やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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入学の日に人生初の友達が出来るのは間違っている?

 老紳士な運転手さんに付き従い、俺達は車の側へ歩いていたその時、一台の黒塗りの高級車が、俺がライジングタックルを食らわせた車の前にゆっくりと停車した。

 

 運転席のドアを開け降りてきたドライバー、年の頃は三〜四十代と云ったところか、そのドライバーは綺麗な姿勢と足取りで俺達の前へと向って歩いて来た。

 

 「お待たせしました都筑さん、ここからは都筑さんに替わり、私がお嬢様をお送りします。」

 

 とても洗練された仕草で、ドライバーさんは、老紳士な運転手さんに挨拶をした。

 つか、この運転手さん、都筑さんて名前だったのね。

 そういや、俺達お互い名乗り合っていなかった、いやいやコイツはうっかり。

 都筑さんにしても俺も、多少冷静では無かったのかもな、尤も俺は面倒事をさっさと終わらせたいって気持ちの方がデカかったんだけどね。

 

 「申し訳無い妙蓮寺君、迷惑を掛けてしまったね、お嬢様の事を宜しく頼みましたよ。」

 

 「わかりました、お嬢様は私が責任を持ってお送り致します、では。」

 

 おぉ、都筑さんもだが、この妙蓮寺さんと言う人も正にプロフェッショナルって感じの人だな、カッコいい。

 そのお嬢様とやらの乗る車へと向かう妙蓮寺さんの姿を見送りながら。

 

 「あの、都筑さんで良いんですよね、俺、自分は比企谷八幡と言います、名乗るのが遅れて申し訳有りません。」

 

 名を名乗り、そして名乗っていなかった事を侘びた。

 

 「いえいえ、お気になさらないでください、それは私も同じ事ですからなね、いやはや私とした事がどうやら幾分、気が動転していたようです、私こそ名乗り遅れて申し訳有りませんでした比企谷さん。それから、普段通りの話し方で構いませんよ。」

 

 更に都筑さんまで俺に侘てくれた、本当にこの人はとても誠実な人なんだと、改めて思った。

 

 妙蓮寺さんが、都筑さんが運転していた車の後部座席左側のドアを開く、そこに乗っていた人こそが都筑さんが、本来なら送って行くはずだった人。

 お嬢様と呼ばれる人なのだろう、車から降りてきたそのお嬢様とやらの姿、最初にチラリと見えたのは横顔だったが、はっきり言って驚いた。

 

 一寸見ただけでも理解出来る、そのお嬢様の容姿はお世辞抜きで綺麗と言える物だ。

 美しく煌めくような黒髪、何処か儚げに見える表情。

 車を降りて来て見えたそのお嬢様の服装は、俺と同じ総武高校の制服だった。

 そのお嬢様の立ち姿は凛としていて、ほぼ万人が見惚れてしまう程の物だが…

 

 俺にはその姿が何だか寒々しく感じてしまった。

 何故そう感じたのかは解らないし、考えても仕方無いだろう。

 

 あ、コレだけは言っておく、決して彼女のその…犬の飼い主と比較して、そのお山の大きさが残念な物だったからとかじゃあねぇぞ!

 

 

 

 この事故でそのお嬢様にも迷惑を掛けてしまったんだな、だったら。

 

 「あの都筑さん、俺のしでかした事で都筑さんが送って行く筈だった人にも迷惑を掛けてしまった訳ですよね…その方にもおわびをしなければならないと思いまして、挨拶をしても構わないでしょうか。」

 

 「全く貴方と言う方は…判りました、では私と共に参りましょう。」

 

 都筑さんの了解を得て、お嬢様とやらの元へ行く事に。

 

 「あたしも、謝りたい…です、いいですか?」

 

 犬の飼い主も同行を願い出るが、先方も急いでいるのだ、其処に幾人も連れ立っていくのはどうかと思うぞ、その気持ちは分かるがな。

 なのでそれを、俺は飼い主に告げた、その謝罪は後日にすればどうかと。

 

 俺と都筑さんは、妙蓮寺さんとお嬢様とやらの前へ、妙蓮寺さんとお嬢様とやらに都筑さんが話を通してくれて、俺は謝罪の機会を得た。

 

 「あの、俺の後先考えない行動のせいで迷惑を掛けてしまって、すいませんでした。」

 

 深く腰を折りお嬢様に頭を下げた、10秒程で頭を上げ、その顔に眼を向け見つめる。

 その表情はまるで感情と言う物を持たない様な、実際はそうでは無いのかもだが、今現在の彼女表情からはそう感じさせられた。

 

 「謝罪など結構です、私に怪我など無いのだし、タイムスケジュール的にもまだ猶予は有るのだから、要件がそれだけなら私はもう行かせてもらうけれどよろしいかしら。」

 

 オーノー!その言葉からも感じさせられました。

 

 何なんだこのお嬢様の頑なさは、1万2千枚の特殊装甲とATフィールドで守ってんの? その心を、何から? 初対面の、しかも女子の心の内側なんて分かるはずながない、だってボッチなんですもん涙が出ちゃう。

  

 「あぁ、了解した。行ってくれて構わない、此方の都合を押し付けるつもりは無いからな。」

 

 こんな時テリー兄ちゃんなら、もっと上手くコミュニケーションを取れるんだろうな。

 あの時の俺の懐に、優しく入って来て導いてくれたみたいに。

 

 お嬢様は俺達に背を向け、妙蓮寺さんと共にもう一台の車へと向かって行く。

 

 お嬢様に対し頭を下げる都筑さんと共に、お嬢様と妙蓮寺さんが去って行くのを見届ける。

 同じ総武高校の生徒同士だ、縁が有ればまた会うことも有るだろう。

 無ければ、しゃあないハイそれまでよだな。

 

 「お、警察が到着した様です。」 

 

 都筑さんが、此方に向かって来るパトカーを目視確認、2台のパトカーが到着した。

 

 

 事情聴取と現場検証ってヤツが、これから始まる、でもまぁ、これが終われば取り敢えずは終了だな。

 しかしハッと俺は気が付いた、それは今日俺人生初の、3人の女子との会話をしたという事、しかも三人が三人共かなり高レベルな顔面偏差値の持ち主だ、てか、お嬢様とは会話と呼べるレベルかと言われると困るがな。 

 

 

 

 

 

 「こんの!馬鹿息子があ!!」

 

 

 

 現場検証が終了し、学校へ向かう前に俺は、母ちゃんに電話連絡し事故のあらましを話した。

 母ちゃんは了解、学校で落ち会うと言う事になり俺は学校へ向かう事に。

 

 「ねぇ、先輩、先輩、連絡先交換しませんかぁ。」

 

 あざとく、百式?が電番メアドを要求して来たので、丁重にお断りした。

 

 「だが、断る。」

 

 言った、言っちゃったよ八幡ってば名言を、言ってみたいセリフ八幡ランキング、第2位のセリフを。

 

 露伴先生、ありがとやしたぁ!

 

 犬の飼い主には改めて礼を言われた。

俺がさっき言ったアドバイスを実行して行くと、笑顔で言ってくれたので嬉しくなった俺は、無意識にその頭を撫でていた。

 

 「むう、私に対する態度と差が有り過ぎだと思いますぅ。」

 

 百式?のボヤキはスルーして、一応目撃証言もしてくれたので、礼だけは言っておいた。

 

 「お前もサンキューな、受験勉強頑張れよ。」

 

 

 

 都筑さんにも改めて挨拶、後日保険会社とか弁護士とかから連絡が来るかもとの事でした。

 

 

 

 母ちゃんの絶叫と共に拳骨が振り下ろされる、入学式も恙無く終了した学校の校庭で。

 

 「くぅ、痛いって母ちゃん!」

 

 鍛え始めて6年以上なるのに、母ちゃんの拳骨の痛さは異常。

 家族に対する愛情とか心配とかが、ダメージ値に加算されてんのかな。

 

 「あんたが、心配掛けるような事するからでしょうが!!」

 

 「いくら鍛えてるからって、車に喧嘩売ってんじゃないわよ、全く!」

 

 イヤイヤ、売ってないからねお母様、いくら何でもさ、俺其処までは馬鹿じゃないと思………事実だけ見るとそうなのかな。

 母ちゃんにどつかれた頭を擦り、痛みを逃がす。

 逃していると「あの〜、ちょっと良いですか。」と少しおっとりとした感じの女性の声が聞こえた。

 

 その声に振り返ってみると、其処には少し茶髪掛かったセミロングの、声からも想像がつく、おっとり童顔なお姉さんがいた。

 しかもなんと、舞姉ちゃんに匹敵するか、若しくはそれ以上の豊かな物をお持ちのお姉さんが。

 

 「突然すみません、今朝散歩中の娘と犬をそちらの御子息に助けて頂いた、由比ヶ浜と申します。」

 

 「ほら結衣、いらっしゃい。」

 

 「あっ、うんママ。」

 

 声を掛けて来たのはお姉さんでは無く

、なんと今朝の犬の飼い主のお母さんでした。

 母親に呼ばれその隣に並び俺と母ちゃんにお辞儀をする飼い主。

 

 確かに二人並ぶと、見た目の雰囲気が似ているのが解る。

 だが、母娘!? 姉妹じゃ無くて。

 

 若ッ!このお母様メチャ若じゃあねぇか、アンチエイジングにも程が有るだろう。

 もし道で声掛けられて逆ナンとかされたら、速攻付いていくレベル。

 

 『いいか八幡、美人を見たら美人局だと思え、声を掛けられて人通りの少ない場所に誘導されて金品を巻き上げられるのがオチだからな。』

 

 何処からか親父の忠告の声が、聞こえて来た様な気がする。

 心配すんなよ親父、俺はボッチのプロだぜ、そんなトラップなんざに引っ掛かる程ヤワな人生送っちゃいないぜ。

 

 「この度は、うちの家族を助けて頂き

本当にありがとうございます。」

 

 「あ、ありがとうございます。」

 

 俺と母ちゃんに二人は揃って礼の言葉と共に頭を下げた。

 

 「頭を上げて下さい、それはうちの馬鹿息子が勝手にやった事ですし、それに誰も怪我等も無い事ですしね。」

 

 おい母ちゃん、いい加減馬鹿息子呼ばわりは止めて頂きたい。

 俺だって心も身体もガラスの十代なんだからね、傷つくんだからね!

 

 知ってるか、ガラスって1300℃位の熱で完全に溶けてしまうんだぞ、と言う事は俺の心は1300℃迄の熱に耐えられると言う事だな。

 まじか、ならば俺のハートはエシディシの怪焔王の流法に耐えられる。

 ガラスの十代ならば柱の男に勝てるんだ………。

 

 んな訳無いじゃん。

 

 「ですが、息子さんの行動でうちの家族が救われたのは事実です。 もし息子さんが居なければ、サブレはどうなっていたか、そうなった時娘の心は深く傷ついていた筈です。」

 

 「うん…あっ、はい、えっと比企谷君が居なかったらあたしきっと、スゴく後悔していました、だから、ありがとうございます。」

 

 何度も礼を言ってくれる飼い主、それだけサプリが無事だった事が嬉しいのだろう、ん?サプリだよね?あれ、サブレだったっけ。

 

 「いえいえ、家の馬鹿息子がお役に立てたのなら何よりですよ、これ以上の礼は不要ですよ、あんたもそれで良いわね八幡。」

 

 「あぁ、良いよ。」 

 

 もう済んだ事だしな、無事だったからな生き物に関しては、だが。

 無事じゃあ無かったのは、あの車だ。

 

 俺がライジングタックルを食らわせた車の、フロント右側のヘッドライト周りは思いっきりぶっ壊れていました。

 あれ、修理代幾ら掛かるんだろうな、それを考えるとゾッとするぜ。

 都筑さんは修理は保険で賄う事になるだろうから、心配はしなくて良いと言ってくれたけど、それでもし都筑さんの立場とか悪くなったらと思うとなぁ。

 

 「息子もこう言っていますから、もうお気になさらずに、ね。」

 

 ですけど、となのも言い募るお母様と申し訳無さそうにしている飼い主。

 そんな二人を宥めていた母ちゃんだったが、急にニヤリと悪い顔をして俺を見た。

 そして何をトチ狂ったのか、どえらい爆弾を投下しやがった。

 

 「其処まで仰るなら、一つお願いが有るんですが、家の馬鹿息子ってば見ての通り眼つきがすこぶる悪いでしょう、ですから今迄マトモに友達が出来た事が無いんですよ、なのでもし良ければなんですけど…お嬢さんにこの馬鹿の友達になって戴けないかと思いまして。」

 

 西暦20○X年、世界は核の炎に包まれたあらゆる生き物は死に絶えたかに見えた

、だが人類は死に絶えてはいなかった。

 

 けど俺は死ぬ、死ねるわ。

 

 「おいコラ母ちゃん、イキナリ何言い出すんだ、こんな眼つきの悪いのが、こんな可愛い娘の友達とか、ある訳ねぇだろ。」

 

 「あっ、あんたも本気にすんなよ、こんなバカ発言。」

 

 ヤバイ、飼い主メッチャ顔を赤くして俯いて、ぷるぷるしてるう!

 怒ってる、怒ってるよね、母ちゃんのバカぁ!

 今日は入学式だよ、俺まだ入学したばかりなんだよぉ!

 明日っからどうすんだよ俺ェ!

 

 「……って、もらえた…可わ……。」

 

 何か、ブツブツと言っていらっしゃる飼い主さん、そうだよな嫌だよな〜、あぁ言ってて涙が出そうだよ。

 

 「…あの、あたし、なりたい友達に、比企谷君となりたいな。」

 

 「あらあら、まあまあ。」

 

 おおっとぉ、思いがけない言葉が飼い主さんから発せられたぞぉ。

 そしてお母様、何故そんなにニヤニヤ笑顔なんですかね、ご自分の娘さんが道を踏外そうとしているので御座いますですますわよ。

 親御さんとして、其れで宜しいのでございますか。

 

 「ほれ八幡お嬢さんもこう言ってんだから、覚悟を決めな。」

 

 おのれディケイド! 面白がりやがってェ。

 

 「…あんた、良いのかよ、こんな眼つきの悪いのが友達で。」

 

 「結衣だよ、あたしの名前…確かにちょっと眼は怖いかなって思ったけど…あたし、知ってるから比企谷君、優しい人だって。」

 

 クッ、なんて邪気の無い笑顔なんだ。

 

 女子にこんな笑顔で接されたのは、初めてじゃあねぇかよ、あっ今朝も向けてくれたわ。

 ここ迄言われて断る程、俺も唐変木って訳では無い。

 

 仕方無くは無い、ここ迄言われたんだからな、でもやっぱ眼は怖いと思われてるのね。

 

 「比企谷八幡だ、あ〜、その宜しく頼む。」

 

 「うん! 由比ヶ浜結衣です、宜しくね。」

 

 二人で挨拶を交わし、ここに初めて俺は友達が出来た。

 しかも女子がだ。

 

 二人の親御様方は、そんな子供たちをニマニマとした顔で見ている。

 

 「娘の事よろしくね比企谷君。」

 

 あのお母様、俺はお嬢さんを嫁に迎える訳では無いのですから、その言い方は関係各方面に誤解を産んでしまいますわよ。

 

 「いや〜、こりゃ今晩はテリーさん達に良い報告が出来るわ、ウフフっ。」

 

 おのれディケ………一話で同じネタ2回は使えないが、使いたい気分だぜ。

 

 

 

 

 

 




 取り敢えず入学式の日の話まで書けました。
 この「伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。」ですが、もしも八幡が格ゲーの高速突進技と無敵対空技を使えたら無傷でサブレを救出出来るんじゃあねえか、と思い立ったのが始まりでした。
 ただそれだけだったんですけど、じゃあ何の技を使えば良いかと考えたらやっぱり、当時従兄弟が持っていたスーファミソフト餓狼伝説2で初めて格ゲーと言う物をプレイして、惚れてしまった、テリー・ボガードの技だけは外せない絶対にだ。
 と言う事でライジングタックルを、超高速移動している感バリバリの斬影拳を選んでみました。

 実はストーリーが出来ているのは、ここ迄です。
 原作開始の二年生になってからの話はどうするか、思案中です。

 取り敢えず考えているのは、川崎姉弟は極限流空手の使い手にしようかと、姉は覇王翔吼拳をマスターしているけれどその威力はリョウ達に比べ7割位、弟はマスターしていない。

 雪ノ下姉妹は藤堂香澄に藤堂流古武術を学んでいるけれど、姉は重ね当てができる程度で、超重ね当ては使えないレベル、妹は重ね当ては使えない。

 あとは材木座も何らかの武術を学んだけれど、実践では萎縮してからっきし、と言う設定はどうかなと思っています。
 
 話をある程度原作のストーリーと絡めたいと思っていますが、どうなる事やらです。

 こんな自己満足の書物を読んで下さった皆様に感謝致します。

 P.S個人的アドバイスを頂いた西園弖虎様には深く感謝の意を示したくおもいます。
 そのアドバイスを活かせる程の発想能力が不足していますが。


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