やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。

 

 テリー兄ちゃんとロックが帰国し、アンディ兄ちゃんと舞姉ちゃんもアメリカへと渡り、寂しい夏休みとなった。

 今迄一緒に居た人が居ない、その寂しさは思っていた以上に来るものがある。

 

 でも小町も塞ぎ込んで居るし、兄貴の俺まで落ち込んでいちゃあ駄目だと、自分を鼓舞し修行に打込みつつも、出来るだけ小町と居る時間を捻出する事に心掛ける、それは両親も同様だ。

 

 「父ちゃん、母ちゃんあのさ、小町がもう少し大きくなる迄の間、少しだけ仕事の時間短く出来ない?」

 

 両親に俺はそう提案してみた所、両親も思う処があった様で、最大限努力してみると言ってくれた。

 

 「八幡、お前は本当に良い兄貴になったな、父ちゃん嬉しいぞサンキューな八幡。」

 

 そう言って親父は俺の頭をグリグリと撫でた、涙目の笑顔で。

 両親はおそらく、相当な努力をしてくれていたんだと思う、帰宅時間が幾分か早くなったからな。

 

 

 八月第一週、格闘大会に参加していたアンディ兄ちゃんと舞姉ちゃんがジョーあんちゃんを伴い帰国。

 だがそこに、テリー兄ちゃんとロックの姿は無かった。

 

 「実は兄さんは、向こうで幾つかの大会への参加のオファーが有ってね、それにボランティア活動への参加要請と公演の依頼が舞い込んでしまって、日本に来れなくなったんだ。」

 

 公演とボランティアは恵まれ無い子供達への支援の為の活動と云う事で、子供好きで、自身もまたそんな境遇にあった過去を持つテリー兄ちゃんに、それを断わる事は出来ないであろう。

 残念だけど仕方ない、テリー兄ちゃんはそんな人だ。

 その人柄できっと多くの人に手を差し伸べるんだろう、俺に手を差し伸べてくれた様にな、これからも。

 

 「八幡と小町に兄さんとロックからプレゼントを預かってきたよ。」

 

 『HAPPYBIRTHDAYHACHIMAN』

 

 メッセージカードを添えられたプレゼントは間近に迫った俺への誕生日プレゼントだった。

 プレゼントの中身はテリー兄ちゃんのは、テリー兄ちゃんの履いているスニーカーと同じ物を、ロックからは練習用にとオープンフィンガーグローブだった。

 

 『ありがとう大事に使うよ、そして強くなるよ俺。』

 

 心の中で二人に感謝を、そして改めて誓いを立てる、次に会うときはもっと強くなっている俺を見せるんだと、比企谷八幡やがて十歳になる夏の日に。

 

 追記、小町へのプレゼントはめいぐるみでした、くまちゃんのねニョホホホ。

 

 三人は数日家へ滞在し、それぞれ帰路に付いた。

 その間修行に付き合ってもらったのは言うまでも無いであろう。

 

 

 夏休み明け2学期、ロックが居なくなった事により学習しない馬鹿共が俺にチョッカイをかけてきたが、一年間ロックと共にテリー兄ちゃんに鍛えてもらって来た俺だ、今更同級生に遅れを取る事は無い。

 相手は多勢で有ったが、適当にあしらい疲れさせた上で無力化した。

 徹底的に攻撃を捌いて、かなり手加減した打撃を当てただけなんだが、恐怖心は植え付けられただろう、コイツ等は俺に絡まなくなったからな。

 

 

 

 5年生へと進級しクラス替えが行われた、三、四年の時の奴等とは殆ど一緒のクラスにはならなかった。

 この辺りは、学校側の配慮が有ったのだろう。

 まぁでも、ちょっとしたイザコザが後に有るんだが、それを語るのは何れ機会が有ればな。

 

 ゴールデンウイークにはテリー兄ちゃんとロックが来日、併せてジョーあんちゃんも帰日し、久々に皆が揃った。

 大人達のお約束の宴会と二日酔い、皆の笑顔。

 

 翌日、二日酔いから醒めたテリー兄ちゃん達三人に鍛錬の様子をみてもらう。

 

 「…なぁテリー、八幡の基本フォームだいぶ固まって来たんじゃないか!?」

 

 「そうだな、普段から一人の時も確りと鍛錬して居たって事が良く解るな。」

 

 「あぁ、コレならもう直ぐだね。」

 

 何だか三人が俺の事について相談をしていて、褒めてくれているのは解るんだが、何だろうかと思い尋ねると。

 

 「以前から僕達で話していた事なんだが、八幡の基礎が固まったら、いずれは僕とジョーの技も教えようかとね。」

 

 「実はそうなんだぜ八幡、なんつうかお前は俺等にとってもよ、もう弟みたいなもんだからよ。」

 

  

 「俺達もお前に何かを伝えたいって思っていたんだよ。」

 

 「だけど一遍にアレもこれもと詰め込んでも、何もかもが中途半端に為りかねないからね、教えるにしてもベースとなる物が確りと確立してからにしようと話していたんだよ。」

 

 お前は俺達の技を覚えたくはないか、二人の言葉と思いに、俺に否やがある筈は無い。

 俺は教わりたい、アンディ兄ちゃんとジョーあんちゃんの技を、だから当然俺は願った教えを乞う事を。

 

 「それはそうとさ、具体的にはいつから教えてくれるの!?」

 

 俺は至極当然の問を皆に投げ掛ける、それに対して返ってきた答えは、攻撃に「気」を放つ事が出来る様になる事との御言葉だった。

 

 「バーンナックルを打つことが出来る様になったらな。」

 

 「パワーウェイブを放つ事が出来るようになったらかな。」

 

 ジョーあんちゃんとアンディ兄ちゃん

、二人共別の技を挙げていますがどっちなの、せめて意見を統一してからもう一度出直してくださいゴメンナサイ。 

 とは言えこの時の俺は、まだ「気」の放出なんか出来るだけの実力は身についていないかったから。

 

 「え〜っ、なんか先はまだまだ遠いなぁ。」

 

 思わずトホホ〜、とぼやきたくなった

 まだ遠い、だけども目標となる事がもう一つ増えたと、前向きに考えよう。

 前向きにか、何だかな、皆と出会えたからそんな風に思える様になったんだろうな、もし出会えなければ俺はどう云う人間になっていたんだろうな。

 今はもう考え付かないな、それだけ充実してんだろうなこの日々がな。 

 

 

 

 5年生の夏休み、高学年になった事にと云う事で、アンディ兄ちゃんと舞姉ちゃんが居る不知火道場へ招待された。

 小町と共に電車を乗り継ぎ二人の待つ不知火道場へ。

 初めての子供だけの電車旅、その旅はチョッした冒険心を満たしてくれた。

 脳内BGMは、スタンド・バイ・ミーだぜ。

 

 不知火道場では、門下生の人達と一緒に鍛錬に励み、アンディ兄ちゃんの演武を見せてもらったり(門下生のお姉さん達がうっとりと見惚れていた、何か門下生の女性率が高杉君)とても充実した日々を送れた。

 そして小町が、舞姉ちゃんに武術の手解きを受けていた。

 小町自身、思う処が有ったのだろう、もしかしたら俺のせいで小町に要らん火の粉が降りかかるかもしれないしな、護身の術は持っていて損は無いしな。

 

 でも俺としては、小町に舞姉ちゃん張りのコスチュームは真似て欲しくないな。

 そうなったら俺は、全ての男性観戦者の眼を潰して廻らなければならなくなるからな。

 そういや舞姉ちゃんの側にいつの間にか小さなお爺さんが居たんだが、その眼付は何だか…エロ爺ィそのものだ。

 

 その爺さん、舞姉ちゃんだけに飽き足らず、アンディ兄ちゃんの廻りに居る女性門下生の人達にまでチョッカイをかけ始める始末、正にエロ爺さん。

 

 「…十平衛先生、いい加減にしてくださいよ。」

  

 見兼ねたアンディ兄ちゃんが、そのエロ爺さんに苦言を呈すが、当の爺さんはと云うと、全く持って悪怯れた様子も無く。

 

 「…いやぁスマンのアンディ、じゃがな若い女性とのふれ合いこそが儂の若さと健康の秘訣なんじゃよ、ムフフゥ。」

 

 デレッとした顔で形だけは侘びているのだが、反省の色は無いなこのエロ爺さん。

 このエロ爺さん、現役時代は「柔道の鬼」と呼ばれた程の物凄い格闘家だったそうだ、名は「山田十平衛」御年七十を越える御高齢で有りながら、全く衰えを感じさせない爺さんだ。

 

 テリー兄ちゃんの師匠のタン・フー・ルー先生や舞姉ちゃんのお爺さん、故不知火半蔵さんとも旧知の間柄で、今でもこうして不知火道場を訪れては、セクハラ行為をするとか。

 諦め混じりの様子で尚もアンディ兄ちゃんが諌めるものの。

 

 「昔から言うじゃろう、分かっちゃいるけどやめられねえとな。」

 

 ……植○等かアンタは……。

 

 まぁでも、柔道にかけてはその腕前に陰りも無く俺も少しだけ投げ技を教えてもらった。

 それに小町はその守備範囲には入って居ないらしくセクハラの心配も無い、まるで好々爺然とした態度で可愛がってくれたので良しとする。

 

 問題は爺さんでは無い、小町と同い年位の男子門下生だ、「北斗丸」と云ったか……。

 何だかな小町に馴れ馴れしく接していやがる、こいつは当然の八幡君のブラックリスト入だ。

 

 目標をセンターに入れて補足、目標をセンターに入れて補足、目標をセンターに入れて補足、目標をセンターに入れて補足…………。

 

 そんなこんなで、新たな出会いも有った不知火道場での出稽古から我が愛するマイホームタウン、千葉へと帰郷。

 

 『千葉か、何もかも皆懐かしい。』

 

 等と感慨に浸る程じゃ無いが、やはり故郷とは良い物だ。

 ふるさとは遠きに有りて思ふもの…では無い、出不精な俺は千葉から出たくないまである。

 

 『千葉の重力に魂を惹かれた人々の、その私兵なのだよハチマンは。』

 

 あら何それ凄くなりたい、八幡は八幡は物凄く思ってみたり。

 

 

 一人での鍛錬の日々、時々兄ちゃん達との鍛錬、皆が集まったら宴会。

 やがて季節は幾つか巡り、俺は小学校を卒業し四月からは晴れても曇っても雨でも雪でも、中学生だ。

 

 「パワーウェイブ!」

 

 「バーンナックル!」

 

 遂に俺は、パワーウェイブとバーンナックルを会得したのだ。

 まぁその威力はテリー兄ちゃんのそれとはまだまだ比較にも成らないだろうがな。

 

 「よっしゃあ、合格だ八幡!」

 

 「あぁ、これなら十分だ。」

 

 アンディ兄ちゃんとジョーあんちゃんのお墨付きを頂き、漸く俺は二人の技を教えて貰えるようになった。

 とは言え二人の全部の技を教えて貰う訳では無い、テリー兄ちゃんに教わったマーシャルアーツに組込んでバランスを崩さない物を厳選して教えてくれるのだそうだ。

 

 

 そして中学校入学、幾つかの学区の小学校からの生徒が統合されるので、1学年の生徒数は増える訳で、まぁ中にはニ、三年生に知り合いが居るし其処で粋がる奴やお調子に乗るやつも出てくる。

 なので俺と同小出身で、なお且つ俺の事が気に食わない奴が、他小出身の奴や先輩等に俺の事を色々吹き込む訳だ、そんなもんでその連中と一緒に絡んで来るんだが、後々が面倒なので早々に大人しくして頂くために鋭意努力を致した八幡君で有りました。

 今時ツッパリくんやヤンキーくん何て流行んねえだろ。

 

 まぁその結果大人しくはなったんだがなぁ、中には矢鱈と俺に謙る奴も出て来て、○○中との喧嘩に加勢してくれだのと言って来る始末……。

 

 知るかっ! てめぇのケツ位てめぇで拭けっての。

 

 第一俺は静かに暮らしたいんだよ、杜王町の殺人鬼の様にな。

 

 最初はしつこかった、そんな連中もやがて諦めたのか絡まなくなってくれて、漸く俺も平穏なジュニアハイスクールライフを送れる様になったんだが、相変わらずボッチ街道一直線だ。

 

 ただ、一人だけ偶に絡んで来る女子が居たんだが、誰に対しても距離感が近い奴で悪意は無いんだろうが…。

 

 訓練された、生粋の選ばれしボッチの俺じゃ無かったら勘違いして惚れて告白している所だ、告白して挙げ句振られてそれが学校中に知れ渡るまであるな。

 

 俺が三年になったらな小町も入学して来る、小町の立場を悪くする訳にはいかんのだよ俺は。

 

 幸いか三年に成り小町も入学して来たが、小町に対しては何も無くホッと胸を撫でおろす事が出来た。

 まぁ小町も舞姉ちゃんに多少なりとも護身の術を習っているし、そこ迄の心配は不要か。

 俺とは違いコミュニケーション能力は高いからな。

 コミュニケーションA(超スゴイ)は伊達じゃ無い。

 

 

 テリー兄ちゃんのマーシャルアーツに加えアンディ兄ちゃんの技とジョーあんちゃんの技の修練、そして受験勉強。

 俺はなるだけ静かな学生生活を送りたいと常々思っている、なので出来るだけ偏差値の高い進学校を受験する事にした。

その方が高校生活も静かに過ごせるだろうとの思いからだ。

 選んだのは市立総武高校、県下でも有数の進学校だ。

 結果は合格、春からは俺も高校生だ。

 

 そして今日。

 

 俺は中学校の卒業式を終え、我が家へ帰って来たのだが、長々と俺のこの現実逃避の回想に付き合って頂いた読者諸氏には大変心より御礼申し上げ候。

 

 現在俺の眼の前には、ポキポキと首と指を鳴らしながら。

 

 「よう、帰ってきたな八幡。」

 

 「卒業おめでとう八幡。」

 

 「俺達から卒業の祝がある、勿論受け取ってくれるだろうな八幡。」

 

 「卒業祝いは俺達四人との組手だ、覚悟を決めて掛かって来い八幡。」

 

 「見届け人は私よ、安心してやりなさい八っちゃん。」

 

 兄貴分が、兄弟分が、姉貴分がどえらい事を宣います。

 

 「せめてもの手加減だ、超必殺技は封印してやるからよ。」

 

 何の慰めにもならない事を、昭和の男が付け加えます。

 

 「正々堂々試合開始だ。」

 

 何処かで聞いた様なフレーズが飛び出ます。

 何処のアイアンなリーガーですか。

 

 高校生活が始まるまでの、平穏な日常はたった今諦めなければならないようです。

 

 暫くは筋肉痛とダメージにのたうち回る事が確定です。

 

 

 

 どうしてこうなるの。

 

 

 

 

 

 やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか………。

 

 

 

 

 

 

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