのは2時間後のことだ。
ウルの民はジャングルが燃えていることや戦闘音に気づいて退避した為、幸いにも無事であった。
しかし、ジャングルは広範囲に渡って燃えてしまったのでジャガーマンはガチで泣いた。
「えーと……ありがとうございます」
何だか困惑気味であったが、ウルの住民達は恐ろしい森の女神を何とかしてくれた麻菜にお礼を述べる。
その森の女神であるジャガーマンは麻菜によって縄と鎖でぐるぐる巻きにされた上、敗北者という文字が書かれた紙をおでこに張られて地面に転がされていた。
彼女は悔しげな表情で麻菜へと叫ぶ。
「ずるいぞー! 卑怯だぞー! 卑劣だぞー!」
「何とでも言うがいい……所詮この世は焼肉定食、焼肉を食えば生き、生肉を食えば腹を壊して死ぬ……」
「あ、何だか焼肉定食が食べたくなってきた……私、生姜焼き!」
「大食い勝負ね、任せて。何だか普通にあなたとは仲良くなれそうな気がする」
「ふふふ……この私の包容力にメロメロになってしまったかニャ?」
「今更ニャとかつけ始めてももう遅いぞタイガー」
「タイガーと呼ぶなぁ!」
麻菜とジャガーマンのやり取りにウルの住民達は引き攣った笑みを浮かべる。
「ともあれ、事情を話して頂戴。森の女神は私がご覧の通りにしばき倒したから」
「倒されてませんー! ジャングルを守る為に仕方なくですー!」
「はいはい、あとで美味い飯を奢るから」
「何でも聞いてニャ!」
ジャガーマンのゲンキンな態度に麻菜は肩を竦めながらウルの住民達とジャガーマン、双方から聞き取り調査を行う。
その結果、エリドゥにジャガーマンの言うククルんがおり、その女神が生贄をウルに要求していることが分かった。
なおジャガーマンの証言により、生贄を殺すなんてことはしておらず強制労働をしているだけとのことで、ウルの住民達は安堵した。
エリドゥに囚われた者達は麻菜が解放することを約束し、ウルの住民達をウルクへと避難させる。
住民達もジャガーマンを倒した麻菜ならば何とかしてくれる、と思ってくれた為、避難を承諾した。
なお、ジャガーマンは美味い飯を要求した為、ウルクへ麻菜と一緒に戻り、マシュと虞美人に事情を説明して彼女の世話を頼んだ。
ふざけた存在であるジャガーマンであったが、麻菜で慣れていた為に虞美人もマシュも大して驚きはなかった。
そして、麻菜は単独でエリドゥへ向かったのだった。