やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
そんなこんなで土曜日である。
昨夜、一色からメールが届いたのだが『せんぱい、何かしましたか?』と一言だけのメッセージだった。
なので俺は『ん〜!?なんのことかなフフフ』と返したのだが…『せんぱいキモいです(●`ε´●)』と帰ってきたのでした。
どうやら一色はアミバ様を知らない様だ、ガンダムは知ってた癖に……八幡悲しい。
まぁ、世代じゃないし仕方無いか、俺だって親父の影響で知ってんだし。
話を戻そう、一色は昨日、例の何たら言う一年坊君達と出くわしたんだと、連中は軽い挨拶もソコソコにまるで逃げる様にそそくさと去っていったそうだ、どうやら俺との話し合いを彼らは良く理解してくれていた様だ。
それで一色は俺がそれに関わっていると推察したのだろう多分…一色、恐ろしい娘。
今日、恐らくは直接問い掛けて来る事だろうな……さて、どう誤魔化し抜くかな。
そんなこんなで土曜日である…二度目だな。
何時もの如く日課のトレーニングを済ませシャワーを浴び、朝食を摂った後はダラダラと昼迄アニメ鑑賞と洒落こむつもりだったんだが。
インターフォンがピンポーンと鳴り、母ちゃんと小町から対応する様に仰せつかり、渋々ながら出て見ると…。
「…お前何しに来てんの、昼からって言ってよね、まだ10時過ぎだよ…」
満面にあざとかわいい笑顔を浮かべヤツが家の玄関の前にスタンバっていた。
どうやら我が家の防衛システムはその機能を発揮していなかった模様だ。
俺の脳内に『左舷、弾幕薄いぞ!何やってんの!。』とブライト艦長の声が響いた…気がした。
「おはようございます!せんぱい、いろはちゃんがやって来ましたよ、嬉しいですか嬉しいですよね、そんな嫌そうな素振りで自分の心を隠さなくても良いんですよ、もっと素直になりましょうねせんぱい。」
得意のあざとウインクでその早口言葉の様な挨拶を締めた。
どうでも良いが、あざとウインクってデビルウイングと似てるな、デビルウイングは空を飛ぶけどあざとウインクは、勘違い男子を死地に送るのか…まぁデビルマンは悪魔だし、一色は小悪魔、敢えて可愛く言うならばプチデビルとでも言うか。
あっ、どっちも悪魔じゃん!八幡納得だ。
玄関でのやり取りもソコソコに、母ちゃんからのお達しにより、一色を我が家へと招き入れ、リビングにて一通りの挨拶を済ますと。
「…八幡あんたも隅に置けないわね、結衣ちゃんと言いいろはちゃんと言い、何でこんなにかわいい娘達が次々とあんたの前に現れるのかね。」
俺の耳元で母ちゃんは小声で、ニヤニヤと笑いながら、仰ってくれやがった。
ちっ、『消してやるぜ、そのニヤついた顔を!』俺はそう言ってやりたかったが冷静に考えるとこのセリフは、なんか負け犬ムードが漂ってるよな、なので俺は母ちゃんの顔にジト目を向けるだけに留めた。
まぁ、それは良いんだが…何故か現在リビングのソファーに腰掛け、向かい合って座る小町と一色…何だか二人の間に視えざる火花が飛び散っている様な気がするのは気のせいだよね…。
顔は二人共笑顔なんだけどね、怖い、この雰囲気。
今にも始まりそうな気がする、龍虎相打つ…そんな事態が。
しかしどうした事だ、俺と違って小町は社交性A(超スゴイ)のはず、それに一色程では無いがあざとスキルも兼ね備えている。
それに親父も俺も度々ヤラれて、下僕と化してしまうんだが……。
ん?もしかしてそれか!?小町は、いや一色もだが、二人は互いに感じたのかも知れないな、二人に共通する性質に…其れ故の反発心なのか。
「へぇ〜そうなんですね、お兄ちゃんが勉強をですかぁ、まぁ小町ならたまにと言わず毎日でも教えて貰えるんですけどね、なんたって小町はお兄ちゃんのたった一人のかわいい妹ですからね、だよねお兄ちゃん、あっ今の小町的に超ポイント高い!」
「え〜、でもでもぉ逢えない時間があるからこそ、二人の心は燃え上がるんですよねぇせんぱい!私の方がもっとポイント高いですよね♡」
お前達のそのポイントとやらは何と交換できるの…
てか一色よ、よその家に来てお前はよくそれだけやり合えるな、どんだけ強靭な心臓してんだよ?
「あっ、そうでした私実はバウムクーヘン作ってきたんですよ、良ければ皆さんで食べてみて下さい!」
一色はさも、今思い出した感を強調しながら持参したバックの中から、一色曰く自分で作ったと云うバウムクーヘンが収められているであろうケースを取り出した。
取り出されたケースはかなりの大きさがある正方形で、一辺が20cm位で高さは15cm位か、普段俺はバウムクーヘンと云えばコンビニで売ってる百数十円位のしか食ったこと無いんだが、こんなデカい箱に入っているとなると、コンビニのヤツとは比べ物にならない
ならんだろうな。
テレビで前に見たバウムクーヘンは確か一色が持って来たケース位の大きさに見えたが、厚みはそんなに無かった様な気がするが。
「えっ、いろはちゃん凄いわね、お菓子なんか作れるなんて、家の八幡は甘党だから胃袋から掴むのは上手い手よ、ヤルわね。」
「はいありがとうございますお母様、とっても参考になりました!」
一色を褒めつつ母ちゃんは、如何にも何か含みのある嫌な笑いを見せつつ俺に下手なウインクをカマしてきた。
へっ!オバちゃんのウインクなんて誰得よ。
「八幡、文句があるならハッキリ言ってみな!」
…母ちゃん、あんたはエスパーなのかよ、俺は母ちゃんの察しの良さに戦慄を覚えた。
「あんたは顔に考えが出てんのよ。」
結論から言おう、一色お手製のバウムクーヘンはメチャ美味だった。
金を取ってもおかしく無いレベルの出来だった…お菓子だけにな。
フヒッ、滑ったな…思ったよりも甘さが控え目で、我が愛するマッカンのお供に最適だ。
小町のヤツも始めは訝しげな顔をしていたが、一口食べて表情は一変した。
「…まぁ、美味しいとは思いますよ、美味しいとは…」
顔を朱に染めて、不本意そうに評価する小町はやはり可愛かった、流石は我が家の天使だね。
それに小町、お前は母ちゃん仕込みの料理の腕があるだろう、お前の腕は中学生としてはかなりのレベルだと俺は思うぞ、俺にとっては第二の母の味と言っても過言では無いまである。
「そうよねぇ、お父さんもこんな日に休日出勤なんてツイてないわね、はぁ美味しい。」
そう、ここ迄俺が親父について触れなかったのは、親父が休日出勤の為不在だからだ。
残念だったな親父、あれ程親父がお目にかかりたいと思っていた富士のお山を親父は今日も拝む事が叶わないんだよ。
一色お手製のバウムクーヘンで小腹を満たした後は、愛すべきまったりタイムだ、流石に菓子だけで満腹するのは如何な物かと皆も普通にそう考えているだろうし、栄養バランス的にも控えるべきだろう。
それに後々、由比ヶ浜母娘や雪ノ下家の方達も家を訪れる予定だからな、俺達だけで独占するのも憚れる…独り占め良くない!だな。
「念の為もう一箱作って来てますから大丈夫ですよ。」と一色は言うのだが、だからと言ってそれはな。
時刻は午前11時30分を過ぎ一色謹製バウムクーヘンを食した腹も程よくこなれた頃、再び我が家の呼び鈴が鳴り、由比ヶ浜母娘が来訪した。
バルバルバルバルバル!と言いながら来訪してくれれば、八幡的にはポイントが高かったんだがな、それは無いか…無いな。
「やっはろーヒッキー!」
「こんにちはヒッキー君、今日はよろしくお願いね。」
元気いっぱい満面笑顔の由比ヶ浜とニコニコほんわか笑顔の由比ヶ浜母、豊かな物をお持ちの母娘二人が来訪の挨拶をしてくれた。
「うす…あ、いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました、狭い家ですがどうぞお上がりください。」
二人横並びの由比ヶ浜母娘の見事に連なる、由比ヶ浜連峰に眼を奪われない様に努力しつつ、挨拶を交わす俺はやはり紳士であろう、親父だったらきっとガン見していた筈だからな。
てか、由比ヶ浜母まで俺の事ヒッキー呼びだな…。
「あら、いらっしゃい結衣ちゃんママに結衣ちゃんもって、あら結衣ちゃん髪染めたのねぇ、こうやって見ると本当に貴女達姉妹に見えるわねぇ〜、羨ましいわ、家も小町がもう少し大きくなったらそんな風にできるかしらね。」
「うふふっ、こんにちはヒッキー君ママ、私としては息子とデートが出来るヒッキー君ママが羨ましいわぁ!」
「駄目駄目、この子は出不精で服装にも無頓着で、オマケにこの眼つきでしょうとてもじゃ無いけど…ハァ〜。」
早速繰り広げられるママさんトーク、どうでも良いが、母ちゃんは俺の事ディスり過ぎだと思います、そこんとこどうよ…MyMother!
「だったら今度私とデートしましょうねヒッキー君!」
由比ヶ浜母、何か言い難いな…由比ヶ浜はママと呼んでいるし、由比ヶ浜のママ…ガハマのママ…ガハママ!
そうだな、ガハママにしよう。
ガハママはまるで、我天啓を得たりとでも言いたそうな笑顔で俺をデートに誘うが…
「駄目だよママ!ママにはお父さんがいるじゃん、だから駄目っ!それにヒッキーとデートするのは………。」
由比ヶ浜が異を唱える、最後の方は何と言っているのか聞き取れなかったが、偉いぞ由比ヶ浜、危うく俺はガハママの色香に迷いデートの申し入れを受諾する所だったぜ、それこそポツダム宣言を受諾する様にな。
どうでも良く無いが、現在の我が家は女性の比率が高過ぎる。
母ちゃんと小町、由比ヶ浜母娘と一色と来たもんだ…その比率5対1。
その5名の女性の内の四人が、キッチンへと出陣し昼食の準備をしている状況でリビングには俺と由比ヶ浜がソファーに腰掛け、昼食の完成を待っている。
「…はうぅ〜…。」
ガハママよりキッチンへの出入りを禁じられた由比ヶ浜は、落ち込んだように切な気な声を出している。
しかし出禁を言い渡されるとは、由比ヶ浜は余程料理の腕が残念な様だな。
「あぁ、あれか…由比ヶ浜は料理が出来ないんだな、母ちゃんに習ってないのか…。」
「…うん……あのさ、ヒッキーはやっぱ料理とか出来る娘が良いよね…。」
ひどく落ち込んだ様に由比ヶ浜は言うが、小町に一色と自分よりも年下の女子がキッチンにて料理の腕を奮うのを黙って見ているしか出来無い現状は同性としては来る物があるんだろうな。
「まぁ、出来るに越した事は無いが、人の価値は一つの物事の良し悪しだけで決まるもんでも無いだろう。
現に俺は勉強でも文系はイケるが理系は駄目だしな、誰だって得手不得手があるんだから…はぁ、そんなにお前が気にするなら少しずつでも習って行けば良いんじゃね、知らんけど。」
「もう!ヒッキー最後の一言で台無しじゃん、せっかくいい事言ってるぽかったのにさ…でもありがと、そうだねあたし、習ってみるね…それでさ、ちゃんと出来る様になったらさ、ヒッキー…食べてくれるかな?」
どうやら由比ヶ浜は落ち込みモードから脱した様だな、まあ良かったとして置こう。
だが、今の由比ヶ浜はちとマズい…
食べてくれるかな、と一色バリに上目遣いで俺を見ている姿は、実に自然で潤いを感じさせる瞳と僅かに紅い頬と身長差によって見下ろす形になる為に視界に入る豊かな峰の破壊力がハンパない。
ヤバい何だか俺の顔が熱い、瞬間的に熱が上がった様な気がする、コレは気まずい。
だが、この気まずい雰囲気は意外な救世主の出現で覆された。
『ミャ〜ォ』と低音の鳴き声をあげながらリビングへと遅れて現れた、メシアのお陰でな。
その名はカマクラ、我が家に住まうふてぶてしい雄猫だ、コイツは母ちゃんと小町には従順なんだが、俺と親父には塩対応をかましやがる。
猫であるにも関わらず、コイツは我が家のヒエラルキーを理解しているのか、或いは只の女好きなのか…
カマクラの出現に「ひゃっ!」と由比ヶ浜は小さく驚きの声をあげ、ビクリと身を震わせた。
もしかすると由比ヶ浜は猫が苦手なのか?
「コイツはカマクラって言ってな家の猫なんだが、由比ヶ浜はもしかして猫が苦手なのか?」
「…うん、実はね…小さい頃はそうでも無かったんだけどさ、ほら野良猫とかっていつの間にか居なくなったりするよね、昔団地に住んでた頃ね一緒に遊んでた子達と皆で猫の世話をしてたんだ…人懐っこくて可愛かったんだけどね、いつの間にか居なくなっちゃったんだよね、それからね何かちょっと猫と居るのが辛いって言うかさ…なんかね…。」
「そうなのか…。」由比ヶ浜の思いに俺はそう一言だけ応えた。
由比ヶ浜は小さい頃から、気の優しい子供だったんだろう、何の予告も前触れもなく居なくなった猫の安否をきっとすごく心配していたんだろう、それ故なんだろうな猫が苦手になったのは。
『ニャァ〜』と鳴きながら俺の足にカマクラの奴は身体を擦り寄せる、母ちゃんと小町がキッチンに居る為俺に昼飯の催促をしているんだよな。
こんな時だけコイツはこんな態度をとるんだが、腹が満たされれば俺と親父には見向きもしやがらない。
「お兄ちゃん、カアくんにご飯あげといてねぇ!」
小町よりの指令ゼロが下ったからには動かねばならない、それが千葉武装警察秘密捜査官コマンダーエイトの使命だからな。
「あいよ〜!」と返事をしカマクラの飯を用意する俺の後をのそのそとついてくるカマクラはこんな時ばかり甘えた声を出す、本当に現金な奴だ。
時刻は正午を過ぎ、四人の女性陣により作られた美味なる食事をいただき、後片付けを済ませ、しばしの後。
午後一時を迎える頃、三度我が家の呼び鈴が鳴り、あの事故の際の車のオーナーである雪ノ下さんが我が家を訪れた。
事故の際、その車に乗り合わせた俺と由比ヶ浜と同級生でもあり、今年度入学式に於いて入学生代表として毅然として挨拶に望んだ、恐らくは誰しもが認めるであろう美貌の少女、雪ノ下雪乃。
その少女が、母親と共に我が家に訪れたたのだ。
どうでもいい事ですが、執筆中ふと思いついた事が…
この餓狼たちに鍛えられた八幡が「ありふれた職業で世界最強」の異世界トータスに召喚されたら、どえらく無双するのではないかと。