全ては世界を救う為に!   作:やがみ0821

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協力体制構築

 

「というわけでローマに来たわけだけど、あんまり変わらないわね」

「先輩先輩、まだローマではないですよ。時代に来ただけで、目の前は野原です」

「自然はいつの時代も変わらない……ただし未来を除く。それはさておき、今回は一瞬で解決することができるわよ」

 

 麻菜はそう宣言し、玉藻へと熱い視線を送る。

 

 キアラにも効いたんだから、玉藻に効かない筈がないという理論でもって、数日前に麻菜は指輪をはめてウィッシュ・アポン・ア・スターで願った。

 

 ここにいる玉藻を今の人格のまま、一切の不都合や不具合、代償なく九尾としての力を取り戻し、自由自在に発揮できるようにして――

 

 それは問題なく叶ってしまい、結果として玉藻は九尾としての力を呆気なく取り戻してしまっている。

 

 玉藻としてはまさに棚からぼた餅、ご主人様マジハンパネェと思った次第である。

 

 麻菜から視線を送られた玉藻は胸を張る――しかし、それはあえなくカルデアからのもっともな指摘により潰えてしまう。

 

『一瞬で解決っていうのは悪くはないけど良くもないわね。敵は複数犯なのだから、黒幕に彼女のことがバレると面倒よ』

「それもそうね……」

「え、私の出番これだけですか? 強すぎるが故に、別の方と交代とかされちゃうパターンですか?」

 

 そんなぁ、と玉藻は情けない顔になるが、オルガマリーは告げる。

 

『いいえ、抑えてくれれば問題ないわ。というか、麻菜の暴走を抑えられそうなのが現地にあなたとマシュくらいしかいないから頑張って』

「それってどういう意味よ?」

『そういう意味よ。それじゃ任務の成功を祈るわ』

 

 通信が切れた。

 麻菜はむーっと不満であったが、ともあれ指示を出す。

 

「とりあえず哪吒。空から眺めて見て。玉藻、周囲を索敵」

 

 哪吒は天高く飛び上がり、玉藻は何やら呪文を唱えて周辺の索敵に移る。

 すると哪吒はすぐに戻り、ほぼ同時に玉藻も何かを捉えたのか、麻菜へと報告する。

 

「主、前方20里程で合戦中」

「どちらも正規軍っぽいですね、これ。ただ、どちらにもサーヴァントの反応がありますよ」

 

 なるほど、と頷きながら、麻菜は玉藻へと尋ねる。

 

「不自然なところはあるかしら?」

「どちらも生身の人間とサーヴァントで構成されていますが、片方の指揮官はサーヴァントですね。勘ですけど、こっちが敵でしょう」

「先輩、どうしますか?」

 

 マシュの問いかけに麻菜は悩む。

 いきなりナポレオンを投入するかどうかを。

 それともあるいは、クー・フーリンやスカサハに頼んで無双を見せてもらうか。

 

 もしくは仮編成以外の他のサーヴァントを呼んでみるか……

 

 麻菜は悩みに悩んで、結論を下す。

 

「クー・フーリンとスカサハを呼びましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのネロがこんなに可愛いわけがない。ネロがこんなに可愛いなんて間違っている……!」

「出会い頭にそれは酷い! 泣くぞ!」

 

 ちょっと涙目になるネロと驚きのあまりそんなことを宣った麻菜。

 事実、これにはマシュも驚きだった。

 そのときマシュの脳裏に閃きが走った。

 

「びっくりしマシュ……」

「ん? マシュ、今なんて言った?」

 

 麻菜の耳は聞き逃さなかった。

 勿論ネロも。

 

「今、びっくりしマシュとか言いおったぞ!」

「なんですって! しまいには、ブチギレましゅとか言い出すわよ!」

「気楽にやれって言ったのは先輩ですよ! いいじゃないですか、私がダジャレを言ったって!」

 

 ブチギレましゅ、とマシュは言いかけて思いとどまった。

 麻菜の思う壺だからだ。

 

「ともあれ感謝するぞ。余のローマ軍が負けるとは思わなかったが、それでも少し、そう、少しだけ手強いと感じていたのでな!」

 

 ネロは花の咲いたような笑みを浮かべて、そう告げた。

 

 麻菜達が、というよりクー・フーリンとスカサハのコンビがやったことは簡単だ。

 横合いから思いっきりにネロのローマ軍と戦っていた連合帝国のローマ軍を殴りつけた。

 

 とはいえ、生身の人間はなるべく無力化する形を取り――クー・フーリンとスカサハによる現場判断で――サーヴァントだけを叩いた形だ。

 

 この2人を相手に戦えるサーヴァントはおらず、参戦してから20分程で相手側が敗走という形となった。

 捕虜の数も膨大であったが、そこはネロが戦後処理ということで引き取ることになった。

 

「ところでそなたらは余の客将達と同じような輩であるな。是非とも力を貸して頂きたい。無論、報酬は出す」

「いえ、私達は……」

 

 言いかけたマシュの口を手で抑え、麻菜はにっこりと満面の笑みを浮かべた。

 

「皇帝陛下とお呼びしたほうがいいかしら? 私は玲条麻菜というのだけども」

「いや、構わぬ。ただし余も麻菜と呼ばせてもらうぞ」

「じゃあネロ。協力するし、何なら私が金塊で支払うから、ローマの数々の財宝や工芸品、食器やその他諸々売って欲しいわ」

「構わんぞ」

 

 ネロの返事に麻菜は満面の笑みを浮かべた。

 

「だからネロって好き」

「好き? 余を好き! 余もそなたが好きだ! そなたは女神のように美しい! 是非とも余のハレムに加わって欲しい!」

「用事が終わるまでの期間限定なら……」

 

 麻菜の返事にネロは無邪気に喜ぶ。

 しかし、そうは問屋が卸さなかった。

 

「ご主人様? お仕事放棄はダメですよ?」

 

 玉藻がにっこりと笑顔を浮かべて、そう告げた。

 その笑顔を見てしまったネロは震え上がって麻菜に抱きついた。

 

「ま、麻菜、あの者が恐ろしい笑みを浮かべているぞ……そなたのハレムの者か?」

「大丈夫よ、ネロ。玉藻、これはローマ文化を知り、また当時の宮廷文化を知る為に必要不可欠なことなの。さすがのあなたも帝政ローマにおける宮廷文化とかそういうのは知らないでしょう?」

「私の権能を使えば一発です!」

「ダメ、当事者の話を聞かないと……それに……そう、これは私達がネロの客将になる為の必要な事柄なのよ!」

 

 そうよね、と麻菜はネロに問いかける。

 すると、ネロもまたうんうんと何度も頷いた。

 

 玉藻は深く、それはもう深く溜息を吐いた。

 

「主、欲塗れ……」

 

 哪吒のジト目に麻菜の心が痛む。

 だがこれは決して引けないことだった。

 

「お二人からも何とか言ってあげてください」

 

 マシュは堪らずにクー・フーリンとスカサハへと話を振った。

 しかし、これは悪手だった。

 

「いや、別にいいんじゃねぇか? 麻菜くらいの戦士なら、女の百や二百、抱えていてもおかしくはないし」

「うむ。私もそう思うぞ。というか、強い雄……麻菜は多少特殊だが、ともあれ雌を囲うのは自然の摂理だろう」

 

 マシュは絶望した。

 あまりにも彼女が不憫に思えたネロは助け舟を出すことにする。

 

「と、ともあれ、麻菜よ。余としては仲間達の気持ちを汲むのは大事だと思うぞ」

「じゃあハレムに入るのはやめるわ」

 

 マシュと玉藻はほっと一安心。

 そんな2人を見ながら、麻菜はネロに耳打ちする。

 

「ハレムはダメだけど、2人きりでこっそりと……」

「うむ、そうしよう」

 

 ネロとしても異論はなかった。

 

「さて、これよりローマへと帰還する。そなたらもついてくるが良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなでネロとともにローマ市内へと入った麻菜達であったが、その活気に驚いた。

 とても暴君による統治とは思えなかったのだ。

 

「歴史の真実って残酷ね……」

「ん? どうかしたか?」

 

 ネロの横を併走することを許された――というより彼女がそれをお願いしてきた――麻菜の呟きはネロの耳に入った。

 

「事前情報でネロは暴君って聞いていたのよ。とてもそうは思えないんだけど」

「余が暴君? うーむ、確かに別の宗教の者からすれば余のやったことなどは暴君かもしれぬ」

「あー……そういうことね。ローマは多神教だったかしら?」

「うむ、一神教とは折り合いが悪くてな。ローマの者であるならば別に余としては宗教は構わぬのだが、難しいものだ」

 

 そのような会話をしながら、一行はネロの王宮へと入っていった。

 まだドムス・アウレアが建築されていないことに麻菜はちょっとだけ残念だった。

 

 

 

 王宮でネロは早速麻菜達を歓待した。

 そこで彼女は麻菜の食欲に驚くが、それもまた良いとしてどんどん麻菜に食べさせた。

 しかし、そこで保護者役が板についてしまった玉藻とマシュにより軌道修正が図られ、情報共有及び交換の時間とようやくになった。

 

 そして、明らかになったのは連合ローマと名乗る連中だ。

 

「十中八九そいつらね。とはいえ、ネロとしては色々と複雑なんじゃないの?」

「うむ。亡くなった筈の伯父上が出てきたりとな……」

 

 ネロは溜息を吐いた。

 そんな彼女に麻菜は告げる。

 

「色々と説明すると長くなるので、要約するといわゆる幽霊みたいなものなので、ささっと退治するわ」

「先輩、合っていますけどあんまりな例えですよ」

「合っているなら問題はないわね。ここはネロが治めるローマよ。それ以外の輩が皇帝を僭称するなんて、例え先代皇帝の幽霊であろうが反逆罪で死刑よ、死刑」

 

 麻菜の言葉にネロもまた頷きながら問いかける。

 

「麻菜、幽霊とは死刑にできるものなのか? 死んでいるのに更に死ねるのか?」

 

 余は知りたいぞ、と告げるネロ。

 

「うーん、そうと意識してやったことはないわね……捕縛して首を落とせば一応死んだことになるのかしら。そこらへんどうかしら?」

 

 スカサハへと問いかける麻菜。

 その問いにスカサハも悩ましい顔となる。

 

「言われてみれば幽霊を殺したことはなかったな……殺せるのか?」

 

 隣のクー・フーリンに尋ねると、彼も困り顔だ。

 

「幽霊を殺したことはねぇな……」

「っていうか、何で幽霊を殺せるかって話になっているんですか。話題を元に戻しますよ」

 

 ダメだ、ボケ要員が多すぎてツッコミが追いつかない、と玉藻は匙を投げそうになった。

 しかし、そこで麻菜の顔が目に入る。

 悩ましげな顔のご主人様も素敵、と玉藻が思ったところでネロが告げる。

 

「ともあれ麻菜の言う通り、連合ローマ帝国を余は攻め、これを滅ぼす。余のローマこそ、正統であるからだ」

「私達も協力させて頂くわ」

「うむ。麻菜達には期待しておるぞ。出立までは少し時間がかかる。どうもヒスパニアに敵の都があるようだ」

「平野に引きずり出して決戦を強要したいけど、もしもカエサルとかがいたら釣れてくれるか、怪しいところね」

 

 カエサルという名前にネロは渋い顔になる。

 

「さすがの余も戦略・戦術でカエサル殿を上回れるかといえば自信はない」

「それなら答えは一つね。戦略も戦術も意味が無くなってしまう程の暴力で潰せばいい。幸いにもそういうことができる輩は何人もいるのよ」

 

 それは頼もしい、とネロは頷いた。

 

「出立まで、ゆっくり英気を養って欲しい」

 

 ネロの言葉に麻菜は尋ねる。

 

「ネロ、この後は暇? ちょっとお願いがあるんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 麻菜のお願いとはネロ自ら王宮やローマ市内を案内してもらうことだった。

 ネロとしても、自分を上回る程の美貌の持ち主である麻菜にお願いされては断れる筈もない。

 

 何よりも麻菜は何でも知りたがった。

 それにネロが答えれば麻菜は無邪気に凄い凄い、とはしゃぐのだ。

 ローマを褒められて、そして麻菜のその顔を見て、ネロの機嫌が良くならない筈がない。

 

 ネロはかつてない程の上機嫌であちこちを案内して回る。

 時折頭痛に襲われたが、それを見た麻菜の魔法による治療を施してもらった結果、綺麗さっぱり無くなった。

 頭痛から開放されたネロはますます麻菜のことを気に入るのは言うまでもない。

 

 露店や商店で大量の品物を購入しては見えない倉庫に次々と放り込み、ローマ市内の名所を回った後、王宮に戻ってきたネロは麻菜を誘う。

 

 浴場に行こう、と。

 

 

「美しい……まさに美の極致。そなたは誰よりも美しい」

 

 ネロは恍惚とした顔で麻菜を真正面から見て、そう告げた。

 麻菜もまたネロによく見えるよう、ポーズを取ってみせる。

 

 勿論、互いに全裸だ。

 侍女をつけず、たった2人で王宮内の浴場に2人はいた。

 

「ネロも美しいわ。あなたには赤がよく似合うもの」

「ふふ、そうであろう。麻菜、余の后にならぬか?」

 

 突然の求婚にさすがの麻菜も驚いた。

 

「そなたは美しく聡明だ。更には、そなた自身も強い戦士であるらしいな。余が求婚せぬ理由がない」

 

 どうだ、と問いかけてくるネロ。

 目をきらきらと輝かせて。

 

 そう言われると麻菜としても満更ではないが、流石にこればかりはどうしようもない理由があった。

 

「ネロ、とても嬉しいわ。私としてもあなたは美しく聡明だと思う。けれど、私とあなたでは生きている時代が違うの」

「時代、というのはどういうことか?」

 

 問いに麻菜はネロへと抱きついた。

 湯で火照った彼女の体温は高めであったが構わない。

 ネロもまた麻菜を受け入れ、その背中へと両腕を回す。

 

「私は未来から来ているの。あなたはローマを捨てて私と来ることはできないでしょう?」

「そうか……」

 

 ネロは沈鬱な声でもって答え、そして麻菜の首筋に顔を埋める。

 

「美しいからこそ、手に入らぬ。そなたは星々と同じであるのだな」

「私としても同じよ、ネロ。でも、贈り物はできるわ」

 

 ネロはその意味を察する。

 だが、さすがに浴場ではマズイ。

 

「場所を変えよう。そなたを、じっくりと味わいたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブチギレましゅぅううう」

 

 客室として用意された王宮内の一室にてマシュは怒っていた。

 

「おう、嬢ちゃん。荒れてるなぁ」

「うむ。とはいえ、そのダジャレはどうかと思うぞ」

 

 クー・フーリンとスカサハの言葉にマシュは毅然と告げる。

 

「私のダジャレのセンスはいいんです! 大声で言ったらいけるような気がしたんです!」

 

 ないない、とスカサハは手を左右に振る。

 

「玉藻さん、あなたも何か言ってください。先輩ったらネロさんとイチャイチャと……2人でお風呂だなんて」

 

 

 お風呂だけで終わる筈もないことはマシュ以外の誰もが分かっていたが、そこは本題ではない。

 

「と言いましてもねぇ……私としても、こればかりはちょっと邪魔をするのは気が引けます」

「哪吒さんは!?」

「ボク、同意見」

 

 むぅ、とマシュは不満げな顔を見せる。

 

「外交だよ、外交」

 

 クー・フーリンの言葉にマシュは彼へと視線を向ける。

 彼は更に言葉を続ける。

 

「麻菜は現地勢力とうまくやる為に体を張っているのさ。皇帝だけ落としておけば、あとはどうとでもなるだろう」

「え、そうなんですか? 私はてっきり欲望の為に突っ走っているものと思いましたが……」

 

 マシュのもっともな言葉にクー・フーリンも苦笑するしかない。

 それは麻菜自身の身から出た錆だからだ。

 

「確かにご主人様の欲望もありますが、それでもクー・フーリンさんの仰られたことは事実です。本当に心苦しいところではありますが、ご主人様ならネロさんを落とせるでしょう。性格的にも何か似てますし」

 

 むむむ、とマシュは唸る。

 どうやら本当のことらしい、と。

 

「まあ、いくところまでいくじゃろう。どちらも不完全燃焼で終わる性格ではない」

 

 スカサハの言葉にマシュはいったいどういう展開になるのか、さっぱり予想がつかなかった。

 スカサハ当人としては、それでも察せられないマシュの純粋さを尊く感じてしまう。

 

「お主はそのままで構わぬよ」

「おうよ。嬢ちゃんが麻菜が大好きで嫉妬しているっていうのは、よく分かったからよ」

「何でそうなるんですか! 確かに先輩のことはその……」

 

 ごにょごにょ、と小さな声で何やら呟くマシュ。

 何を言ったかは彼女の真っ赤に染まった顔を見れば一目瞭然だ。

 

『あーあー、聞こえているかい? 具合は? 定時連絡には少し早いけど、暇だったから連絡しちゃった』

 

 ダ・ヴィンチからの通信が入った。

 ロマニ、オルガマリーと三交代でやるとのことなので、今回はダ・ヴィンチが当番なのだろう。

 

「ああ、ネロと麻菜がよろしくやっている。極めて順調だ」

 

 マシュが役に立たないので、スカサハが代わりに答えた。

 

『あー、なるほどね。前回の定時連絡でネロが180度くらい歴史書とは違う美少女って聞いていたけど、やっぱり……所長、これは強敵が現れたね?』

『ダ・ヴィンチ! 余計な事は言わない!』

 

 どうやらオルガマリーも横にいるらしかった。

 

「だが、お主も分かる通り、外交を兼ねているぞ。これでカルデア側が万が一にも、ネロに切り捨てられる可能性は無くなったと言っていいだろう」

『おー、それは良いニュースだ。カルデアで召喚したら来てくれそうだね。皇帝ネロなら英霊の座にもいるだろうし』

「ああ。着実に縁を繋ぎ、戦力強化も行っている」

『欲望一直線だけど、結果としてそれが良い方向へいくのはもはや呪いか何かみたいだよね』

「本人も周りも幸せになれるなら、それは呪いではなく祝福じゃろう。事実、そうであるしな」

『ん? 影の国の女王様は何を視たんだい?』

「アレの魂の記憶をちょろっとな。前世は人外であり、そして同時に人間でもあった。特に人外の奴が繋いだ縁は凄まじいぞ……世界相手に1人で戦えるというのも納得がいく」

『え? その繋いだ縁とかいうのは初耳なんだけど……ちなみに縁の相手は?』

 

 ダ・ヴィンチの問いかけ、スカサハの答えに全員が耳を傾ける。

 

「人類では発音できない神をはじめとし、大勢の神々や魔王、邪神、果ては神獣魔獣の類、それら以外にも人間の英雄やらエルフ、ダークエルフ、異形の者達まで。いや、私も驚いた。異世界のものであるから、こちらの神々などとは全く関係ないだろうがな」

『……そんな、とんでもない人物だったのかい』

「らしいな。視てしまったときは私もちょっとマズかった。向こうの神々やらが私に気づいて、挨拶までしてきたからな。記憶の中であるのに」

 

 とんでもない事実が明らかになったが、唯一玉藻は驚いてはいなかった。

 彼女もまたこっそりとスカサハと同じように、視ていたからだ。

 

 だからこそ、玉藻は告げる。

 

「ご主人様必殺の切り札なんですよね。あの願いを叶える魔法で、縁のある者全てを召喚すればご主人様に勝てる存在はいませんよ」

 

 九尾の力を取り戻している玉藻の言葉は何よりも重かった。

 そんな彼女は更に告げる。

 

「というか、こうやって無制限にサーヴァントを召喚できているのって、これ、ご主人様対策なんじゃないですか? アラヤとガイアの」

 

 ありえそうだった。

 麻菜が暴走しないように、そして万が一暴走したときは被害を最小限に食い止める為に。

 

 そんな思惑が見えそうだ。

 

『定時連絡のつもりが、とんでもない事実を聞かされてしまったよ……ともあれそっちが大丈夫ならそれでいいんだ……あ、所長。私はもう休んでいいかな? 疲れたんだ』

 

 ダ・ヴィンチは精神的な疲労の濃い顔でそう言った。

 勿論、オルガマリーの顔も精神的な疲労の色が濃くなっていたのは言うまでもなかった。

 

 


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