全ては世界を救う為に!   作:やがみ0821

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ローマへ!

「ボクの知っている料理と違う……」

「美味しいからいいんじゃないの?」

 

 哪吒と一緒に御飯を食べる約束を麻菜は食堂で果たしていた。

 ストーキングしている連中がいるが、麻菜も哪吒も全く気にしない。

 

「満漢全席が食べたいとか言い出した時には私を何だと思っているんだ、と言いたくなったのだがね」

 

 エミヤはそう口では言うものの、満足のいく品々を出すことができた為に気分は良い。

 意外であったが、麻菜がよく食べるのだ。

 それこそアルトリア達に匹敵するくらいに。

 

「エミヤがそこらの料理人よりも料理の腕が良いのがおかしい」

「弓兵、料理人兼任?」

 

 それらの言葉にエミヤは何も言えない。

 

「……せいぜい食べすぎないようにしろ。腹が壊れたら、先日召喚されたナイチンゲール女史に私が伝えてあげよう」

「心配しているのか、それとも皮肉なのか、判断に困るわね……」

 

 麻菜の言葉には答えず、エミヤは黙々と調理器具の洗浄に入る。

 

 そんな彼に麻菜は肩を竦めて、隣で料理を頬張る哪吒を見ては癒やされる。

 

「哪吒って可愛いよね」

 

 哪吒が思いっきり咳き込んだ。

 

「主!」

 

 怒った顔を見せる哪吒に、麻菜はそういうところ、と言ってけらけら笑う。

 

「ボク、元男!」

「あら、私は両性具有になれるから問題ないわね」

 

 哪吒は頭を抱えた。

 そういう問題ではない、と。

 麻菜はけらけら笑う。

 

「まあ、いいじゃないの。ところで三蔵法師ってどんな人物だった?」

「ダメ僧侶、ドジ僧侶、チキン僧侶、泣き虫僧侶、フォローもやむ無し」

「……一瞬で私の中の三蔵法師の人物像が破壊されたわ。まあ、歴史ってそんなもんよね」

「大聖に逃げられるのも仕方なし」

「そこまでなのね……」

 

 聞かない方が良かったかな、と麻菜は思いつつも、そのまま哪吒に当時の文化や社会情勢などアレコレと質問を浴びせ始める。

 哪吒は嫌がることなく、それらの質問に答えていく。

 

 哪吒自身の過去についてではないのが、彼女にとっては有難かった。

 とはいえ、哪吒は麻菜の知識欲に驚く。

 それこそ、どんな植物が生えていたか、とか食器はどういうものを使っていたか、などとそういうところまで麻菜は聞いてきたのだ。

 

「主、知識欲旺盛。すごい」

「だって気になるもの。記録で知るのと当事者の記憶から知るのではまた別の良さがあるわ。それに紛失してしまっている記録の方が多いし」

「把握。ボク、分かる限り答える。もっと聞いて欲しい」

 

 自分の生きた時代がどういうものであったか、そういうものを聞いてくれると哪吒としても嬉しくなる。

 基本的にサーヴァントを召喚するような魔術師はそんなものには興味を欠片も持ってくれないが為に。

 

「哪吒にはずっと傍にいて欲しい」

「主、貴方。従者、ボク。主が望む限り」

 

 哪吒は笑顔で頷いた。

 

「ところで主、アレ、何? 少し眩しい」

 

 ストーキングをしている中の1人、玉藻を指差す哪吒。

 

「眩しいの?」 

「眩しい。あ、収まった。不思議」

「玉藻とかコヤンスカヤって九尾らしいからね……なんかほら、実は太陽の化身とかそういうのでした、とかでもおかしくはないかも。知らないけど」

「玉藻、コヤンスカヤ、同じ? 妲己? 従える主、すごい」

「哪吒、たぶん私と玉藻とかコヤンスカヤの会話を聞くと、色々と常識が壊れるわよ。私が三蔵法師の真実を知ったときのように」

 

 それで哪吒は何となく察したのか、何やら複雑な顔になった。

 その顔を見て麻菜は玉藻へと告げる。

 

「玉藻、あなたの真実を知って哪吒が悲しんでいるわよ」

「え、これ私が悪いんですか? そりゃまぁ、大昔は色々やりましたけども、もうノーカンです」

「まあ、歴史の真実なんてそんなもんよね。そういや次の特異点は面倒くさくなったら、玉藻を放り込むのでよろしく。九尾パワーで何とかして」

「あ、それダメですよ。お仕事放棄はダメです。あと一尾なので最弱って言ったじゃないですか」

「本音は?」

「小耳に挟んだんですけど次はローマ帝国らしいじゃないですか。私も一緒に行ってご主人様とローマ観光したいなーって。そりゃ私がもしも全盛期の力を取り戻せば一瞬で終わりますけども」

「私の超スゴイ魔法で取り戻させてあげるわ。キアラにも効いたんだから玉藻に効かない筈がない」

「謎の説得力がありますね……まあ、やるだけやってみてください」

 

 うんうん、と麻菜は頷いて哪吒を見る。

 彼女は溜息を吐いてコメカミを押さえていた。

 

「というわけなのよ、哪吒。めちゃくちゃフランクでしょう?」

「把握。歴史の真実、恐ろしい……」

 

 それで玉藻は意味を悟る。

 哪吒に実際に玉藻とはどういう人物か、見せる為のやり取りであったのだ、と。

 玉藻は不満げな顔で告げる。

 

「大昔は私もイケイケのヤンチャガールだったんです。だいたい、ヤンチャしていないのがサーヴァントになれるわけがないじゃないですか。国の一つや二つ、みんな滅ぼしてますって」

 

 哪吒も思い当たる節がありまくるので、否定できなかった。

 

 麻菜としても一理あると玉藻の言葉に頷きつつも、頭は別のことを考えている。

 

「ご飯の後、少し情報を集めましょうか。レフ・ライノールの経歴について調べておきたいの」

 

 抹消か捏造されているだろうが、それでも一応調べておく必要はある。

 幸いにも次の特異点へのレイシフトまでは1週間程の猶予があった。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、1週間後――

 次なる特異点へのレイシフトが可能となったことにより、ブリーフィングが開かれた。

 

 

「次の特異点はローマよ」

 

 オルガマリーの言葉に麻菜は手を挙げる。

 

「五賢帝時代? 五賢帝時代なの!?」

「残念、ネロ帝時代」

「異教徒認定からの弾圧待ったなしなので、私がローマ皇帝の座をもらうわ」

「あなたが特異点を作ってどうするのよ」

 

 オルガマリーのツッコミにうんうんと頷く出席者一同。

 麻菜とオルガマリー以外ではロマニ、ダ・ヴィンチ、マシュが出席しており、出発前のちょっとしたブリーフィングだ。

 

 ネロ帝時代ということで麻菜のやる気は多少落ちたものの、ローマの品物や芸術、その他諸々に触れ、あわよくば手に入れることができるかもしれない、ということで気を取り直す。

 

「とはいえ麻菜。何故か人選に悪意があるような気がするのだけど」

「気の所為よ」

 

 麻菜は素知らぬ顔だが、事前にローマと聞いていたので、それを考慮して連れて行くサーヴァントを選択していた。

 マシュと熱心に志願した玉藻、哪吒は固定で残り3人。

 しかし、今回はちょっとやり方を変え、必要に応じてその都度、カルデアから送ってもらうという形を取ることにしていた。

 

 それはさておき、オルガマリーには事前にパーティの仮編成を提出してあった。

 麻菜の組んだ仮編成は玉藻以外ではクー・フーリン、ナポレオン、スカサハだ。

 ナポレオンはライダークラスで召喚されており、先の特異点修復後、追加の10連召喚でやってきていた。 

 

「ほら、異教徒だー! ぶっ殺せーってなる可能性が高いので。自衛の為に」

「すごいわ、麻菜。一瞬で嘘と分かる嘘をつくなんて。それで本音は?」

「なんかローマ軍と戦う展開になる可能性があるので、ナポレオンのイタリア遠征を再現したいと思った」

 

 オルガマリーは溜息を吐いた。

 

「というか、最初からローマ軍と戦う前提なのは何でなんだい?」

「だってロマニ、ネロって言ったらそりゃもうびっくりする程にヤバイ人物。きっと私達を殺しにくるに違いない。絶対そうするに違いない」

「酷い理屈だ……もしかしたら、ネロって実は麻菜君好みの美少女っていうオチがあるかもしれないよ?」

「そんな展開があると思う? イタリア出身のダ・ヴィンチちゃん、どうよ?」

 

 麻菜から話を振られ、ダ・ヴィンチはうーん、と悩む。

 

「そういう話は聞かなかったかなぁ。ただ、両刀であるのは間違いないと思うよ。麻菜も気に入られれば金銀財宝をたくさんもらえるんじゃない? ただ、ネロってドSだったらしい。異教徒を拷問して殺したりしてたみたいだから」

「さすがにそういうのはちょっと……」

 

 一連のやり取りを見ていたマシュは溜息を吐いた。

 

「あの、もうちょっと真面目に会議してもいいと思うのですが……」

「マシュってば真面目ね。仕事なんて気楽にやったほうがいいのよ。特に重大な仕事であればあるほどにね」

「先輩は気楽過ぎるんです!」

 

 もう、と怒ってみせるマシュ。

 しかし、それは何だか微笑ましい。

 

「ともあれ、さっさと出発してさっさと解決してきなさい」

「分かったわ。ところで今の今まで黙っていたけど、これって危険手当ってつくの?」

 

 オルガマリーはコメカミを押さえた。

 

「……つくわよ」

「私の実力と仕事内容、拘束時間などから考えて相応のものよね? 勿論、月給も私の実力を知ってしまったのだから、そのままって言うわけじゃないわよね?」

「……あんまりいじめないでよ」

 

 むすっとした顔になるオルガマリーに麻菜は胸がときめいた。

 

「もうマリーって可愛いんだから。お金じゃなくて現物支払いとかでもいいから。何か頂戴ね」

「分かったわよ。考えておくから早く行きなさいって」

 

 麻菜とマシュを会議室から出して、オルガマリーは深く溜息を吐いた。

 

「所長、チャンスだよ。私をあげるって言うんだ! それで落ちる!」

「麻菜君の本命は所長だったのか……? いや、僕は玉藻さんかコヤンスカヤさんが本命だって信じる、当たってくれ……!」

「あなた達! さっさと仕事に戻りなさい! それと何で麻菜の本命当てが賭けになっているの!? 胴元は誰!?」

 

 顔を真っ赤にして、オルガマリーは叫んだ。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで麻菜達一行は西暦60年のローマへとレイシフトすることとなった。

 

 


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