全ては世界を救う為に!   作:やがみ0821

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微エロあり。


覚醒の時

「こんなこともあろうかと、ティアマトと名乗っているゴルゴーンみたいな輩の神殿がある場所は探しておいたよ」

 

 ジグラットにおける作戦会議にてマーリンが鼻高々にギルガメッシュや麻菜をはじめとして、並み居る面々にそう宣言した。

 

 麻菜が驚きのあまり目を見開いて言葉を紡ぐ。

 

「マーリンが優秀だと……?」

「麻菜君、酷くないかい?」

「だってアルトリア及び円卓の騎士達が満場一致でマーリンはロクデナシって言うくらいだから……」

「僕だってやるときはやるさ」

 

 しかし、そこで終わる麻菜ではない。

 

「で? 他に隠しているものは? 真の敵とかそういうの、知っているんじゃないの? アルトリアに教えてもらったんだけど、あなたって重要なことは後回しにするらしいじゃないの」

 

 麻菜の問いかけ。

 そして彼女は特に意味はないが、無限倉庫からレーヴァテインを取り出して、素振りしてみせる。

 本当にただ何となく素振りをしてみたくなったというだけである。

 それを見て、マーリンや周囲の面々がどう受け取るかは別の話だ。

 

「じ、実はだね……」

 

 マーリンは冷や汗をかきながら、自分が実はやっていたこととエルキドゥと名乗っていたが途中からキングゥと名乗りだした輩について、また今回の黒幕に関してその全てを正直に話した。

 

 全てを聞き終えて、まず口を開いたのはギルガメッシュだった。

 しかし、それはマーリンを咎めるものではない。

 ギルガメッシュはただ一言、麻菜に問いかける。

 

「勝てるか?」

「勝てる。ただし、地形とかへの被害や、あなたをはじめ多くの連中に喧嘩を売ることになるけども」

「その程度で勝てるならばやれ。我が許す」

 

 そのやり取りにマシュが尋ねる。

 

「先輩、勝てるんですか? 本当に?」

「勝てる。なぜならば……」

 

 麻菜はそこで言葉を切り、少しの間を置いて告げる。

 

ティアマトは異教の神だから(・・・・・・・・・・・・・)

 

 その言葉にマシュは首を傾げる。

 異世界の種族的なものとかアレコレ引き継いで転生してきた存在――というのがマシュが知っていることである。

 また、その世界が色んな神話のごちゃまぜで、頻繁に世界滅亡の危機にあったことも知っている。

 

 そして第2特異点で早口で説明を聞かされた記憶はあるが――

 

「さすがの我も詳しいところまでは視えん。簡潔に述べよ」

「私は異教の神々を無数に狩ってきた。主の御名の下に」

 

 ギルガメッシュ・イシュタル・エレシュキガルは嫌そうな顔となり、ケツァル・コアトルはいつも通りの笑顔であるが目は笑っていない。

 マシュと虞美人、そしてアナもここまで言われればさすがに分かる。

 

「いや、お前が天使とかありえんだろ。どう見ても悪魔だろ」

「欲望に素直という設定なので許してパイセン……」

「設定ってなんだよ」

「あんまり気にするとハゲるわよ?」

「ハゲねーよ! よく分からないけど、お前が天使ならお前の創造主がそう設定したってことかしら……」

「まあ、色々あって最後は邪神のところに行ったんだけども……私のスキルで、善悪切り替えられるので問題ないわね」

 

 さらっととんでもないことを暴露しながら、麻菜はイシュタルとエレシュキガルそしてケツァル・コアトルの顔を見回して告げる。

 

「私のこと、そこらまで分かっていたんじゃないの?」

 

 麻菜の問いかけにイシュタル達は答える。

 

「私はあなたが世界の外から来て、混沌だってことくらいしか分からないわ。千里眼は持ってないし……」

「私も同じなのだわ」

「同じくデース。でも、正体が分かったところであんまり変わりはなさそうね」

 

 ケツァル・コアトルの言葉に麻菜は頷いて告げる。

 

「欲望一直線、気持ち良いこと楽しいこと面白いこと大好き、それが私の昔から未来まで変わらぬスタンス……!」

 

 麻菜はそう宣言し、素早くエレシュキガルへと近づいて両手を握った。

 そして麻菜はずいっとエレシュキガルへと顔を近づける。

 

「エレシュキガル、こんな私でも受け入れてくれる?」

「ち、近いのだわ……! も、勿論、受け入れるわ……」

「流石はエレちゃんね。冥界の女主人は懐もデカイ」

 

 ぶんぶんとエレシュキガルの両手を握ったまま上下に振る麻菜。

 そんなことを言われてしまうとイシュタルは面白くない。

 

「ちょっと麻菜。私がそいつよりも懐が小さいってわけ? あんたがちょーっと気に食わない宗教に属する天使だからって、私を慕うならあんたの宗教みたいに排斥したりなんかしないわ」

 

 イシュタルの発言に麻菜はエレシュキガルから手を離して、すぐさまイシュタルの前へ。

 

「もしも私が本当に異教を嫌っていたなら、あなたに対してあんなことやこんなことを言ったりしていないわ」

「ばっバカ! こんな場所で言うな!」

 

 イシュタルの反応にギルガメッシュは面白いものを見つけたとほくそ笑む。

 ケツァル・コアトルとエレシュキガルも興味深そうに視線を送り、知っているマシュと虞美人は溜息を吐いた。

 アナは知らなかったが、大して興味はない。

 

「おい、麻菜。何をした?」

「あら、王様。そういう詮索はご法度では?」

「たわけ。我の特権だ。何よりもイシュタル関連で面白い話があるならば、知りたいに決まっているだろう」

「教えてあげるから、私のことについては……」

「そもそもお前は欠陥でもあるのかと思うくらいには、天使としての素振りを全く見せていない。そして、それを改める気もないだろうに……」

「それはそれで酷い」

「自業自得だ。さあ言うが良い。王命であるぞ」

 

 そのときイシュタルがギルガメッシュ目掛けて宝石の弾丸を撃ち放つ。

 それを高笑いしながら迎撃するギルガメッシュ。

 

「余程に知られたくないとみえる! 実に愉快だな!」

「黙れ金ピカ! 今日こそ許さないわ!」

 

 爆発音をBGMにしながら、麻菜はケツァル・コアトルの前に立つ。

 しかし、麻菜が何かを言う前にケツァル・コアトルが彼女を抱きしめる。

 

「何も言わなくて大丈夫デース。あなたとは拳を交えた中、あなたにそういう望みがないことはよく分かっているわ」

「ぐへへへ……やっぱりケツァル・コアトルだわ。主を鞍替えしようかしら」

「大歓迎デース!」

 

 そんなことを言い始める麻菜と答えるケツァル・コアトルにエレシュキガルが慌てて引き剥がしに掛かる。

 

「待つのだわ! 麻菜は私の天使になるのだわー! 冥界の天使って素敵だと思うの!」

 

 ぐいぐいと引っ張るエレシュキガルに麻菜は心癒された。

 そこでマシュがおずおずと問いかける。

 

「あの……そもそも先輩って異世界から来たので、こっちの世界のそういう方とか宗教とは何も関係ないですよね?」

「実はその通り。こっちの世界でそういうのとは全く関係ないのよね」

 

 麻菜の答えたとき、背後で一際大きな爆発音が響き渡ったのだった。

 

「というか、マトモに作戦会議をした方がいいのでは……?」

 

 アナの提案により、ようやく作戦会議が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 愉快な作戦会議を終えた後、麻菜はマーリンに位置を教えてもらい、ゴルゴーンの神殿へ向かう。

 

 麻菜が単独で行き、さくっと決着をつける。

 ティアマトが黒幕であると分かった以上、ゴルゴーンはさくっと片付けるに限る。

 

 またマーリンはゴルゴーンが魔獣を生み出しているということから、ティアマトの権能の一部を譲渡されている可能性を指摘した。

 ティアマトの本体はマーリンによって微睡みの中におり、完全に目が覚めていない。

 敢えてゴルゴーンに権能を譲渡することで、感覚的な繋がりを得て彼女を排除した瞬間にその衝撃によって強引に目覚めるのではないか――マーリンはそう予想し、ギルガメッシュもまたそれを肯定した。

 

 つまるところ、ゴルゴーンは中ボスに過ぎず、ラスボスであるティアマトを目覚めさせる為のトリガーだ。

 

 麻菜以外の戦力を全てウルクへ集中させ、何をしてくるか分からないティアマトへ備えるという狙いだ。

 

 またこのときに備え、ナポレオンをはじめとした軍勢を召喚できるサーヴァント、そして軍勢と縁がありそうなサーヴァントをカルデアからあらかじめ派遣してもらう。

 

 カルデアのサーヴァントに関するレイシフト機能は向上を果たしており、以前は10人が上限だったが、今ではその上限が大きく増加している。

 

 

 もっともその2枠を麻菜はとある女神達を呼ぶことに使うと決めていた。

 とはいえ、呼ぶのは直前であり、またゴルゴーンと話をしたらさっさと2人はカルデアへ戻ることになっている。

 基本的に2人とも戦う女神ではないので、仕方がなかった。

 

 そして、神殿に到着した麻菜は特に妨害を受けることもなく、凄惨な光景もあったがリアルでも見慣れていた為、焼き払いつつどんどん奥へと進み――地下の巨大な空洞に到達した。

 

 

 麻菜は叫ぶ。

 

「自分のことをティアマトだと思い込んでいるゴルゴーン! 怖くないから出ておいでー! 何もしないよー!」

 

 叫びが響き渡り、やがて地鳴りと共に地面に開いた大穴から姿を現した。

 見るからにヤバそうな液体に浸っていたらしい。

 

「ふん……誰かと思えば最近、ウロチョロしている人間……でいいのか?」

 

 困惑するゴルゴーンに麻菜は告げる。

 

「実は最近、私も分類的にそろそろ人外を名乗ったほうがいいんじゃないかって思っている……それはそうとして、ゴルゴーン」

「その名で呼ぶな! しかし……ふむ、そうだな。お前は人間の醜さを知っているだろう?」

 

 その巨体を屈めて、ゴルゴーンは麻菜の目の前に顔を持ってきた。

 

「私に協力するならばお前をマスターとしてやろう。この時代の人間に味方をする義理も義務もお前にはない筈だ」

 

 そう囁きながら、ゴルゴーンは更に顔を近づけ、文字通りの目と鼻の先、吐息が分かる程の距離に近づいた。

 

「何よりも、お前は自らの欲望で世界を滅亡させてしまいそうな感じがするぞ。だから、少なくとも私とお前の間には協力できる余地がある。最終的に人間を滅ぼせるなら私には何も問題ないからな」

 

 蛇のような舌を出し、麻菜の頬を舐めてみせる。

 これもゴルゴーンからすれば一種の脅しであった。

 お前など簡単に食ってしまえるぞ、と。

 

 だが、彼女にとって想定外であったのは相手が非常識であったことだ。

 

 麻菜は目の前にあるゴルゴーンを真っ直ぐに見据え、そのまま彼女の大きな唇に自分のものを重ね合わせた。

 

 目を見開いて硬直するゴルゴーン。

 麻菜は舌を入れる――なんてことはサイズの違いでできなかったので、唇周辺を舐め回した。

 

 十分に堪能した麻菜はゴルゴーンの唇から顔を離して告げる。

 

「あなたは美しいわ。性格的にも私の好みだし、味方してあげたいのは山々なんだけど……」

 

 申し訳無さそうな顔で麻菜は決定的な一言を告げる。

 

「あいにくとあなたの姉様達から頼まれているのよ。さ、本人達のご登場よ。姉妹の再会に私は感動のあまり涙が出そう。ロマニー?」

『はいはい、バッチリ捉えているからねー』

 

 そして、2柱はカルデアよりやってきた。

 

「まあまあ、随分と大きくなってしまって……調子に乗るのも無理はないわね」

「駄メドゥーサの癖に生意気だわ。姉を上から見下ろすなんて」

 

 ステンノとエウリュアレは開口一番にそう宣った。

 ゴルゴーンは固まり、何も言葉を返せない。

 

「あ、姉様達。ゴルゴーンがちょっと可愛くなるアイテムを持っているんだけど、使っていい?」

「あら、麻菜。そんなものを持っているの?」

「さっさとやりなさい」

 

 ステンノとエウリュアレの許可に麻菜は意気揚々ととあるアイテムを取り出した。

 それは1本の口紅であり、どれだけ使ってもその中身が尽きることはないマジックアイテムだ。

 彼女はゴルゴーンのでっかい唇に頑張って塗りたくる。

 

 みるみるうちにゴルゴーンの唇は薄紫色で染まった。

 若干ムラがあるのはご愛嬌だ。

 

「やっぱりあなたにはこの色が似合うわ」

「麻菜の癖に中々やるじゃないの」

「ええ、麻菜の癖に」

「はいはい姉様方。言いたいことを言ってしまって」

 

 麻菜の言葉にステンノとエウリュアレは固まっているゴルゴーンに対して告げる。

 

「あのとき、あなたは聞こえてなかったかもしれないからもう一度言ってあげるわ」

「ええ、本当に。こんなことはもう二度とないわよ」

 

 そして、2柱は微笑みながら告げる。

 

 たとえ怪物となろうとも、私達はあなたを愛しているわ――

 だって、あなたは可愛い妹なんですもの――

 

 

 瞬間、ゴルゴーンは叫びながらのたうち回る。

 それを見て麻菜は思わず2柱に問いかける。

 

「……効果は抜群ってやつ? あるいは耐性貫通の即死効果みたいな?」

「ちょっと麻菜。失礼よ」

「本当に駄目な麻菜だわ。大方、過去の記憶が刺激されて混乱しているのでしょう」

「じゃあ、いいかしら?」

「ええ。さくっとね」

「なるべく痛くないようにしなさい」

 

 ステンノとエウリュアレの言葉に麻菜はいつもの戦闘用装備を纏い、レーヴァテインを引き抜いた。

 そして、彼女は一直線にゴルゴーンの下へ。

 麻菜が向かってきていることにも気づかず、苦しんでいるゴルゴーンを麻菜は一撃でもってその首を落とした。

 

 ゴルゴーンが消滅していったのを確認したところでステンノとエウリュアレは告げる。

 

「さて、カルデアに戻ってあの子をからかってあげましょうか、私」

「ええ、私。記憶があるかどうかは定かではないけど、そんなのは知ったことではないもの」

 

 そして2柱は息をぴったりに合わせて告げる。

 

 姉を上から見下ろした罪を分からせてあげましょう――

 

 そう言いながら消えていったステンノとエウリュアレ。

 思わず麻菜はゴルゴーンの冥福を祈った。

 その直後、緊迫した通信がカルデアのオルガマリーより入る。

 

『麻菜、ペルシャ湾に正体不明の特大魔力反応よ。時空震まで確認されたわ』

「ラスボスのご登場ってわけね。ただ、その前にちょっと遊んでいくから」

 

 麻菜がそう答えた直後、頭上より天井をぶち抜いて強襲してきた輩がいた。

 

「久しぶりね、キングゥ。救出作戦以来かしら?」

 

 麻菜の問いかけにキングゥは答えず、彼は呟く。

 

「……ゴルゴーンを倒したのか」

「ええ。それとあなたの狙い通りにティアマトは目覚めたようね」

「あの夢魔から聞いたのか?」

「そういうことよ。どうする? ここで私を消しておく?」

「まさか。母さんが目覚めた以上、もう終わりだ。精々、最期の時を待っているがいい」

 

 キングゥの言葉に麻菜はにっこりと笑って――絶望のオーラレベルⅣを放つ。

 瞬く間に溢れ出す濃密な殺気にキングゥは息を呑んだ。

 

「あなたのママに伝えておいて。死はこれ以上苦痛を与えられないという意味で慈悲であると……ああ、もう一つこれも言っておきましょう。この名を出せば私は絶対に負けられないから」

 

 麻菜はキングゥへ不敵な笑みを浮かべ、両手を開いた。

 

「アインズ・ウール・ゴウンの名に懸けて、お前達を狩り尽くそう。お前達は敵として殺されるのではなく、獲物として狩られるのだ」

 

 麻菜は一拍の間をおいて、今度は優しく微笑みながら告げる。

 

「至高の狂気と恐怖と苦痛と悲嘆を存分に味わいながら……死ぬが良い」

 

 麻菜が言い終えるとキングゥは言葉を返さず、また脇目も振らずにそのまま天井の穴から出ていった。

 

「……あれぇ? 何かこう……キングゥに反応してもらえると思ったんだけど……」

『とりあえず麻菜は厨二病っていうことが分かったね。アインズ・ウール・ゴウンって?』

「異世界で私が所属していた異形種ギルドね」

『ヤバい連中の集まりか、納得したわ。あと数時間程で敵の第一陣、およそ2万がウルクに到達するよ。そっちにも虞美人を通して連絡済み』

「数で押してきたのね、了解したわ。まあ、ナポレオンには封緘命令書を渡してあるから大丈夫だと思うけど」

『簡単に行ったり来たりできるのに、そんなものを渡していたのかい?』

「そういうのが好きなので」

 

 麻菜はそう言いながら転移門(ゲート)を開いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナポレオンは虞美人経由でカルデアからの連絡を受け、すぐさま大陸軍(グランダルメ)を召喚する。

 彼は元帥達を集めて、麻菜から事前に手渡されていた封緘命令書を開封した。

 

 そこに書かれていたのはたった一文だ。

 

 

 アウステルリッツに匹敵するような勝利のみを望む――

 

 

 ナポレオンと元帥達にとって十分過ぎる指示だった。

 

 

 


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