やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
俺に自分とロックの事を紹介し終えたテリー兄ちゃんは、スクッとベンチから立ち上がり「でよ、ハチマンどうなんだ?俺につきあってくれるのか?!」
ヌッとその顔を俺の顔に近付けてニッコリといたずらっぽい笑みで聞いてくる
「別に良いけど……」俺はボソリと、我ながら素直じゃ無い、肯定の返事を返しテリー兄ちゃんに付き合う事にした。
「ヨシ!じゃあ行くとするか、ハチマン、ロック!!」俺とロックに出発を促したかと思うと、テリー兄ちゃんは、俺の正面へと立ち、徐にその手を俺の両脇へと回したかと思うと、いきなり俺の身体を持ち上げた。
宙高く持ち上げられた俺の身体は、クルリと180度前後回転された。
いきなりの事にちょっとビビッた俺だったが、テリー兄ちゃんは俺の身体を放り投げたりなどせず、自身の肩の上に俺をパイルダーオンさせた。
ぶっちゃけ、肩車をされただけなんだけどな。
いきなりの事にパニクった俺は、その合体シークエンスを、眼を瞑っていた為に、見ちゃいなかったんだけども。
実際、いきなりそんな事をやられてみろよ、マジビビるって!決して俺がヘタレだからって訳じゃ無いよな。
多分、いやきっと………。
「おいハチマン、大丈夫だ怖くないぞ眼を開けてみろよ」
目を瞑り、顔を下に向けテリー兄ちゃんの頭に両手でしがみつく俺に、テリー兄ちゃんは、ポンポンと軽く俺の太ももを叩きそう声を掛けてくれて、その声に恐る恐る俺は、顔を上げ、眼を開きその景色をその視界に入れた。
その景色は凄く新鮮で、いつもの公園が、遊具が、施設が、公園前の通り道が、いつもとは違う物に見えて、いつもよりも遠くまで見渡せて。
「どうだ、こうすると色んなもんが遠くまで、良く見えるだろう。」
優しい声音で、呼び掛けてくれるテリー兄ちゃん。
そのたった一言に俺は、何だかテリー兄ちゃんの、色々な思いが込められている様に感じられたんだ。
きっとテリー兄ちゃんも、誰かにこんなふうにしてもらった思い出が有るのかもしれないなと。
普通に考えれば、それはテリー兄ちゃんの父ちゃんがこんなふうにな。
でも、俺にはそんな記憶は無いんだよな、温かい肩の上に乗っけてもらって、いつもと違う遠くまで見渡せる風景を見て、普段は手の届かない所に有るものに触れた記憶も俺には無いんだ。
それは多分俺にも問題が有ったのかもしれない、小さい時から両親が忙しいって事が、何となく解っていて、それに小町も生まれて忙しい中で小町の世話もしなきゃならないんだ。
そんな状態で、俺まで手が掛かるようじゃ両親共に休む暇も無くなってしまうんじゃかいかって、何だか妙にそんな事を察してしまい、素直に甘えられなかったんだよな。
でも本当は羨ましかったんだ、両親に可愛がられて、沢山の愛情を注がれ素直に天真爛漫に育ってゆく小町が……。
父ちゃん、母ちゃんの肩の上から、こんなふうに、こんな景色を見たかったんだ……。
テリー兄ちゃんの肩の上で、俺は俺の本当の気持に、閉じ込めていた思いに気が付いた。
「…ありがとう、テリー兄ちゃん…」
ボソリと俺の口から漏れた感謝の言葉は、欲しかった物を気付かせてくれて、それを与えてくれた人への、俺の心からの言葉だ。
もう一度、ポンポンとテリー兄ちゃんは、俺の太ももを優しく叩いてくれた。
俺を肩に乗せたまま歩くテリー兄ちゃんとロック、テリー兄ちゃんは日本語の分からないロックへ、どうやら俺が話した内容をロックに話し聞かせている様だ。
あらかた話を聞き終えたロックは、俺にすげぇ良い笑顔で「ハチマン!you are
great!!」といってくれたんだが、当然英語なんか解らない俺の頭の中は??だった。
「ハチマン、お前はすげぇ奴だって言ってるんだよ!」
それを察してくれたテリー兄ちゃんが通訳してくれた。
「サンキュー、ロック」所謂カタカナ英語で、俺は礼を言っておいた。
それに対してロックは、先と同じ笑顔で、サムズアップで応えてくれた。
それから暫くテリー兄ちゃんは、自分の事を話してくれた。
テリー兄ちゃんが格闘家だって事、世界中を旅して修行したり、色々な大会に出場したり、或いは行く先々の格闘家の人達と手合せをしているんだそうだ。
二年位前に、孤児だったロックと出会ってそれからは、テリー兄ちゃんがロックを世話しているって事だった。
まぁテリー兄ちゃんとロックには、ちょっとした因縁めいたものが、有るんだが、それを語ると文字数が不必要に増えそうだから、止めておくことにする。
て、何だよ文字数って!?
所謂メタ発言ってやつか!?
それでこの日テリー兄ちゃんが、この我が愛する千葉県に居たのは、格闘大会に出場する為だそうだ。
テリー兄ちゃんの肩の上で、話を聞きながら歩いているうちに、最初は少なかった人通りも次第に増えて行き、それに比して人の目線も増えて行き、ボッチな俺はその視線に羞恥心を掻き立てられ、何だかいたたまれない気持になって、テリー兄ちゃんに、降ろして貰おうと頼もうとしたときだった。
「見付けたぞテリー!全くおめーは何処をほっつき歩いていやがった、この野郎ぉ!!」
「まったく、今日が何の日なのか理解しているのか、兄さんは!」
声の聞こえた方を見やれば、そこには二人の男の人と女の人が此方へと駆け足で近付いて来ていた。
最初に声を掛けて来た人は、まるで箒を逆さまにしたような髪型の黒髪の日本人の男の人で、もう一人の男の人は少し小柄な感じだけど、長い金髪のイケメンな、外国人。
テリー兄ちゃんの事を兄さんと呼んでいる事からテリー兄ちゃんの弟だろうと推測される。
「テリーの自由人ぶりは今に始まった事じゃないでしょう、それにロックも一緒なんだから、大丈夫だって言ったじゃない。」
そして三人目のお姉さんだが、長い黒髪の、まさに絶世の美女と呼ぶに相応しい、いや絶世の美女と云う言葉はこの人の為に有ると言っても過言では無い、と思わせる程の美しさだった。
「そうは言っても、舞そろそろ会場入りしなくちゃいけないんだ、グズグズしては居られないだろう。」
「アンディの言うとおりだぜ、ロックが居るとは言っても、土地勘のない場所だ、何が起こるか解ったもんじゃ…て!おいテリーお前、その肩に乗せてるガキんちょは何なんだ!まさかお前まぁた厄介事に首突っ込んだんじゃねぇだろうなぁ!」
今更の様に三人が俺の存在に、気が付いたかの如く、その視線が俺に注がれるんだが、ボッチな俺にはその視線が堪らなく居心地が悪い。
「ん?あぁ、こいつはハチマンだ、さっき知り合ったんだ、詳しい話は後でするからよ、早く行かなきゃ間に合わなくなっちまうだろ。」
皆さんに俺の事を、紹介してくれるのは良いんだけどさテリー兄ちゃん、その発言は……。
「元はと言えば兄さんが、原因じゃないか!」
「オメーのせいだろうがよ!」
まぁ当然、ツッコミが入るわな。
「ハハハ、まぁ良いじゃあねぇか!取り敢えず急ごうぜ!後で経緯を説明するからよ。」
あぁ、やっぱりテリー兄ちゃんって結構大雑把な性格なんだな、さっきお姉さんも自由人って言ってたし。
周りの人は、かなり苦労してんだろうなぁと、何となくその状況を察し俺は、ご苦労さまですと、何となく皆に黙礼した。
大会の主催者が手配した、リムジンへと乗り込み、テリー兄ちゃんは、皆へ俺の事情を話しているんだが、生まれて初めて乗ったリムジンの豪華さに、俺は圧倒されていた。
リムジンなんてもの、一般家庭の小学生の子供が乗るもんじゃねぇよな……。
いやはやなんとも、場違い感がハンパなったわ。
其れは扠置き、テリー兄ちゃんの話を聞いた三人は。
「…妹の為に、初めて拳を振るったと言う訳か、それは良くやった。僕は立派だったと思うよ八幡。」
そう言ったのは、テリー兄ちゃんの弟のアンディ兄ちゃん(本名は、アンディ・ボガード)少し小柄だけど、ひ弱さなど感じさせない、しっかりとした肉体をしている。
そして、流れる様な美しく長い金髪のどえらい美形。
骨法と云う拳法の使い手だそうだ。
「まぁな、それは俺も認めるけどよ、しかしな、今まで黙ってヤラれっ放しだったってのは、いただけねぇな!男ならガツンと一発カマさなきゃよ!」
握り拳を掲げて発言したのは、黒髪の箒頭のジョーあんちゃん(本名は、東丈)テリー兄ちゃんにも引けを取らない、ガッシリとした体付きで、喧嘩っ早そうな人だ。
今の発言からして、その印象に間違いは無いだろうと思ったが、実際その通りの人だった。
ちなみに「にいちゃん」では無く「あんちゃん」と呼べとの事、THE昭和て感じの人だ。
日本人初のムエタイの王者と成った人で、リングネームはジョー東。
「全くジョーって、ホント脳筋よね。
喧嘩した事が無い子がいきなりガツンなんてそうそう出来る訳無いじゃない。ねぇ八っちゃん、ジョーの言う事なんか気にしなくて良いんだからね、これからゆっくり強くなって行けば良いのよ!」
不知火流忍術の使い手、現代に生きるくノ一、その美しさに見惚れずには居られない。
舞姉ちゃん(本名は、不知火舞)その容姿の美しさもさる事ながら特筆すべきは、その胸部に備わったたわわな実りだろう、この時小3だった俺をして、その実りに視線を釘付けにされてしまたからな……。
俺はこの身を持って、万乳引力の法則を証明して見せたと言う訳だ。
「しかし、いつの時代、どんな国でも弱い者や自分達と毛色の違う者を、虐げ排除しようとする輩が後を絶つことは無いと云う事か……」
ひどく実感のこもった声音でアンディ兄ちゃんは、そう呟いた。
「あぁ、そうだなアンディ、それは俺達がこの身を持って経験した事でもあるだろう。けど俺達は父さんに出会えた。
父さんが俺達に道を示してくれた。」
テリー兄ちゃんが、そう続けた、やはりテリー兄ちゃん達も過去に何か過酷な経験して、今に至っているんだ。
「だったらよ俺達がその道ってヤツの取っ掛かり程度でも、八幡に示してやっても良いんじゃねぇか、テリー、アンディ。」
ジョー兄ちゃんは、そう言って左の掌にバシッと右の拳を撃ちつけ、野生的な笑みを浮かべテリー兄ちゃんとアンディ兄ちゃんに、提案する。
「あぁ、だがよジョー、ソイツはハチマン自身で決めなきゃいけねぇんだ、まぁその為にも今日のイベントを、ハチマンのその眼でしっかり見てもらわないといけねぇんだけどな。」
テリー兄ちゃんは、右手のひらを俺の頭の上にのせ、軽く撫でながらそう言った。
アンディ兄ちゃん達はその言葉に、しずかに頷き、そして俺を見た。
これから見るであろうテリー兄ちゃんの闘い、それによってこれから先俺がどうなって行くのかこの時はまだ分からなかった。
だが決して悪い事にはならない、それだけは確実だ、会ったばかりの人達だがこの人達は信頼に足る人達だと、そう思えた。
やがて俺達を乗せたリムジンは、会場へと到着した。