やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
入学式の日の事故に関わった3家による会談を終えてから数日、俺は単車購入の為に始めようと思っていたアルバイトのバイト先を上手い具合に見つける事が出来た。
週に3〜4日、一日四時間程の就業時間で、勤務先は某運送会社、作業内容は荷物の仕分けとトラックへの積込みがメインとなる。
それなりに身体を動かす作業だし、割と重い荷物も有ったりするので、適当な運動には成るな、でもソレだけでは足りないので両手首には1.5kgのパワーリストを両足には2.5kgのパワーアンクルを取り付けて作業をしている。
コレでバイトに時間を割くために多少減らさざるを得ない、夕方のロードワークの時間の補填になれば良いんだがな。
バイトの話はこれ位でいいよな。
さて、あの会談を経て由比ヶ浜とは相変わらず、昼休み等にチョイチョイ一緒に過ごしている。
「ママに教えて貰ってんだけどさ、あんまし上手くならないんだ…。」
と、上達しない自分の料理の腕前に由比ヶ浜は、へこみ気味である。
あの料理上手なガハママさんの講習を受けているにも関わらず上達しないとなると、由比ヶ浜には料理に関する重要な何かが欠けているのだろうか?
あの土曜日の昼飯は実に美味かった、四人が四人とも料理の技量が高かったんだ、一色含めてな。
「…まぁ、焦っても仕方ないんじゃねぇの、まだ始めたばっかりだろう…」
別にリップサービスって訳じゃ無いけど、この位の慰めの言葉位はいくら俺でも言えるからな、それ以上は…ゴメンちょっと無理。
「そうかもだけどさ、小町ちゃんもいろはちゃんも料理上手だからさ…あたしも出来る様になりたいじゃん!」
「それにやっぱ、ヒッ…に食…て欲しい…から。」
近頃お馴染みになりつつある、女子の言葉の最後の方がよく聴き取れない現象を起こした由比ヶ浜、一体何がそれにやっぱなんだろうか…僕には解らないよ。
まぁ、解らない物はしゃあなしだな。
「…あら誰かと思えば比企谷君に由比ヶ浜さん。」
このマイベストプレイスに新たに入門して来たのは、先日の土曜日に知己を得た、この総武高校一の才媛。
「あっ、ゆきのん!やっはろー!!」
「…よう、雪ノ下、土曜日振りってか由比ヶ浜、何だよその変な造語は、またお前の中の紅魔の血が目覚めたのか?」
何時もの人懐っこいニコニコ笑顔で挨拶をする由比ヶ浜だが、何だやっはろーって?
見ろよ由比ヶ浜、雪ノ下がどうリアクションして良いのか解かんなくて、フリーズしているぞ。
「えへへぇ!ヤッホーとハローをくっつけた挨拶だよ、便利でしょ、てゆうかヒッキー、こうまのち?て何??」
紅魔の血が平仮名発音だったよな、てか由比ヶ浜お前のネーミングセンスの無さは、その血が為している物じゃ無いのかよ。
「…二人共、先日はありがとう。」
雪ノ下も再起動を果した様だな、このまま動かなかったら、メーカー送りにしなけりゃいけないかと思って、オラびっくりしたぞ、クリリン!
「ううん、どう致しましてだよゆきのん、あたしゆきのんと出会えてお話出来て嬉しかったもん。」
言いながら由比ヶ浜は立ち上がり、またしても雪ノ下の両手を握り、笑顔で雪ノ下を迎え入れた、コイツのこの行動力と云うかコミュ力は大したもんだよな。
言動から見て雪ノ下はコミュニケーション能力E(超ニガテ)位だろうからな。
「そうだ、ゆきのんは何処でお昼食べてるの?あたしとヒッキーは良くここで食べてるんだよ、良かったらゆきのんも一緒に食べようよ、きっと皆でお話しながら食べたら楽しいと思うんだ!」
オイオイ由比ヶ浜さんや、一人で話を進めなさんな。
このベストプレイスは人の通りが少ないから、ゆったりと昼の一時を過ごすのにはうってつけだよ、でもな考えて見ろよ、美少女揃いの総武高校に於いても由比ヶ浜と雪ノ下はその中でも頭一つ二つ飛び抜けていると言っても過言じゃ無いと俺は思っている。
そんな美少女二人と眼つきの悪いボッチ男が一緒に昼飯を食っている。
人間なんてな噂好きなんだ、だから忽ちその噂で持ち切りになって俺は嫉妬に駈られた野郎共の恨み妬みの感情を一身に浴びる事になるだろう。
そうなったら俺の、のんびりスクールライフが終わってしまうでしょうが!
「そうは言うが由比ヶ浜、お前は何時もココに来てる訳じゃ無いだろ、たまにクラスの連中と過ごしたりもしてるんだしな、そんな時雪ノ下はどうなるんだ、お前その辺りちゃんと考えてんの?」
のんびりスクールライフを死守する為に俺は由比ヶ浜へ再考を促す、これ大事だからな。
「あの、由比ヶ浜さん…私はお昼は教室で食べているのよ、何も態々こんな所で食べなくとも…」
「あ!じゃあさこうしようよ、皆で曜日を決めてそんで一緒に食べよ、そうすれば皆それぞれの都合に合わせられるじゃん!」
結局この由比ヶ浜の提案を俺と雪ノ下は了承する事となった。
週に三日程、ここマイベストプレイスにて三人で昼を過ごすことにな。
俺と雪ノ下のディフェンスは由比ヶ浜の黒色槍騎兵団艦隊の如き猛攻の前に呆気なく崩壊した。
俺もだが、雪ノ下もまた由比ヶ浜の邪気の無い押しに弱いと云う事実がココに発覚した…そんな大したもんじゃ無いかな…無いな。
体育の授業と言うのは、殆どの学校が中学から男女別で授業を行っている事だと思う。
俺の中学もそうだったからな、そして高校に上がるとそれが一クラス単体で行う学校や、複数のクラス合同で行う学校等それぞれの学校でカリキュラムが組まれている事だろう。
俺の通う総武高校のそれは、後者である。
まぁ、それは良いのだが…。
「よし、では始めはストレッチから始めるぞ、皆二人一組を作って始めてくれよ。」
これだ、この体育教師より指示されたこの二人一組、ただでさえ俺はボッチで同じクラスの相手ともまだ、マトモに話をした事も無いんだよ。
初めての授業で、或は授業から先生それは余りにも御無体過ぎやしないですかね…。
俺の積極性の無い性格もあるが、やはり自他共に認めるこの眼つきの悪さが、ネックになって居るのか、俺に近付いて来る者はいやしない…。
誰か、誰か居ないのか、俺はこのグラウンドに集まったムクつけき野郎共の中から俺と同じ様にあぶれた奴は居ないのかとセンサーを働かせサーチを続け、ン秒間の探索の後奴を捉えた。
ソイツは身長180Cmに何なんとする大柄で眼鏡を掛け無造作に伸ばした、中途半端な後ろ髪を束ね、何を考えているのか不明だが授業中であるにも関わらず指貫グローブを着けている。
ファットマンが、所在無さげに佇んでいた。
もう、コレだけで解るだろう、コイツはボッチだ。
そして恐らくだが病を患っている、それはあの病だ、完治或は過ぎ去り過去を振り返った時に自我の崩壊を起こしかねない程に身悶え苦悩し、その過去を消し去りたいと誰しもが思うであろう。
十四歳、中学二年生位の頃から発症するとされるその病名は…中二病。
今現状に於いて、この場で二人一組を成立させていないのは、どうやら俺とこのファットマンだけの様だ。
必然的に俺はこのファットマンと二人一組を組まざるを得ない。
だが、どうするよ…コイツはヤバい。
コイツと組むと後々ヤバい事になる、と俺のセンサーが告げている。
スピードワゴン程では無いが俺にも解るぞ、コイツから漂うヤバい匂いがな。
とはいえ、他にどうしょうもないからな、行くか…。
俺がそのファットマンへ向き直り、歩き始めると…ソイツは大きな眼鏡に締められた顔に瞬間歓びの色が見えた。
幻覚だと思いたいが、それに合わせて奴の頭にピコピコ動く犬耳とブンブンと振られる犬しっぽが見えた……。
俺が近づくに連れ、ファットマンはその歓びの顔を無理に押しやり、しかつめらしい表情を作って俺に対峙しようとしている様だ。
無理や我慢は身体に良くないぞ。
「…よう、お前相手いないよな…。」
「…うむ、まぁその様なものだな。」
これがこのファットマン、材木座義輝との初めての会話であった。
二人一組のストレッチ運動により、俺はこのファットマン、材木座の意外な事実を知る事になった。
「なぁ、材木座…お前一見唯の太っちょに見えるけど、いや事実太ってるけどよ。」
「…八幡よ、そう人の事を太ってると連呼しないでくれまいかの、流石に我も少しばかり傷ついてしまうではないか、これでも我は繊細なハートをしておるのだぞ。」
「いや、それは別に良いんだがよ、お前案外と鍛えてるみたいだな、結構硬い筋肉しているな、何かやってんのか?」
「いや別に良くはないぞ!だがまぁ今は置いておこう、良く解ったな比企谷八幡よ!如何にも我は鍛えているぞ。」
この一連のやり取りだけでも、材木座のウザさの片鱗が既に現れている事が解るだろう。
「知りたいか、いやさ識りたいのか比企谷八幡よ!」
「いや、そう言うのいいんで。」
「イヤイヤイヤイヤ!是非聞いてくれ八幡よ、お願いでおじゃるぅ!」
後悔先に立たずとは、良く言ったものだよな、この時程俺はその言葉の意味を噛みしめる事になった事は無かった。
でだ、結局のトコ、材木座は格闘技を学んでいるそうだ。
「香港にな、我の遠い親戚の叔父殿が居ってな、その叔父が開設した流派の格闘術を学んでいるのだ、ムハハハ!」
腕を組み得意げに高笑いをする材木座のウザさと来たらもう、今くずにでもこの場を離れて他人のフリをしたくなる程のウザだ。
実際他人なんだけどな。
「おい!多少の私語は構わんが、今は授業中だぞ、大声は慎め!」
体育教師よりのお叱りのお言葉を頂戴してしまった…それもコレも材木座のウザさが原因だよな、俺はそんなに大声出していませんよ先生。
「…はい、すいません…。」
お叱りのお言葉に材木座の奴は借りてきた猫状態になりやがった。
ホントにコイツは気がちっちぇ〜んでやんの。
改めて声のボリュームを抑え俺は材木座の学ぶ流派の話を聞いた。
「開祖たる叔父殿が付けた流派の名はな、その名はサイキョー流だ!」
「……………。」
サイキョー流、それがどんなスタイルの武術なのかさっぱり解らないが、その名から漂うのは、そこはかとない残念さだった。
「よし、まだ時間は有るが、今日の授業はこれまでにしよう、後は短い時間だが自由にして良いぞ。」
十分程の時間を残し教師より、自由時間を与えられ、それだけ時間があれば少し試すことができるな。
そう思った俺は材木座に提案を持ち掛けた。
「なぁ材木座、実はな俺も格闘技やってるんだが、良かったら寸止めでいいから組手やらないか?」
またまた意外な事だが、材木座と組手をしてみて驚いた。
材木座のパンチはスピードもあり、パワーも程よく乗っているのが寸止めでも十分に解った、蹴りも同様だ。
その太った身体からは想像がつかない程、その脚は高く鋭く上がるうえに、その重量だヒットした時の破壊力はかなりの物だろう。
コイツは意外な掘り出し物かもな。
「材木座、もしお前が良ければだが、たまに今日みたいに組手やらないか。」
なので俺は材木座に申し込んで見たんだが、材木座の奴は俯く様に下を向き両の拳を握り込みぷるぷると震え始めた。
ヤバいな俺はもしかして、何か材木座の触れられたくない部分に踏み込んだのか、いくら練習相手になりそうな相手に会えたからって、イキナリこんな提案はマズかったか、材木座も俺と同じボッチだろうから、あまり人との付き合いは面倒だと思ってんのかも知れないな。
「…良いのか、八幡…。」
「!?」
「また、我と組手をしてくれるか!」
あれ、コイツ案外乗り気だぞ、そうか材木座はもしかして待っていたのかも知れないな、今日みたいにこうして互いに拳を交えて自身の研鑽の成果を確認したいと思っていたのかもな、それは俺もそうだしな。
「おう、お互い時間が合えばな。」
「そうかそうか、うむ、相分かった!ではそうしようではないか!そして八幡よお主には誰にも教えておらぬ、我の秘密をおしえよえぞ!」
…誰にも教えて無いって、お前は教える相手が居なかったんだろうが!
何か、突っ込むのも面倒だからスルーしておこう。
「我こそは、嘗て剣豪将軍と呼ばれし足利義輝の生まれ変わりし姿、刀の佩刀が許されぬ現代において、刀を拳に置き換えし現代の武将!その名も拳豪将軍。拳豪将軍っ!材木座義輝也ぃ!!」
右腕を天高く突き上げポーズを取る拳豪将軍は、間違いなくウザいと万人が思うだろう。
俺もそう思う、コーラを飲むとゲップが出る、それ程に確実に誰しもがそう思うだろう。
今夜俺が書く日記のページは、失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した…と書かれるだろう。
日記なんて、付けてないけどな。
材木座義輝 幼い頃香港に住まう遠い親戚の叔父である火引弾によりサイキョー流の手解きを受ける。
とはいえ叔父である弾は香港を拠点としている為付きっきりで教えを受けた訳では無く、教えを受けていられない時間の方が長い為、独自に技を磨く。
市販されている格闘技の試合を収めた映像ソフトやネット視聴動画、近所の空手道場などを見学し(チキンハートとコミュ症が災いし入門する事は出来無い)それを参考に通常技を磨く、それにより元祖サイキョー流の弾よりも基本に則った動きが可能である。
研鑽の末に必殺技、通常技共にその性能は師匠である弾のそれを上回っているのだが(その性格は弾とは真逆で挑発行為など行え無いビビリ)その為リアルファイトは出来ず、街のチンピラ達に絡まれない様に大人しくしている(三節棍を手放した時のビリー・カーンの様な有様)
果たして材木座がその秘めた力を開放する時が来るのか(笑)
将来の夢は格闘が出来るラノベ作家。
と言うと設定を作りました。