やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
「ぬぉぉぉッ何と!?この者があのケン・マスターズ殿の弟子であるとなっ!」
お得意のオーバー過ぎるリアクションで以て、材木座は俺達が紹介した来訪者マツダの素性を聞くと大声でそう吠えた。知人として関係を持たず遠目で見ている分には若しくはフィクションの中の登場人物ならいざ知らず、現実世界でしかも関わりがある者として材木座のコレはマジウゼぇ。
そしてどうやらそう思ったのは俺だけでは無い様で、近くに居る川崎や留美やマツダも耳の穴に指を突っ込み音量調節を行っている。
「っ、材木座お前五月蝿いぞ、音量調整の狂ったスピーカーじゃあるまいし、ちっとは声量落とせってんだよ。」
「ぬぬっ!?ケプコンケプコンいやはやなんとも我とした事が失礼仕った、皆の衆どうか平にご寛恕願いたい。」
斯く言う俺も、その材木座のあまりのウザ五月蝿さに顔を顰めつつ文句を付けると材木座は相変わらずの持って回した言い回しで謝罪を言葉を述べる。
こういった素直な所は材木座の為人の良い部分ではあるんだろうが、しかし如何せんウザさの方が先に来るからな材木座の場合はなぁ。
「けんごう、あんまりうるさくしちゃだめだからね。」
「うぐっ合点承知である、けーちゃん殿すまぬ。」
俺を真似てか、けーちゃんが重ねて材木座に苦言を呈すと忽ち材木座はそのデカい肉体を縮こまらせ、後頭部に手をやりペコペコと謝罪する。
まぁ我が千葉県に冠たるラブリーエンゼルけーちゃんに言われては素直に頷くほか無い。因みに言っておくがラブリーエンゼルって言っても宇宙に悪名を轟かす二人組のダーティーなペアな
「ところでよぉ八幡、どうでもいいけどコイツら何モンだ?」
材木座の茶番の終わりまでワザワザ付き合ってくれて、マツダは改めて材木座達の事を俺に尋ねる。件の材木座による茶番によりマツダと日米重量級オタクコンビ双方の紹介が中断された事にマツダも多少なりとも気を悪くしたのかも知れんな。
「おっと、悪いなマツダ。」
俺はマツダに先ずは取り敢えずの謝罪の言葉を掛けてから、材木座とJr及び戸塚の事を紹介する。するとやはりと言うか材木座のヤツは懲りるって言葉を知らないのか、或いはお袋さんの腹の中に忘れてきたのかは定かではないなが、事ここに至ってまたしてもお約束をぶちかましやがった。メンドイからマジ勘弁してくれよ………からの、そして。
「そうか、オメーかよ、へへっオメーがダンって奴の、関係者だったのかよッ!」
と突如としてマツダがヒートアップして材木座に躙り寄り遂には非難の絶叫をあげるが、当人たる材木座を含めた俺達全員がきっと何故にマツダが材木座の叔父さんに対して怒っているのか見当が付かない。
“ガルガルゥ”って感じで怒り顕に材木座に食って掛かる様に、この状況は不味いと川崎がサッと二人の間に割って入り。
「ちょっと待ちなよアンタ何そんなに興奮してんのさ、ちょっと落ち着きなって!」
マツダを宥めようと声を掛ける、若干人見知りの気があるのに割りと喧嘩っ早いところもある川崎だが、そこはやはり三人の弟妹を持つ千葉の姉だ。揉め事の仲裁には慣れているんだろうな。そして俺も女性の川崎にだけ任せる訳にはいかんと彼女の隣に進み出る。
「そうだぞマツダ、よく分からんがお前と材木座の叔父さんとの間に何かあったんだろうとは俺にも想像できるが、それと材木座とは無関係だろう。」
だから少し落ち着けとマツダを宥めつつ、言いたく無ければ構わんが何か事情があるならばよけりゃあ話してくれと促す。マツダは暫しの間不貞腐れていたが春日野先生が間に入ってくれた事によりマツダも怒りのテンション下げ、しゃあないなとばかりにその事情を話してくれた。
話はマツダがケンさんの弟子となる以前に迄遡る。ケンさんの元へ弟子入りすべく押し掛けたマツダだったがケンさんはそれに首を縦に振らず素気なく断ったそうだ、しかしマツダは諦める事無く幾度も幾度もケンさんの元を訪れ弟子入り志願を繰り返した。
流石のケンさんもマツダのしつこさに辟易としたのか、一つの課題をマツダに出した。その課題のクリアを条件にマツダの弟子入りを許可すると言うものだった、まぁそれが先に聞いたリュウさんから一本取ってくるって事なのだが。
「俺はケン師匠に教えられた昔なじみの人達の元を訪れてはリュウさんの居場所を知らないか訪ね歩く序にその人達と手合わせしてたんだがよぉ、どいつもこいつも俺の事を口を揃えたみたいにダンだダンだダンだって呼びやがってよぉッ!俺はダンじゃねぇッ、ショーンだってんだよッ!!」
要はそれって材木座はリュウさんやケンさんの知り合いの格闘家の皆さんが、マツダを材木座の叔父さんと混同してしまったが為のとばっちりをうけてるだけじゃね?
「……Hey Youちょっとマテよ、ナンか話聞いてリャよハチマンが言う通りケンゴーはナニもワルくねぇじゃねぇかョ!オメーが行った先のファイター達にケンゴーのオジキと間違ワレたってモ、そりゃケンゴーとは関ケェねぇダロョ!」
そんな俺の内心を代弁でもするかの様にJrがマツダに反論し、皆がその言葉にコクリと頷く。
その場の雰囲気にマツダは己の旗色が悪いと感じた様で少しばかりバツの悪そうな表情をみせ始めていたんだが。
「よくぞ言ってくれたJrよ流石は我が相棒よムッハハハハぁッ!」
それに気を良くした材木座はJrを焚き付ける様に称賛しバカ笑い。
「オウ当然ダゼっケンゴー!ガッハハハハハァッ!YEAAAH」
Jrもそれに応え、YEAAAHからのポル○レフと花○院のパンツーまる見えからのよろしく、パシ!ピシ ガシ グッグッを二人して決めやがった。べっ、別に俺も一緒にやりたいとか羨ましいとか思ってないんだからねっ! 嘘です本当は俺もちょっとやりたいです、嘘言ってゴメンナサイ。
「やっとる場合かーッ!」
しかし、転んでもタダでは起きないのがこの俺比企谷八幡。ピシガシは出来なくとも他のネタをブッ込んでやった。閑話休題………
「だがなぁ、マツダの気持ちも解らんでは無いとも思うがな『惑星ロボダ○ガードA』の主題歌でもあるまいしダンだ、ダン、ダダンだとか連呼されちゃ若干イラッと来るだろう。まぁ俺なら歌い手が、ささきい○おさんだったら歓喜するけど。」
「ふむ、そう言われると確かにであるな……我とてももし耳元で『亜空大作○スラングル』のオープニングのゴリラ、ゴリラを連呼された日にはウザイと思うであろうな。面白くはあるだろうがな。」
「だろ!?」
俺の例え話に材木座も下顎に指を当て、ふむと頷きつつ例え話で返してくる。理解してもらえた様で何よりだ。
「マテマテお前ら、歌詞の連呼ってっタラ『ぼく○の』のアンインストール連呼もアンだろうがヨ!」
「「いや、あれは名曲だろ!」」
興に乗った俺達ボンクラバカオタク三人はそんな話で盛り上がる。
「……ったくよぉ、何なんだよお前らは。何かお前ら見てたら一人でムカついてんのが馬鹿らしくなって来たぜ。」
そんな俺達のバカっぷりにすっかり毒気を抜かれたのかマツダが溜息一つ吐いてそう呟く。まぁその言い方に幾らか思う所も無くはないが、突っ掛かるのも面倒だし此処は良しとしておこう。
「うむ、ならばこの件はここまでとしようではないかケン・マスターズ殿の弟子よ。」
「そうダナっ、ケンゴーの言う通りダっゼ!ケン・マスターズの弟子ヨ。」
「ったくオメーらなぁ、確かに俺はケン師匠の弟子だけどよォ、俺にゃあ『ショーン』って立派な名前があるんだよ、だから俺の事は名前で呼べよ名前で!」
てな感じで事態は緩やかに雪解け模様になり始めた。それはそうとしてちょっとばかり気になる事柄を俺は、それを知っているであろう人物に尋ねようと、この場を少し離れて見守っていた人に声を掛けた。
「所で春日野先生、マツダが材木座の叔父さんと間違われたってコトっすけど、先生から見てどうなんですか?マツダってそんなに材木座の叔父さんと似てるんですかね。」
春日野先生は学生時代から材木座の叔父さんである火引弾さんと親交があったって話だし、年齢的に考えて材木座よりも長い付き合いだと思われるし何より身内である材木座よりかは客観的に見れるんではなかろうかとの判断なんだが。
「えっ、ああうんそうだねぇ。外見的には似ちゃいないね、う〜ん多分だけどケンさんの弟子になる前のショーン君のファイトスタイルが火引さんに似てたんじゃないかな?」
その判断は間違っていなかった様で春日野先生は俺の質問の意図を理解してくれ、適切な解答をくれた。
「なるほどね、そう言う事なんすね。材木座の叔父さんって人も材木座やマツダみたいにウザくて騒がしい人なんすね。」
「アハハハ……もう比企谷君、言い方!言い方!」
その解答に対しての俺のコメントに、春日野先生は何処ぞのメカ部チ○ンネルの帰国子女なパッキン部長のアレな発言に突っ込みを入れる、めがね部員の如く“言い方”を二度繰り返して窘めた。
「所で今日は三人集まってどうしたんだ?」
この夕刻に三人揃って、しかもその背には何やら物品を詰め込んでいると思しきリュックを背負っているところから、何処かに出掛けていたんだろう。
「うん、それなのだが八幡よ。Jrが明日の夕方の便でアメリカに帰ると言うのでな、今日は最後の思い出にと聖地巡礼とアニメショップ巡りを敢行して来たのだ。」
「オゥそうだゼハチマン。ケンゴーが是非にって誘ってクレてな、ソレならサイカも一緒がイイって誘ったら来てクレんだゼ!」
「うんそうなんだよ八幡。僕も折角Jr君と友達になれたんだから、日本での思い出を作る事に協力したくってさ。」
何……だと……
「おい材木座ッ!戸塚も行くんなら何で俺にも声を掛けてくれなかったんだッ!?ズルいぞ!」
戸塚も一緒に聖地巡礼とか史上最高のイベントへの参加を打診さえされなかったのだ、その現実に俺は怒りのゲージをマックスにし血の涙を流す。いやまぁ流石に血の涙は出ないけどな。
「なっ何を言うか八幡よッ、お主は今日は午前中バイトだと自分で言っておっただろう!」
ハンっ!高々バイトなんぞ戸塚とのお出掛けイベントの前では児戯にも等しいわッ!とは、言えないんだよなぁ。まだ社会には出ていない学生にすぎない俺だが、病気でも無いのにサボるなんて出来無いしな。バイト先の皆さんともそれなりにしがらみが出来上がってるし。
「ちいっ!」
そんな訳で俺は、連邦の白い奴に負け続ける仮面の赤い敗北者の様に忌々しげに舌を打つ。
「オォーッそうダ忘れるトコロだったゼハチマン、そんな訳だからよコノ前借りたマンガを返そうト思って持って来たゼ。」
そう周りに響き渡る大きな声でJrはそう言うと、背負っていたリュックを降ろすとファスナーを開けて中身をガサゴソとイジり、十五冊程のコミック本を取り出し俺へ差し出して来た。
「Thanksハチマン!ドレもスゲぇ面白かったゼ!」
「おう、楽しんでもらえたんなら何よりだわ。ってかコレ全部、本当はウチの親父のなんだけどな。」
Jrからブツを受け取りつつ俺はそう言う。Jrに貸したこの十五冊程のマンガ本は昭和の終盤から平成初期の作品で、主にガキの頃の親父が買った品物だ。
「ハッハーァッ!ドレも全部面白かったゼ。所でハチマン、この『雷鳴○ザジ』に出てくる
それを読んだ感想と考察をJrが俺に披露する。
確かに状況設定的に似た部分があるにはあるが。
「まぁ、よう実の作者の衣○彰梧先生が俺の親父世代かそれ以上の年齢ならその可能性もあるかもだが、多分違うんじゃねぇか?」
俺はそのJrの考察に対して一応否を唱える。衣○彰梧先生の年齢とか知らんが、少なくとも九十年代前半から活動していたとは思えんからな、多分。
「ソウかぁ、イイ線行っテルと思ったンダがなぁ。」
俺の否定的見解を聞いてJrが若干萎み気落ちしている、なんか身長百八十五センチ、体重九十キロの巨大をシュンとさせるその様子に何だか俺は酷く悪い事をしてしまったみたいに感じて妙に居た堪れんから止めてくれと言いたいんだが。
「否しかし八幡よ、よう実の作者がお主の様に上の世代の影響を受けていると言う線も捨てきれんのでは無いか?」
気落ちする相棒を慮ってか、材木座が俺の見解に対し別方向からの見解を口にする。
「その可能性もゼロとは言えんけど、まぁそんな事を言い出したらキリが無いだろう、推察や考察なんてのはそれこそ近しい設定が使われてれば幾らでも唱え様があるんだからな。」
「ぅむ、確かにお主の言う事も尤もではあるのだろうが、作品についての考察を行うのもオタク道の楽しみで醍醐味の一つでもあろうと言うものよ。」
「ナルホドなぁ、イイ事の言うぜケンゴー。」
だがこうやって三人でオタク談義をするのも今日で最後かと思うと何だか柄にもなくセンチな気分になってしまうのは、やはり俺が柱の男では無く人間である証なのだろうか。知らんけど………
「なあサキ、さっきからコイツら一体何を言ってるんだ?俺にはサッパリ解んねぇぜ。」
「ゴメン、アタシにもアイツらが言ってる事ってほとんど解らないんだよね。まあ小町なら解ってるかもだけどさ。」
「へっ、あ〜っいやぁ小町にもお兄ちゃん達が言ってる事全部は解んないですけど、多少は解りますね。まあ簡単に言ってしまうと痛いオタクの会話なんですけどね。」
「へぇ、アレが日本のオタクってヤツの会話か。」
何か外野からこちらに向けて若干不本意な言葉が交わされている様だが聞こえない事にしておく。マイノリティーってのはいつの世にも大衆に理解を得られない悲しい生き物なのだからな。
それにJrのヤツがもう帰国するとなるとこんなアホな事も出来無くなる訳だからな、まだまだやらせてもらうわ。
「コノ夏、オレはコノ国に来テ良かったゼ。ケンゴー、ハチマン、サイカ、サキ、コマチにルミにケーチャンとサクラティチャー、皆と出会えタからコノ夏は楽しかッタよ。」
少し芝居がかったしんみりとした声音でJrがそう言う、もう既にJrがネタ振りに突入している事に俺と材木座は気が付いているが、他の皆は(川崎と小町は何となく気がついていそうではあるが)Jrにつられる様にしんみりモードだ。
「……………………」
それに対し俺は出典通りに無言で佇み。
「そうであるな……楽しかった…心からそう思うのであるぞ……」
コレまた出典を元にしたセリフを材木座が口にする。
そして、それを合図に俺と材木座とJrは出典通りにガシッと円陣を組む、まぁゲッタ○ロボのオープニングのゲ○ターチーム程深くは組んでないがな。
「それじゃあな!!しみったタレのサイキョー流使いの相棒!精進シロよ!ソシてヤクザ眼の餓狼の弟子よ!オレの事忘レるなヨ!」
作中のポルナ○フのセリフを独自にアレンジしてJrが俺と材木座に言葉を贈る。一見只のネタセリフではあるが、その言葉にはJrの俺達に対する思いが込められている事がヒシと伝わってくる。
「うむまた会おうぞッ、我の事が嫌いじゃなければなッ!……マヌケ面ッ!」
材木座がジ○セフのセリフをアレンジ引用してそれに応え。
「忘れたくてもそんなキャラクターしてねえぜ……テメーはよ。元気でな……」
俺もまた承○郎のセリフをほぼそのまま使い応える。
そして俺と材木座はクルリとJrに背を向けて、また同じ様にJrも同様に俺達に背を向け互い逆方向へと歩みだす。
歩数にして四歩程前進して俺達は其処で一旦歩みを止め、またしてもクルリと百八十度反転し。
「ヨッシャーッ!決まったな!」
三人で高々と両手を上へ挙げてバシッとハイタッチを決めて歓びを分かち合い、三人揃って決めたネタの気持ち良さに酔いしれる。
「てかJrお前ヤクザ眼って一体何なんだよ!?そこはせめて新手のスタンド使いの様な眼位にしといてくれって。」
「ハッハ〜っ、ハチマンは眼つきガ悪いカラなっ!ぴったりダロうヤクザ眼ってのガヨ!」
「うむ、確かに八幡の眼は素人衆には刺激が強過ぎるからな。しかし先のセリフ、八幡は原作の承太○のセリフをほぼそのまま使っておったしな、あそこは少し捻りを入れるべきであろう!」
「何だよ素人衆に刺激が強い眼ってのは!?まぁ良いけどよ、だがあそこは原作リスペクトに徹するべきだと判断したんだよ。原作でも数少ない仲間の前で見せるデレ太郎なシーンだし、変にイジるよりもその方が絶対に良いだろう!」
この頃にはもう他のみんなも俺達が何を演っていたのかある程度理解出来た様で、それを観る皆の目や態度には呆れの色が色濃く漂っている事がハッキリと見て取れた。
「あははは……もう三人共しょうが無いなぁ……でもコレが三人の友情の証でもあるんだよね。」
しかし戸塚は苦笑しつつも生暖かい目で優しく見守ってくれている。大天使トツカエルの包容力の大きさを俺達は改めて識り、その信仰心をより強固なものとした。
「……なあサキ、コイツらって何時もこんな感じなのか。だとしたらアンタも…苦労してそうだな……」
「ハァ……うん、まあもう慣れたけどね。」
マツダと川崎は、しかしそんな俺達の有り様に着いて来れず、心底憑かれゲンナリとした様な顔でそんな事を宣っていた。