全ては世界を救う為に!   作:やがみ0821

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全ては世界を救う為に!

 カルデアに戻った麻菜達は事情聴取を受けることになった。

 とはいえ、麻菜は答えるのを面倒くさがったので基本的にはマシュが何があったかを説明し、ロマニとカルデアの特別技術顧問という、ダ・ヴィンチが質問をする形となった。

 

 本来ならオルガマリーも同席する必要があったが、彼女はロマニの判断で休息を優先させた為に同席していない。

 後ほど、ロマニとダ・ヴィンチの両名が説明することになるだろう。

 

「それで麻菜。最後の質問だけど、君は何者だい?」

 

 ダ・ヴィンチの問いかけに麻菜は不敵な笑みを浮かべる。

 キアラもこれには興味があるらしく、じーっと麻菜を見つめている。

 

「私は異世界から転生してきたのよ、何でか知らないけど。前世にあたる異世界の魔法とか種族的なやつとかその他諸々は全部引き継いでいる感じ。強くてニューゲームっていうやつね」

 

 特大の爆弾が炸裂した。

 しかし、ロマニとダ・ヴィンチ、マシュは狼狽えない。

 既にオルガマリーの蘇生という、とんでもないことを麻菜がやらかしていたが為に。

 

「異世界ってどんなところ? むしろ、そっちが気になるんだけど」

「こっちの世界でいうところの北欧神話をベースに、色んな神話の種族や生物ごちゃまぜっていうところかしらね。クトゥルーの連中もいたわよ? 私も召喚できる。ティンダロスのワンコとか」

 

 3人の顔が引き攣った。

 ティンダロスのワンコと麻菜は可愛く呼んでいるが、その正体を3人は知っている。

 

「そりゃ世界が滅んだ程度じゃ驚かないわけだ。そんなのがいるなら世界の滅亡なんてよくあったんじゃないの?」

「1週間に1回くらいは滅亡の危機になっていたわね」

 

 イベント的な意味で、と麻菜は心の中で付け加えながら更に言葉を続ける。

 

「他のマスター連中だけど全て終わった後まで蘇生させないほうがいいかも。びっくりするほど大失態だから物理的に首が飛ぶわよ?」

 

 そりゃそうだ、とロマニとダ・ヴィンチも頷いて、マシュは怯える。

 リアルに想像できてしまったのだろうか、どうにも顔色は良くない。

 そんなマシュに麻菜は胸を張って告げる。

 

「大丈夫よ、私がいるから」

「いえ……むしろ先輩が何故か色々とちょっかいをかけてくる相手に対して、嬉々として殺戮をする姿が目に浮かんでしまって……」

「失礼な後輩ね」

 

 麻菜はそう言いながら、マシュのほっぺたをつつく。

 むにむにとした感触に思わず感動してしまう。

 

「マシュの名前ってマシュマロからきているに違いない」

「違うからね。それで麻菜君、この後の予定だけど……」

 

 ロマニの言葉に麻菜は素早く反応して告げる。

 

「サーヴァントを召喚したい。というか、させて。カネは払うから!」

 

 必死な麻菜にロマニとダ・ヴィンチは苦笑する。

 

「ちなみに麻菜。何でそんなにサーヴァントを欲しがるんだい?」

「実は趣味で世界最強を目指そうと思ってね。英霊達から色々指導してもらいたいし、当時の文化とか生活様式とか、そういうのを知りたいのよ」

 

 麻菜以外の全員が目を丸くした。

 英霊達に指導してもらいたい、というのは分からなくもないが後半の理由だ。

 

「え? 普通、知りたくならない? 例えばダ・ヴィンチが普段どんなモノを食べながら、絵を描いていたとか普通に知りたいんだけど」

「いやまあ……普通のものを食べてたよ? っていうか、麻菜は変わっているね。うん、変人だ」

 

 にこにこ笑いながら、変人認定をするダ・ヴィンチに麻菜は首を傾げてマシュへと視線を移す。

 

「そんなに変?」

「変といえば変ですね……ですが私としても言われてみると気になります」

 

 そうでしょう、と麻菜は満足げに頷きつつ、ロマニへと視線を移す。

 

「ダメかしら?」

「いや、ダメじゃないけどさ……意外だった。サーヴァントって一般的な魔術師は道具扱いするからさ。君なんて超越的な力を持っているから、てっきりそういうものだと……」

 

 ロマニの言葉に麻菜はむーっと不満げに頬を膨らませてみせた。

 

「サーヴァントで呼び出すのは過去の英雄でしょう? たかが召喚主風情が彼らを道具扱いできるのかしら? 愚かにも程があるわ」

 

 真摯な表情でそう告げる麻菜。

 そこに嘘偽りは全くない。

 

「麻菜、やっぱり君は変人だね。だけど、好ましいと私は思うよ」

 

 ダ・ヴィンチはにっこりと笑って、そう言い、更に言葉を続ける。

 

「ロマン、問題なさそうだよ。むしろ彼女が残って……いや、たぶん爆弾程度じゃ死なないだろうけど、ともあれ彼女だけがマスターというこの状況は不幸中の幸いだ」

「そうだね。魔術師らしい魔術師だと、とても面倒なことになりかねなかった」

 

 ロマニはダ・ヴィンチへとそう答え、麻菜へ告げる。

 

「麻菜君、サーヴァントを召喚しよう……といいたいところだけど、実は召喚システムの点検が終わっていなくてね。少し待ってほしい」

「待てない。壊れた設備は直してあげるし、死んだ職員は蘇生するわよ?」

 

 そうくるとは思っていなかったが、ロマニやダ・ヴィンチとしてはその申し出は有難かった。

 

「ありがとう。頼めるかい?」

「ええ、勿論」

 

 麻菜は二つ返事で承諾し、流れ星の指輪(シューティングスター)を取り出して、そして、ウィッシュ・アポン・ア・スターを発動した。

 

 マスターを除いてレフ・ライノールによる破壊工作が起きる前の状態にカルデアを元に戻して――

 

 その願いは一瞬で叶ってしまう。

 

 これにより、慌てて報告に駆け込んできたスタッフ達にロマニが指示を出して、彼らをすぐに部屋から出した。

 

 まさに世間一般の人々が思い描く魔法そのものだと彼は確信しつつ、問いかける。

 

「それ、どういう魔法なんだい?」

「何でも願いを叶える魔法よ。ただし、この指輪がないと自分の命を削ることになる」

 

 指輪を使わない場合に減少する分の経験値を自分の命と置き換えて、麻菜はダ・ヴィンチへと伝える。

 

「……本当に破格だね。それを使えば今回の敵、消えるんじゃ……」

「あいにくと一定以上の魔力を持つ連中には効かないのよ。ちなみに私に対しても効かないので」

 

 麻菜の言葉にダ・ヴィンチは肩を竦めた。

 それらは真実ではなかったが、嘘でもない。

 経験値を削っての発動は、現実化した今となっては致命的になりうるからだ。

 またワールドアイテムを所有している者に対して効かないが、世界を滅ぼそうとするとんでもない連中なら、それに類するアイテムなり防御手段なりを持っているだろうという麻菜の予想であった。

 

 幸いにも廃課金者であった麻菜は指輪をそれなりの数、所有している。

 また、ユグドラシルのサービス終了直前にゲーム内マーケットに破格の値段で放出された指輪も全て購入している。

 それなりに大胆に、そして贅沢に使っても大丈夫であった。

 

「それと私が持っている諸々のアイテム類を使わせてあげるし、私は自分で金銀銅ミスリルその他色々の金属やマジックアイテムを魔力のみで作り出せるので、色々とよろしくね」

 

 にっこりと天使のような微笑みをする麻菜であったが、ロマニとダ・ヴィンチからすればその微笑みはまさしく、獲物を見つけた飢えた狼のようなものだった。

 

 こっちを骨の髄までしゃぶり尽くすつもりだ――

 

 それに2人は一瞬で気がついたが、断ることなどできない。

 孤立無援になった以上、物資の調達は急務である。

 どれほどにふっかけられても麻菜の要求を呑むしかないのだ。

 

「麻菜君、君の要求を聞こう」

 

 ロマニの問いに麻菜は答える。

 

「召喚したい。それと世界を救った後もサーヴァント達と一緒にいたい」

「な、何とかするよ……」

 

 ロマニは震え声だった。

 魔術協会をはじめとした、数々の組織に根回しをする必要があるからだ。

 さすがにオルガマリー全てに丸投げするわけにもいかない。

 

 一方ダ・ヴィンチは自分が麻菜に召喚されれば、今の偽装契約状態から脱却し、麻菜のサーヴァントになれるので素知らぬ顔だった。

 

「ところで、かっこよく決めたいんだけど……」

「何? 言ってみなさいよ」

 

 ロマニの言葉に麻菜が尋ねると、彼は咳払いをして真剣な顔で告げる。

 

「僕たちが人類を救うなら観測された特異点を修復しなければならない。2016年より先の未来を取り戻すなら、それ以外に方法はない。君にその覚悟はあるか?」

 

 麻菜は悩んだ。

 厨二で返すか、それともテキトーに返すか。

 しかし、ここはロマンに付き合ってやろう、と考え、麻菜は不敵な笑みを浮かべて告げる。

 

「たかが世界を救う程度よくやったこと。しかし、此度は負けられない戦いならば告げよう」

 

 麻菜は少しの間をおいて、更に言葉を続ける。

 

「誓おう。たとえ戦友達がおらずとも、私はあの名を出すとしよう。その名を背負っていればこそ私は負けられない。あの名に泥を塗ることなど許されない」

 

 そして、麻菜は獰猛な笑みを浮かべ、告げる。

 

「アインズ・ウール・ゴウンの名の下に、立ち塞がる全てをことごとく粉砕しよう。かつて我らがそうしたように。道という道、城壁という城壁、街角という街角、それら全てを哀れにして愚かな敵の死体で埋め尽くしてやろう」

 

 

 完璧な返しだ。惚れ惚れする――

 

 麻菜は自画自賛をしながら、ロマニの反応を見る。

 彼はドン引きだった。

 

 麻菜は思いっきり頬を膨らませる。

 

「かっこいい返しをしてやったのに、その反応はないんじゃないの?」

「いやだって、それ、どう見ても麻菜君のほうが悪役だよね? 人理焼却の犯人って君じゃないの?」

「失礼しちゃうわ。ねえ、キアラ?」

 

 そこでキアラに振る麻菜も麻菜であった。

 しかし、キアラは悪意が一切ない笑顔を浮かべて告げる。

 

「大魔王というものでしょうか。私は良いと思いますよ?」

 

 キアラにそう言われた麻菜は形勢不利を悟り、開き直った。

 

「ええ、そうよ。私はアレよ、大魔王的な位置づけよ。第一、私が世界をどうこうするならいいけれど、私以外の輩が世界をどうこうするのは気に入らない。だからぶっ殺す。その後、蘇らせたら永遠に召使いとしてこき使ってやる」

 

 ドヤ顔でそう告げる麻菜。

 

 敵が可哀想――

 

 ロマニ、ダ・ヴィンチ、そしてマシュは全く同じことを考えてしまう。

 それはさておき、ロマニは重大な事実を麻菜に告げる。

 

「ところで麻菜君……カルデアの計測器によるとコヤンスカヤさんってサーヴァントっぽいんだけど……?」

「ええ、数年前に召喚したのよ。どっかで聖杯戦争が起こったら参加しようって思ってたけど実務が優秀だったから、聖杯戦争への参加とかどうでも良くなっちゃった」

「そっかぁ……」

 

 軽いノリで召喚したらしい麻菜にロマニは遠い目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 紆余曲折あったものの、麻菜はいよいよ召喚に望む。

 本来なら所長であるオルガマリーの許可が必要であったのだが、カルデアにおける戦力増強は急務だ。

 サーヴァントとマトモに戦える麻菜がいるとはいえ安心はできない。

 敵は未知であり、どういう攻撃をしてくるのか分かったものではないからだ。

 前例のない緊急事態の為、ロマニとダ・ヴィンチの判断により10回の召喚を行うこととなった――というのが表向きの理由だ。

 

 実際のところは麻菜と彼女のサーヴァント2人は世間一般でいうところの倫理観とか道徳とかが怪しい為、マトモな倫理観のあるサーヴァントを召喚して抑えに回ってもらおうという魂胆である。

 

 早い話、ツッコミ役が足りないのである。

 ダ・ヴィンチは状況を受け入れて楽しむ方向に転換したので尚更だ。

 

 しかし、ロマニは絶望し、ダ・ヴィンチは笑ってしまった。

 召喚により、10人のうち2人は冬木で縁を結んだというアルトリア・ペンドラゴンとランサーのクー・フーリンだ。

 だが残る7人は1人を除いて問題しかないか、あるいはどう見ても色物であった。

 歴史や神話に名前が残っている輩もいるのだが――色々と残念であった。

 

 これにショックを受けた麻菜は9人目の召喚が終わったところで、世界を救う為に本気を出して一緒に戦ってくれるサーヴァントを望んで祈ってみたのだが――10人目に出てきたのがある意味で一番残念で、それでいて彼女もよく知っている人物だった。

 

 

 

 

 

『今回の最後、10人目だよ!』

 

 ダ・ヴィンチの言葉とともに、10人目が召喚される。

 現れたのは――青い着物を纏った狐娘だった。

 

「謂われなくとも即参上、軒轅陵墓から良妻狐のデリバリーにやってきました!」

 

 麻菜はドン引きした。

 今までの面々も中々に濃い面子だったが、違う方向に濃かったのだ。

 見た目はまんまコヤンスカヤの別バージョンといった感じであるし、ノリも何となく似ている。

 

 私がスキルまで使ってカルマを切り替えた結果がコレか――

 

 麻菜はちょっと悲しかったが、目の前の狐娘は止まらない。

 

「イケメン魂、略してイケ魂。あなたはずばり、そのイケ魂の持ち主! もう一目惚れ、別の私が月で旦那を見つけたように、今、私も将来の旦那様を見つけてしまいました!」

「何となく見た目から予想はつくけど……どちら様?」

「おっと、これは失礼しました。あまりの嬉しさとイケメン具合……性別は女性でしたか、問題ありません。なんか普通に女神みたいな美しさですが何とかなります」

 

 そこまで言って彼女は咳払いを一つ。

 

「私、玉藻の前です。白面金毛九尾の狐、アレです」

 

 麻菜は物凄い懐疑的な視線を女性――玉藻へと送った。

 

「あ、全然信じていませんね? そりゃ今の私は尻尾一つ、ぶっちゃけ戦力的には最弱です。しかし! この溢れ出る思い、それは誰にも負けません!」

 

 心が燃えているらしい玉藻に麻菜は告げる。

 

「私って欲望一直線よ? むしろ、ギトギトのギラギラじゃないの?」

「ええ、そんな感じはします。魂もさっきまでは太陽みたいに光り輝いていましたけど、今は白黒のマーブルカラーとかいうありえないものですしっていうか、それが本来のものっぽいですね……しかし、惑わされる私ではありません」

 

 そこで玉藻は言葉を切って、麻菜の瞳をまっすぐに見つめて告げる。

 

「あなたは欲望に従って自分のやりたいようにされるでしょう。だからこそ、普通なら忌避される輩も己の懐に受け入れてしまう。そういうところがイケメンなのですよ。慕われる海賊の親分とかマフィアのボスみたいな意味で」

「例えで色々台無しなんだけど、まあいいや……」

 

 最後の最後で大物なんだか色物なんだか、よく分からないものを召喚してしまった、と嘆く麻菜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……にぎやかになりましたねぇ」

 

 食堂にてコヤンスカヤは紅茶を啜る。

 その姿はいかにもやり手のビジネスウーマンそのものであった。

 しかし、食堂は混沌とした状況だ。

 麻菜が今回、召喚したサーヴァント達と親交を深めるという名目で宴を開いた為である。

 

 カルデアの食堂は可もなく不可もない味であり、種類もまあまあであったが麻菜がそれで満足するわけもない。

 幸いにも今回召喚した中で一番マトモで倫理観があるサーヴァント、エミヤが料理ができるとのことで彼に全てを任せたのだ。

 

 くつろいでいるコヤンスカヤであったが、彼女の対面にはある人物が座っていた。

 

「あなた、変わりすぎじゃありません? 本当に尻尾ですの?」

「むしろ、どうして本体が召喚されているんです?」

 

 コヤンスカヤの前には玉藻がいた。

 テーブルの下で互いに足を蹴り合っているが、それくらいで済んでいる。

 

「ご主人様がマジパネェ感じでしたので」

「……麻菜様は太陽みたいに輝いていたのかしら?」

「ええ、そりゃもう……というか、尻尾。あなたはご主人様のどこに惹かれたんです?」

「そりゃ魂に決まっていますよ。白黒のマーブルカラーとかいう普通じゃありえないのに、黒く染まったときはそれはもう美しくて……」

「あーダメです! ご主人様! そんな暗黒に染まっては! 暗黒イケモンになってしまいます!」

 

 コヤンスカヤと玉藻の頭の中では麻菜の魂が信号機みたいに白黒に切り替わっているのだが、あいにくとツッコミ役はいない。

 

 厨房から食堂内の様子を窺っていたエミヤは深く溜息を吐く。

 

 

「なんでさ……」

 

 エミヤからすると、彼以外の9人は歴史や神話に名を残す者もいる。

 ただ全体的に色々とアレであり、言っては悪いが色物もいた。

 

 アルトリア・ペンドラゴン――セイバー・オルタはもっきゅもっきゅとハンバーガーを無限に食い続けている。

 それは彼にとっては許容範囲内だ。

 だが、その横で謎のヒロインXXとかいう、よく分からない存在もまたハンバーガーを食っていた。

 

 サーヴァント・ユニバースって何さ、とエミヤは訳が分からなかった。

 

 フォーリナー死すべし慈悲はない――アイタタタ、ちょっと待って! その剣ヤバいですって!

 

 召喚が終わった後、XXはそんなことを口走りながら麻菜に斬りかかって、逆に麻菜の剣で脇腹を突かれたことは記憶に新しい。

 そのときに彼が見た麻菜の剣は解析することを本能が拒否したので、相当にとんでもない代物であるということが分かった。

 

 他を見ればクー・フーリンが師匠のスカサハに絡まれていた。

 彼から視線で助けを求められたがエミヤは見なかったことにした。

 

 ケルトのことはケルトで解決してくれ、というのが他ならぬ彼の思いだ。

 

 

 

 別のところへと視線を向ければマーリンがフォウに飛び蹴りを食らっているのが見えた。

 マーリンシスベシとかフォウが言ったような気がしたが、エミヤは疲れているのだろうと聞かなかったことにした。

 

 メディアとキルケーのやり取りはさながら漫才だ。

 エミヤはアルトリア・ペンドラゴン、クー・フーリンに続いて3人目に召喚され、残る7人の召喚にもそのまま立ち会っていた。

 

 先にメディアが召喚されて、次に来たのがキルケーだ。

 召喚時のやり取りも漫才みたいなものだった。

 

「オケアノスのキャスターだ。もう君を寂しくはさせないよ。この鷹の魔女を呼び招いたのだからね……って、あ、メディアだ! 君も来ていたんだ!」

「キルケー! 何で来たのよ!?」

「呼ばれたから!」

「そうだけど、そうじゃないでしょ!? あと何よ、オケアノスのキャスターって! あなたはキュケオーンのキャスターでしょ!?」

「違うよ! 失礼だな!」

 

 

 

 思い返して笑いがこみ上げてくるが、エミヤはぐっと我慢した。

 魔女に目をつけられたら碌でもないことになるからだ。

 

 一方でマスターの麻菜へと視線を向ければ――食堂の一角でゴルゴーンに面倒くさい絡み方をキアラと一緒にしていた。

 

 神話の怪物も麻菜とキアラの前では単なる美人女性と化してしまうようだ。

 しかし、ゴルゴーンにとっては自分に物怖じしないどころか怪物であることすら受け入れて、積極的に絡んでくるのが微妙に嬉しいらしく、拒もうと思えば拒めるのにそうはしていない。

 

 というよりも、麻菜とキアラは嫌がられそうで嫌がられない絶妙な距離感をゴルゴーン相手に取れることにエミヤは呆れてしまう。

 

 

「……いや、本当に何でここに来てしまったんだ……」

 

 エミヤは深く溜息を吐いた。

 

 そして彼は思う。

 

 人理修復はできるだろうが――正義とか友情とか愛とかそういう物語ではなく、巨悪が巨悪を打ち倒すということになりそうだ。

 世界を救う為ならば何をしても問題はないし、許される――というわけじゃないだろう。

 

 エミヤはそう思ったが、麻菜に絡まれると面倒くさいので心の中に留めたのだった。

 

 

 

 

 




思いついたり、筆が進んだら続きを書くかもしれないけれど、ひとまずこれで終わり。

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