全ては世界を救う為に!   作:やがみ0821

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邪竜百年戦争オルレアン

「空気が綺麗だわ」

 

 麻菜は思いっきり深呼吸をした。

 空に不思議な光の帯が見えるが、人理焼却の影響か何かだろう程度にしか彼女は思わなかった。

 

 特異点へのレイシフトが可能となり、やってきたのは1431年のフランスだった。

 

『呑気ね、麻菜……』

 

 通信でオルガマリーは呆れ顔だ。

 

「マリー、ここには一切の大気汚染がないのよ? 本当に自然の空気が味わえる……これはとてつもない贅沢よ」

『あなたって意外と自然が好きなのね』

「ええ、自然は大切にしないとダメよ。本当に」

 

 しみじみと言う麻菜にオルガマリーは何かあったのだろうか、と思う。

 

「とりあえず、適当に街を探していこうと思うの。そっちはGPS代わりになるかしら?」

『あいにくと無理ね。せいぜいサーヴァントの反応とかそういうのを探る程度。カウンターとして、はぐれサーヴァントがいる可能性もあるから、もしいたらなるべく味方につけなさいよ? 味方は多ければ多い程いいから』

「ええ、知っているわ。どんな敵も囲んでフルボッコにすれば余裕だもの」

『一旦、通信を切るから。定時連絡は3時間毎。緊急の場合は即時に』

「了解したわ」

 

 通信が切れる。

 

「で、今回選定したメンバーなんだけど……」

 

 マシュと哪吒、クー・フーリン、スカサハ、メディア、エミヤだ。

 哪吒は追加の10連召喚によって始皇帝や項羽らと共に召喚されていた。

 

「ねぇ、これって私っている必要ある? ねぇマスター、私、いらないわよね……?」

 

 さっさとカルデアに戻して、と言いたげなメディア。

 しかし麻菜は首を左右に振る。

 

「私は索敵魔法に優れていないので、メディアにはそれを頼みたい。とりあえずの方針として敵は皆殺し」

「分かった」

「うむ、理解した」

 

 ケルトの2人は理解が早かった。

 

「先輩、メディアさんは分かりましたが、エミヤさんは……?」

「実はエミヤには合間にお願いしたいことがあって。これはメディアにも同じことをお願いするんだけど……」

「どうしてだろうな、私の勘はろくでもないものだ、と告げているんだが……」

 

 エミヤの言葉に麻菜はにっこりと笑う。

 

「金銀財宝をまるっと頂いて、エミヤとメディアに鑑定してもらって、価値があるものを私の倉庫に入れて持ち帰る。特異点でそれらが消失していても消失した事実がなかったことになるから、本来の歴史に影響は与えない」

「いいんですか? それって……」

「持ち主がいないものに限るし、例えばお礼としてもらったものとかそういうのに。さすがに奪ったりはしないので。正当な報酬よ」

 

 マシュは即、カルデアへと通信を入れた。

 

『何かあったの?』

「所長、先輩が特異点でのことは無かったことになるから、財宝を頂いてもいいのではないか、と……」

『……確かに理論的にはできるけど、どうやって持って帰るのよ?』

「私の倉庫って影響を受けないので……」

『……私としては関与しないわ』

 

 良いとも悪いとも言わない。

 そもそもからして、そういうことは想定されていない。

 とはいえ、実質的に彼女の言葉は目をつぶる、という意味合いで麻菜は解釈した。

 

「ありがとう、マリー。お土産、買っていくから」

『はいはい、さっさと解決して頂戴ね』

 

 通信が切れた。

 

「というわけで、お宝探し……あ、違った。特異点を解決しましょう、そうしましょう」

「主、欲望塗れ」

 

 哪吒の言葉に麻菜は胸を張る。

 

「欲望の為に突っ走る、それが私のポリシーよ」

「いや、カッコいいこと言っているように聞こえますが、全然ダメですからね?」

 

 マシュのツッコミに麻菜は頬を膨らませる。

 

「麻菜の欲については置いといてだ。具体的にはどうする?」

 

 クー・フーリンの問いに麻菜は告げる。

 

「とりあえずは偵察からね。哪吒、ちょっと空から眺めて見て」

「了解」

 

 哪吒は空高く舞い上がり、周囲を見回す。

 何かを見つけたのか、やがて降りてきた。

 

「街らしきものを確認。ここより直線200里程」

「クー・フーリン、スカサハ、先に行って情報収集しておいて。街に敵がいるようなら始末。敵が意思疎通できそうなら捕らえて頂戴」

 

 哪吒の報告を聞くなり、すぐさま麻菜は指示を出す。

 麻菜の指示を聞いて、クー・フーリンとスカサハは一瞬にして消えた。

 あまりにも動きが速すぎたが為に消えたように見えたに過ぎない。

 

「じゃ、私達はほどほどに急いでいきましょうか。哪吒は空から周囲を警戒しながら、ついてきて頂戴……ところで200里ってメートル法だとどのくらい?」

「哪吒の時代で考えると、おおよそ80km程度だろう」

 

 エミヤの言葉に彼に尊敬の眼差しを向ける麻菜とマシュ。

 そんな目を向けられると彼としても何となく恥ずかしくなってしまう為、咳払いを一つ。

 

「と、ともかく行くぞ。80km程度、別に訳もないだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、遅かったな」

 

 街に到着すると、クー・フーリンが出迎えた。

 おおよそ1時間程で麻菜達は目的とする街に到着していた。

 

「遅かったというか、2人の速度が速すぎると思うの。で、状況は?」

「ここはラ・シャリテという街らしいぞ。ワイバーンが何匹かやってきていたが、始末しといた。俺は見張り役兼お前たちの出迎え役、師匠は怪我人の治療がてら情報収集にあたっている」

 

 簡潔な報告に麻菜は頷きつつ、更に問いかける。

 

「はぐれサーヴァントは?」

「今のところ未発見だ。近くにそれらしい気配もない」

「敵の情報は?」

「嘘か本当か分からないが、ジャンヌ・ダルクが復讐のために蘇ったそうだ。竜の魔女とか呼ばれているらしい」

 

 麻菜としては大いに納得のできる理由だ。

 

「竜の魔女っていうのがちょっとよろしくないわね。名前の通り、竜の使役能力でも持っているのかも」

「かもな。それでどうする?」

「攻撃的な警戒を行いましょう。クー・フーリン、この街を中心に半径30km四方における敵対勢力の発見及び排除、意思疎通が可能であれば捕縛をお願い。それらしい気配があれば多少指定距離を超えても構わないわ」

「承ったぜ。それじゃ行ってくる」

 

 クー・フーリンは風のように一瞬で麻菜の前から消え失せた。

 

 さて、と麻菜はマシュ達へと視線を向けて告げる。

 

「ここをキャンプ地とする!」

 

 唯一、そのネタが分かったエミヤは肩を竦めてみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、これ頂戴。こっちのやつも。それとこれも」

 

 そう言いながら、麻菜は要求される代金の代わりとして金のインゴットを1本差し出す。

 店主は飛び上がって、他の品物も勧めてくる。

 

 商店の入り口には他の店の店主や商人達がおり、次はうちに、と麻菜の争奪戦が起きている。

 

「先輩、確かにこれは合法的ですけど……価値のあるものには見えませんが」

 

 お供についてきていたマシュはおずおずとそう言った。

 麻菜の買っているものは美術品などではなく、食器をはじめとした日用品であった。

 それも高級なものなどではなく、庶民が使う安いものだ。

 

「マシュ、21世紀でのこれらの価値は計り知れないわよ」

 

 いわゆる歴史的価値だ。

 コレクター気質でもある麻菜としては集めずにはいられない。

 

 目を輝かせている麻菜にマシュは曖昧に返事をするしかない。

 

「さあ、どんどん買っていくわよ」

 

 先輩のお金の使い方すごいなぁ、とマシュは思うしかなかった。

 

 

 

 およそ2時間程で麻菜は買い物を終えると、クー・フーリンから連絡が入った。

 ルーン魔術による念話であり、ルーンって便利だなと麻菜は思いつつも用件を尋ねる。

 

『あー、でっかい竜とワイバーン多数、それとサーヴァントが多数、そっちに向かって進行中だ』

『ボスはいるかしら?』

『たぶんいるぞ』

『引き込んで退路を断つ。一網打尽にする。後門のクー・フーリンって感じでやって頂戴』

『了解した。ってことは、前門はスカサハと哪吒か。敵が可哀想だな』

 

 念話が切れた。

 さて、と麻菜はマシュへと告げる。

 

「マシュ、敵が来たわ。ここからは仕事の時間よ」

「はい。敵は……?」

「竜とワイバーンとサーヴァントがいっぱいってところなので、引き込んで一網打尽にする。あなたはカルデアに連絡を入れて」

 

 麻菜はそう伝え、伝言(メッセージ)でもってスカサハ・哪吒・エミヤ・メディアへとクー・フーリンの報告とともに作戦について伝える。

 具体的にはエミヤとメディアは後方からの狙撃、スカサハと哪吒は前衛という形だ。

 とはいえ、それだけでは面白くないので、メディアの宝具を活用する策もあわせて実行する。

 

「ところでマシュ、大丈夫? あなたは性格的に荒事に向いていない気がするけども」

 

 やり取りが済んだところで、麻菜はカルデアとの通信を終えたマシュに問いかけた。

 マシュは表情を引き締めて、告げる。

 

「大丈夫です。先輩ばかりに任せっぱなしは嫌ですから」

「それなら安心ね。まあ、しんどくなったなら私に頼っていいから」

 

 にこりと微笑む麻菜にマシュは嬉しくなった。

 色々とアレなところはあるけれど、麻菜は優しいとマシュは実感する。

 

『あー、スカサハだ。何やら妙なサーヴァントがやってきているぞ』

「はい?」

 

 麻菜は念話であるにも思わず声を出して聞き返してしまった。

 

 

 

 急いで麻菜はマシュと共にスカサハのいう妙なサーヴァントのところへと赴いた。

 するとそこにいたのはフランスには似つかわしくない和装の少女だった。

 

 スカサハは入れ替わりに作戦の持ち場へとついてもらい、麻菜はそのサーヴァントとの接触を試みる。

 

「安珍様! 安珍様ですね!」

 

 麻菜を見るなり、和装の少女が飛びついてきた。

 安珍様は誰だか知らないが、麻菜はとりあえず役得とばかりに少女を優しく受け止めて抱きしめ、そして頭を撫でた。

 

「あぁ……安珍様……」

 

 うっとりとした顔の少女。

 

「私は安珍様じゃないんだけど、どちら様?」

「安珍様……? そういえば、とても美しいし、性別も違うような……清姫です! あなたの清姫です!」

「何だか知らないけど、私は玲条麻菜よ」

「おいたわしや……転生されて、私のことをお忘れになっているとは……」

「え、あなた、もしかしてあれかしら、私の前世の知り合い……? ペロロンチーノが拗らせすぎてこうなってしまった感じ……? あのエロゲマスターめ、やりおるな……」

 

 何だか話が妙な方向に行きそうなので、マシュが告げる。

 

「先輩、先輩、たぶん先輩の想像している知り合いじゃないです。清姫といえば安珍清姫伝説で有名な方ですよ」

「そうなの? 清姫」

 

 麻菜が腕の中にいる清姫に問いかけると、はい、と頷いて、顔を上げて清姫は麻菜を見つめた。

 

「安珍様は本当に覚えていらっしゃらない様子……結婚してくださると嘘をついて、逃げて、竜となった私に焼き殺されたことも覚えていらっしゃらないのですね」

「別人なので……」

「大丈夫です。清姫は今度こそ、お傍から離れませんので」

「ダメだ、日本語が通じない。ともあれ竜とやらに興味はあるので、ちょっと変身してみせて」

 

 マシュは麻菜の発言にドン引きであったが、彼女としても怖いもの見たさがあった。

 

「分かりました、お見せしますわ」

 

 すると、清姫の体が変化した。

 細長い竜の姿へと。

 

 とはいえ、それは体が全てそうなったというわけではない。

 下半身が竜と化したのだ。

 だが、麻菜の想像した竜というよりは蛇に近い姿だ。

 

「うふふふ、どうですか?」

 

 問いかけてくる清姫はそのまま麻菜の体に自身の竜となった下半身を巻き付けてくる。

 麻菜はしげしげとその姿を見つめ、そして、つついた。

 

「あんっ」

「何これ……竜というか蛇っぽい肌……白くてすべすべ。やべぇ」

 

 すりすりと麻菜は堪らずに頬ずりし始める。

 

「ちょっと清姫、私は転生前も安珍ではないんだけど、あなたを傍におきたい。でもって、毎日このすべすべ肌を触らせて」

「先輩ー! 色々とダメな方向に突っ走ってます!」

 

 マシュの言葉はもう遅い。

 

「あぁ……!」

 

 清姫は感動していた。

 彼女は嘘かどうか、一瞬で判別することができる。

 だからこそ、麻菜の言葉が本心から出た嘘偽りのないものであると瞬時に理解できてしまったのだ。

 

 竜となった自分ですらも、受け入れてくれる。

 それは清姫にとって何よりも嬉しいものだった。

 

「清姫、他に何かない? 破壊光線とか出せない?」

「火なら吐けます!」

「吐いて!」

「はい!」

 

 麻菜は清姫の吐き出した炎の包まれた。

 しかし、それこそユグドラシルでいうところのワールドエネミークラスの炎でないと麻菜の耐性防御は貫けない。

 

 故に――

 

 

「清姫の炎、暖かい……」

「先輩! 戻ってきてください!」

 

 マシュは必死に声を掛けるも、彼女は清姫の炎によって近づけない。

 

「愛しすぎるので! 丸呑みしてもいいですか!?」

「どんとこい!」

 

 清姫は上半身も竜となって、麻菜を丸呑みした。

 

 マシュは混乱した。

 ここが人気のない場所であったのが幸いだ。

 少しして、もぞもぞと清姫の竜の部分が蠢いた。

 

「よいしょっと。清姫の中、程よく暖かくて冬場に寝るのにちょうどいいかもしれない。さすがにちょっと生臭いけど」

 

 そして、清姫の口を開け麻菜が顔を出して、そんなことを宣った。

 唾液などでベタベタであったが、彼女は全く意に介していないようだ。

 

 フリーダム過ぎる麻菜にマシュとしては頭が痛くなってきた。

 

 

 どっこいしょ、と麻菜は清姫の口から外へと出た。

 

「というわけで清姫。お腹の中まで見ちゃってきたから、これからずーっと私の傍にいなさいよ。もし逃げたら……」

 

 麻菜はにこり、と微笑んだ。

 

「どこまでも追いかけるから」

「はい……麻菜様……」

 

 恍惚とした顔で、清姫は人型へと戻り麻菜に抱きついた。

 

「ずっと、ずっと、傍にいます。あなたの傍に。あなたの清姫になります」

「もう清姫ったら可愛いんだから」

 

 清姫の頭を撫でる麻菜にマシュは深く溜息を吐く。

 

「あの、先輩。時間的に大丈夫ですか?」

「パーティーに遅れるのはガラじゃないわね。というわけで転移魔法で行きましょう」

 

 

 

 

 

「お、来たか」

 

 黒い靄のようなものから、麻菜達が出てきたことにスカサハは微塵も驚かない。

 影の国の女王は伊達ではないのだ。

 

 もっとも、見ていたメディアが頭を抱えていたのは言うまでもない。

 彼女の中で色々と常識が壊れてしまうが、もはや今更であった。

 

「主……」

 

 ジト目で哪吒は見つめる。

 戦いの前に女にうつつを抜かすのは如何なものか、とその視線は訴えていた。

 

「大丈夫、問題ないわ」

 

 華の咲くような笑顔でそう言われては、哪吒としても反論できない。

 とはいえ、麻菜は哪吒を放置しておくようなことはしない。

 

「あとで一緒にご飯を食べましょうか?」

「承諾。ボク、頑張る」

 

 哪吒と麻菜のやり取りに、マシュは恐る恐る清姫へと視線を向ける。

 性質的に嫉妬に狂ってしまう可能性があったからだ。

 

 しかし、マシュの心配に反して、清姫はにこにこと笑顔であった。

 何だかよく分からないが、とりあえず大丈夫そうだ、と彼女が思ったところで、敵の群れがやってきた。

 

 巨竜を先頭に無数のワイバーンを従えて。

 

 その竜が地面へと降り立ち、そしてワイバーンからはサーヴァント達が飛び降りてきた。

 

 竜に乗っている黒い装いの少女が堕ちたジャンヌ・ダルクだろう、と麻菜は予想する。

 すると、ジャンヌは麻菜達を見て笑い始めた。

 

「抵抗でもするというの? ファヴニールを従えた私と? 笑いが止まらないわ! 誰か助けて頂戴!」

 

 笑い転げるジャンヌであったが、不思議と麻菜は不快さを感じなかった。

 本心からジャンヌはそう思って笑っているのだろうが、それでも何故か、全くそう感じなかったのだ。

 麻菜は問いかける。

 

「竜の魔女とかいうジャンヌかしら?」

「ええ、そうよ! 救った国に裏切られたから、その報復に! くだらない正義感で復讐はやめろ、とかいうのかしら?」

「いいえ、むしろ大いにやるべきだわ」

 

 え、とジャンヌは呆気に取られた。

 スカサハは笑いをどうにか堪え、マシュ達は頭を抱え、清姫は愛しのますたぁの勇姿を脳裏に焼き付けんとばかりに凝視する。

 

「まったくもって、あなたは正しい。ぶっちゃけた話、私だって知っているくらいにジャンヌ・ダルク自身に救いがなさすぎる。私があなただったら、同じことしているだろうし」

「あ、ありがとう……その、そんな風に言ってくれたの、あなたが初めてよ……」

 

 ジャンヌは照れ隠しか、小さな声で答える。

 一応、ジル・ド・レェも肯定はしてくれているのだが、彼の場合はジャンヌが言うことなら、何でも肯定すると彼女自身が感じていた。

 

 第三者で、見知らぬ他人が自身の復讐を肯定したのは目の前の少女が初めてだった。

 なぜか、ジャンヌは彼女に対して不信感を抱けなかった。

 

 人間そのものに不信を抱いている筈であるのに、まるで少女は人間ではないかのような――

 

 そう考えたときに、その少女が告げる。 

 

「ジャンヌ、あなたの復讐は否定しないけど、今やるのはマズかった。タイミング的に悪い」

「え、どうして? あなたは私のことを邪魔しないんでしょう?」

「あなたは美人だし、復讐の理由も十分私が納得できるし、できることなら積極的に支援……それこそ私とどっちが多く殺せるか、競争したいくらいには応援したいんだけど……」

「えっと、とりあえず、あなたの名前を聞いてもいいかしら?」

「玲条麻菜よ」

 

 答えた麻菜にジャンヌは何度かその名を呟く。

 それは無意識的なもので、心に刻みつけているかのようだ。

 

 不思議な感覚にジャンヌは陥っていた。

 彼女の心に麻菜の言葉が入ってくるのだ。

 それは嘘偽りのないものであることが何故か分かり、故に、投げかけられる言葉を素直に受け入れることができてしまう。

 

 これまで、このようなことは唯の一度も無かったのに。

 

「麻菜は邪魔をしたいの?」

「いや私達って実のところ、歴史が乱れたからそれを直しにきたのよ。でも、こういう感じに歴史に反逆をしているのを見ると、積極的に応援したいという気持ちもあるわけで」

 

 ジャンヌは麻菜の立場を朧げながらも察する。

 

「あなたも大変なのね……」

「ええ。ジャンヌ、どうやらあなたが反逆した歴史すらも消去して、好き勝手やろうっていうクソ野郎がいるのよ」

「へぇ……」

 

 ジャンヌは麻菜の言葉に嗜虐的な笑みを浮かべた。

 

「まだ正体は分からないんだけど……良かったら、あなたも私に召喚されて、サーヴァントにならない? 待遇は良いわよ。少なくとも、フランス軍より遥かに」

 

 そこで一度、麻菜は言葉を切り、獰猛な笑みを浮かべて告げる。

 

「何よりもジャンヌ。私やあなたの許可なく、勝手に世界を滅ぼそうとしているのよ?」

 

 だから、と麻菜は続ける。

 

「一緒にぶち殺さない?」

 

 ジャンヌは大声を上げて笑う。

 それこそ腹を抱えて、大いに笑った。

 

「こ、こんなに笑ったのは、初めてよ……ふふ、その提案、受けましょう。ええ、私の許可なく勝手に世界を滅ぼすなんて、気に入らないわ」

「それじゃ今回は申し訳ないけど、邪魔させてもらうわ。それに、あなたの強さを見る為の実技試験も兼ねて。世界を滅ぼす輩を相手にするんですもの、それくらいは許されるわよね?」

 

 ジャンヌは獰猛な笑みを浮かべた。

 召喚されてサーヴァントに、という麻菜の物言いから、そうなるだろうとは予測がついていた。

 

 だが、彼女に不快な気分はない。

 むしろ、麻菜の強さ、従えているサーヴァントの強さを見てやろう、というのがジャンヌの思いだ。

 

「さぁ、いくわよ、麻菜。あなたが私のマスターに相応しいか、試してあげる! バーサーク・サーヴァント達! ワイバーン達! 攻撃開始! 眼前の敵を食い散らかせ!」

 

 ジャンヌの開戦の合図に、麻菜もまた不敵な笑みを浮かべ、告げる。

 

「紳士淑女の諸君、戦争の時間だ。さぁ行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 スカサハは疾駆する。

 一足早く突っ込んできたワイバーン達を一息で殺し、ジャンヌの元へ。

 

 麻菜とジャンヌのやり取りを思い出し、笑みが溢れる。

 

 ケルトの戦士のような気持ちの良い輩だ。

 

 バーサーク・サーヴァント達がスカサハの前に立ち塞がる。

 しかし、スカサハに比肩できる武勇を誇る者は皆無。

 唯一、バーサーク・バーサーカーが対抗できるかもしれなかったが、理性を失った輩などスカサハにとっては問題にもならない。

 

 だが面白いサーヴァントが1人、その中にいた。

 瞬時にそのサーヴァントとの距離を詰める。

 驚いた彼女は拳を無意識的に――だが、それは慣れた様子で――振るってきたが、スカサハには掠りもしない。

 むしろ好都合とばかりにスカサハは伸びた腕を掴んで、背後へと投げ飛ばした。

 

 麻菜はそれをキャッチし、転移魔法でメディアの目の前へ赴いた。

 

「はい、破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)

 

 ぶすっと、メディアはそのサーヴァント――マルタへと短剣を突き刺した。

 

「繋がりは切れた。あなた達に味方するから」

 

 マルタは軽く腕を回しながら、そう告げて麻菜へと視線を向ける。

 

「麻菜とか言ったっけ? ジャンヌとのやり取り、聖女としてはああいうのダメだけど、私個人としてはとても良いと思うわ」

 

 ぐっと親指を立てるマルタ。

 

「あ、それと私はマルタだから。よろしくね。こういう作戦なのね?」

「ええ、こういう作戦なのよ」

 

 にっこりと麻菜は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 ジャンヌはそれを目撃していた。

 

「あー! ずるい! ずるいわよ! それ! 麻菜ずるい!」

 

 きーっと大声で怒って悔しがっていた。

 そうこうしているうちに、ワイバーンは次々とスカサハと哪吒、マシュや清姫に始末され、バーサーク・サーヴァント達はマルタに起こったことを警戒し、積極的な攻撃行動を取れない。

 

「周到な作戦よ。ファヴニールだっけ? その竜は私が相手をしましょう」

 

 ジャンヌは一転、困惑した。

 サーヴァントを従えるマスターというのは魔術師であって、竜を殺すような強さはない筈であるからだ。

 

「安心して。こう見えても竜殺しは得意なのよ。ちなみに神殺しや巨人殺しも得意だったり」

「麻菜って何者なのよ……とはいえ、容赦しないわ!」

 

 ファヴニール、とジャンヌが呼べば巨竜は咆哮する。

 

 ブレスがくる、と麻菜はこれまでの戦闘経験から直感し、ただちにガチの装備を身に纏って駆ける。

 

 ブレスが放たれた。

 伊達に伝説の竜と呼ばれているわけではなく、その一撃はまさに大地を焼き尽くすだけではなく、抉る程の密度の火炎。

 

 しかし、麻菜は怯まない。

 

 現実化した以上、ユグドラシルでの戦闘経験は全て彼女が現実に経験したことなのだ。

 故に、ユグドラシルのとんでもドラゴン達との戦闘もまた現実のものとして、彼女の糧になっている。

 

 ファヴニールに飛びかかる麻菜に対し、小癪なとばかりにファヴニールの爪が振るわれる。

 真正面から麻菜はその爪を剣で受けた。

 ガラスのような刀身であるにも関わらず、罅すらも入らない。

 

 ジャンヌは思わず息を呑む。

 

 思いっきり麻菜は力を込めて、剣でもって爪を押し返す。

 ファヴニールの巨体が傾いた。

 

 ジャンヌは狼狽えることなく、麻菜をまっすぐに見つめる。

 

 紛れもない、生身の人間である筈だ。

 だが力は強大で、英雄と言っても過言ではないが、その在り方は欲深く人間らしい。

 

 ジャンヌは笑い、そして叫ぶ。

 

「ファヴニール! 竜の力を見せてやりなさい!」

 

 咆哮し、ファヴニールは踏ん張り、麻菜を押し返した。

 さらにはくるりと回転し、その長大な尾でもって彼女を打ち据えようとする。

 だが、尻尾攻撃は麻菜にとってはユグドラシルで呆れる程に食らい、そして呆れる程に避けたものだ。

 

 軽々と空を飛びながら回避していく。

 

「さぁ、ジャンヌ。堕ちた聖女、強大な憎悪を抱えし者よ! 我が至高の力、汝に示そう!」

 

 その言い方にジャンヌは嬉しくなってしまうが、そんな余裕はない。

 

 麻菜から数多の魔術が放たれたのだ。

 ジャンヌ自身の対魔力は極めて高く、普通の魔術は効かない。

 またファヴニールも生来の最上級の竜種としての能力ゆえ、こちらの対魔力も極めて高い。

 

 しかし、麻菜の放ったものは残念ながら違った。

 元々高い彼女のステータスは装備品によって極めて大きく強化されている。

 

 対魔力が高いなら、その対魔力を突破できるだけ自分を強化すれば良い、というシンプルな話だ。

 

 

 空間ごと切り裂きながら迫る無数の刃にジャンヌも、またファヴニールも脅威を感じた。

 

 故に回避する。

 だが、巨体故にそれは軽々とはいかず、かろうじて。

 そして逃げた先には麻菜がいた。

 

 その纏う全ては宝具であるように見え、特に首から下げた太陽のような黄金の首飾りには目を引かれた。

 

 美しくも恐ろしい。

 

 死を告げる女神というのがいるのならば、こういう姿なのだろうな、とジャンヌはそんな感想を抱く。

 

 死んだところで座に戻るだけだ、怖くはない。

 

「ファヴニール、ありがとう」

 

 ジャンヌは優しく、自身を乗せる竜の背中を撫でた。

 

 麻菜には勝てない。

 ジャンヌは素直にそう認めることができた。

 

 戦う前のやり取りもあったのだろう。

 麻菜という人物を知ることができたからだ。

 

 憎悪を抱えていようとも、そのくらいの判断はできる。

 

「私の負けよ。あなたをマスターと仰いであげるから、ちゃんと召喚しなさいよ」

「それは重畳。とはいえ、確実にやる為には保険が必要よ」

「保険?」

 

 すると、麻菜はにっこりと笑って青い魔法陣を展開した。

 

「目の前にいるジャンヌ・ダルクがしっかりと万全に、一切の不備や不都合、不具合もなく、私のサーヴァントとして召喚されるようにして」

 

 ウィッシュ・アポン・ア・スター、と麻菜は唱えた。

 

「星に願いを、なんて随分シャレたものね」

「いいでしょう? あなたが今更約束を破るとは思えないけど」

「当たり前よ。私だって通すべき筋は通すわ。さっさとやりなさい」

「ええ、よろしく」

 

 麻菜はなるべく優しく、ジャンヌの胸に剣を突き刺した。

 

 ジャンヌが光の粒子となって消えたことで、使役していたファヴニールも同じく消えていった。

 何かしらの繋がり的なものがあったのだろうか、と麻菜は不思議に思うが、まだ残っている連中がいる為、そちらへと意識を向ける。

 

 バーサーク・サーヴァント達は消えていなかった。

 消えないのをいいことに、スカサハと哪吒、そしてマルタは次々と捕獲してはメディアの元へと連れて行き、破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を使用する。

 あっという間に、バーサーク・サーヴァントは麻菜のサーヴァントと化した。

 

 そして、事情を聞いたところ驚くべき事態が判明した。

 

「おのれ、ジル・ド・レェ……流石は元帥、見事な計略」

「いや、アレにそんな知能は感じなかったわよ。完全にイカれているっぽかったし。ただ、どうも、奴はジャンヌに召喚されたものではなさそうよ」

 

 マルタの証言に麻菜は首を傾げる。

 いったいどういうことだ、と。

 

 しかし、考えても仕方がないと麻菜は判断して告げる。

 

「オルレアンに行きましょうか。はぐれサーヴァントがいたら回収するという形で」

 

 

 

 そんなこんなで、麻菜達はカルデアへと事情を説明し、そのままオルレアンを目指す――と見せかけて、麻菜はメディアとエミヤを連れて、フランス中を飛び回った。

 

 ひとえにそれは麻菜の財宝集めの為。

 購入できるモノは購入し、できないモノはエミヤとメディアに複製を造ってもらう為にわざわざ見てもらった。

 

 もしかしたら時代を経るごとに、あるいは戦乱により紛失してしまった人類の宝とも呼ぶべき代物があるかもしれない、とトレジャーハンター気分の麻菜だった。

 

 多少の寄り道はあったものの、それでも1週間程度でオルレアンへと辿り着いた。

 寄り道をしなければ数時間程度で到着できたが、ともあれオルレアンへの道中で本物のジャンヌや他のはぐれサーヴァントを味方に加えることもできたので、結果的には問題はなかった。

 何よりも、道中でこの時代を生きているフランス軍元帥としてのジル・ド・レェと交流を持てたのは麻菜にとって嬉しいことだった。

 

 

 

 そして、オルレアンで彼らを出迎えたのは1週間前、倒した筈のジャンヌ・ダルクだった。

 

 

 

 

 

「笑ってしまうわ! ねぇ、ジル!」

 

 なんだか同じようなやり取りをした記憶が麻菜をはじめとしたラ・シャリテで戦った者達に蘇る。

 ただジャンヌに対して違和感があった。

 

「なんか、違うわね。召喚したような感じではない」

 

 麻菜の言葉にジル・ド・レェが胸を張る。

 

「竜の魔女はあり得たかもしれない復讐の魔女! まさに、まさにそれは我が悲願!」

 

 正解を自ら明かしてくれたジルに麻菜はウィッシュ・アポン・ア・スターが本当に保険として役立ったことを悟る。

 つまりは、竜の魔女としてのジャンヌはジル・ド・レェの願望によって聖杯が作り出した虚像なのだ。

 

 しかし、目の前にいるジャンヌはその意味が理解できなかったらしく、特に気にも留めていない。

 麻菜は告げる。

 

「ジャンヌ、あなたに恨みはないけど、終わらせてもらうわ」

「できるものならやってみなさい! バーサーク・サーヴァント達よ! ワイバーンよ!」

 

 新たに彼女が召喚したサーヴァント達が麻菜達の前に立ちふさがった。

 しかし、負ける気は微塵もなかった。

 

 質でも量でも、こちらが圧倒していると麻菜は胸を張って言える。

 

「見敵必殺よ。すぐに終わらせましょう」

 

 麻菜の言葉にサーヴァント達が動いた。

 そして、麻菜の要望通りに本当にすぐに終わってしまった。

 

 

 

「お、おぉ……我が悲願が……」

 

 もはや消えるのを待つばかりとなったジルに麻菜は告げる。

 

「安心して。ジャンヌは確かにいるから。何ならあなたも来なさい。歓迎するわ」

 

 ジルは目を見開き、そして穏やかな笑みを浮かべ、粒子となって消えていった。

 それを見送り、麻菜は告げる。

 

「で……あなた達ももうみんな、カルデアに来なさい。でもって、私に色々教えなさい」

 

 麻菜は、はぐれサーヴァントや元バーサーク・サーヴァント達だった面々に告げた。

 

「当然よ! 是非とも、お邪魔させて頂くわ」

 

 華のような笑顔で、最初に宣言したのはマリー・アントワネットだった。

 麻菜は彼女には大いに絡んだ。

 

 主に、パンがなければお菓子を食べればいいじゃない、という逸話について。

 残念ながらそれは誤解であり、またマリー自身の言葉ではなかったが、敢えてマリー本人に言ってもらい、麻菜は大いに興奮した。

 

「子鹿、私も当然行くわよ。子鹿が、どうしても私の歌を聞きたいって言うから、仕方ないわね!」

 

 エリザベート・バートリーの言葉にカーミラが顔を逸らした。

 見ていられなかった、自分の黒歴史を。

 

「エリザベートの歌って味があって良いと思うんだけど……」

「先輩、人類には彼女の歌はまだ早すぎるんです」

 

 そうなんだ、と思いつつ、麻菜は他のサーヴァント達の反応を窺う。

 全員が問題なくカルデアに来てくれそうだった。

 

「それじゃ、帰りましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第一特異点から帰ってきた麻菜達はオルガマリーに報告を済ませると、早速にサーヴァント召喚を行った。

 一番に出てきたのは――

 

「サーヴァント、アヴェンジャー、召喚に応じ参上しました。ちゃんと召喚してくれたわね?」

「ええ、会えて嬉しいわ。ジャンヌ」

 

 微笑む麻菜にジャンヌはふん、とそっぽを向く。

 

「ええ、ええ、本来ならあなたには感謝するべきところです。おかげで私はしっかりと復讐者として、ジャンヌ・ダルクのあり得たかもしれない存在として、確立できたわ。あなたの保険が役に立った、立ってしまった」

 

 一息にそこまで言い、ジャンヌは今度は顔を麻菜へと向ける。

 

「まったくお笑い草だわ。私の座なんて存在していなかったのに。そして、この事実も何でか知らないけど、私は座で知ることができた。ええ、あなたのとんでも魔法のおかげで」

 

 すごく饒舌だなぁ、と麻菜はジャンヌにそんな感想を抱いた。

 

「おまけにファヴニールまでくっついてきたわ。まったくもう、ええ、あなたの敵、あなたの憎悪を向ける相手、それは私にとっても敵であり、憎悪の対象。だから、私の炎で焼き尽くしてあげるわ。あなたが地獄に落ちようと、どうなろうといつまでもずーっと永遠にひっついてやる。私をこうしてしまったことを後悔しなさい」

 

 ふん、と再度そっぽを向けた。

 麻菜はとりあえずジャンヌに手を差し出した。

 

「これから永遠の付き合いになるなら、あなたを信頼するわ。こうして律儀に応じてくれた、あなたに」

「こんな復讐者に随分と情けをかけるものですね。強者の余裕かしら」

「いいえ、私はあなたに勝った。勝者は敗者を好きにできる。だから、私はその権利を行使しているだけよ」

「いつか寝首をかいてやるから。私は負けっぱなしは嫌いなのよ」

「いつでもいいわ。待っているから」

 

 そう言いながらもジャンヌは麻菜の手をしっかりと握りしめた。

 

「というわけで、どんどん行くわよ。大抵、フランスで知り合った人達だと思うけども」

 

 麻菜の言った通りに、召喚されるのはフランスでのはぐれサーヴァントや、元バーサーク・サーヴァントであった者達だった。

 

「げっ! 白いの! あんたは来なくていいのに!」

 

 ジャンヌ・オルタは召喚されたジャンヌにあからさまに嫌そうな顔をした。

 

「あなたが麻菜さんとやり取りしたという、ジャンヌ・オルタですね」

「ええ、そうよ。何か文句でもあるの?」

「いえ、ただ、話を聞く限りだと……あまり、悪い方には思えなくて」

「はぁ? 私はフランスを死者の国にしようとしていたのよ?」

「ええ、知っています。ただ、麻菜さんはそれでもあなたのことを弁護してくれたのですよ。オルレアンへの道中で」

 

 ジャンヌ・オルタはがばっと勢いよく麻菜へと顔を向ける。

 恥ずかしさやら何やらで白い肌は真っ赤に染まっていた。

 

「麻菜! あんた何をやってるの!?」

「何って弁護よ。私がしたかったから弁護しといた」

 

 口をパクパクと金魚のように開いたり閉じたり。

 何と言っていいか、分からない状態にジャンヌは陥ってしまう。

 

「ちょっと白いの! 麻菜を何とかして!」

「といいましても、私も麻菜さんの規格外さは知っていますので、無理ですね」

「あんたそれでも聖女なの!? 諦めるんじゃないわよ!」

 

 白いジャンヌと黒いジャンヌがそんなやり取りをしている間に、召喚は終わった。

 しかし、フランスで見た連中ばかりであり、麻菜としては新鮮味が欲しいところだ。

 

 だからこそ、彼女がオルガマリーに追加の10連をお願いしたのは言うまでもなかった。


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