やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
「フッ……ハァーッハハハハッ!負けタゼっ、オレの負けダ!見事ダゼ、ハチマン!」
「おう、まぁ今回のところは俺の勝ちだJr。はぁ……しかし、やっぱり巨漢ファイターとの闘いってのは疲れるわマジで。しかもJrの場合、重量級の割にはかなりスピードもある方だしな、更にはあの出鱈目な超必殺技だな。アレ喰らった時はマジでどうなるんだって思ったからなぁ。」
闘いも終わり俺とJrは、互いに全力を出し合いダメージと体力の消耗から草臥れてしまい、だらしなくその場に尻をベッタリと着いて座り込みながら互いの健闘に敬意を表しあう。いやマジであの技は掛け値無しに危なかった。
「ソゥか!!アノ技はナDadの隠し技デナ、ダカらDadも現役のトキは実戦でモほとんド使って無かっタ技ナんダゼ。」
直にあの技を喰らった俺からの評価が余程嬉しかったのか、Jrは何時にも増してハイテンションで伝えてくる。あまりの声のデカさに留美とけーちゃんはピクッとその身を震わせて耳を塞ぐ。
しかし、親父さんの事を語るJrは本当に嬉しそうに話すんだよな。それ程に親父さんを尊敬してるんだろう、父親としても一人の格闘家としても。俺?俺もまぁ親父の事は嫌いじゃ無いな。親父とはまぁ話もそれなりに合うし、趣味も合うから一緒に居るのも悪くはない。
それに大体が俺の持つオタ知識は親父からの直伝だしな、言うなればその道の先達って奴だ。っと俺と親父の事はどうでもいいか。
「ぬははははっ!いやはやなんとも、実に豪快で痛快な技であったぞ我が友よ。」
Jrのデカい声にも負けずにデカい声で笑ってそう評するのは材木座の奴だ。まぁ皆さんこの喋り方でお解りだろうがな。だが、Jrと違ってその口調に若干イラッと来るのは何故だろう。うん、きっと材木座の奴が暑っ苦しいからだろうな、間違い無い。
「ああ、だね。だけどアノ物凄い五月蠅さはどうにかならないもんなのかね。」
「だよなあ、あんまりうるせえから見てて俺も思わず耳を塞ぎたくなったぜ、ありゃあよ。」
「うん。耳が痛かった。」
「あははは、うるさいうるさいだったね。」
「あはは……でも八幡が言う通りホント凄かったよJr君。」
みんなが口々にJrが使ったあの技の事を五月蝿いと酷評する。しかし何気に酷い事言うよな皆の衆。戸塚と材木座だけじゃねえか五月蝿いとか言わないのは。
まぁ材木座の場合はJrを相棒認定してるし何ら可怪しな点は無いんだが、問題は戸塚がJrを誉めているって事だ!何故なの我が聖天使トツカエル様!?その栄誉をこの不肖比企谷八幡にもお与え下さい。
そんな願いを込めて俺は、真摯な眼差しをトツカエル様に向けた。
「はっ……八幡も凄かったよ。」
俺の熱い願いが届いたか、聖天使トツカエルからの賞賛の言葉を賜わった。我が生涯に一片の悔いも無いし、何なら今の一言でハチマンは後十年は闘えるって、顔色と目つきの悪い壺の人も言ってた。
「おっ、ありがとうな戸塚……ふひっ……」
やべちょっと嬉しさが脳天直撃セガサタ○ン過ぎて天元突破して、思わずふひっとか言っちゃった。八幡うっかり。
「うっわっ!お兄ちゃん今のは流石に引いちゃうよマジでキモいよ、ふひっとか。」
オーバーなリアクションで後退る俺の人生に於ける原初の大天使コマチエル。そのの言い様が何気に酷い件について………って、コレが小町と俺の平常運転でしたね、そう言やなね。
俺とJrとの闘いを見届けたマツダが帰り支度をはじめる、リュウさんやテリー兄ちゃんが持っているズタ袋と同じ様な袋にタオルや外したオープンフィンガーグローブとを突っ込みつつ、ヘッと笑うと。
「まあ今回日本に来て、どんなモンになるかと思ったけどよ。俺なりにゃそれなりの成果ってのもあったしな、来て良かっのかもな多分。」
俺があまり人の事は言えんが、何ともこの男は素直な物言いが出来無い奴だな。大体が撚たセリフはこの俺、比企谷八幡の専売特許なんだから無断使用は止めていただきたい物である。
ヨシここは一つ俺がガツンと一言言ってやろう。因みに俺はアイスキャンディーの『ガツン◯みかん』が好きなのだが、最近は物価の高騰で学生には中々買い辛い価格になってしまったのが哀しいところである。
まぁだけど、ディスカウント系のドラッグストアでなら比較的安価に購入出来るぞ、コレ豆な。
「ハッハッ、お前もソウなノカよケン・マスターズのパダワンよ。」
イカン!ちょっと脳内で『ガツンと◯かん』と昨今の世情についての不満をつらつらと垂れ流している内に、Jrがマツダに話し掛けてしまった。てかパダワンって、ジェ◯イ騎士の弟子かよ。
「何だよ、そのパダワンってぇのはよぉ?どっかで聞いた事がある気はするけど解んねぇよ。全くお前といい八幡といい、例えの意味が解らなさ過ぎなんだっての!」
「ハッハッハァーっ!その辺ハお前モオイオイ勉強して行けバ、理解出キル様にナルゼ!」
「イヤ、そんな勉強する気は無ぇって!」
「否であるぞ!ケン・マスターズ殿の弟子よ。人間生きておれば何かしらの事態にぶち当たる事も有ろうと言う物、その様な場合に思わぬ知識がその場を切り抜ける切り札となる事も有り得るぞ。なればこそJrの言う様に勉強していく事はお主にとっても損は無かろう!」
「イヤそんなアニメだか映画だか知らねえが、そんなモンがどう闘いの役に立つってんだよ!」
アメリカからの来訪者組の絡みが始まったかと思えば材木座も参戦しやがって、五月蝿い事この上なし。ある意味五月蠅さの極みと言えるだろう、コレ。
「ムホン!その様な事は決まって居るだろう。闘いを前にしての前口上として大いに役に立とうぞ!」
そう、五月蠅さの極みとは。説明しよう五月蠅さの極みとは、幕末の世を恐れさせた左頬に十字傷のある人斬りが、明治の世に出会い友誼を結んだガサツな友がとある坊主に学んだ………と言うのは嘘だ、もう面倒だからこれ以上のでっち上げは止めておく。
「ああそうだな、その通りだ。確かに俺も材木座もJrもキッチリやってるしな。何てかなアレやると闘いの前に、ヨシ来いってな気分でテンションが妙に上がるんだよ。」
「ダヨなッ、解ルゼハチマン、俺もそうダカらな!」
「うむ、我もアレを行うことで怖れそうになる己が心と悲しむ我の闘志とを鼓舞しておるからな。」
それより今はマツダに対して俺達のネタに掛ける情熱と、それによってもたらされる効能とをわからせる方にこそソースを割くべきだ。
Jrと材木座もそれを解ってくれて俺に援護射撃を行ってくれた。こう言うのも阿吽の呼吸と言って差し支え無かろう。
「おお……何気に材木座、お前今の『ダンバ◯ンとぶ』の歌詞を頂戴したなッ!と言う訳で、どうだマツダこの俺達の阿吽の呼吸はよ。」
「イヤイヤ!ソレやってんのってお前達三人だけだろうがよ!そんな狭い範囲で、妙な精神論語るんじゃ無ぇってんだよぉッ!」
しかし敵もさる者、マツダは俺達の俺達によるオタクネタのプレゼンテーションに興味を示すこと無く、あまつさえ文句まで言ってきやがった。おのれディケイド!コイツと俺達とははどうやら不倶戴天の敵同士となるかも知れん。言うならば爆◯小僧と◯魎の様に。
ガヤガヤと俺達の五月蝿い茶番も終わり、帰り支度を終えたマツダに俺は改めて今後の予定を聞くことにした。
「ところでマツダ、お前今日はどうするつもりなんだ?」
「はあ?どうするつもりってのはどう言う意味だ。」
主語をちゃんと言わなかったが為か、マツダは俺の質問の意図に察しがつかなかった様だ。まぁ日本人同士でも伝わらない事ってわりかしあるしな、致し方無いだろう。
「いやな、これから成田に向かってアメリカに帰るのか、それとも何処か泊まる当てでもあるのかって思ってな。流石に春日野先生のところって訳にはいかんだろう、女性の一人暮らしだし。」
多分これから行っても今日はもうアメリカ行きの便も終わってるだろうし、それに普通に考えてまさか日帰りで日本に来たってのは考えづらいしな。ならば宿泊施設が必要になるだろうと思った訳なんだが。
「えっ、別に私は構わないよ。部屋も別にあるし、それに私もケンさんには昔沢山お世話になったし。」
「あっ、サクラさん、いやぁ…そう言ってくれるのは有り難いっすけど流石にちょっと。」
春日野先生は極自然にアッサリとマツダを泊めても構わないと言うけれど、言われたマツダの方がそれに対して遠慮をしている。意外にもマツダも男女の性差に対する気遣いが出来たんだなと感心しなくも無い。
「オゥ!だったラ、オレが世話になっテる、パオパオカフェに来リャあイイんじャネぇか!?」
其処でJrが、今回の来日に際して寝泊まりさせてもらっているパオパオカフェにと誘った。半ば住み込みバイトの様な形でJrはパオパオカフェのスタッフルームの宿泊施設を利用させてもらっていたりする。
「……パオパオカフェねぇ……」
しかし、マツダの奴はどうにも煮え切れ無いってか迷っているのかは知らんが、あまり選り好みが出来る場合じゃ無いと思うんだがな。
「ああ、確かに彼処ならベッドもあるしね。店長かオーナーに話を通せば泊まらせてくれると思うよ。何なら今から連絡取ってみようか?」
迷いを見せるマツダに、パオパオカフェでバイトに励む川崎もそれが良いとJrの提案を推し勧めたその上に、連絡までしてやろうと言うんだからな。マジ人がいいんだよなサキサキって、まぁ一見ぶっきらぼうで排他的にも見えるけど本当は情に厚いんだよ。
「マジか!?サンキューやっぱ暖けぇ女なんだなサキは。益々惚れっちまうぜ!」
そして出ました見事な迄の手の平クルリン!Jrが提案した時ゃ、乗り気を見せやしなかったクセにコレである。疾風ウ◯ルフもビックリな高速機動ってかよ。
「なっ、惚れっ……バッ、馬鹿な事言ってんじゃ無いよアンタは!」
マツダからの『惚れちまうぜ』の一言に、思いっ切り顔を真っ赤に染めるサキサキさんってば、どんだけ乙女なんだよ。いや、乙女なんだろうけどね。
「なんだよサキ、そんなに顔を真っ赤にしちまってよ。すっげーウブな反応じゃないかよ……って、もしかしてサキってあんまり男から口説かれた事無いのか?だとしたらどれだけ見る目が無ぇんだ日本の男は!こんな好い女放っとくなんざ、馬鹿だろう勿体ねぇ!俺なら玉砕覚悟で何度だってサキの事口説きに行くんだがな。」
お国柄なのかマツダの性格故なのかは知らんが、恥ずかしげも無くマツダの奴は川崎を褒め称えつつ口説きに掛かってやがる。人の色恋沙汰に首を突っ込むのは俺の主義には反するが、どうにもマツダの言い方に俺は反感を覚えてしまう。何か挑発的に俺をチラ見しているのが、尚更その思いを強くする。
流石にそんな事を其処までされちゃあ黙ってられんと心を決める。そして一歩前へ進み出てマツダと正面から向かい合い、そして。
「そうだな、お前の言う通りだよマツダ。お前の言う通り川崎は好い女なのは間違い無いって俺も、そう思うわ。料理も美味いし、裁縫だって得意だし、小さい子供の面倒も良く見るし、ロングポニーテールが風にたなびく姿がまた格別だ!」
「うむ、おまけに普段は強気で姉御肌で気っ風が良いにもが関わらずちょっとばかり恥ずかしがり屋で、周りの耳目を集めてしまい恥じらう姿もまた初々しくて、堪らぬモノがあるのだ。昨日今日出会ったばかりの貴様では知りはすまいよ、ムハハハハッ!」
今日、ついさっき出合ったばかりのマツダが知らぬ川崎の為人について、俺は若干ドヤりながら得意気に聴かせてやる。そんな俺の行動の意味を察してか、または単に自分も俺と同様にマツダの言動に苛つきを覚えたのかは知らんが、材木座の奴もがソレに乗っかり追加補足を入れて来る。
「うぅ……へっ!そんな事ぁ俺だってサキとの付き合いが長くなりゃ知れる事だぜ!」
悔し紛れにかマツダはそう言って反論を試みるが、何ともそれが負け犬の遠吠えの様で心地良く感じる俺ガイル。
「フッフフッ……笑止な事よ。のう八幡よ。」
ドヤッと胸元で腕を組んだ材木座が態とらしく笑い、そして僅かな間を置いてからその笑いをその言葉通りに止めると、チラリと俺に目を向けて同意を求める。どうでもいいがこの男、俺以上に悪乗りをしはじめやがった。まぁ良いけどな、元は俺がやり始めた事だし。
「フッ、そうだな。俺と材木座はな、お前の知らないとても素晴らしい川崎の秘密を知っている。」
俺も材木座を真似て胸元で腕を組んでうっすらと両眼を閉じ、そうやってニヒルを装ってみせると、途端に表情に好奇を顕してコレにマツダが食い付いた。其れは恰も撒き餌にたかる池の鯉の様に。
「なっ、何だってんだよ……サキの秘密ってのは……っ!?」
「フッ……知りたいか、いやさ知りたかろう。」
マツダの好奇を感知した材木座がウデ組をしたままに、ぬっと半身を捻って顔をマツダに近付けて煽りを掛ける。此奴ノリノリである。
しかし、これだけ煽ったからか、マツダは言葉はハッしないがコクリと頷く。
「フッフッフ、ならば知らざあ言って聞かせやしょう。良いかよく聴けマツダ!なんと川崎はなッ!
グッと握り拳を右手に作り腰元に添えて、左手人差し指をマツダに突き付けて俺は高らかに宣言するように告げる。そしてその場に訪れるのは一瞬の静寂。
その静寂が支配するその場にはやがて、まるで車◯漫画的な雷鳴が背景に現れて響き渡り(俺達の中で)静寂の時間の終わりを告げ、そしてマツダが驚愕の表情を顕し。
「なっ、なにいッ!?何だよよその
そして叫ぶ。てか何だかんだとマツダの奴も意外に知ってるんじゃないか。
「ヘイ、マツダッ!ゾディアックファイターっテぇノは、宗教観にカチコチに凝リ固まッたアメリカが勝手に改変士たタイトルで、本当ハ聖◯士星矢ッてのガ正式なタイトルなンだゼ!トコロでハチマンにケンゴー、オレにモソコんトコロ教えテくれヨ!」
マツダの間違いじゃ無いが、日本とアメリカとの番組タイトルの違いをJrが突っ込みを入れつつ、俺と材木座に川崎のアレに対する回答を尋ねてくる。
「おう、実はな………」
俺達男四人はその場で円陣を組むように、ヤンキー座りでしゃがみ込んで話し始める。このあと直ぐに訪れる悲劇をこの時の俺達は知る由もなく、ってか同年代の男同士でこんなふうにバカ話し何かする事って殆ど無かったからな、それが案外楽しくて俺達は身に迫る根源的危機感に感付く事が遅れたのだろう。
「いい加減にしないか、このバカ共ォッ、連続うッ!覇王ォッ翔吼拳ッ!!!」
超至近距離、背後から迫る複数の巨大な気の放出と接近に遅れて気が付くがもう遅く、迫りくる轟音と熱量と衝撃の波に俺達男四人は包まれて、身体ごと数メートル吹き飛ばされ意識を手放した。
「ありかどうなサキ、とついでにデカいの。今日はそのパオパオカフェってところで厄介になるぜ。」
川崎から喰らった覇王翔吼拳のダメージから回復した俺達は、川崎経由でパオパオカフェの店長に連絡を入れてもらい、マツダの今夜の寝床としてパオパオカフェのスタッフルームを貸して貰える事となり、Jrがマツダを連れ案内してくれる算段と相成ったんだが。
「…………フン!」
自分が
いやまぁ、マツダの挑発に乗って要らん事を口走ったってのは解るんだが、だからと言ってほぼ零距離からの覇王翔吼拳ってのはやり過ぎじゃ無いでしょうかね。
「すみません沙希さん、このリサイクルにも廻せない産廃以下の兄は私が責任を以て、思いっ切り折檻しておきます。」
「うん。流石に僕も、女性のシークレットな部分の話をするなんて擁護は出来無いかな。」
と、思うのは俺だけの様で、我が天使達はそう思ってはいない様ですね。八幡哀しい。
「ああ。よろしく頼むよ小町。」
「はい!任せて下さい。覚悟しておいてね幾ら家族でもセクハラ発言は見逃せないからね、産廃にも劣るごみいちゃん。」
川崎から俺への処置を託された小町が、そら恐ろしい表情を見せる。光を消した瞳にはまるで屠殺場送りにされる豚を見る様な冷たさを湛えて。
川崎の怒りの鉄拳ならぬ、羞恥の覇王翔吼拳連弾のダメージから回復した俺達は、改めて川崎から連絡を付けてもらったパオパオカフェへと向かう事となったJrとマツダの準備が整うのを待って、この場から解散する運びとなった。
「そんじゃ、デカいの。フランコJrって言ったっけ、悪いが案内よろしく頼むぜ。」
「オゥ、まカシトきぃ!だっゼ、マツダ。」
まぁ当然の帰結として、パオパオカフェにて世話になっているJrがマツダを連れて行くんだが、一応マツダなりにJrに対しての感謝の意を伝えれば、Jrが1980年にテレ東系にて放送された「サス◯リア版ゾンビ」のネタをぶっ込んで了承する。このネタを教えたのは間違い無く材木座の奴なんだろうが、俺は敢えて突っ込まない。別に悔しいって訳じゃないんだからな!
グッと右手の親指でサムズアップに厳ついが人懐っこさのあるスマイルをマツダに向けるJrだが。
「……あのヨォお前ら、いい加減その呼び方どうにかなら無いのか。そりゃあ俺のファミリーネームはマツダだけどよ、俺にはれっきとしたショーンって名前が在んだからよ、そっちで呼んでくれよな。」
ボリボリと髪の毛を掻きむしりながらマツダは、俺達から名前では無く姓で呼ばれる事が不満な様で、名前で呼んでくれとの要求を出してきた。
「はて、これは異な事を言う男であるな、マツダよ。」
腕組のまま左手の指で下顎を擦りながら材木座がそう言うと。
「おう、材木座の言う通りだぞ、お前な『マツダ』なんて素晴らしい姓を持ちながら名前呼びを要求するなんて贅沢にも程があるぞ。」
俺もマツダに否を突きつける、いやマジで贅沢だろうが!なんて思ってな。
「はぁっ!?何だよそりゃ、『マツダ』なんて姓はこの国じゃ別に珍しくも無ぇんだろうが!何だったら自動車メーカーにもあるくらいなんだしよ。」
ちょいとムキになって捲し立てるマツダだが、珍しく無くも無いと思うぞマツダ。しょうが無いな、いやしょうが無く無いな。ここは一つビシッと説明をしてやらなければならないな。
俺はサッと、顔を動かさずに材木座に目線を送ると、それを受けて材木座が重々しく頷く。
「ムッハッハッハッハァッ、笑止なりマツダ。良いか、お主のその耳の穴を確っとかっ
そして、何時もの如く無駄にテンションを高くして、鬱陶しい笑いをカマしてマツダに告げると解説は俺に任せるときた。良かろう!いやさ良くぞ俺に振ってくれたな材木座、俺が山◯君なら今のお前になら座布団五枚くらい進呈するぞ。
更にそして、待たせたなマツダ。今こそ伝えてやろう、如何にマツダと云う姓が素晴らしいモノであるかをな!
「良いかマツダ、お前の姓はな俺達にとって特別な意味を持つ名前なんだよ。それは「ブラック・エンジェ◯ズ」いや、それだけじゃあ無いな、そう平◯伸二先生が描かれた全ての作品に於いて、ブッチギリの人気を誇る。どんなに意外で重大事であろうとも「いいんだよ細けぇことは」で済まされる、人外にして偉大なキャラクターであるところの「松田鏡◯」こと松田さんと同じ姓なんだよぉッ!!」
ズビシッと右手の人差し指をマツダに突き付ける。今でも、スピンオフ作品やクロスオーバー作品にも出演を続け、我らオタクにネタを提供してくれているグレートにビッグなキャラの姓。
お前はソレを持っているんだぜ。
しかし。
「って、知るかぁーッ!そんな事ぁッ!!」
どうやらマツダには俺達のプレゼンテーションがそのハートに響か無かった様だ。
こうして、俺達のこの年の夏休みは終わろうとしている。
この後俺に待ち受けるのは小町による折檻と、おそらく雪乃と結衣といろはに小町からの連絡がなされ、更なる恐怖が俺の身に降り掛かるまでが残された俺の夏休みの時間となるだろう。
ぶっちゃけショーンを登場させたのは、今回のネタをやりたかったが為でした。