やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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祝!餓狼シリーズ最新作制作発表


そして事態は意外な方向へと向かう。

 

 挑戦的で不敵で、それでいて好奇心が溢れているんだろうか、その中南米方面の国の民族だと思われるその男の眼にはキラッとした輝きが見て取れる。

 しかしどう言う事だろうか、中南米方面と言えば俺が知っている人と言えばパオパオカフェのオーナーであるマイヤさんと、直接的な面識は無いがその弟子であるボブ・ウィルソンさんくらいだ。

 そのマイヤさんとウィルソンさんが遣う技はカポエラだし……ん、ちょっと待てよそう言えば極限流空手って確かブラジル支部があったよな、そしてそのブラジル支部にはマルコ・ロドリゲス師範代が在籍していたよな。

 この俺の眼の前に立つ男は道着を纏っている、と言う事はこの男は極限流の関係者なのか?

 

 「なぁ川崎、それから春日野先生、もしかしてコイツは極限流の関係者だったりとかし……」

 

 俺が正面の春日野先生と隣りにいる川崎の二人にそう問い掛けていると、その言葉を遮るようにその男が途中で言葉を被せてきた。

 

 「はぁッ!?オマエ何言ってんだよ、俺はそんな極限流何てのは知らねえんだよッ!」

 

 かなりの怒気を含んだ口調で其れを否定する、何だこの男は極限流空手の関係者じゃ無かったのか、だったらと脳内で推察を進めている俺の傍らから不穏な気配が微かに膨れた。

 

 「ちっ……。」

 

 極限流空手が侮辱されたと受け取ったのだろうか、努めて怒気を抑える努力をしながら川崎が眼光鋭く男を睨めつけている。

 

 「アハハっ、まぁまぁショーン君そんなにムキになって変な風に否定しないのッ、いやぁゴメンね二人共。」

 

 川崎のただならぬ様子に直ぐに気が付いた春日野先生が、素早く割って入ってくれた。ナイスです春日野先生、そのタイミングまさに電光石火の如し。

 

 「比企谷君、それに川崎さん、彼はショーン君っ言ってね。何とあのケンさんの弟子なんだよ!」

 

 えぇッ!?……ショーンと云う男の紹介、俺はその春日野先生から告げられ事実に一瞬思考停止しかけてしまった。

 何故か、それは春日野先生の口から告げられた人物の名があまりにも意外だったからに他ならない、云うなれば攻撃手段が髪の毛だった程にな。

 

 「かっ、春日野先生……あのもしかすると今先生が言ったケンさんって、もしかしてもしかしたりすると、あのケン・マスダーズさんの事だったり……とかするんでしょうかね?」

 

 「えっ、ああうん、そうだよ!」

 

 「ああサクラさんの言う通りだ、俺の名はショーン。ショーン・マツダ、アメリカ最強の格闘家ケン師匠の一番弟子だぜ。」

 

 ちょっと話し言葉としては変になりながら俺が春日野先生へ質問をすると、先生は朗らかにあっけらかんとした声音でそれを肯定し、そしてショーンって奴が其れに続いての自己紹介でソレが事実だと肯定した。

 いやちょっと待ってよマジで『マジかよ、マジかよ、マ…』と春日野先生の返答に俺の脳内ではその言葉が、スペクトルなエコーを響かせ木霊する『ZZRAK』と言う擬音を伴ってはいないがな。

 後、どうでも良いけどこのショーンって奴は姓がマツダって云うんだな、という事は日系人なんだろう、道理で日本語が上手いはずだ。

 

 「いやぁ実はね、ほら先月君と材木座君と初めて学校の屋上で会った日にさ、ケンさんとか春麗さんとか昔の知り合いの人達にメールを送ったんだよね、もしリュウさんと会う事があったら比企谷君と出会えたって事を伝えて欲しいって、お願いのメールをね。」

 

 「何せリュウさんってば、携帯とかスマホとか持ってないからね」と付け加え春日野先生はタハハッと笑いながら頭を掻きつつその経緯を話してくれた。

 そこから推察すると要するに春日野先生がメールを送った後にリュウさんはケン・マスターズさんと会ったって事なんだろう。

 

 「十日程前の話だ、俺がケン師匠に稽古を着けてもらってた時にリュウさんが師匠の所へ訪ねて来たんだ。」

 

 春日野先生の言葉を継いで、そのショーンって奴が答え合わせの解答を語りだした、それは何となくだが俺が推察した答えと近いものだろう。

 

 「なるほどな、その時にマスターズさんがリュウさんにその事を話した、そう云う事なのか。」

 

 「ああ、その通りだ。」

 

 顎に指を掛けて俺が一人言の推察を口にすると、其れを受けてマツダが頷きつつ肯定する。どうでも良いがこのマツダって姓のスペルはMatsudaなのだろうか、それともロータリーエンジンでお馴染みのMAZDAなのだろうか。

 まぁ普通に考えて前者だろうな、確かMAZDAはゾロアスター教の最高神である『アラフ・マズダー』から頂戴したとか、ってそんな事はどうでもいいですねマジで。

 

 「半年前俺は正式にケン師匠の弟子として認めてもらい、その日も俺は早朝から稽古を着けてもらっていたんだ。」

 

 「ほう。」

 

 其の様子を語り始めたマツダの言に、きっと俺は傍目に興味の成分を多分に含んでいると思われるだろう、自分としてもハイなテンションで思わず『ほう』と相槌を打ってしまった。

 まぁそれだけマジに興味を惹かれているのは紛れもない事実だし、しょうが無いよな。

 

 「その早朝のトレーニングを開始して間もなく、その場にひょっこりとリュウさんがケン師匠を訪ねて来たんだ、其れから四日ばかりリュウさんを加えて俺達は合同トレーニングを行ったんだが、まあソコはお前には関係無い事だな。」

 

 右手の親指で鼻っ面をコシコシと掻きながらマツダが得意気に語りやがる、それだけマツダにとってマスターズさんやリュウさんと過ごした修行の日々は誇らしい気持ちを抱かせるんだろう。

 その気持には俺も強く共感を抱ける、きっと俺が兄貴達から格闘技を学ぶ日々の思い出とマツダのそれとは近しいものなんだろう。

 

 「そんで其処でケン師匠がリュウさんに伝えたって訳さ、サクラさんからのメッセージをな。」

 

 「そしてそれを聞いた時のリュウさんの表情がな、何て云うかすげぇ穏やかに静かに微笑んでいたんだけど、それは今迄に見た事も無い程にすげぇ嬉しそうな笑顔だったぜ。」

 

 その世様な経緯があり、リュウさんな俺の事をマツダとマスターズさんに説明をし、それにより俺の存在に興味をもったこのマツダって奴はその好奇心を満たす為にわざわざ此処まで足を運んだ、と云う事らしい。ご苦労な事だ………。

 

 「ああ、リュウさんそれだけ将来の成長を期待されているお前と云う男を俺自身の眼で確かめたかったんだよ。」

 

 俺を睨めつけながらニヤッと嗤ってマツダはそう言い、続けて今度は自分語りを始めた、まぁわざわざ遠方からやって来たんだし此処は一つその語りを拝聴するとしよう。

 

 「俺がケン師匠に弟子入りする為の条件として出された課題がリュウさんから一本取ってくる事だったからな、だからリュウさんがどれだけ凄え人かって事は俺自身が良く解ってるしな。」

 

 思うにこのマツダって男は、ただ俺に対して興味を持ったって理由だけで、海を越えてこの日本までやって来た程の行動派だ、なのできっとマスターズさんに弟子入りを果たす為に何度も何度もリュウさんに挑んで行ったんだろう。

 僅か数分前に会ったばかりのヤツだけど、俺には何となくだその姿が幻視出来る様な気がする。

 

 「そうか、そいつは何てか態々遠くからご苦労さんだな、所でちょっと気になったんだがマツダ、お前結局リュウさんから一本取る事は出来たのか?」

 

 が、それは置いといて俺はマツダに質問をしてみた、まぁぶっちゃけると単純な好奇心からなんだが、もしコイツがリュウさんから一本取れたのだとするとマツダの実力は相当なものだと判じても構わないって事だし。

 

 「……………。」

 

 しかしマツダは俺の問に無言を以て答える、そしてスーっと目線を俺から反らし上手く吹けない調子っ外れの口笛を吹く、はい(わたくし)この時点でもうその答えは解りましたですわ、といって見る。

 

 「あぁ、その、何だ、まぁ残念だったな。」

 

 序に慰めの言葉を添え、俺は徐ろに肩に掛けたスポーツバッグのジッパーを開けると、その中を軽く漁り目的の物を取り出すとマツダの前に差し出した。

 

 「コレでも食って元気だぜよ、まぁちょっとしたお近づきの印ってヤツだ。あと春日野先生もどうぞ。」

 

 俺が差し出した小さな包を訝し気に眺めやるマツダと、微かに漂う匂いから其れが何なのか気が付きニコりと微笑む春日野先生、その二人の表情の違いに俺は何とも妙な面白さを感じる。

 

 「あっ!これって下の商店街のお肉屋さんのメンチカツだよねっ、ありがとう比企谷君!これすっごく美味しいんだよねぇ。」

 

 春日野先生がそう言って、にこやかにメンチカツを受け取ってくれたおかげでマツダも警戒心を解き、ソレに手を伸ばし受け取るが、春日野先生が言う様にソレが本当に美味いのかどうかとの警戒心はまだ解いてはいない様ではあるが。

 

 「いや、まぁ春日野先生には材木座との鍛錬の時にドリンクの差し入れとか頂いてますから、そのお礼って事で。」

 

 購入時よりは多少温度が低下してはいるが、それでもまだ温かさが残るメンチカツを春日野先生がホクホク笑顔で頬張ると、その様子を見ながらマツダも慎重に一口啄み咀嚼すると、忽ちのうちにマツダの表情が劇的に変化しガブリッとメンチカツに齧り付いた。

 やはりマツダもこのメンチカツの味の虜になった様だ、そうであろう。

 俺はその有り様にニヤリと北叟笑みたいところだが、どうにも俺のニヤリとした顔はちょっとしたヤッチャン顔だとの評価があるので控えておく。って放っといてくれてください!

 

 

 

 

 

 

 「まあアレだな、日本の食い物も案外悪く無いよな、流石は爺ちゃんの故郷だけあるぜ。」

 

 メンチカツを平らげ指先を舐め取りながらマツダがそう言う、其れにより俺はやはりこのマツダが日系移民の家系の人間だと確信出来た、まぁただ其れだけで別に何かを誇るとかそう云った事は考えちゃいないけどな。

 

 「それだけじゃ無いよショーン君、この日本はさ、何と言っても君の師匠のケンさんの故郷でもあるし、リュウさんの故郷でもあるんだからね。」

 

 マツダのちょっと捻ねた日本評に春日野先生が追加情報を加える、其処には意外な事実が含まれていた。

 ってかマジかよリュウさんは兎も角まさかマスターズさんまでもが日本で育ったなんて知らなかったわ。

 あっ、でも考えてみたらマスターズさんもリュウさんと共に剛拳師の元で修行したんだから日本で育ったてのも肯けるよな、リュウさん達の流派って確か流派名とか無くて秘して伝わってきた名も無き暗殺拳が源流だって話だったし、そんな流派の事が海を渡った国とかに伝わるなんて、かなり難しい話だよな。

 

 「うっ、まあそうだけど……今はケン師匠はアメリカで活動してるし、リュウさんだって世界中を渡り歩いてるし。」

 

 春日野先生の言葉に詰まりながら反論を試みるマツダだが、その反論はかなり分が悪いって事は本人も重々自覚がある様だ。

 だいたい現在何処に居てどんな活動をして居ようとも、それまで辿ってきた経歴が変化するわけでもないしな。

 経歴詐称はバレたらヤヴァいからね、後のリスクを考えればやらないに越した事は無い、君子曰く危うきには近寄らずだな。

  まぁ故宍○錠氏曰く危うきは金になるとの事らいけどな、知らんけど。 

 

 「まぁ、それを言うんなら俺や川崎の師匠筋に当たる人達も大概アメリカ中心に活動してるんだけどな。」

 

 それは奇しくもと言えるのだろうか、マツダの師匠のマスターズさんも極限流空手の創始者であるサカザキのご隠居とサカザキ総帥、そしてテリー兄ちゃんと俺達三人の師匠はアメリカを中心に活動している。

 まぁ川崎はロバート師範の技をメインに継承しているし厳密にはそちらが師匠筋なんだろうけど、それと俺にはアンディ兄ちゃんとジョーあんちゃんと云う師匠も居るわけだが、あと序に十平衞先生も加えていいだろう。

 

 「そう言われると、確かにそうだね。」

 

 俺の言葉に川崎は頷き呟く、サカザキのご隠居が海を渡りそこに根付き広めて行ったのが極限流空手の始まりだからな、そしてやがて極限流空手は世界へと。

 と、それはちょっと置いておくとして、結局俺は肝心の事を聞いて無かった事を今更ながらに思い出し、マジて今更ながらに其れを聞く事にする。そこいい加減茶番は漸く終わるのかとか思わないでね。

 

 「まぁそれはそうとだ、で結局の処マツダお前一体何しにわざわざ此処まで来たんだよ、いやマジ『Youは何しに日本へ?』って思わず成田空港でおまえにマイク向けて問いたくなっちゃうだろう。」

 

 何と無く察しは着いている、俺もマツダも名のある格闘家の弟子である訳だし、しかもマツダがマスターズさんに弟子入りするに際して出された課題がリュウさんから一本取ること、そしてリュウさんがかつて拳を交えた俺の事を覚えていてくれて、その話を聴いたとなると。

 

 「まぁ、一勝負闘おう(やろう)ぜ!って事なんだろうけど。」

 

 コレはまた面倒な事になりそうだなと、俺はガシガシと無造作に頭部の髪の毛を掻きながらぼやくとマツダはニヤッと咲いながら『解ってんしゃねぇかよ』と応えた。

 

 「まぁ俺だってガキの頃から兄貴達に鍛えてもらってるし、強者と拳を交えるのは吝かでは無いんだが。」

 

 俺がそう言うとマツダはニヤリと不敵に笑い、その掌のバスケットボールを地面へと軽く打ち付け三回程バウンドさせると右手人差し指を掲げてその上で暫くボールを回転させる。

 

 「へっ!ヤル気になったか、だったらサッサとやろうぜ。」

 

 その行動を終え再び腰元へバスケットボールを戻すと、マツダは鋭い視線を俺へと向けながら闘いを促す。

 

 「ああ、それは構わないんだが、その前にマツダ一つ訂正しておく事がある。」

 

 そう、俺に対してマツダが最初に言った事に対し俺は大いに異議を唱えなければならない。

 

 「ああ?なんだよそりゃあ。」

 

 訝しげに問い掛けてくるマツダに俺も、ニヤッと笑みを浮かべて応えを返す。

 

 「マツダ、俺は一人の格闘家としてお前の師匠であるケン・マスターズさんを高く評価しリスペクトしている、まぁ直にお会いした事は無いがな。

 お前はそのマスターズさんをアメリカ最強の格闘家だと言ったが、それは違うぞ。

 何故ならアメリカ最強の格闘家は当然俺の兄貴分、テリー・ボガードに決まっているからなッ!」

 

 ズバッと右手人差し指をマツダに突き付けて俺は断言する、此れだけは絶対に譲れないアメリカ最強の格闘家は絶対にテリー兄ちゃんに決まっている、そしていつかそのテリー兄ちゃんを越えるのが俺とロックとの揺るがぬ将来の絶対目標だ。

 

 「ぁあん!?何を言い出すかと思えば、お前なぁッ、誰が何と言おうとなぁアメリカ最強はケン師匠に決まってっんだろうがッ!」

 

 「いいや違うな、アメリカ最強はテリー兄ちゃんで間違い無い!」

 

 俺とマツダは互いの顔を近づけてメンチを切り合い、互いの師匠こそがアメリカ最強だと一歩も譲る事無く主張し合う。何処かで腐った趣味をお持の女子が鼻血でも吹き出しそうな気がしないでもないが、そんなモノでは断じて無い。

 コレは所謂昭和のヤンキー宜しくな『駅へ着いたらとっぽい兄ちゃんとガンのくれあいとばしあい』な横浜○蝿の“ツッパリHighSchoolRock’n’Rooll”な世界訳だ。そこんトコロ夜露死ー苦。

 

 「違うだろうが、ケン師匠だって言ってんだろうがッ!」

 

 「テリー兄ちゃんに決まってんだろうが、現実を見ろよマジで。」

 

 「ちょっと、お兄ちゃんもマツダさんも止めなよ、テリーお兄ちゃんとマスターズさん実際に闘った事無いんだから、まだ結果は解ってないんだからさ。」

 

 一触即発状態で言い合う俺とマツダを小町が諌めに入るが、ヒートアップゲイザーした状態の俺達は中々止まらない。

 

 「もうッお兄ちゃん、いい加減にしないとチーズinハンバーグ作ってあげないからね!」

 

 しかし次に小町が発した強硬手段的な脅しの言葉に俺は、そのヒートアップして上がったボルテージを下げざるを得なくなってしまった。

 小町が作ってくれるチーズin煮込みハンバーグを食えないなど、俺にとっては極刑に処されるに等しい事態に他なら無い。

 

 「全くちょっとは頭を冷やしなよ比企谷も、そっちのマツダってたっけ、アンタもさ。」

 

 小町の肩に優しく手を賭けながら川崎が俺とマツダを共に嗜める、流石はサキサキだ、俺と同じ下の弟妹を持つ千葉の姉だけはある。

 故にこそ小町の事を安じ助け舟を出してくれたのだろう、3年B組金八○生出演当時の三原じ○ん子さんな雰囲気を醸しているのに、根はお人好しな姉ちゃんだ。

 

 「っ……まあしょうが無いな、俺だってこんな言い合いの為にワザワザ日本まで来た訳じゃ無いしな。」

 

 諌めに入った川崎に暫し見惚れ、マツダは頬を少し赤くして照れ隠しにかぶっきらぼうな調子でそう言って俺から少し距離を取った。

 川崎はちょっとキツめに見えるけど美人だからな、その気持ちは解らんでも無い。

 

 「まあ解ってくれれば良いんだけどね、それにだいだいねアンタ達勘違いしてるんだよ。

 良い!?よく聴きなよ、アメリカ最強の格闘家は他の誰でもない、ウチのリョウ総帥に決まってるんだからね。」

 

 前言一部撤回、サキサキも基本的には俺やマツダと同じ種類の人種だった。己の師匠筋が最強だと信じて疑わないんだな。 そして川崎も自分の師匠最強論争に参戦し論争は白熱する。

 

 「ちょっとちょっと、君達すこし落ち着きなよ。」

 

 春日野先生が俺達を窘めようと割って入ろうとするが、スミマセンが先生此処で引くわけには行かないんで、今少し勘弁して下さい。

 

 「君達ねえ、本当に……。」

 

 白熱する己の師匠筋最強論争、それを止めようとする春日野先生の気が、次第に大きく膨れていっているのを俺達は気配で気が付いてはいたんだが止める事が出来なかった。

 それは恰もカ○ビーのか○ぱえびせんを食べてしまったかの如く、いや違うな……多分。

 

 そして………。

 

 急に周囲が真っ暗になったと思ったら何時の間にか………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「三人共、少しは頭も冷えた様だね、フフッまさか川崎さんまでヒートするなんて思わなかったよ。」

 

 その後ちょっとカオスな状況を春日野先生による手痛い介入をしてくれたお陰で、俺達は暫しのクールダウンタイムを経て精神的に冷静さを取り戻せた。

 

 「すみません春日野先生、うちの愚兄がお手数をお掛けしました、ほらゴミいちゃんもちゃんと先生に謝りなよ。」

 

 「せんせい、ごめんなさい、さーちゃんも“めっ”だからね。」

 

 春日野先生から手痛いお説教を食らった俺達に代わって、小町が謝罪から間髪入れずに俺にも謝罪を促すと、それを見たけーちゃんが真似をして川崎を注意する。

 俺は小町にゴミな兄ちゃん扱いを受けているが、その小町を真似て川崎を『めっ』するけーちゃんと来たらもう、何これかわいい。

 

 「う……っぅ〜っ……」

 

 春日野先生から食らったとんでも無い威力の技に俺達三人は小さく呻きながら立ち上がり、春日野先生へ頭を下げた。

 

 「(いっ)て〜っ、サクラさん何だったんすか今の技は、何か変な暗黒の空間みたいなモン観えたし、すげぇ痛かったスッよ!?」

 

 「えっそうだった!?タハハハっなら私もまだまだ十分現役で行けそうだネ。

 今の技はね『春獄殺』って言ってね、ある人の技を元に私なりにアレンジしたものなんだ。」

 

 『にへっ』って感じににこやかに笑いながら、春日野先生はさっき俺達三人を鎮圧する為に使った技の名を教えてくれたけど、いやマジ何だったのんあの技は。

 

 「アタシ達三人が僅か数瞬のうちに纏めて伸されるなんてね、もしかすると今の技は我が極限流空手の究極奥義、龍虎乱舞にも引けを取らないかもだよ。」

 

 春日野先生から食らったとんでも無い超必殺技に対する評価を龍虎乱舞と比して遜色無しと判じる川崎。

 マジかよ龍虎乱舞ってあんなにど偉い威力なのかよ、今の春日野先生の技は俺達三人に分散されてた分だけ最終的なダメージは一人一人には然程入っちゃいないが、もしまともに一人で食らったら……春日野先生怖い、龍虎乱舞怖い!

 

 

 

 

 

 さて何だかんだとグダってしまったが、もうそろそろ本題へと回帰しなければなるまい、春日野先生の技を受けたダメージからは回復したが強張った身体を解すために三人揃って軽く柔軟。

 

 「……よし、まあこんなもんだよな。」

 

 流石に南米系の血を引くからだろうか、マツダがいち早く解し終えそう口にすると、ニッと笑い俺へと顔を向けてくる。

 

 「ああ、それじゃいい加減本題に入るか。」

 

 俺とマツダが互いに向き合い闘いに臨むべく肯き合い、そして審判を願おうと俺が春日野先生へと声を掛けようと先生へと向き直ろうとしたその時。

 眼力を強めにして川崎が俺達の元へと近付き、そして思いもよらなかった一言を俺達に告げた。

 

 「ねえ比企谷それとマツダも、悪いんだけどさ、仕合いだけど此処は私に譲ってもらえないかな。」

 

 そう告げる彼女の背後には、メラメラと燃える様な闘気が俺には幻視された。

 

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