やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
入学式の日の事件で出会った、あざと可愛い中房、百式改め一色いろは、ソイツが今俺の眼の前に居る。
総武高校の正門前で、どうやらコイツは所謂出待ちと云うヤツをやっていたらしい、しかもその対象がこの俺と来たもんだ、マジかよ何時の間にか俺ってばテレビ局やコンサート会場から出て来たアイドルやアーティストと同じ扱いを受ける迄になってたんだよ!
…まぁそんな事がある訳が無いんだけどね解っているさ、俺は自分自身を冷静に客観的に観る事が出来る男だ、自惚れたりなんかしないからね。
ここで自惚れて自制心を無くして、あれもしかしてコイツ、俺の事好きなんじゃね?
等と勘違いを起こす事など俺には無いのだ、俺の自制心の硬さたるや、ガンダリウムΓを超えていると自負するまである。
俺が思考の海にダイブして思索にふける傍らで、あざと中房一色いろははと云うと…うんうんだの、ふむふむだのと呟きながら俺の腕や腹周り背中等をペタペタと触っていやがる。
「ちょっ!?お前っ何やってんの、嫁入り前の娘が無闇に異性の身体に触れるもんじゃありません!
お前御両親にそう教わらなかったのかよっ!」
「え〜っ、何言ってるんですかせんぱい勿論当然教わったに決まってるじゃぁないですかぁ!」
身長差故、自然と一色は上目遣いになる、軽くシナを作りながらの上目遣い。
そのあざとすぎる所作に拠って、コイツは幾人もの男達を勘違いさせ操って来たのだろう、リモコン操作で鉄人28号を操る金田正太郎君の様にな、一色はその操縦テクニックに拠って、哀れな男子を巧みに操りながらこれ迄失敗する事なく幾度も修羅場を切り抜けて来たのかも知れない。
だかな一色よ、この世にはお前のリモコンで操れ無い男は幾らでもいるんだ、良いも悪いもリモコン次第では無く、超AIで自ら思考し行動する勇者ロボの様にな。
「せ・ん・ぱ・い・だからですよ、他の男子にこんな事しませんよ…信じて、もらえませんか、先輩…。」
上目遣いに潤んだ瞳プラス軽く赤らめた頬、右手を口元に左手は制服のスカートを掴む、その袖口は幾分かサイズが大きいのか余りが有る、所謂萌え袖ど言う奴だ、くっ!コイツは一体幾つのコンボを重ねて来るんだ。
コイツはヤバい、いくら俺が超AI搭載の勇者ロボとはいえ、このコンボには多少なりともダメージを受けるかも知れない。
てか何時から俺はGGGに所属していたんだよ。
「てゆうか、何なんですかせんぱい、見た感じの体型は割と身長もあるし、スラッとして痩せて見えるけど、シッカリと筋肉が、着くべきところに着いているって言うか、ホントあの時も思いましたけど、せんぱいアクション俳優でも目指しているんですか、ただちょっと目つきが何だかヤクザ屋さんみたいに怖いですけど、顔の造り自体は悪く無いって言うかぁ、すっごい整ってますよね?」
コイツは一体何を考えていやがるんだろうか、俺なんぞをそんなにAgeたって何の得にもならないはずだ、じゃあコイツは俺には近付いて何を目論んでいるんだ、少なくとも由比ヶ浜の様に純粋な好意ってか恩義の様な感情で俺に近付いて来ているとは思えないんだが…
「…なぁ一色、何が狙いなんだ?」
「ふぇっ!?」
ちょっ、何だよ『ふぇっ!?!』て疑問形か、何お目々パッチリ開いて心底驚きましたって感じで俺を見てんの、何だよ図星突かれて驚いてんのかよ、承太郎に自分の考えを物の見事にそのものを当てられた、音石明かよ。
けど一色よ、少なくとも音石明はその思考を読まれても、今のお前みたいに取り乱したりはしなかったぞ、もしお前があざと系女子の高みを目指すのならその辺り、キチンと精神をコントロール出来る様にならないとな。
あざと系女子の高みとやらがどんな物かなんて俺には分からないけどな。
「…何なんですかこのせんぱいは、何でそんに察しが良いんですか、ヤバいです、この人の攻略は一筋縄では行きそうにありませんよ…」
俺から目線を逸し、口元に手を当てブツブツと何かを呟く一色だが、その声は小さくて難聴なんか患って無い俺の聴力を以てしても上手くは聞き取れなかった。
所々聞き取れた単語は攻略だのと聞こえたんだが、一体何の事だよ。
「それで一色、お前は俺に何の用が有るんだ。」
「…あのですね、実は……私せんぱいに相談したい事が有りまして…少しお時間頂けませんか?」
ふむ、此れはいよいよ本題入ろうとしているんだな、正直面倒臭い事になりそうだから、可及的速やかに自宅へと進路を向けたい所何だが…
「あっ!ヒッキーだ、お〜いヒッキーこんな所で何してんの!?!」
背後から、少し詳しく言うと学校正門の方向から、ここ暫く何なら家族以外で一番会話をしている女子の声が、何だが微妙に不名誉な感じの彼女が俺に付けたあだ名で呼びながら近付いて来る気配がする。
その声の主は俺にとっては言わずと知れた存在、ほぼ毎日何かしら会話をする仲である少女(何故かこの日は校内で出会う事が無かったのだが)由比ヶ浜結衣。
俺はその声に後ろを振り向いた。
正直ちょっと驚いた、振り返り見た彼女は、正確に言えば主に彼女の髪の色とヘアスタイル、そして軽く着崩された制服にだ。
昨日までは黒髪だったその髪の色は若干桃色掛かった茶色に染められ、その右側部にはちょこんとお団子が結われていた。
「………。」
イメージチェンジ、そう言うべきか。
俺達の元まで駆け寄って来た由比ヶ浜の姿は昨日までの印象とはまるで変わっていた。
元々、彼女はスタイル、ルック共にかなりのレベルが高いと俺は思っていたんたが、立ち振る舞いなどから来る雰囲気のせいなのか、少々地味な印象を抱かせていたんだが。
それが今は何だが、垢抜けたと言えば良いのか、華やかになったと言えばいいのか…。
「…あの、ヒッキー…えっと、昨日ぶりだよね、あはは…。」
俺から目線を逸しながら、右手で自分の頭のお団子を所在無さげに弄りながらたどたどしくも、俺に話しかけて来た。
「…おう、そう、だな…今日は学校の中では会わなかったからな、クラスの友達とツルんでたのか由比ヶ浜。」
「えっ!…あぁうん、えっと実はそうなんだ、あははっ…。」
俺はイメージが変わった由比ヶ浜の雰囲気に戸惑い、吃った様な口調になってしまった。
俺がそんな体たらくだった為か、由比ヶ浜もそれに釣られた様に、たどたどしく答えた、あ〜…何かスマン由比ヶ浜。
「むぅ〜っ、ちょっとお二人共私の事忘れて居ませんか、いきなり二人だけの世界を作らないでくださいよぉ。」
おっと、そうだった今この場にはコイツが居たんだった。
しかしこいつ『むぅ〜っ』て声に出して、あくまでもそのあざといキャラを貫くつもりなのかよ、そこ迄行くと逆にいっそ天晴と言うべきなのか…。
「あぁ悪いな一色。」
此処は素直に謝っておく事にする、こういう場合に女子を適当にあしらったりすると、面倒事に為りかねないからな。
小町の奴も一度機嫌を損ねると面倒な事になる、そうなると機嫌を取るのも一苦労だ。
けどそんな状態でも、テリー兄ちゃんやロックと話をすると直ぐに機嫌が良くなりやがる……。
解せぬ、納得行かねぇ〜!
「あ〜っ!あの時の中学生の子だよねあの時はありがとう!」
どうやら由比ヶ浜は一色の事を覚えていた様だ、あの時の由比ヶ浜はサブレの事で一杯一杯で、周りの事に気が回って居なかった様な感じだったんだかな。
どうやらそれは俺の穿ち過ぎだったのか。
「はひ?…あっ、もしかしてあの時のワンちゃんの飼い主さんですか?」
おっと、どうやら一色の方も由比ヶ浜の事に気が付いた様だな、まぁあの時と今とでは由比ヶ浜の雰囲気は随分と違っているからな、しかしまぁ流石に女子同士、そういった同性の変化に対して敏感なのかもな。
「うん、そうだよ!あたし由比ヶ浜結衣、よろしくね。」
「あっ、はい、私は一色いろはです、よろしくお願いします、結衣先輩って呼んで良いですか?」
おお、この二人早速コミュニケーション取り始めたぞ、凄えな俺だとこうは行かないだろうからな。
まぁ、一色の奴は初対面の時から妙にグイグイと来ていたし、コミュ力は高いだろうと思っていたけど、由比ヶ浜の方は若干ながらコミュ力は低いんじゃないかと思ったんだがな、どうやらそうでは無いらしい。
「うん!良いよ、あたしもいろはちゃんって呼ぶね。」
イキナリ名前呼びかよ凄え、レベルが高杉君過ぎて俺には無理な芸当だ。
しかしこの二人はある種対照的な人種かも知れないな。
由比ヶ浜の表情は何と言うか天然素材100%って感じたが、片や一色の方は自分の演出方法を完璧に把握していて、その場に合わせてその顔を作っている様な感じを受ける。
現に俺に対していた時の顔と、今由比ヶ浜に対して見せている顔は違った物の様に俺には思えるからな。
「所でせんぱい、せんぱいは結衣先輩に対して何か言わなければいけない事があるんじゃあないですかぁ!」
「はぁ?」
今まで女子二人してキャッキャウフフしていた筈の一色が、イキナリそう言うのだが…はて?
「はぁ?じゃありませんよ、せ・ん・ぱ・い・乙女が一大決心をしてイメージチェンジをしたんですよ、それについて男子ならちゃんと言わなければいけない事があるんじゃないですか!」
その口調に少しだけまぶされたスパイスは非難と呆れの二つ、なるほどそう言う事か…前に舞姉ちゃんと小町にも言われたっけな。
「…そうか、ああ…うん。」
女子の髪型やファッションなどを改めた時はキチンと褒めて感想を言えって。
よっしゃあ!
解ったぜ、俺はジョーあんちゃん並に勝利の雄叫びを上げ(心の中だけで、実際には叫ばないがな)由比ヶ浜に向き直った。
「あのだな由比ヶ浜、その…似合ってると思うぞ、髪の色とか髪型とかな…あと制服のアレンジとか、けどあれだな、程々にしとかないとビッチ臭く成っちまうからその辺のバランスはキチンとしないとな。」
「…えへへぇ、ありがとヒッキー。」
「ブブーッ!!はぁ、全然駄目駄目です、何ですかビッチ臭く成るって、もう少し言葉を厳選して選んで下さいよ、確かに最初は髪の事を褒めてはいましたけど、その後はどうなんですか全く…ホント赤点ですよ赤点!」
えええっ、何で!?駄目だったの、だって由比ヶ浜は喜んでくれてるんだし、アレで良かったんじゃね?
「結衣先輩も結衣先輩です!駄目じゃ無いですか、あの程度で喜んで!男の子って直ぐに調子に乗る生き物なんですから、女子の方でシッカリと手綱を握らなけれはいけませんよ、良いですか!」
コイツマジ中房かよ、俺にダメ出ししたかと思えば、間髪入れずに由比ヶ浜にまで、はぁ…もうやっぱり面倒臭い事に成っちまったなぁ、八幡早くお家に帰りたい…。
「えっ?あっと、うん、そだね…あははっ…」
おい一色それ位にしておけ、お前に詰め寄られて由比ヶ浜の奴タジタジじゃねぇかよ。
しゃあないここら辺りで、この話題は終わりにさせよう。
「なぁ一色。」
「…何ですか、せんぱい。」
「…そのだな、お前の言う事は完全とは言え無いとは思うが、ある程度は理解出来た、俺も由比ヶ浜もな。」
「うん」と俺の跡に続いて由比ヶ浜も一色に対して頷いて見せている、まぁ良いか。
「それで、さっきの赤点と評した俺の発言だが、それでも由比ヶ浜は喜んでくれた訳だろうと、と言う事はだな俺の発言は問題が無かった訳だ、知ってるか一色、世の中にはこう言う言葉がある「問題は問題にしなければ問題じゃ無い」、つまりだな少なくとも由比ヶ浜は俺の発言を問題とはしなかった、だから此れは端から問題では無かったと言う事だ、解ったか一色。」
どうだ一色、この俺の理論武装の味はよ、お前のその作り上げたキャラよりも強烈だべ!
何処ぞのヤンキー漫画のセリフをパクり俺は心の中でほくそ笑む。
「はぁ〜っ、もう良いです…せんぱいに対してその方面の言葉は期待出来ないと言う事が良く分かりました。」
それに対する一色の言葉である、一色はおれの顔を『うわ、何この人マジであんな馬鹿なこと言ってるの!?』とでも言いたそうな表情で俺の事を見たかと思うとその様に宣いました…。
あれ〜っ!?おっかしいぞ、俺は間違った言は言っていない筈なんだけどな。
だが一色の奴はどうやら俺に対する追求の手を緩めてくれたらしいから、良しとしておこう。
「所で一色、さっきも聞いたが、お前は一体俺に何の用が有るんだ。」
「あっ、そうでしたね、あのぅ此処では何なので場所を変えませんか。」
あっ、だと…コイツ元々の要件を忘れていたのかよ、だが場所を変えて話をするって事は、やっぱり何かしらの面倒事なのかも知れないな。
俺がもしかしたらコレから聞かされるかも知れないな面倒事について思案していると、いつの間にやら一色は再度俺をあのあざとい上目遣いと不安げな眼差しで見ためていた。
「……分かったよ、サイゼでいいか財布の中身が心許ないからな。」
俺の了承の言葉を聞いた一色は、その瞬間に不安げな眼差しから喜びの表情へと変化を遂げていた。
速っ、そのスピードたるや音速を超えてんじゃねぇの、コイツもしかして青銅聖闘士になれんじゃね?
撃つのかペガサス流星拳。
「あっ、あたしも一緒に行っても良いかなヒッキー、いろはちゃん。」
おっ由比ヶ浜、偉いぞよく言った!正直俺一人だと間違いなく面倒事になるだろうからな、お前が着いてきてくれるなら多少なりとも緩和出来るかも知れん。
「おう、良いんじゃねぇの、何も一色も人様に言えない様なヤバい話をする訳じゃ無いだろうしな、どうだ一色。」
由比ヶ浜に了承の意を伝えながら一色の方へ向き直ると、一色の奴は刹那の一瞬だけその顔に不満げな表情を浮かべたが、その一瞬の後その表情は何時ものあざとい笑顔を拵え、俺達の提案を了承してくれた。
しかし一色の奴、誰も見ていないと思って居るんだろうが、俺はシッカリと見ていたんだからな、コレからもあざとキャラを続けるのなら、表情造りには精々気を付けるんだな、まっ、俺は知らんけどな。
俺達三人はサイゼへと進路を取ることにした訳だが、此処で一つ俺にはヤラなければいけない事が有る。
それはある日小町に言われ、その後気を付ける様にしている(一人で行動する時には行わないのだが)行動。
「ちょっと待ってくれ、今眼鏡掛けるから。」
そう、眼鏡を掛ける事、特に女子と行動を共にする時には俺は伊達眼鏡を着用する。
コイツを掛けると一色が先程評したヤクザ屋さんの様な俺の眼つきが緩和されるのだと、小町が言っていた。
『うわ〜良いよお兄ちゃん、眼鏡のおかげてお兄ちゃんの眼つきの悪さがいい感じに薄れて、割かしイケメンさんに見えるよ、コレなら一緒に街だって歩けるから、デートしようねお兄ちゃん、あっ今の小町的にポイント高い!』
最後の一言は余計だが、小町が言うんだから間違いは無い筈だ。
バッグの中から眼鏡ケースを取り出して眼鏡を掛ける、当然俺はその時『デュア!』と心の中で叫びながら掛ける事を忘れない。
カッコイイもんなモロボシダン。
「悪い待たせた、行こうぜ。」
面倒事はチャッチャと済ますに限る、セブンに変身した俺は二人と共にサイゼへ向かうべく声をかけたんだが。
「……………。」
「………ふぇ〜っ…。」
由比ヶ浜も一色もイキナリ押し黙ってしまった、何だよ一体どうしたってんだよ、まさか眼鏡を掛けた俺に何か変な所が有るのか?
小町は褒めてくれたのに何でなのん、まさか小町は身内の贔屓目で見ていたって事なのか、実際は眼鏡を掛けても効果は無いのか或いは却って酷い事になってんのか!?
「あ〜何だ、おかしいか?だったら外すわ。」
「わ〜わ〜っイエイエおかしい事なんて無いですそのまま、そのままで良いですからせんぱい!」
「うんうん、そうだよヒッキー!べっ別におかしく無いから、外さなくても大丈夫だよ!」
おおっ、随分な勢いで眼鏡を外す事を否定してくるな、と言う事は小町の言う通りで、眼鏡を掛けた俺におかしな所は無いと判断しても良いんだな。
「ヤバいです、ヤバいです、何ですかアレは反則ですよ想定外ですよぉ…」
「あわわわっ、凄いヒッキー…こんなになるなんて思って無かったよ…」
二人揃って何だがブツブツと言っているが、早く正気に戻ってくれ。
さっきから通り過ぎて行く人達の目線が俺達に集中してるんだよ。
集中されたからって命中率と回避率にプラス30%の補正はつかないんだからな。
そんな事より早くサイゼに行かせてくれ、この時俺は心からそう願っていた。