やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
まあタクマさんも関わらせていますのでしょうが無いですよね、と言い訳をしておきます。
材木座の我道拳をまともに頬に食らってしまったJrはリング上を数メートルと大きくふっ飛ばされて呻き声を上げながら、遂に大きく鈍い音を響かせてマットに叩きつけられてダウンを喫してしまった。
『……………………………。』
優勢に攻めていた筈のJrがダウンを喫すると言う意外な展開に見守る観客も言葉を失ってしまった様に呆然とする人が多数を占めるだろう。
まぁ、こんな事になるなんて想像していた者なんてほぼ居なかっただろうからな、しゃあなしだな。
武者修行中の旅の武芸者であると自己紹介をした坂崎のご隠居を、轟鉄さんの一派は快くとは言わないがごく普通に受け入れてくれ、暫しの間坂崎のご隠居は門弟の剛拳さん達と共に鍛錬を行ったのだそうだ。
なんでも、ご隠居を他流派からの出稽古に訪れた客人的に扱ってくれたって話だった。
「聞くと剛拳殿はワシよりも四歳歳上で、あの男……豪鬼はワシよりも一つ歳下だと言う事でな、剛拳殿はおおらかで気さくな方でワシとも直ぐに打ち解けてくれたが、弟の豪鬼の方とはどうにもウマが合わんと言うかの終ぞ打ち解ける事は叶わなんだわ。」
轟鉄さん一派のもとで数日間共に鍛錬に励み下山し地元に戻り更に鍛錬し、そしてまた一月乃至二月程時間を置いて再び彼らの元を訪ね共に鍛錬を、そうした中で坂崎のご隠居は着実に極限流空手の根幹を創り上げて行く事が出来たのだそうだ。
「交流が深まるに連れワシらは互いに胸襟を割って話が出来るようになっていったわ、そして剛拳殿は語っておられた己が学ぶ流派は暗殺拳……だがしかし今の世に殺し為の技は持て余してしまうであろうと、故に剛拳殿はその暗殺拳を武術として後世に伝えてゆく事を志しておるとな、しかしそんな剛拳殿を豪鬼は甘過ぎるなどと一笑に付していたがな。
そして一年程が過ぎた頃だったか、いつもの如くワシは彼らの元を訪れたのだが………。」
そこにあったのは轟鉄さん一派が暮らす古い家屋が破壊され崩れ去った光景だったそうだ。
そして、酷い外傷を負い既に息も絶え既に絶命していた轟鉄さんと、その場から少し離れた場所で何処からか溢れ出ている禍々しくも強大な気、嫌な予感に常を引き裂かれるかの様な思いに囚われながらも坂崎のご隠居はその禍々しい気の出処を目指して歩を進めると其処には。
「手傷を追った剛拳殿と、件の禍々しい気を発する豪鬼とが相対しておったのだ。」
その状況に行き当たってしまった坂崎のご隠居は、剛拳さんと豪鬼さん実の兄弟である二人が対峙するその訳の解らない状況に愕然とし暫してしまうが、その事態を引き起こしたのが豪鬼さんが発する禍々しい気の影響だど判断した坂崎のご隠居は、直ぐ様剛拳さんの元へと参じ共に豪鬼さんへと立ち向かった。
「後に剛拳殿にお聞きしたのだが、轟鉄殿達の流派は古より伝わる暗殺拳である故に、時として破壊と闘いの本能に取り憑かれる者が顕れるのだそうだ。」
聞いて驚くとんでも無いリュウさん達の流派実情と、それに殺意の波動か。
元が暗殺拳だったが故にってリュウさん達の流派マジ怖え〜っ……てちょっと待てよだとするとリュウさんとマスターズさんもその殺意の波動に呑み込まれる可能性があるって事なの!?
「………殺意の波動ですね、リュウさんもそうでした、己の中のその衝動に打ち克ち呑み込まれないようにと、その為に技だけではなく心をもリュウさんは鍛え続けているんですよ。」
そんな事を考えている俺の内心を見透かして回答したって訳じゃ無いだろうけど、春日野先生が坂崎のご隠居に応え語るリュウさんの事情。
去年の秋初めて出会い拳を交えた、偉大だと誇張無しでそうだと言える尊敬すべき格闘家だ、拳を交える事で相手を知り己を知りそしてさらなる高みを目指し精進する、ほんの僅かな時間の語らいだったがリュウさんはそんな事を語ってくれた。
そしてその言葉は嘗てテリー兄ちゃんが俺とロックに語ってくれた事と変わらない言葉だった、表面的な性格や為人は違えど二人は根底の部分はすっげえ共通しているって思える。
いつか俺がもっと強くなったらまたリュウさんと手合わせを願いたいが、それと同じ位にテリー兄ちゃんとリュウさんの対戦ってのも見てみたいなってな事を俺は時として思う事があるんだが、もしかするとそれは何れ叶うのかもな……っとこの俺の思いは取り敢えず今は関係無いからな、ちょっと話を軌道修正だ。
「うむ、そうか……。」
春日野先生の言葉に坂崎のご隠居は貫禄たっぷりに重々しく頷くと再び話を続ける、剛拳さんと共に豪鬼さんへと立ち向かうが強大な殺意の波動の前にお二方は。
『豪鬼よ、目を覚ませ殺意の波動などに呑まれるで無い!』
と闘いつつも呼び掛けを続けながら相対している上に強大な殺意の波動に当てられているものだから、どうしても決め手に欠け逆に二人がかりでも豪鬼さんに押し込まれてしまったそうだ。
しかし、豪鬼さんは時折その剛拳さんの声に反応し拳を振るう事を躊躇う時があったと。
「豪鬼もまた殺意の波動の衝動に翻弄され呑み込まれそうになりつつも、それに抗おうとしておったのだ。」
だがそうは言ってもその衝動は強力に豪鬼さんを、まるで縛り付けたかの様に離さずそして遂には坂崎のご隠居も豪鬼さんの攻撃の前に負傷を余儀なくされてしまい。
「戦いの
坂崎のご隠居は心の底から過去の己の不甲斐無さを恥じている、その声音からも俺やこの場に居る皆にもその思いが伝わっている事だろう、だがそんな感情を抑えて坂崎のご隠居は話の続きを語ってくれた。
「そして、暫しの失神より目覚めたワシが見たものは、負傷し地に伏した剛拳殿とそれを見下ろす豪鬼の姿だった。」
剛拳さんとの闘いにより多少は己を取り戻す事が出来たのか、はたまた思いっ切り暴れ回って気が晴れたのか二人を見下ろしながら豪鬼さんは告げたのだそうだ『兄者、そして拓馬よ俺はこの力に我を呑まれる事無く必ず己が物と成すであろう、たとえ征く道が修羅道であろうともな。』と。
「そう言い残して豪鬼はワシらの前から立ち去って行きおった、ワシと剛拳殿に奴を追うだけの余力が無い事を熟知したうえでの。」
無力感に苛まれながらも二人は体力の回復を待ち、何とか動ける程に回復した後息絶えてしまった轟鉄さんを簡素ながらも荼毘に付し墓を立てそして、檀家も絶えて久しい廃寺を新たに根城としそこで傷が癒得るのを待つ。
『俺はこれより修行を再開する、かねてより考えていた通り我が暗殺拳を武術として昇華し、殺意の波動を封じる事の出来得る技を会得する為にな、拓馬よお主には世話になったなこれより先は我が流派の問題故に他流派のお主はこれ以上関ることは無用ぞ。』
そう言って剛拳さんは坂崎のご隠居に絶縁を告げる、しかしハイそうですかと坂崎のご隠居もあっさりと其れを受け入れられる筈も無く、剛拳さんに食って掛かるが。
「ワシに背を向け振り返る事もせぬ剛拳殿であったが……その握り締められた拳は微かに震え血も滲んでおった。
剛拳殿は厳しくもお優しい方であったからな、ワシを突き放す言葉も断腸の思いを以って告げたのであろうな。」
その剛拳さんの気持ちを汲み取った坂崎のご隠居は、それを了承しこれ迄の月日の学びと教えと結ばれた絆とに深く感謝の思いを伝え剛拳さんの元を辞去して行った、しかし。
『剛拳殿、俺が推察するに豪鬼のあの力は強き力と強き者の存在を求め闘い、そしてそれを斃す事を望んでおる様に思えすのですが。
であればこれから先俺が更に腕を磨き強くなればあ奴は俺の前に顕れるやも知れませんな、もしもそうなった時の為に俺もあの力を抑え込めるだけの力を付ける為に精進する所存ですぞ。
さすればまた我らの道は何れ何処かで再び………いや今は考えますまい、剛拳殿、再び会う時迄どうか御壮健であられます様、ではこれにて失礼。』
そんな言葉を残して坂崎のご隠居は剛拳さんの元を辞し、以後は己自身で以て極限流空手を作り上げていったとの事だった。
鍛錬、修行の日々の中で坂崎のご隠居はやがて愛する女性と出逢い結ばれ子を成し、亡くなられた奥さんの故国であるアメリカへと渡り後に無敵の龍、或いはMr.空手と呼ばれる程の格闘家となったって事は俺達も良く知るところだ。
「極限流空手の黎明にそんな
坂崎のご隠居が話を一括した所で川崎が感慨深げにその口から漏らす、極限流空手門下生として川崎も今の話には思うに処もある様で……って!?
「かっ、川崎ぃ!?おまっ…いつの間に此処に?」
ヤッバっ、唐突に現れた川崎に俺は思わず虚を付かれ、そして驚きの声を上げてしまったわ。
だってコイツ今勤務中だし、このJrと材木座の対戦が開始された時は居なかったよな、よな!?
「はぁ!?アンタ何いってんの、アタシはさっきから此処に居たでしょうが、その事にアンタが気付かなかっただけだろう。」
メッチャメチャ呆れたって感じの視線で俺を射貫きながら川崎はそんな事を言うけど、イヤイヤイヤ川崎さん貴女居なかったっすよね。
あっ、そうか解ったわ!コレはアレだよアレ筆者が川崎を加えるタイミングを忘れていて今思い出して急遽出したんだな、そうに違いない……ってメタっ!
我道拳によってJrをマットに叩き付けた材木座は残心を残しつつも立ち上がらないJrの様子を確認し。
「……………やったのか、我……。」
己の成した状況を見てポツリと呟く、春日野先生より波動拳を学んだ事により使い道が無くなりそうだった、サイキョー流の技『我道拳』を気弾としてでは無く気を纏った打撃技として生まれ変わらせるとアイデアを提案した身の俺としても、その技を身に付け実戦で使えるだけの技となした材木座も、その威力には驚きを禁じ得ないってところだ。
「ほう、今の技は我が極限流の虎煌撃や龍撃掌に似た性質を持っている様であるな、それに八幡少年のバーンナックルだったか。」
顎に手をやり材木座の我道拳を寸評する坂崎のご隠居だが、確か先日極限流空手道場を訪れた時に黒岩師範代が見せてくれた技が虎煌撃だったよな。
テリー兄ちゃんがジェフさんから受け継ぎ、俺に伝えてくれたバーンナックルにしろ以前テリー兄ちゃんと闘った草薙さんの炎を纏ったパンチとかでもそうだけど、色々な流派で近い性質の技ってのは結構あるものだな、それだけ使い勝手が良いのかも知れないな。
「カウンターで当てましたからね、Jr君が受けたダメージは通常よりも倍化されている筈ですしね。」
「うむ、正に狙いすました一撃じゃ、それを見事に当てよったわいのうあの小僧め。」
続けて春日野先生と十平衛先生も材木座の攻撃に高い評価を下す、まぁ確かにブレイクショット(ガードキャンセル)からのカウンターが決まっしそれに加えての材木座の体格もある、その威力は相当な物だろう。
だが、相手のJrだって材木座以上に体格に恵まれているんだし、それ相応の耐久力だって有るだろう。
「そっすね、今のは確かに上手い具合に決まったっすけど、Jrだってこのままじゃ終わらないですよ。
それに材木座の奴、これで調子に乗って気を抜かなきゃいいんすけどね。」
なので俺は材木座の事を評価しつつもこの後の不安材料を提示する、初めての実戦でこれまでの研鑽と努力の結果が会心的な一撃として決まったんだからな、浮ついた気持ちが擡げて来ても何らの不思議は無いと思うんだ、材木座だしね。
「………くっ……くっ、ククク…」
そしてやっぱり俺の危惧した事が起きそうな感じになり始めた、材木座の奴は自分がJrをダウンさせた事を認識し静かにクククと笑い始めたからだ。
小さく笑声を漏らしながら、小さく肩を上下に震わせてダウンカウントを取られるJrから目を離し、やがてその笑声が徐々に。
「なーっハッハッハッハッはぁー!」
大きくなり両手を腰に添え調子に乗っての呵々大笑、俺の予想したあまりよろしく無い状態へとなり始めた。
それはカウントを受けつつもダメージからの回復を図る為にフーハアーと深呼吸をしつつ立ち上がろうとしているJrへの挑発行為と取られかねない行為だ。
「あははは……もうしょうが無いなぁ材木座君は、変な所ばっかり火引さんに似てるんだこら。」
春日野先生はリング上で調子にのり始めた材木座の事を見ながら苦笑しながらそんな事を言うが、その表情は昔を材木座の叔父さんの事を懐かしんでいるのだろうか、しょうが無いと言いつつも暖かさを感じさせる物に俺には思えた。
「……はぁ、知りませんでしたよ、まさか材木座のあの調子乗りぃな性格が身内からの遺伝だとは……」
春日野先生の感慨は兎も角として、まだ完全に決着が継いていない現状に於いてあんな行為に及ぶのは如何な物かと、まぁ闘いの最中に相手を挑発する事で己を鼓舞したり相手を怒らせて冷静さを失わせたりといった事も、実戦では行うわけなんだが。
今の材木座のはそれから逸脱し始めているように俺には思える、何故なら今まで高笑いしていた材木座だったが何を思ったのかいきなり右手を高く真っ直ぐに空へと上げて人差し指を一本、ビシッと突き立てた。
そして左手は肘を軽く曲げた状態で下ろし腰から尻にかけてをクイッとその左側へと付き出す、それは所謂。
「イエ〜イ!フィーバー!」
「……彼奴ジョン・ト○ボルタにでもなったつもりかよ、ってかサタデー・ナ○ト・フィーバーって知ってる奴居るのか、しかもそれが特撮戦隊シリーズ初の巨大ロボを登場させたバトルフィ○バーJのタイトルの元ネタになったとか、平成や令和生まれの子供達は誰も知らねぇっての!」
と言う訳だ、知らない皆はお家のお父さんやお母さんに聞いてみてね、八幡からの提案だ!
「いや、八坊お主も平成生まれじゃろうに、しかも要らん知識までも開陳しおってからに……」
俺の発言に何だか御老体が呆れ多様に突っ込みを入れているけど、そんな物は聴こえません、ええ聴こえませんともさぁ。
それよりも何よりも今はリングの上の二人に注目するべきだろう、って事で俺は改めて材木座とJrの様子を見定める事とした、決して逃げた訳では無いからねマジ。
「我強い!我サイキョーっ!オラオラオラッどおしたぁ!叔ぉ父ィ御ぉー見てくれましたかぁーっ!?」
『…………………………。』
何と言えば良いのか、そんな材木座のパフォーマンス?に春日野先生を除くこの一戦に注目していた皆の表情が冷え冷えとした物に変わっていた。
一々ポーズを変えながら、取り留めもない事を大声で叫ぶ材木座に皆さん呆れてしまったのでしょう、そりゃなぁ対戦相手はまだ完全にグロッキー状態になってる訳でも無いのに、リング上で調子こいてるんだから当然だわな。
しかもJrは既に立ち上がって今にも闘いが再開されようとしているって状態なんだ、それでアレだもんな。
「彼奴はいっぺん痛い目見た方が良いと思うんだ。」
アホなパフォーマンスに夢中でJrの倒されてなお衰えない戦意に気が付きもしない材木座に対して俺はそう思い、それを口にした。
周りの皆も無言ではあるが俺と一様にそう思っているのだろう、ご老体二人が軽く頷いているし。
そして、材木座が気づかぬままに戦意に昂るJrはその力のはけ口を求めマットの上をダッシュする。
「材木座君、気を引き締めてっ!まだ試合は終わっちゃいないよ!」
「ほへっ!?」
しかし春日野先生は流石に愛弟子?の身の危険を放ってはおけず材木座に注意を促すが、時既に遅し。
「フンガァァーッ!」
ダッシュで材木座へと接近していたJrがその攻撃の射程に入ったと同時に、遠間からの左ハイキックを材木座の横っ面に叩きつけた!
「げっぶぉっ!?」
と言う間抜けな呻き声を上げながら、衝撃によろけ蹈鞴を踏む材木座だがJrの攻撃はこれだけに留まらない。
よろけた材木座の至近距離へと体格に似合わぬスピードで急接近すると、Jrはごく軽く身体を曲げると勢いを付けて膝蹴りを放ちそのまま材木座の巨体を空へと吹き飛ばし、Jr自身もそれを追うように空へと跳び上がり。
「ガァー、ガァッツダァーンッ!」
そして材木座が落下しマットへと叩き付けられると、追い撃ちを掛けるようにダウン状態の材木座を足蹴にして踏み潰す様に蹴りつけた。
その衝撃に材木座は「うぐぇ〜」と踏み潰されたカエルの様な呻きをあげてのたうった。
Jrからダウンを奪った材木座はスパコンゲージを一本無駄にして材木座版挑発伝説をカマしましたが、残念ながらJrは終わる迄待つほどお人好しでは無かったのです。