やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
KOF14からテリーのボイスが、長年テリー役を努めた、橋本さとしさんから葉山の中の人に替わっていたんですね。
橋本さんの声がメッチャ好きだったんですが、残念です。
新しいボイスもカッコいいんですけどね、オールドファンとしてはテリー=橋本さんだっただけに……。
ひょんな事から入学式の朝に出会った少女、由比ヶ浜結衣と母ちゃんの策略により俺は友達となった。
それは俺にとって人生初の友達だ、それが寄りにも寄って女子、此れまで兄貴達以外の他者と親しく付き合った事の無い俺にとって、改めて他人と付き合う事は割とハードルが高いんじゃ無いかと思う訳で。
でもまぁ悪い気はしないかな、出会ったばかりだが彼女の為人は悪く無いと思う。
俺の説教臭い忠告も素直に受け取ってくれて、早速改善に取り組むと宣言してくれたし。
正直此れはすっげぇ嬉しかった、何より中学迄の同級生の女子なんかは俺と眼が合っただけで、怖がって逃げられたりしていたからな。
まぁ一人だけだがたまに絡んで来る奴が居たけど、彼奴は妙にテンション高くて付き合うのに疲れる奴だったんだよなぁ。
彼女、由比ヶ浜は内心では俺の眼を怖れてた様だ、なのにそれでも確り向き合ってくれたんだからな、正直嬉しいさ。
しかもその容姿も中々の物だ、まだ何と云うか垢抜けていない感は有るが、メイクとか服装のコーディネートっての?
そういうの覚えたら化けると思う。
『ハハハッ、そうかとうとうハチマンにもガールフレンドが出来たか、今度俺達にも紹介しろよな!』
早速その晩、母ちゃんによりその話を皆に広められた。
テリー兄ちゃん始め、皆それぞれ同じ様な事を俺に言う訳だが、畜生こっぱずかしいぜ。
クッ、母ちゃん覚えてろよ毎晩深夜十二時に枕元に新聞を届けてやるからな。
『しんぶ〜ん』、精々恐怖に恐れ慄けばいいさ……つかそんな事やってバレたら、俺の方が後が怖いな、多分母ちゃんに殺される。
肉体的にも経済的(小遣い)にもな、うん、この計画は無かった事にしよう、ぶっちゃけそんなにネタも無いしな。
「所で八幡よ、そんなに凄いものなのか、その結衣ちゃんママさんの2つのお山はよ?」
親父は由比ヶ浜のお母さん(母ちゃん命名、結衣ちゃんママ)のお山について俺に聞いて来た。
しかし母ちゃんよ、結衣ちゃんママってさ、ドラマとかに出て来る幼稚園児の子供を持つ母親達(ママ友って奴?)の呼名じゃ無いんだからさ、違う呼び方考えた方が良いんじゃね!?
「あぁ、そりゃもう見事な物だったぜ親父、アレこそ正に霊峰、富士のお山を俺はこの眼に焼き付けたぜ。」
「…まじか、クッ、俺も有給取れば良かった……。」
オッパイについて語り合う父と息子の図、それは傍から見ればさぞかし滑稽で女性陣から見れば蔑みの対象となる物だろう、内心俺が女子だったとしたらきっとそう思う。
それが、女性陣を含む家族団欒の場なら尚更だろうな、さっきから母ちゃんと小町の視線が、まるで物理的なダメージを俺達男陣に与えようとしているかの様だ。
だが、母ちゃん、そして小町よ、例えそんな眼を向けられたとしても俺達のオッパイに対する熱い思いは止められないのだよ、残念だったな。
「うわぁ、最低だよお父さんもお兄ちゃんも、小町的に超ポイント低いよ、大幅下落だよ。」
うぐぅ、小町の言葉ナイフが俺と親父の精神をグリグリと削る、ヤバイ少しばかり調子に乗りすぎたか、やはり視線よりも言葉の方がダメージがデカい。
「…オッパイ、オッパイってあんた等親子はそんなにオッパイが好きか!!」
母ちゃんの怒りに満ちた怒声が、俺と親父に叩き付けられる。
当然俺達の思いは、そしてその答えは決まっている。
男の探究心とは尽きないのだ、例えなんと言われようとな、俺達はまだ登り始めたばかりなんだ、この男坂をよ。
「「サー、イエッサーマム、大好きであります!!」」
それに対する俺達の返答が、重ってしまった。
瞬間、心重ねた訳だ……キモいな…うんキモい。
その俺達の返答に母ちゃんは、一旦クワッと眼を見開いたかと思えば、軽く俯きフルフルと身体を震わせ……
「……そんなに…そんなにオッパイが好きなら、履歴書の名前のよみがなの欄と趣味の欄にオッパイ大好きとでも書いておけ、ド畜生ッ!」
怒りゲージを満タンにした、母ちゃんの絶叫が我が家のリビングに木霊する。
あぁ母ちゃんが壊れていく、あの日のダッドの様に………。
あっ、そういや家の親父は元から壊れていたわ、あの日どころか最初からな、八幡ったらうっかりさん、てへっ♡
てゆうか、あの日っていつなのさ?
「おい八幡、どうするよ、お前これからはオッパイ大好きに改名しなきゃならねえじゃないかよ、大変だなおい。」
「イヤイヤイヤ、何他人事みたいに言ってんだよ親父、母ちゃんは親父に言ったんだからな。」
不名誉な名前を互いに押し付け合う父と子、そこにあるのは醜い自己保身のみだ、美しき家族の絆が介在する余地など其処には無い。
「…この馬鹿親子は、小町やってしまいな!」
俺と親父の醜い争いに業を煮やした母ちゃんは、小町に俺達に対する刑の執行を言い渡した。
「アイアイサー、へっへぇ、逝っくよぉ〜花蝶扇!」
母ちゃんへ最敬礼をし小町は、二つの扇を俺と親父に向けて放つ、舞姉ちゃん直伝の必殺技、花蝶扇。
高速で飛来するそれを、俺は咄嗟にガードしダメージを軽減、だが親父はガードなど出来る筈も無くボディへヒット。
おいおい、俺は兎も角として、親父には手加減したんだろうな小町さんや。
「うぅ……。」と腹を抑え呻く親父の様子に戦慄を超えて、お兄ちゃんドン引きだよ小町ちゃん。
「……舞姉ちゃんと云いお前と云い、何処から扇を出してんだよ。」
「そんなの不知火流の秘伝なんだから教える訳無いじゃん、それに知らないのお兄ちゃん?女の子には26の秘密があるんだよ!」
最後はバチンとウインクを決めながらとんでもな事を宣う。小町ェ〜。
「…お、れの、天使な娘がいつの、間にか…Vスリャーな、件…ガクリッ…」
親父は最後の力を振り絞りその一言を残した。
「親父…最期の最後までカッコつけやがって(ネタに走りやがって(笑))アンタはやっぱり俺の親父だぜ。」
親父はうずくまった。
俺がが無意識のうちにとっていたのは「敬礼」の姿であった。
涙は流さなかったが無言の男の詩があった。
奇妙な友情があった。
まぁそんな感じて高校入学初日は、恙無く?過ぎて行った。
因みに、その日の夕方、都筑さんとその雇用主の名代の人と葉山とかって名の弁護士さんが、我が家に挨拶に訪れてくれて、改めて謝罪をされたんだが、悪いのは俺の方なんだから謝罪等不要と伝えるも、先方も譲らず、まるで千日手の様相を呈しそうな雰囲気だった。
俺には良く分からない世界なんだが、相手方にも面目とか立場とかが有るのだろうか。
何にしても面倒な話だ、そんなモンはとっとと終りにしなけりゃな。
だから俺は1つの提案を先方に伝えたんだ。
「あの、じゃあこうしませんか、このままじゃ埒が明かないですし……あなた方に俺からですねチョットした要求をします。」
「……マッ缶を一年分、其れで手打ちにしませんか、それ以上の要求はコチラからはしませんので、何なら念書に署名捺印しますよ。」
家の家族からはまるでアホな奴を見るかの様な視線を、先方からは呆気に取られたかの様な視線を向けられてしまったんだが、なぜ?、解せぬ。
ココは千葉だぜ、マッ缶と言えば千葉のソウルドリンクだ。
千葉人の血はマッ缶で出来ていると言っても過言ではあるまい。
九州人の血がブラックモンブランとミルクックで出来ているようにな。
この辺りを落しどころにすんのが良いと思うんだがな、決して俺が毎日タダでマッ缶を飲める様に企んだ訳では無いんだからね、ホントだよハチマンは……正直者だもの、多分。
先方は俺の提案を持ち帰り、改めて主である雪ノ下家の当主と検討し対応すると述べ我が家を後にした。
あっ、今迄言及し忘れていたが、あの時車に乗っていたお嬢様は、雪ノ下雪乃と言って、新入生代表として入学式の挨拶をする為にあの車に搭乗していたそうだ。
何でも入試の成績トップで入学したそうだ。
中の下だった誰かさんとは大違いだなとキャぜルヌ先輩に言われそうだ。
…俺に親しい間柄の先輩なんか居ないんだがな。
残念ながらなのかは分からんが、由比ヶ浜と俺とは同じクラスでは無かった。
無かったんだが、校内で会うと、俺を見掛けると由比ヶ浜は、嬉しそうな笑顔で俺に駆け寄って来ては話し掛けてくれるんだが、俺には気の利いたトークなんぞ出来ないし、退屈させてしまっているんじゃ無いかと思うと申し訳無い気もする。
なもんで、専ら俺は由比ヶ浜が話す事に相槌を打ったり、突っ込みを入れたりするだけになる事が多い。
「……て、ギャルっぽい娘と仲良くなってね、メイクとか教えてもらってんだよ。」
「…そか…けどよ程々にしとけよ、ギャルとかって行き過ぎてビッチくさくなったりすっからな。」
昼休み、校内探索によって発見した、俺のお気に入りの場所、校舎特別棟自販機側の、ベストプレイスと名付けたそこで昼飯を食い、昼のひと時を過ごすのが雨天時以外の昼休みの過ごし方だ。
屋外だから当然雨の日は教室で過ごすんだが、教室ではいつもの如く知らない人と接するのが苦手な俺は、気まずい気持ちになるんだよな。
態々、中学迄の知ってる奴が一人も居ない学校を選んで総武高校へ入学したんだから、心機一転、新たな関係を築くべく行動を起こせれば良いんだろうが、其処はまぁ…俺だからなぁ。
「あ〜、うん、そだよね…やりすぎは駄目かな、やっぱり…。」
「おぅ、そうだぞ由比ヶ浜、人間何事も限度ってのを見極めないとな、TPOは弁えるべきだそ。」
等とファッシセンスE(超ニガテ)の俺が言っても説得力もクソもねぇけど。
「……えっとさ、ヒッキーは茶髪とかってどうかな、やっぱりそのビッチって思う!?」
「別に、その人に合ってりゃ悪く無いんじゃね、現にお前の母ちゃん…の場合は栗毛色かな?知らんけど、似合ってんじゃん、だからよあんまり極端にならなきゃ良いと思うぞ。」
「……てか、ちょっと待てヒッキーてのは俺の事か、俺は引き篭もりじゃねぇぞ!」
由比ヶ浜の奴、なんてとんでもねぇ渾名を付けやがるんだ、人を引き篭もり扱いしやがって、お前は俺をそんな眼で見ていたのか!
「え〜、違うよ!あたし引き篭もりだなんて思って無いからね、比企谷だからヒッキーって、なんか可愛いなって思ったんだし…。」
あぁ、コイツのネーミングセンスはアレだな、紅魔族レベルなんだな。
犬の名前からしてサブレだからな、その時点で気付いて然るべきってか。
「あー、因みに聞くけどよ、お前自身に渾名を付けられるとしたらどんなのが良いんだ?」
「あ、あたしの渾名?、う〜んそうだなぁ…」
さてどんな答えが飛び出すか、てか人差し指を口元に置いて考えてる姿が、アホっぽいぞ由比ヶ浜。
だが…クソっ、それを可愛いと思ってしまう俺がいる、あのあざとい中坊ならそんな仕草も計算しての振る舞いなんだろうが、由比ヶ浜のは多分天然なんだろうな。
「あ!あたし由比ヶ浜結衣だからさ、『ゆいゆい』とかどうかな由比ヶ浜のゆいと結衣のゆいでさ!」
「……………。」
俺の初めて出来た友達が紅魔族レベルのネーミングセンスだった件。
「お前の将来の旦那の名前は『ひょいざぶろう』で生まれてくる子供には『めぐみん』と『こめっこ』と名付けるんだな……。」
俺は由比ヶ浜をじっと見つめる、哀れみを湛えた眼で、それはもう大層な哀れみを、この眼に込めて。
「なっ!あたしそんな変な名前の人と結婚しないし!絶対なんだからね、それにあたしの旦那様の名前は、ハッ…チ…あぅ〜っ………。」
真っ赤な顔で怒りながら『ひょいざぶろう』さんを否定するガハマさん、その顔を更に赤くして告げられた名前は『ハッチアウ』!?それってまだ『ひょいざぶろう』の方がマシじゃねえの?
真っ赤な顔で俯き、小声であうあうと呟く由比ヶ浜、『お〜いガハマさん早く現実へ帰っておいでよ、地球は良いところだぞ、だから早く戻って来〜い!』
あうあうモジモジと中々現実へ帰還しない由比ヶ浜の様子に、月にでは無くガハマに吠えようかな、比企谷八幡はそう思った訳で。
つか、俺はさっきから何度か由比ヶ浜の事『ガハマ』って言ってるけど、もう其れで良いんじゃね、由比ヶ浜の渾名はガハマで決定だ。
由比ヶ浜とは週に何度かベストプレイスで一緒に昼休みを過ごしたり、一緒に下校したりと交流を続けている。
しかしそれ以外の人との交流は未だ無しだが、まぁその辺は気長にやって行こうかと思う所存だ。
そして入学間もないある日の放課後の事、俺は自転車を押しながら校門を出た所で、思いがけない人物に声を掛けられた。
因みになんだが、自転車の名前は熟慮の末にダクネス号に決定した。
「あ〜っ、やっと見つけましたよせ〜んぱい!」
何だか俺の左後方から、せ〜んぱいとやらに呼び掛ける声が響く。
せ〜んぱいさん、呼ばれてますよ。
俺はまだ一年生だからなせ〜んぱいなんて呼ばれる筈はないからな、多分2年か3年の人だろうな、呼ばれてるのは。
「ちょっとちょっと、可愛い後輩が呼んでるんですよ無視しないで下さいよ、せんぱ〜い!」
そっすよ、無視は良く無い。
されるとすっげぇ悲しいからな、テリー兄ちゃんと出会う前の俺は、クラスの皆に無視される度に、仮面の下の涙を拭っていたものさ、テックセットはしないけどね。
てか、早く応えてあげてよ、せんぱ〜いさん。
「もう!無視しないで下さい先輩。」
その声と同時にダクネス号を押していた俺の左腕が引っ張られた、えっ?何事なのん、何で俺の腕が引っ張られてんのかな。
…う~~ううう あんまりだ…HEEEYYYY あァァァんまりだァァアァ AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOO HHHHHHHH!!おおおおおおれェェェェェのォォォォォ うでェェェェェがァァァァァ~~~!!
「可愛い後輩ちゃんがわざわざ、先輩を訪ねて遥々総武高校迄訪ねて来たんですからね、無視するなんてあんまりじゃないですかぁ!」
さっきから呼ばれていたのは、俺でした。
そして俺を呼んでいたのは入学式の事件に関わった、あのあざとい中坊。
亜麻色の髪の女子中学生、今日はジャージでは無く普通に中学の制服を着た、え〜っと、名前は。
「…何だお前か、久し振り?だな、百式だっけ?」
「うわ〜、何なんですかそれ、私あの時ちゃんと名乗りましたよね、私の名前は一色いろはですよ!い・ろ・は、ちゃんと覚えて下さい良いですか、私の名前を金色のモビルスーツみたいに言わないで下さい、取り敢えずそこから99引いて色をつけてやり直してください、ごめんなさい、てかもう覚えましたよね、はい!ちゃんと呼んでみてください、私に続いて言って見てくださいリピート・アフタ・ミー!」
「可愛い可愛い、いろはちゃん!」
「……すまんな、いっ、一色…てか良く噛まずにそれだけ話せるな、つうか何気にガンダム知ってるんだなお前…」
突然俺の前に現れたあざとい中坊、一色いろは。
何の用が有っての訪問なのかは分からんが、面倒くさい事態になりそうな予感がヒシヒシと伝わってくる。