やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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餓狼新作におけるロックのパワーゲイザーにも驚きましたが、まさかテリーと舞さんがストリートファイターⅥへの参戦発表にも驚きを超えて歓喜しましたが、ゲーム機を持たないのでプレイが出来ません。


やはり新学期の教室が騒然とするのは間違っている。

 

 さて、色々と予想外の展開も多く濃密な時間を過した夏休みをおえ、気分も新たに迎えた二学期開幕初日の学校、その我がクラスの教壇に立つ俺達の担任平塚静教諭(アラサー独身)の前学期には無かった眩い輝きを放っている。

 その輝きってのはアレだ、流石に俺たちくらいの年齢ならばある程度は察する事が出来る、男女間のアレやコレやがあってのナニやカニやがあっての結果の充実感により放たれている輝きだろう。

 

 「おはよう諸君、長い夏休みも終わったが全員揃って怪我も無く二学期を迎える事が出来て何よりだ。」

 

 凛とした声を響かせて俺達生徒に朝の挨拶を送る平塚先生は教室全体を一瞥すると、うむと頷くとその(かんばせ)に微笑を浮かべだ。

 その得も言えぬアダルティな微笑に教室内のあちこちから『ゴクリ』と生唾を飲み込む音が微かに響いてくる。そして、そんな男子達に突き刺さるのは女子からの鋭い視線。

 

 「さて、諸君も高校二年生であるし本日は新たな学期の初日に付き、これより体育館へと移動しお約束の全校集会とその後はHRを経て、放課後となる訳だ。」

 

 平塚先生はスーツの上に白衣を着込むって云う何の変哲も無いっ言うのも可怪しなものだが、変わらぬ何時ものスタイルであるにも拘らず、醸し出される大人の女性の色香をコレでもかと放出している様だ。

 まぁ、元からこの女性(ひと)はかなりレベルの高い美人ではあったのだが、女性としては如何なモノかと思うくらいに侠気溢れる為人なものだったので、今まで男子から「うん!?比企谷、何か言いたそうな顔をしているな!」と、俺の表情から何かを敏感に読み取ったのか、平塚先生は俺に鋭い視線を向けて問うてきた。てか何で俺なんだよ?

 

 「へっ!?い、いや別に俺は平塚先生から溢れてくるエロティシズムにクラスの男子達が中てられてヤバいとか考えて無いですよ。」

 

 「ほう、そんなセリフがスラスラと出て来るところを見るに、やはり君が良からぬ事を考えていたと云う証拠だろう。」

 

 俺の返答に、平塚先生は親指と人差指と中指を使い白いチョークをポキンと真っ二つにへし折りつつ咎めてくる。コレって器物破損の現行犯じゃね?

 

 「イヤイヤまさか、ウチの兄貴の想い人にそんな(よこしま)な事を考えたりしませんよ。てか俺はもう今でもう現状手一杯っすからね。ってかそんなHBの鉛筆をベキッ!とへし折る事と同じ様にチョークをへし折るのは如何なものかと思うんですけどね。」

 

 俺は努めて冷静に平塚先生にそう返しながら、チラリと結衣の方へと目を向ける。丁度彼女も俺を見ていた為に意図せずして、俺達二人の視線は絡み合ってしまった。

 ニコリと満面の笑みを俺に返してくれる結衣なのだが、しかし彼女の眼には在るべき輝きが鳴りを潜めてしまってある。あぁ、こりゃ後でお話しようねと暗に語っているって訳ですね。八幡それ知ってる、何かメッチャ“身の毛のよだつ”なんて生易しい言葉じゃ形容出来ないくらいに怖いやつが待ってんだよね。

 

 「全く君は減らず口は、休みを経ても変わらんのだな。」

 

 後から来るであろう恐怖に付いては後で考えるとして、取り敢えず今は眼の前にある危機についてだ。俺の発したセリフに反応し平塚先生は頬を微かに朱に染めていた。その原因はまぁ、兄貴の想い人って俺が言ってしまった為だろう。どうなこのまま平塚先生からの追求と怒りのボルテージが鎮まってくれれば万々歳なんだが。もう一手何かないか!?

 

 「だよなぁ。比企谷君にとっちゃヒガシさんは兄貴同然の人なんだから、先生はある意味比企谷君の未来の姉貴になる人だべぇ!しかも比企谷君にはガハマちゃんや雪ノ下さんといろはすも居るんだし、そりゃマジ手一杯っしょ先生。」

 

 それは俺に届いた福音か。いつもの調子で“べぇ”だの“っしょ”だのと気の抜けそうな口調で戸部が合いの手を入れてくれた。良しっナイスだ戸部!お前の存在を知ってから早数ヶ月、俺は初めてお前に対して感謝の念を抱いたぞ!と言いたいところだが、サラッと戸部のヤツは俺と彼女達との関係を暴露しやがった。

 しかも何気にコイツ、結衣やいろはの事をあだ名で呼んでるし。って何だかこんな言い方だと俺が何だか束縛強い系ヤローみたいだが、まぁ多かれ少なかれ人間ってのはそういった側面があるかもだし、仕方が無いっしょ!と頭の中が何時の間にか戸部弁に支配されてたわ、恐るべし戸部弁。

 

 「えっ!?それってマジなん?有り得ないだろう!!」

 

 戸部の発した要らん一言が波紋疾走(オーバードライブ)し体内を流れる如く教室中に伝播してしまい。クラスの生徒の大半の視線が俺と結衣に集まり、一部男子生徒の呪詛めいた呟きや一部女子生徒からの黄色い(イエロー)な嬌声が発せられる中で、一人の男性が叫んだ。

 それはこの学校の多数の男子生徒の声を代弁する物なんだろうな。その気持ちは解る、何せ学校中の男子生徒の多くが知るだろう雪乃と結衣といろはの名が出たんだからな。

 

 「こんな事で嘘なんて言わねぇって、マジもマジの大マジっしょ!」

 

 「えぇッ!!??」

 

 戸部の追撃に男子達の更なるどよめきとブーイングの大合唱が響く、俺みたいな眼つきの悪い男と学園モノのヒロインが張れるレベルの女子が、良い仲にあるなんてそりゃそう言いたくなるのは解るんだが、そのヘイトを向けられる俺としは堪ったものじゃ無いんだよ。切に願うわ、マジどうにかしてくれこの状況ってな。

 

 「ちょっとアンタ!戸部だったっけか、いい加減そのくらいで黙っときなよ。」

 

 『ダンッ』と机を叩く音を響かせて俺の切なる願いが通じてか、世紀末はとうに過ぎてしまったが俺にとっての救世主が現れた。薄青の長い髪をポニーテールに纏め、常ならばその(まなこ)は眠たげに細められているが、今この時は『ギンッ』と苛立ち混じりの鋭い眼光を放ち戸部にメンチをくれている。

 

 「へっ?川崎さん、何だよいきなり、そんな顔されちゃ怖いべぇ。」

 

 戸部はその声の主である、川崎沙希の一喝に冷や汗掻つつタジタジとなる、まぁ無理も無かろう。川崎のまるで、現在は国会議員として活躍する某女優さんの若かりし頃の役柄宜しくの一喝だしな。そりゃ怖かろうってものだ。

 

 「アンタがヒガシさんの事をリスペクトしてるのは何となく知ってるし、比企谷の事も悪く思ってないってのもわかるけどね、アンタのその暴露話が由比ヶ浜達にも飛び火してんだよッ。こりゃ流石に人権侵害だよッ!」

 

 川崎の戸部に対する断罪の言葉が響く、全くマジでサキサキには感謝感激雨あられだな。その漢前な生き様に俺は、そこにシビれる!あこれるゥ!

 

 「そうだよ戸部君!お姉さ、川崎さんの言う通りだよ。デリカシー無さ過ぎだよ、サイテー。」

 

 「だよね!戸部君酷い!」

 

 まぁ、俺のシビれとあこがれの念は置いといて、空かさずそんな川崎の一喝に合いの手を入れるのは、このクラスに存在する川崎にゾッコンで多分LOVEなシスターズの面々だ。別に彼女達が、ポリコレに配慮したキャラクターでな無い事を明記しておく。

 

 「えぇ〜、ちょっとちょっとぉ、女子のみんなぁ、そんな事言わないでくれよぉ………」

 

 流石に女子達からのブーイングには戸部は己の不利を感じて、たじろぎを見せる。そう女子ってのは集団になると途轍も無く固い団結力を見せるんだ。その団結力の前には俺達男のささやかな抵抗など、無に等しいってなものだ。良かったな戸部、こう言う事は早めに経験しておけば後々の経験値として活きてくる事もあるかも知れんぞ。知らんけど。

 

 「あんさぁ戸部、川崎の言う通りだよ。アンタがヒガシさんの事すごい尊敬してんのは、あーしも知ってっけどさぁ、だからって他のみんなにまでアレコレバラすのは頂けないっての。ヒキオだけじゃ無く結衣にも迷惑掛かってんじゃん。ちった自重しろし!」

 

 「それに男子達にも言っとくけどさぁ!雪ノ下さんと結衣といろはの三人が、ヒキオの事を好きになってんのはヒキオがそんだけの男だって事っしょ。だったら、あーだこーだ言って嫉妬しめないでアンタらも自分を磨いてみたらどうなん!?まあさぁ、ヒキオはヒガシさんや舞さんにアンディさん、それにテリーさんにも認められてる男だし、そう簡単にゃ越えられないだろうけどね。」

 

 「っ………」

 

 自席から教室内をグルリと見渡し男子達を威嚇しながら、あーしさんは川崎にも負けない貫禄を示す。

 それにより、俺にブーイングを送っていた男子達は黙らされる。現実を見て男子達は結衣達に対して何かしらのアピールを行っていた訳でも無いのだし、彼女達と関係を築いて来た訳でも無い。まぁ、本人達もそれを内心自学していたからこそ、あーしさんの啖呵に対して何も返せないって事だ。

 

 「アンタらも、好きな子が居んならダッサイ嫉妬なんてしてないで、自分を磨いてみる事から始めりゃいいし!」

 

 トドメの一撃とばかりの一言を発するとあーしさんは、もうこの件に関して言うことは言ったし後は知らんってな感じに口を噤むと姿勢を戻し、教壇の方へと向き直った。バツの悪そうな男達に一瞥をくれる事も無く。少なくとも、コレで男連中から俺に対して面と向かっての雑言は鎮圧された様なので、二人には感謝の念を贈ろう。

 しかし、これは俺の個人的見解としてだが、もしかすると俺の知っている範囲内での同級生の中で、この夏一番成長したのはあーしさんかも知れないな。以前は、と言っても俺が直接関わったのはテニス部での一件が初めてなんだが、あの時は只の我儘なだけの身勝手な姉ちゃんとの印象しか抱かなかったんだが、人は変わるもんだ。

 いや、そう言えばあーしさんって前から腐女子さんに対してやたらと面倒見が良かったな。案外彼女の本質は面倒見の良い、母ちゃん気質の気の良いヤツなのかも知れんな。

 そんな風に俺があーしさんに対する人物評を脳内で展開していたら、リノリウムの床に擦過音と、ガタッと衝撃音を微かに響かせてお約束のごとく立ち上がる男子生徒が一人。

 

 「まあ、優美子もみんなも少し落ち着こう。確かに川崎さんの言う通り戸部にも落ち度はあっただろうけど、戸部も根は悪い奴じゃないんだから、みんなもこの辺で許してくれないかな?」

 

 そのキャラクターとしてのお約束を忠実に守るのは、誰だろうグラスの王子様こと葉山隼人。そしてこれまた如何にもコイツらしい発言で以て戸部とクラスメート達との間を取り持つ様なセリフを、つらつらと吐き出す。俺に向いていた悪感情を払拭する様に動いてくれた、川崎と三浦が作ったムーブメントな流れに上手く乗って葉山が締める。マジでこの男は機を見るに敏ってか、自分に求められている役割を理解しているんだろうな。俺にはあまり真似出来そうに無いな。

 

 「まあ、そうだよね。葉山くんがそう言うなら……だよね。確かに考えてみたら私達もちょっと、ねぇみんな。」

 

 そして生まれるトップヒエラルキーに君臨する者に迎合する大衆。それは恰もカリスマに心酔すし自らの思考をも捻じ曲げるかの如しだ。もうね俺良く解るわ、ちょっと顔が良くて弁が立てば簡単にカルトな教団の創始者になれるってな。

 それがあれば民衆のコントロールなぞ容易いものだ。まぁ俺の場合はこの眼が怖いと恐れられて、話の一つもまともに聴いちゃ貰えんのだろうがな。

 

 「うん。そうだね、確かに戸部くんちょっとお調子者だけど、悪い人じゃないしね。」

 

 「だねぇ。」

 

 そして女子達からの戸部へのヘイトの調伏され、この場にちょっとした平穏な空気感が形成される。

 女子のうちの幾人かは、この空気感を生み出した張本人たる葉山に、おそらく信頼感からくるのだろうが陶酔とまでは言わないが、微かに頬を染めて葉山に視線を送っているのに本人は気が付いているのやら。

 

 「ははは、みんなありがとう。そう言う訳だから戸部もここはみんなに一言謝罪しなきゃだね。」

 

 「うっ、そう言われると、まあ確かに俺って………ちょぉっと、調子に乗って……べぇ〜、ゴメン比企谷君にガハマちゃん。」

 

 「と言う訳で、みんなもこの話はこれまでって事で、比企谷も納得してくれるかな?」

 

 「おう、まぁそうだな。第一俺は何てか思わぬ方向から流れ弾が飛んで来たみたいなものだしな。」

 

 俺の返事を聞くと葉山は微笑んで頷き、さっと手を一振すると先のあーしさん同様着席した。その仕草が如何にも陽キャっぽくてちょっとばかり反感を抱いてしまったのは、俺の若さからくる度量の狭さ故などとは思いたくは無い。

 赤い人だってこんな時は『フッ、認めたくは無いものだな。自分自身の若さ故の過ちと言うものは』と同意してくれるだろう。

 しかし葉山のヤツ、夏休みの千葉村での一件以来何処となく屈託を抱えている印象を持っていたんだが、今のあいつの態度や行動を観るにそれも解消出来たんだろうか。まぁ、俺は葉山の事をよく知っている訳でも無し、戸塚や一応材木座程に友誼を結んでいる訳でも無いし、まぁどうでもいいかな。

 

 『しかし、八幡は知らなかった。この時葉山の中で密かに蠢きはじめた、黒い存在の事を。それが後に動乱を産む事態になろうとは、この時は露ほども想像など出来なかったのだ』

 

 三文小説でもあるまいし、なんて事態が起こる筈も無いだろう。

 

 

 

 事態も収まり平穏が戻り、平塚先生は注意事項の説明を終え生徒達に体育館への移動を促し、その指示に従い皆席を立ち教室から退出していく中、俺は平塚先生から残る様に言いっかってしまったのだが。はて俺は何かお説教を受けなければならない程の粗相をやらかしてしまったのだろうか。

 

 「ハッチン、あたし外で待ってようか?」

 

 俺を心配してくれてか、結衣が教壇へと向かう最中にそう声をかけてくれた。

 

 「いや、みんなと一緒に先に行っててくれて構わないぞ。」

 

 しかし彼女のその優しさは有り難いが、まさか先生が俺の事を取って食うって訳でも無かろうし、心配は無用だ。

 

 「うん分かった。じゃあ先に行ってるね!」

 

 右手をひらひらと振って結衣は、踵を返しクラスメート達の後を追うように廊下へと向かっていった。はにかむ様な微笑を浮かべて彼女は一度此方を振り返り再度手を振る。その可愛い仕草に俺のフォーサイクルエンジンがドクンと高鳴るビートを奏でる。

 

 「全く、お熱い事だな君達は。そりゃ君に、他の男子生徒達の嫉妬が集まるのも致し方無しだな。」

 

 クラスのみんなが出払って俺と二人しか居なくなった事を見計らい、平塚先生は“フッ”と微笑ましいものをみたと言わんばかりに笑みを浮かべて、宣った。

 全く変わったものだなこの人も。以前ならば、男女が仲良さげにしている場面に出会せば血涙を流さん勢いで羨み涙を流していたってのに。

 

 「まぁ、そうっすかね。しかし先生も変わりましたね。コレは所謂持つ者の余裕ってやっですか?いや良かったっすね先生、本当に先生の下に春が訪れて。」

 

 大人の余裕を手に入れた平塚先生へと、俺は反撃と祝福を兼ねた言葉を贈る。すると平塚先生は鳩豆な表情を見せる。人を撃つならば撃たれる覚悟を持って事に当たるべきである。常在戦場、当方に迎撃の用意ありですよ先生。

 

 「フッ、君のその減らず口も相変わらず健在のようだな。全く少しは素直に私達のことを祝福してくれても良いのではないかね?」

 

 測ったわけでは無いが、四秒程度の時間呆気っていた平塚先生は正常を取り戻し、余裕の微笑を見せてそう言う。

 

 「いやまぁ、バカは死んでも治らないって植◯等さんも歌っていましたし、それも俺の存在意義(レゾンデートル)ですし存在証明(アイデンティティ)なんですよ多分。いゃちゃんと祝福していますよ俺も。」

 

 「全く。そんなものに意義を見出してどうするのだね。君に愛すべき者も居れば、目標とする偉大な人達も居るだろう。それをこそ存在意義(レゾンデートル)とすれば良かろうに。」

 

 しかしやはり久し振りだが、この人とこんな言葉のキャッチボールを交わすのは嫌いじゃない。

 

 「いや、それは勿論そうなんですけど。それはソレこれはコレってヤツですよ。ハハハ!ってか先生こそどうでしたか?あんちゃんとの短いけれども熱い、夏のアヴァンチュールは?」

 

 だからと言おうか、こんな下世話な話を振るのも楽しかったりする俺ガイル。

 

 「はぁ〜っ……君と言う奴は。短いとか縁起でもない事を言う物ではない!第一私とジョーさんとはまだ出会ったばかりなのだし、互いに生活する場所は離れては居るけれども絆を深めでゆく段階なのだよ今は。それに約束もあるのだよ、君達の卒業を見送るまでは此処で君達を見守るとね。」

 

 俺の下世話な質問に平塚先生は呆れた顔をしながらも答えてくれた。あの日あんちゃんと交わした約束を律儀にも先生は確りと守る気でいるのだ。本当にこの女性(ひと)はマジで漢前だよな。だからこそ其処がジョーあんちゃんの琴線に触れたのかもしれないな。まぁそれが無くてもこの人は見た目が美人だから、何も知らなくても鼻の下を伸ばしていただろうけど。

 

 「しかし……わずか三日間だったが、ジョーさんと共に彼の普段の生活に触れてみて、やはり一人の男性としても人間としても彼が素晴らしい人物である事が良く理解で出来たよ。」

 

 それはだが、平塚先生もその辺はあんちゃんと同じろうかな。年代的に伝説の餓狼達は永遠のヒーローって言っていたし。ミーハー感覚でジョーあんちゃんに迫るとかして、下手撃ちゃドン引きされてた可能性も多分にあっただろう。

 

 「彼の下で学ぶ現地の子供たちの何と活き活きとしていた事か、そしてどれ程師として尊敬されているのかも知れたよ。残念ながら私はタイの言語をマスターしていないので、会話は成り立たなかったのだがジョーさんのサポートとボディーランゲージで何とか出来たよ。ジョーさんが言うには私は子供達に、あちらの言葉で女将さんと呼ばれていそうなのだけれど、いやはや何とも照れ臭いものだな。」

 

 はい、ごちそうさまです。思いっきり惚気を披露する平塚先生に俺がドン引きしてしまうわ。

 

 「そうっすか、よかったっすね。しかし、ならその子らはある意味では俺にとっては弟弟子にあたるって事になるんですかね?まぁ将来的にその子らと手合わせするのも面白そうですけどね。こりゃ俺も負けていられない様っすね。」

 

 俺はその惚気に中てられて平坦な声で答えてしまったが、まぁ良かったと思う気持ちに嘘は無い。あんちゃんと平塚先生が幸せになってくれるなら重畳ってものだし。タイで、あんちゃんが育てている弟子たちといずれ手合わせをしたいってのも、正直な気持ちだ。まぁ、お気持ち表明ナウ。

 

 「ふふ……それは格闘家としての性というものなのかな。君も彼らも向上心があって結構な事だな。おっとそうだった、そのジョーさんだがね。日本を立つ間際に君に贈られたアロハシャツを喜んで着ていたよ。余程嬉しかったのだろうね、君からの贈り物が。」

 

 慈しむ様な声音で平塚先生は何ともこそばゆい事を云ってくれる。

 

 「たく……あのオッサンは、ちゃんと洗濯してるんですかね。」

 

 そんな事を言われた日には頭を掻いて誤魔化すしか無いじゃ無いですかね。小っ恥ずかしい事この上ないじゃないですか。

 

 「ハハハ、照れ隠しとは言え素直に喜べないのか君は。だがまあそれはそれとして、当然だがちゃんと洗濯もしていたよ。それに君はシャツを三着送ったのだろう。だから日々ローテーションでシャツを着ていたよ。しかしその憎まれ口は感心しないなと言いたいことろだが、君とジョーさん、だけでは無いが深い絆で結ばれている故にかな。」

 

 更に追い討ちをかけてくる平塚先生に俺はもう、何も返答が出来ないじゃないですか。そんなに俺を恥ずか死させたいのだろうか、甚だ不本意極まりない。

 

 「ハハハハ、相変わらず君は褒められる事に慣れないのだな。まあそれにより増長してしまうのは論外だが、少しは素直に喜んでも構わないと私は思うよ。」

 

 ポンと俺の左肩に手を置いて平塚先生は、男臭ささえ感じられる笑い声を発してそう言うが、こればかりは慣れるしか無いんだろう。

 

 「さて、比企谷。それでは私達も体育館へと向かうとしようか。」

 

 そして先生は俺の肩に手を置いたまま体育館へと移動を促す。

 

 「………うす。」

 

 簡潔に俺は返事をし平塚先生は俺の肩から手を離し、共に教室を後にする。二学期最初の一日は少し、いや“かなり“朝から騒がしく始まってしまった。コレはこの新たな学期が波乱に満ちたものになると云う予告を兼ねた序章なのか、それとも平穏に過ごす為の厄落としの為の不運の先払いなのかは、神の“味噌汁”だ。それは美味なのかどうかは知らん。

 




最近ふと思ったのですが、仮面ライダーWに登場する人物『照井竜』の名前の由来は、照井(テリー)と竜(リュウ)だったりするのでしょうか?
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