やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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やはり、女子と話すのはハードルが高い。

 泣き止まない犬の飼い主の頭を、最大限の努力を持って優しく撫でる、犬が無事だった事に感極まっての事なんだろうが、俺としては憂鬱な気分だ。

 だって、見知らぬ女子の頭を撫でるとか、昨今の社会情勢的にセクハラ認定受けても可笑しくは無い、しかも俺は自他共に認めるレベルの眼つきの悪さだ、もし第三者にこの状況を見られたら、最悪の事態に成りかねん。

 

 あぁ、頼むから早く泣き止んでくれ飼い主さん。

 しかしコイツ犬の躾けは出来ていないみたいではあるが犬自体には嫌われたりしてはいない様だな。

 泣いてる飼い主を慰める様に、さっきから「くうん」と声出しながら、その飼い主の顔を舐めてやってるし。

 犬って確か、躾けとかそういった事を飼い主と一緒にやる事で信頼関係を築くとか、群れの中での地位とかを確立して自分より上位や下位を決めるって聞いた覚えがあるんだが、この犬案外飼い主の事を妹認定してんじゃねえか、だったらその辺り改善出来たらコイツらは案外いい関係になれるんじゃねえのかな。

 

 おい犬、もう少しちゃんと飼い主の言うこと聞いてやれよ、心中で犬に対し語り掛けながら飼い主の胸元に短い前脚を掛ける犬を見ていたはずだったんだが、俺はいつの間にか見てしまっていた、思わず俺の眼は其処に釘付けになっててしまった。

 

 

 

 

 おいおいおいおい、何だそりゃあ!

 

 其処に存在したのは、言うなればたわわに実った大きな果実。

 まじかコレ、コイツは順調に育っていけば舞姉ちゃんクラスに届くんじゃねぇか!

 

 俺は、俺は再び万乳引力の法則に囚われてしまった。

 ヤバイヤバイヤバイ、逸れるんだ俺の眼線よ!このままでは、このままでは俺の人生が終わってしまう。

 逸れてくれ俺の目線よぉぉぉぉ!

 

 ……………………。

 

 

 

 俺が頭を撫で始めてから、そしてなんとか万乳引力の法則に逆らうことが出来て三〜四分位が過ぎただろうか、良かった漸く飼い主が泣き止み始めたわ、八幡一安心。

 

 「その、落ち着いた…みたいだな。」

 

 一安心とは言っても話し馴れない女子との会話は、何だか妙に突っかえてしまい、ぶっきらぼうな感じになる。

 自分の眼つきの悪さと相まって、人に拠っちゃ脅していると思われてしまうんじゃ無いかなんて考えてしまうんだよなぁ。

 

 「…うん、ありがとう、サブレを救けてくれて。」

 

 ふう〜、セーフ。

 

 良かった脅しているとは思われていなかった様だな、

 しかも何だか凄く穏やかそうな笑顔を浮かべていらっしゃる、やべぇ俺ってば今迄女子にこんなふうな表情で見られた事無いから免疫がアナフィラキシってしまう。

 

 小学校の時は虐めとか有って、蔑まれていたし。

 中学の時は絡んで来る連中を排除してたら、なんか若干乱暴者みたいに思われてたみたいだし、俺が女子の落とし物を拾って、渡してやったら「ひっ!」とか「きゃっ!」とか言って顔紅くして、ゴメンナサイとか言って走って逃げられてたからなぁ。

 

 あれって結構傷つくんだよな、家に帰ってから鏡見て優しい笑顔を作る練習とかやってたんだよ俺。

 それを見た小町は、可哀想なものを見る眼で俺の事見つめてくるし。

 

 いかんいかん、ちょっとトリップしてダウナー空間に入室してしまったぜ。

 ここは一つ気を引き締めて行かなきゃだな。

 どうやら運転手の老紳士さんは、まだ電話で連絡取ってるみたいだし、取り敢えずは、この飼い主と話しとくか。

 

 「おぉ、まぁ何だ、無事で良かったなってかさ、ちょっと良いか。」

 

 「えっ?何…かな…。」

 

 …飼い主、若干引いてる様だな。

 何を言われるかって、不安なんだろうな。

 

 「あのな、自分でもこんな事人に言うのは柄じゃ無いって思うし、ちょっと説教じみた事言うから、余計なお世話だと思われるかなとも、と思わないでも無いんだが…。」

 

 「……うん。」

 

 「あんた、その犬の躾けちゃんとして無いよな、だとすると此れからも今日みたいな事が又起こらないとは限らないだろ、あんたが飼い主なんだよな、だったらしっかり躾けてやんなきゃいけないんじゃねえか。」

 

 俺は出来るだけ、飼い主を不安がらせない様にとは思ってはいるが、きつい様でも言わなければならない部分は、やはり伝えなきゃいけないと思う、この飼い主はどうだろうか、苦い物を受け入れる度量は有るだろうか。

 俺の言葉が良薬だ等と、自惚れた事は思わないが、どうだこの飼い主は。

 

 「…そう、だよね……。」

 

 「あたしがサブレの事、しっかりみててあげなきゃだよね。」

 

 あぁ、上方修正だ、この飼い主は人の言う事を聞いて、その上で反省する事が出来る奴だ、なら俺は俺で伝えられる事をコイツにつたよう。

 

 「もしもだ、躾け方が分かんなきゃネットとかで調べれば情報が得られんじゃねえの、ペットショップとか自治体とかでもそう云ったイベント事とかやってるかもだしよ。」

 

 「そうなんだ、そんなふうに調べる事出来んだ、じちたい?とか調べればいいんだよね。」

 

 何?正に青天の霹靂みたいな顔してんのよ、今はネット社会だよ大概の人は気になる事はググるだろ。

 それに今、自治体を平仮名発音してたよな…コイツは、もしかしてアホの子なんじゃ……。

 あちゃあ、上方修正すんの早まっちまったかな俺。

 「おう、分かんなかったら、家で父ちゃんか母ちゃんにでも聞けば教えてくれんじゃないの、知らんけど。」

 

 「うん!そうしてみるね、あたしちゃんとサブレの事躾けるよ、あたしサブレのお姉ちゃんだもん。」

 

 さっき迄の泣き顔と不安げな顔色がすっかり失せたな、良かった、でもホントちゃんと躾けろよ。

 ………しかし眩しいなコイツの笑顔、泣き顔の何百倍も良いな、コイツにはずっと笑っていて欲しいな。」

 

 「…眩し…ずっと笑っ、てって…」

 

 へっ!?もしかして声に出してたの、俺ってば…うっわあ〜やべぇ、死ぬ、死ぬわ、八幡恥ずか死んでしまいますわぁ

〜!

 飼い主が顔真っ赤にしてるう〜、俯いて身体をブルブル震わせていらっしゃるう〜、ヤバイ怒らせた!?

 

 話題、話題だ、話題を変えるんだ、この気まずい雰囲気をその幻想ごとぶち壊す。

 

 そうだ。

 

 「ちょっと気になったんだけど、あんたのリードの持ち方なんだが、あんたリードの輪っかに指入れて、そのまま輪っかを握ってただろ、だから強く引っ張られて離してしまうんじゃないのか。」

 

 「うん…。」

 

 「それよっかさ、こうやって輪っかの中に手首まで入れてから、輪っかの根本を握ってやれば、多少強く引っ張られても離さないで済むんじゃないの。」

 

 「あっ!そっかホントだ凄い、あたし今日からそうやってリード持つね、ありがとう教えてくれて!」

 

 ニコニコ笑顔でマジ感心しましたってか、コイツほんとに素直だな、将来騙されて壺とか買わされんじゃねえだろうか

、他人事ながらマジ心配だよ、誰か監督して無いと不味いだろ。

 

 飼い主との話はこれ位にして、運転手の老紳士さんの所へ行かなければと思い

立ち上がろうとした時、背後から声を掛けられた。

 

 「あの、はぁ、お取り込み中みたいですけど、ふぅ〜っ…、コレどうにかしてもらえ、はぁ、ない、ですか…。」

 

 途切れ途切れに、しかも息を乱しながら俺達に掛けられた声は、女子の声。

 おいおい、何を朝っぱらからハァハァ言ってんの、チョット変な想像してしまうでょ。

 そんな、僅かながら邪な気持ちに駆られながら後ろを振り向くと。

 

 「ハァ、ハァ、この自転車、スゴく重いですぅ…。」

 

 亜麻色の髪をしたジャージ姿の女子中学生が、俺が放置していたララティーナお嬢様号(仮)を、押していた。

 何故この亜麻色の髪の女子が中学生だと判ったかと云うとだな、ジャージの胸の部分に中と言う文字と学校のマークが刺繍されているからだ、誤解が無いように言っておくが、決して胸を見ていた訳では無いからな誤解するなよ。

 てか、この女子中学生ってば、車体重量50kg超えを引き起こしたのか、やりやがるなコイツ。

 

 「…わ、悪い、態々引き起こしてくれたのか、その、すまない助かった。」

 

 一応お礼は言っておかないとな、八幡常識人だから。

 亜麻色の髪の中学生から、ドM、ダクネス、ララティーナお嬢様(仮)近日中に正式な名前を決めなければいけない号を受け取って、左側のペダル側に取り付けてあるサイドスタンドを下ろして、止めた。

 普通の自転車だとリアタイヤ側にスタンドが付いているもんだがコイツは、フロント側が重いからなリアだとバランス崩して倒れるんだよ。

 マスの集中化による恩恵では無く弊害だよこれ。

 

 最近の単車はマスの集中化、集中化と言ってずんぐりむっくりで尻切れトンボみたいなデザインが多くなったよな。

 

 しかしさっきは咄嗟に放り出して、倒れた時にすげえ音がしたんだが、どこも異常なさそうだな、流石は「痛いのはウエルカムカモーンなので愉しむ為に防御力に極振りしました。」な変態の名を冠するだけは有る。

 

 「いえいえ、でももう本当に大変でしたよこの自転車、ふぅ、一体どうなっているんですかぁ。」

 

 一体どうなっているんですかぁ…語尾の伸ばしが妙にあざとい、着ているジャージもなんだが少し大き目サイズで袖が余っているし、そこからちょこんと出した手が私かわいいでしょうアピールをしてやがる。

 

 「あぁ、コイツは改造しまくってド変態仕様になってるからな…しかしよくコイツを起こせたな、女子にしてはかなり力が有るんだな、案外パワーキャラなのか、近距離パワー型?」

 

 

 「えぇ〜っ、何言っているんですかぁそんな事ある訳ないですぅ、かなり頑張って起こしたんですよぉ、それなのにパワーキャラとかひどいですよぉ〜。」

 

 俺の言い分に、背伸びをして俺へと近づき詰め寄り、反論して来る亜麻色の髪の女子、おい!近い近い。

 語尾の伸ばしと云い、プンスカと怒ってますアピールの素振りと云い一々あざと過ぎる。

 俺だって思春期男子だ、彼女が欲しいとか、出来たらとか妄想もするさ。

 このあざとい亜麻色の髪の女子は理解しているんだ、どう言う仕草が男心をくすぐるのかと云う事をな。

 コイツはく…………さくはねぇ、寧ろいい匂いがプンプンするぜぇ!そして近い!近い!

 

 「だぁ〜、もうスマン、俺が悪かった謝る、あと近い近い!」

 

 この手の女子の相手をするのは疲れるだけだ、なのでさっさと白旗を揚げた。

 

 「あれれ〜、先輩もしかして、もしかしてぇ、私の魅力にノックアウトされましたかぁ!?」

 

 萌え袖状態の右手を下顎付近へとセッティングし、軽く身体をフリフリする亜麻色の髪の女子、コイツは何処までもこのキャラに徹するつもりの様だ。

 

 「…あざとい、てかちょっと待て、あと何で俺がお前の先輩なんだよ。」

 

 「もう、私あざとくないですぅ、先輩のその制服、総武高ですよね、私来年総武高受験しますからぁ、やっぱり先輩は先輩じゃないですかぁ。」

 

 マジで!?てかコイツ総武行けるだけの学力あんのかよ。

 

 「先輩、私に総武高に入れる学力あるのかって思ってるでしょう、大丈夫ですよ此れからしっかり受験勉強しますからね♡」

 

 「それよりぃさっきの先輩の動きって何なんですか?スゴかったです、なんかアクション映画のワンシーンみたいでしたよ、先輩もしかしてアクション俳優とかめざしてます!?」

 

 コイツ、コレから勉強するって、じゃあ今はして無いて事だろ、本当に大丈夫なのかよ。

 でもって俺みたいな眼つきの悪くて、コミュ症気味の奴が俳優とか出来る訳ねぇだろ。

 しかし何なんだコイツは、えらくグイグイ来るな、ハァ…めんどくせー。

 

 「……アハハ。何だか仲良さげだね、あたしなんだか置いてきぼりみたい。」

 

 あ、スマン犬の飼い主、決して忘れてた訳じゃないんだよ、ホント、マジで。

 

 「あの、でもスゴくカッコ良かった、ホントにヒーローみたいだった。」

 

 うわぁ!マジかよ!俺ってば生まれて初めて女子にカッコ良かったとか言われたよ。

 うわぁ〜ヤバイ何かすっげぇ嬉しい、顔がニヤけそう、てかもうニヤけてる、気持ち悪がられるかな、けど嬉しい、嬉しいけど勘違いするな、勘違いしてその気になって、調子に乗って告白して挙げ句振られる迄が連続技として繋がるスーパーコンボだ。

 

 「…そ、そんな事にぇだろ多分、知らんけど。」

 

 また、かみまみた。

 

 「お取り込み中に申し訳有りませんが

、間もなく警察の方が此方に到着するとの事ですので、対応をお願い頂きたいと思うのですが宜しいでしょうか。」

 

 老紳士な運転手さんが態々俺を呼びに来てくれた、お手数をお掛けしました。

 いや、俺だけじゃ無いな、犬の飼い主も関係者だからな、検証には立ち会ってもらわないとな。

 俺は飼い主を促して、共に運転手さんの元へ行こうと思ったのだが。

 

 「なあ、あざとい中坊、俺達はコレから警察の現場検証に立ち会わないといけないんだが、お前は無関係なんだし、それに部活かなんかに行く途中だったんだろ、早く行った方が良いんじねえか。」

 

 「ぶう!だから私あざとくないですって、しかも中坊呼びとか酷くないですかそれに私は目撃者ですよ、だからココに居ても良いんじゃないですか。」

 

 うわ、ぶうとか声に出して言う奴初めて見た、本当に居るんだな。

 しかしコイツ、語尾伸ばし忘れてやがるぞ、普通に喋れるんだね。

 

 「それから、私には一色いろはって言う、ちゃんとした名前が有るんですから覚えておいて下さいね、先輩。」

 

 バチコンとウインクをして、あざとい中坊は名乗りを上げた。

 何でコイツは態々面倒事に首を突っ込むかな、俺だったら帰れって言われたら喜んで帰るよ。

 

 「…お前物好きだな、目撃者が必要な案件かどうか分からんが、好きにすりゃいいんじゃね?」

 

 俺は頭を掻きながら、あざとい中坊の意思に任すことにした。

 え〜と、何て名前だったっけ…………

 

 確か……百式だったかな、クワトロ・バジーナ大尉の黄金のモビルスーツ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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