やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
「えっ!?」
俺は今雪乃の姉である雪ノ下陽乃さんと相対すべく訪れた雪ノ下姉妹の古武術の師であり姉妹の母である、ままのんさんの古い友人である藤堂さんが師範を勤める藤堂流古武術道場の板張りの上に背中をつけている。
まぁ所謂ダウンを喰らったって訳なんだが、それは仕合い開始早々のほんの一瞬の出来事だった為俺はこの身に何が起こってこうなってしまったのかまるで理解が追いつかなかった。
何だったんだ何が起こったんだっ、正に今の俺の心境は『あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!』な、館の階段でD○Oのスタンド、ザ・ワールドの能力の片鱗を体験したポ○ナレフな気分だ。
では何故俺がこの様な状況に陥るハメになってしまったのか発端から再現VTRスタート……いやちょっと回想するだけなんだがな。
雪ノ下さんに謂わば挑戦状を叩き付けられた俺は時間の都合が付いた今日、藤堂流古武術道場を訪れた事は先に述べたがその藤堂流に付いてとここに至る迄の経緯とを説明しよう。
藤堂流古武術道場を含む藤堂家の邸宅はそれなりの、ってかかなり大きな建物であったのだが道場自体は然程大きくは無く数日前に訪れた極限流空手道場日本支部のの精々半分程のスペースと言ったところか、しかし天井はかなり高く二階分の高さは優に超えている。
「びっくりしたでしょう比企谷君、極限流の道場と違い狭い道場で。」
道場内を見渡していた俺に藤堂流古武術の正装であると思われる白い羽織と紺色の袴姿の藤堂さんが苦笑交じりにそう仰られたものだから、俺としては「いえ別にその様事は思っていませんよ」と社交辞令的に返事をすたのだが、その言葉は俺の本心からの言葉であって実際には社交辞令として言ったのでは無いし、以前テリー兄ちゃんとロックと一緒に訪ねた事のある道場は此処よりも手狭なところもあったしな。
「ふふふっ、我が藤堂流は門下生も十数名程の小さな流派ですしね、逆に母と姉が切り盛りしている日本舞踊と生け花教室の方が生徒さんの数も多いくらいですからね、なのでどうしてもそちらの方にスペースを取らなければならないのですよ。」
上品さの滲み出る優しげな微笑を湛えて藤堂さんはご自身の口からそう内情を語ってくれたのだがそれに対し俺は何と答えるべきか咄嗟に言葉が出て来ず、またどの様な顔をすべきか戸惑うこと半端無しだ。
『笑えばいいよ』と俺の中のシ○ジ君が微笑みながらそう言うのだが、それを実行出来る程の胆力の持ち合わせが俺には無いので期待している人は、まぁあしからずって事で。
「そっ、そんなんですね………。」
藤堂さんに案内されて男子門下生用の更衣室へと向かいながら俺は当たり障りの無い無難だと思われる返答を返すと、藤堂さんは「ええ」と先と変わらぬこれまた優しい微笑で答えてくれた。
身長はそれ程高くは無いがしゃんと背筋が真っ直ぐに伸びていて長く艷やかな黒髪の大和撫子然としたその佇まいは、雪乃と雪ノ下さんの母であるままのんさんと同年代の筈だが、その見た目は今述べたような佇まいが故か三十代前半と言っても差し支えが無さそうな若々しさがある、本当に綺麗な人だ。」
「あらまあ、比企谷君ったら可愛いガールフレンドが沢山いるのにこんなオバサンを口説くなんてしょうが無い子ですねぇ。」
オットマタシテモオレハオヤクソクヲヤラカシテシマッタノデスネエ……。
「あっ、すいません俺、べっ、別に下心とかやましい気持ちとかがある訳じゃ無いんです、頭で考えていた事がつい口に出てしまっただけでして……。」
何て感じで話している内に男子更衣室へと到着し俺は着替えをさせていただく事に、俺は藤堂さんに謝辞を述べ更衣室の扉を開けようとしたのだが。
「あの藤堂さん、一つお願いがあるんですけど、道場内でこれを使用しても構わないでしょうか。」
背負っていたリックから取り出したソレを藤堂さんに見せ俺は確認を取ると、実にアッサリと藤堂さんは「ええ構いませんよ。」と了承してくれたのだった。
「ありがとうございます。」
藤堂さんに頭を下げて礼を述べ、その後俺は更衣室をお借りして手早く着替えをせ済ませる、っても上着として着ているライダースジャケットとパンツを脱いで結衣と雪乃といろはがプレゼントしてくれたジャンパーとジーンズに履き替え帽子を着装するだけなんだが。
おっと、更に加えて今日はいつもとは違い先程藤堂さんから使用許可を得たアレを履かなきゃいけなかったんだわ。
「うわっ、何かなぁジーンズには物凄い合わないよなコレ……。」
ソレを手に取りしげしげと見つめる、俺が言うソレとは何かいい加減勿体付けるのも読者さん的にはウザったいだろうからな此処でネタバラシをするが俺が今回使用するつもりでいるのは鳶職の皆さんにはお馴染みだろうアレだ、そう紺色のゴム底の『地下足袋』ソレが今回俺が選んだモノだ。
「まぁアンディ兄ちゃんからのオススメだし、屋内での使用に限定してるから已む無しだな。」
先だって伺った極限流空手道場で、俺は学校指定の体育シューズを使わせてもらったんだが、どうにも畳っぽいマットの上で履くには違和感を感じたものだからその辺りの事をアンディ兄ちゃんに相談した所、地下足袋を使ってみてはどうかとのお答えで昨日俺は近所のワークショップでコイツを入手購入してきたって訳だ、因みに言っておくけどコイツの先端部分は安全靴仕様のプレート入りでは無い、足先が親指とその他の四本の指とに別れた二股だ。
流石にプレート入の安全靴仕様だとアレだ『どーよ鉄板入りの
「まぁ昨日ためし履きした時は案外履き心地が良い気がしたんだが、本番ではどうなることやら。」
独り言の様にってかまぁ独り言だな、そうぼやきながら俺は靴下を脱いで地下足袋を足に通してサイドのホックを留めると、さあ装着完了ってな。
そして丁度お誂え向きにと言えばいいのかこの更衣室には縦長二メートル程の大きな姿見が設えられていた、多分だが藤堂流は古流の武術だし衣服の乱れは心の乱れとかそういった教えがあるのかも知れない、まぁ知らんけど多分そんな理由があるんじゃなかろうか。
「うっは〜っ、やっぱり合わねぇ。」
昔のテリー兄ちゃんを意識した洋風のコスチュームに日本の伝統的鳶職人御用達の足先が二股に別れた地下足袋の合わない事ったらもう。
これで着ている服が鳶職人風のニッカズボンとか八分とかのダボッとした服装なら様になってるのかも知れんのだが。
「まぁファッションセンスE(超ニガテ)の俺がどうこうと言えたことじゃないわなぁ。」
帽子の上から頭を掻きつつ俺は厳然たる事実を再確認しつつぼやき節を垂れ流すのだった、そして着替えも終えたことだしと更衣室を後に雪ノ下さんと藤堂さんの待つ道場へと向かうのだった……はぁ、何かもう帰りたいです。
「お待たせしました。」
一礼を以て俺は藤堂さんと雪ノ下さんが待つ藤堂流道場へと再入室すると、藤堂さんは優しく微笑みながら俺に一つ会釈をすると「はい」と一言、そして雪ノ下さんはどことなく不敵で挑発的なニヤリって感じの笑みを浮かべている。
「比企谷君、陽乃ちゃんとの手合わせを前に先ずはこの道場内の確認と貴方の身体を軽く解してみてはどうかしら。」
流石に一門の格闘流派の棟梁だけの事はある、藤堂さんは俺に対してその様な気遣いをしてくれた。
なので俺としては此処はありがたくそのお言葉に甘えさせて頂く事とした。
さて、昨日の試着は別として初めて履いてみた地下足袋だが、これがマジで軽くて足にもピッタリフィットしてるし良い感じだって事は更衣室からこの道場までの間の僅かな距離を歩いてみて理解出来た。
取り敢えず朝の鍛錬で身体は解れるしコンディションも悪く無い、なので今やるべきはこの初めて使う地下足袋の使い心地の確認をしなきゃだな。
そう結論をつけた俺は少しづつその感触を掴む為に動いてみる事にした、先ずはゆっくりと両足に力を込めて踏ん張りがどれ程効くかを確かめる。
「おっ、これは中々良い感じで踏ん張りが効くなぁ!」
グッと力を込めた足裏のゴム底がシッカリと力を受け止めてくれている事がバッチリ伝わってくる、それに気を良くした俺は続いてステップを刻んでみることにする。
始めはゆっくりとそして少しずつ徐々にスピードアップを図りながら。
「……シュッ!シュッ!フッ!!」
キュッキュッキュッと手入れの行き届いた板張りの上、俺がステップを刻む度に地下足袋のゴム底とその板張りから音が響く。
程良い柔軟性と硬さとを併せ持っているゴム底のおかけで踏ん張った状態からでも直ぐにダッシュへと移れるしブレーキがバッチリと効いたかの様に急停止も出来そうだ、所謂ストップ&ゴーが瞬時に行えるって訳だ。
と言う訳でアンディ兄ちゃんのアドバイスはどうやら物の見事に的を射たものだって事が立証された。
「やっぱ流石だわアンディ兄ちゃん、マジリスペクトっしょ〜。」
ウォーミングアップをしながら気持ちの方もリラックスさせる意味合いを兼ねて戸部のモノマネで此処にはいないアンディ兄ちゃんを称える、藤堂さんは俺に対して優しく接してくれているが雪ノ下さんの方は、やはり俺に対して何かしら隔意があるのは花火大会の日から変わらずで、今も少しだけプレッシャーを掛けてきている。
これはちょっと雪ノ下さんの事を待たせ過ぎて苛つかせてしまったって部分もあるのかなとも推察し、そろそろウォーミングアップも切り上げようかと思っていた俺のところに雪ノ下さんが近づいてきて。
「……ねえ比企谷君。」
横合いから雪ノ下さんは俺に話し掛けてきた、この手合わせを目前に控えた僅かな時間に彼女が声を掛けて来たことに対して若干の訝しさを感じはするが、彼女に対して返事をする。
「……何すか。」
努めて素っ気無い風を装って雪ノ下さんに返事をするのだが、そう言や俺って普段から割と口調が素っ気無いって皆に言われてたわ。
『ヒッキーってさ、あたし達が何か言っても適当にあしらってるってかすっごい面倒くさそうに返事するよね。』
『ですです、私達が愛情と真心を込めて先輩のことお相手してるんですよ分かってるんですか先輩、みんなのアイドルいろはちゃんの真心を受け取れる男子なんて世界広しと言えど先輩以外には居ないんですからね。』
とこんな感じなんだが、上記二つの発言が誰のものだかは察しの良い読者諸氏にはお解りいただけていよう、って誰だよ読者諸氏って。
「一応さ言っておこうと思ってね、比企谷君今日は私の挑戦を受けてくれてありがとう。」
雪ノ下さんは軽く会釈をしながらそう言って顔をあげると、これまで俺に向けていた隔意やプレッシャーなんぞ有りはしなかったかの様な極自然な表情が見て取れた。
しかしそれがどうにも、俺には何と言うまるでか嵐の前の静けさの様に感じられてならなかったんだが、まぁ一応礼儀として雪ノ下さんに対し「いえ、どういたしまして」と返答を返しておいた。
そしてその俺の感は間違ってはいなかった、俺の返答を待って雪ノ下さんは再びそのプレッシャー的な物を顕にして来た物だから俺は直に心中身構える。
「あははっ、直にそうやって事に当たれる様に身構えれるのか、流石は伝説の餓狼達の直弟子な“だけ”はあるんだ。」
どことなく皮肉めいた響きの雪ノ下さんの言葉に俺は心構えだけは変えず、様子見と牽制のつもりで皮肉を混ぜての返事を返す。
「……まぁ、兄貴達に出会うまでは俺の周りは敵だらけだったっすから、悪意に対してはわりかし敏感なんですよ、特に自分の事を気に入らない何て事を言われた日にはそりゃあ身構えずにはいられないってなもんですよ。」
俺の皮肉交じりの其れに雪ノ下さんは何が可笑しかったのかクスリと嗤う、その顔は流石雪乃の姉だけあって美しいのだが、美しさ以上に仄暗い恐ろしさを感じ俺は背筋に寒気を感じずにはいられなかった、そして其れを裏付ける様な言葉が彼女の口から発せられた。
「ねえ、比企谷一つ提案があるんだけどさ、この闘いに負けた方は勝った方の言う事を何でも一つ絶対に聞くって事にしない。」
不敵な笑みで嗤う雪ノ下さんは、おそらく自分が勝つと絶対的に確信を持っているのだろう、だからこその提案だったんだろう今の発言は。
「はぁ〜っ、因みにっすけどもし雪ノ下さんが勝ったら俺にどんな要求を突き付けるつもりなんすかね。」
まぁ、それだけ自分の実力に対する自信が在っての発言だろうがはっきり言って俺には勝ったとしても然程旨味のある話には思えないしな、受けるかどうかは置いといて取り敢えず彼女の真意の一端でも知れればと思い聞いてみたんだが。
「そうだねぇ、もし私が勝ったら比企谷君、君さぁ雪乃ちゃんと別れてくれるかなぁ〜っ!?」
其れまで放っていた殺気だのプレッシャーだの屈託だのを感じさせない、さもごく普通に友達に飯でも食いに行こうと誘うかの様な、そんな口調で雪ノ下さんが言ってくるもんだから俺は思わず呆気に取られてしまい多分この時俺は口ポカンしていたと思う。
「………はあ!?何言ってるんですか雪ノ下さん、それって本気で言ってるんですか。」
「うん♪本気も本気、もうこれ以上無いって位にね。」
俺の問い掛けに雪ノ下さんはもうノリノリって感じで返答を返して来たんだがそれって俺には何のメリットも無いですよね、其れに此処には居ない雪乃の意思とか気持ちとかそう云った諸々無視して俺達だけで決めるとか間違っているんではないっすかね雪ノ下さん……はぁもうホント帰りたい。
否、帰りたいってより実は今ちょっとムカついたわ、雪ノ下さんの本意がどうなのかは解らんがこんな事を利用して俺たちの中を引き裂こうとしてるのなら、こんなに身勝手過ぎる要求『ハイそうですか』と飲める訳が無いだろ。
「言ったよね私、君が気に入らないってさ、だからね……。」
俺が気に入らないってならそれはしょうが無い、好悪の念は人それぞれだから何も無理して俺の事を気に入ってくれなんて言わん、だからこそだ。
「イヤッ、だからって………そんなのおかしいですよカ○ジナさん!」
「誰よ、そのカテ○ナって……意味分らないんだけど。」
実に爽やかな笑顔で雪ノ下さんはそう仰られた、ホントマジでイラッと来るんだがこの場のお膳立てをして下さった藤堂さんの手前もあるしその感情は抑えて闘いに集中しよう。
そして俺的には何のメリットも無い雪ノ下さんの提案に付いては、取り敢えずはぐらかして明確な返答はしなかったし出来ればこのまま有耶無耶に終わらせたいんですが駄目っすかね、そうすりゃ此方もムカついたりせずに純粋に藤堂流古武術との手合わせを楽しめるんだが。
「まっ、まぁそれは追々考えるとしてですが、もうそろそろ良い時間ですよね雪ノ下さん。」
「……ふふ、それもそうだね。」
さて、雪ノ下さんと手合わせを始める前に藤堂流に付いて述べるとしたい所だが、ハッキリ言ってその流派の事を俺は何も知り得なかった。
アンディ兄ちゃんや舞姉ちゃんにも尋ねてみたし、自分でもネットなどで検索してみたが古流武術の一派としか情報が無かったんだよな、出来れば動画とか出てくればと期待していたんだが宛が外れてしまった訳だ。
坂崎のご隠居にでも尋ねてみれば何かしら知れたかもだが、藤堂さんと坂崎のご隠居とは古い知り合いの様だしな、その辺りの事情を考慮するとご隠居に其れを聞くのは何だかフェアじゃ無いって気がしてな。
て事でこの手合わせに俺は何の予備知識無しに挑む事となった訳だが、ロックのヤツが何故だか去年辺りから遣えるようになった技の幾つかが、血縁上のロックの親父ギース・ハワードが遣った古武術の技だって話だったっけ、後の先的に相手の動きを先読みしてのカウンターで掴みからの投技とか使うんだよな。
だとすれば藤堂流にもそう云った技があるのかもな、ならば先ずは遠間から気弾を撃って牽制とかかな。
「あっ、先に言っておくね比企谷君、ウチの流派藤堂流だけどさ、遠当ての技もあるから遠距離からの攻撃一辺倒じゃ勝てないからね。
ふふふっ、優しいお姉さんからの忠告だぞ。」
最後にバッチコ〜ンっとウインクをかまして優しさアピールをされても、俺としては全く以て優しさを感じないんですが雪ノ下さん、其処のところどうなんでしょうかね。
しかし藤堂流にも気弾の様な技があるなんてネタバラシを自らしてしまうとはな、それだけ己の力量に自信か有るって事だろうな。
「はぁ、ご忠告どうも……なら此方としても出方を再考させてもらいます。」
そして時は来た、道場の中央に藤堂さんが陣取り上手側に雪ノ下さんが下手側に俺が陣取ると藤堂さんが俺達を交互に見やり宣言を下す。
「では、陽乃ちゃんと比企谷君との手合わせを開始します、二人共白線の位置まで離れて。」
道場中央から上手と下手の両側それぞれ二メートル程の位置に白線で開始線が引かれてあるんだが、藤堂さんの宣言によって俺と雪ノ下さんは二人共その定位置へと離れ立つ。
「宜しい、では構えて。」
藤堂さんが右手を挙げて宣告する、其れを受けて俺と雪ノ下さんは構えを取り互いの顔に視線を向ける。
緊張感を保ちつつもどの様な状況にも対応できるよう心身をリラックス、事前情報の何も無い相手を前にさてどう動くかと思考を高速回転させる。
「では……始めッ!」
掲げていた右手を勢いよく振り抜き藤堂さんが開始を告げ、俺はリズムを刻みながら雪ノ下さんへと向けて前進を開始する。
対して雪ノ下さんはゆったりとした構えで以て迎え撃つかの様に静かに動き始める、その所作には有り余るほどの余裕を感じさせる。
「スッ、スッ、ハアーッ……。」
軽く吸って吐く、その呼吸を数度繰り返しながら前進すると直ぐに近距離戦を行える距離へと到達し、俺は牽制と雪ノ下さんの出方を窺うべくフェイントを混じえてのジャブ、ジャブからのローキックと見せ掛けてそのモーションを止めて再度のジャブ。
その時だった、俺のジャブに合わせて雪ノ下さんが素早く動いたかと思うと何時の間にか俺の身体からまるで瞬間的に重力が失われたかの様な感覚を覚えたかと思ったその一瞬の後、俺の身体は道場の板張りに背を付けていた。
まぁ、咄嗟に何とか片手で受け身が取れたしダメージは殆ど無いんだが、こうして俺の状況は冒頭の状態へと相成った訳だったりするんだなこれが。