やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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戸塚に予期せぬ事態が起こるのは間違っている。

 俺達奉仕部による戸塚のテニス技量向上の為の助成、テニスの王子様育成計画がスタートして、早数日目となる土曜日の早朝。

 俺はこの日日課である早朝トレーニングに戸塚を誘い、今戸塚と行動を共にしている。

 俺の提案に快く応じてくれた戸塚、マジ天使、何なら天使の後ろに♡マーク付けるレベルだ。

 え!?俺が♡マークつけるとキモいだと、ハートをつけてかわいいのは上坂す○れさんだけで十分ですかそうですか、ほっとけ八幡それ知ってるから。

 

 

 

 格闘技にしろスポーツにしろ、強くなる為にはやはり心技体の3要素が揃わなければならないだろう、技は雪ノ下がメインで昼休みに指導に当たってもらっいる、俺始め他の部員ではその役は担えないからな。

 なので俺に出来る事といえば、体力強化の指導だ、そこの所は雪ノ下からも任されたし、何よりも俺自身がやりたかったからってのが大きいかな。

 だって、なんてったって戸塚と二人っきりでのトレーニングだよ!

 一体全体どんなご褒美だってぇのよ。

 

 八幡カンゲキィ!

 

 リンゴと蜂蜜だってとろぉり溶けちまうよ。

 蜜月の時だよ、例え何人たりともこの至福の時間を邪魔するに能わずだよ。

 とまぁ、色々と俺の妄想垂れ流してしまったけど、仕方無いよね!

 

 そんな訳で、早朝に戸塚と合流し俺のロードワークに着いてきてもらい、尤もいきなり戸塚に俺がこなしているメニューの全てをやらす訳にはいかない、と言うよりいきなりは着いてこれる筈が無いから、戸塚には適度に休憩をとってもらいながらのトレーニングだ。

 

 そして今、サンドバッグを吊るさせてもらっている(一般開放している私有地の雑木林、ここで去年リュウさんと手合せしたんだよな。)巨木、俺はそのサンドバッグを叩き、その間戸塚には小休止してもらっている。

 ビシバシと響き渡るサンドバッグを叩く音が何時もよりも軽快でいて、なのに十分に重さが乗っているように感じられる。

 もしかしてコレもやはり戸塚効果なのか、コレは良いな何か気分も乗って来たよ、正に『最高にハイって奴だ!』ってなっちゃうよ。

 

 

 

 

 

 「僕サンドバッグを叩いている所初めて見たよ、凄いね、物凄く迫力があってさ僕すごく圧倒されちゃったよ。」

 

 サンドバッグ打ちを終え、共に小休止する俺に戸塚は興奮気味に話掛けてくれている。

 

 「そっかぁ、八幡って格闘技をやってたんだぁ、こうやって毎日鍛えているから初心者なのにテニスのフォームも綺麗だったんだね。」

 

 「いや、褒めてもらえて嬉しくはあるが、戸塚や雪ノ下に比べたら大したこと無いだろう。」

 そう俺を褒めてくれる戸塚の言葉が嬉しすぎる。

 …そうだ、因みに戸塚は俺の事を比企谷君から八幡と呼ぶ様になった。

 

 『あのさ、僕も材木座君みたいに比企谷君の事八幡って呼びたいんだけど良いかな、その方が今よりずっと友達って感じがするから…駄目かな?』

 

 俺に駄目な事がある筈無いだろう、だって戸塚が名前で呼んでくれて、俺を友達だって言ってくれたんだよ、あぁこんなに嬉しい事は無い、ララァにはいつでも会えるから…。

 

 「まぁ、最初っからここ迄出来た訳じゃないけどな、真剣に鍛錬を積んでいけば確実に力は付いていくさ、だから戸塚も日々のトレーニングを続いていけば今よりも絶対に強くなれるぞ。」

 

 心から、そして俺自身の実体験から戸塚に対して俺はそう告げた、日々鍛えていけば身体はそれに応えてくれる。

 そしてその応えてくれる身体を作る為にも鍛えいかなければだ。

 

 「尤も、戸塚はテニスプレイヤーであって、格闘家じゃ無いからサンドバッグは叩かなくても良いけどな。」

 

 「うん、八幡にそう言ってもらえると本当に僕強くなれる気がするよ、ありがとう八幡!」

 

 二人で雑木林へと登る階段の最上段に腰掛け語り合う俺と戸塚、この場には俺と戸塚の二人だけ、もういっそ世界は俺と戸塚だけしか居ない様に感じてしまうのは俺だけだろうか?

 

 「…おぅ、それで良いんじゃねの、それと戸塚、俺が格闘技やってるって知ってんのは戸塚以外だと材木座と一色だけなんだ、正直俺さ、あんまり目立ちたくないから人に話さないでくれると助かるんだが、良いか?」

 

 うん!と屈託の無い笑顔で返事をしてくれる戸塚にあてられ、俺の顔はきっと今真っ赤に染まっている事間違い無しだろうな。

 これがスカーフなら、あの娘(戸塚)に振ってもらえるかも知れないけど、俺の顔だと振ってもらえるじゃ無くて、振られるだろうな。

 俺もヤマトへ乗り込んでイスカンダルまで旅するかな…。

 

 

 

 朝のトレーニングを終え、俺は戸塚を我が家へと誘った、何だかこのままトレーニングだけやって終ってのも味気ない気がして、だから一緒に朝飯でもどうかと思ってさ。

 初めは、それは悪いよなんて言って断っていた戸塚だったが、俺が今迄男友達を家へ誘った事が無いから、その最初の一人目になってくれないかと言ったら喜んで承諾してくれたよ!

 それで今、戸塚を家へ迎え入れたんだが、まぁ大方の人が予想できただろう現状を迎えているんだなこれが。

 

 「へ!?またまたぁ〜もうお兄ちゃんってば冗談ばっかり!こんな可愛い人が男子だなんて、あり得る訳ないじゃん。

 朝っぱらから小町をかつごうなんて、甘い甘い!」

 

 最早お約束の様に小町も言いました、だよなそう思うよな、俺だって思ったもん…。

 

 「ごんめさないです(ごめんなさい)、戸塚さん。」

 

 驚愕の事実を知り、只々戸塚に対して謝罪をして、苦笑しながら戸塚が気にしないでと言ってくれる。

 

 「いやあまさか本当に男の人なんですね、お兄ちゃんいくら戸塚さんが可愛いからって、トチ狂ってちゃ駄目だからねそんな事になったら小町的にポイント低いよ。」

 

 「いや、そんな事になったらポイントどころの騒ぎじゃ無いから、下手を打つと犯罪だから、でなくとも社会的に抹殺される可能性大だからね!」

 

 うん、初めて戸塚と出会った日、ちょっとだけトチ狂いそうになったのは黙っておこう、それが身のためだ。

 

 

 

 

 

 

 小町が用意してくれた朝食を三人で摂って、戸塚と二人リビングのソファに腰掛け俺達は語り合った。

 

 「戸塚、格闘技でもそうだが、スポーツの世界でも強さってのは心技体の三つが揃ってこそって言うよな。」

 

 「うん…僕もその言葉なら聞いた事あるよ。」

 

 「その三つの内の二つ、技は昼休みの練習で雪ノ下が中心である程度は教えられるし、体、身体能力の強化は日々の鍛錬で伸ばすことが出来る、今日俺と一緒に朝練した様に戸塚自身が普段から自主的に取り組んで行けるならな。」

 

 「…うん、やるよ僕。」戸塚は決意も新たに俺の言葉に頷く、強くなると云う意志をその表情に表して。

 

 「だけどな戸塚、残りの一つ心、つまりな精神を鍛えるのは俺達には無理かもだ、それは戸塚お前自身の内面の問題だからな、試合に臨み闘い抜くと云う決意とか勇気とか、闘志とかっても言うな、それからどんな状況に陥っても己を見失わず、冷静に物事に対処出来る心構えとかだなそう言う内面は戸塚自身が獲得しなきゃだな。」

 

 鴨川会長も言っていたよな、どんな優秀なトレーナーでも、それを練習で教える事は出来ないってな。

 最近ではメンタルケアとか自己啓発とか、何か色々あるかもだけどさ、そう言った方面を俺達が指導するとか、先ず無理だ。

 仮に何か言えたとしても、ただの古臭い根性論になってしまうだろうしな。

 

 「…獲物を与えるのではなく、獲物の取り方を教えるだったよね、八幡達奉仕部の活動内容は、今でもさ昼休みの練習や今日みたいに僕は皆に沢山お世話になっているんだ、何から何まで全部を八幡達にやってもらったんじゃさ、奉仕部の活動内容にも外れるだろうし、僕の方もそれにただ甘えるだけになっちゃうよ、だからそう言った事は自分で頑張ってみるよ。」

 

 戸塚もやっぱり男なんだな…俺もまだまだ修行中の身だけど、ほんの少しだけだが先を歩いていると言っていいかは分からんけど、エールを送ろう。

 

 『ファイトだ戸塚!』

 

 何かファイトとか横文字使ったけど、戸塚は強くなろうと頑張ってんだ、だからさその頑張っている人に頑張れは無いかと思うんだよね、ただファイトってのも意味的には頑張れと変わんないんだろうけどさ、それでもエールを贈りたいと俺は思ったんだ。

 

 この後、目を覚まし起きていた母ちゃんと親父も同じ様な反応を見せた。

 その際親父が『男の娘キターー!』と絶叫し母ちゃんからシバかれた。

 さすがは親父、お約束は外さない男だよ…。

 

 その後由比ヶ浜、一色、雪ノ下の順に我が家を訪れ小町の受験の為の勉強会が始まり、折角だからと戸塚も参加して行った。

 午前中、中々姿を表さないカマクラが気になる雪ノ下はやたらとソワソワしていたとここに記しておこう。

 『盲言を吐くのもいい加減にしなさい盲言谷君、貴方が見たものは幻覚よ、その様な物が見えてしまう様な眼は生きていく上で不必要でしょうから、処分してあげるわ。』などと雪ノ下なら言いそうなのでこの記録は俺の心の中の宝石箱に仕舞って置く事としよう。

 

 

 

 

 週が明けて更に数日、戸塚の昼錬の手伝いもそろそろ一週間になろうとしていた。

 その間戸塚は俺が作成したメニューを元に独自に朝練を行い、この昼休みの練習と放課後の部活、そして帰宅時はジョギングと自身の強化を精力的に取り組んでいる。

 何か良いもんだな、誰かが目標へ向けて懸命に努力をする姿を側で見るってのもな、アレだよなそんな姿を見てると俺も負けられないなって思えるんだよな。

 いや、頑張っているのは戸塚だけじゃ無いけど、雪ノ下も体力が無いなりに言葉や身振り理論などを持って指導にあたり、由比ヶ浜と一色も戸塚の練習相手や雑用などを俺と一緒にこなしてくれている、後序に材木座も手伝いに参加してくれている、まぁ材木座の場合は戸塚の天使っぷりの前に心を奪われたからだが、っても材木座に戸塚は渡さんがな!

 

 この昼休みの練習を始めてから、次第にだがこの俺達が取り組むテニスの王子様育成計画の様子を見学する生徒が増えて来ている、何せこの場に居るのはアレだこの学校の女子生徒の中でも有名な美少女達なんだ、それも三人とも確実にトップ5にランキングしている事間違い無しのな。

 しかもそれに加えて、一見美少女と見紛う程の可憐さを持つ男の娘、戸塚が懸命にスポーツに汗を流している。

 美少女三人と激カワイイ男の娘がテニスするこの光景は、思春期男子にはたまらん物があるだろう、後一部の女子生徒にもな。

 実は戸塚は、一部どころかかなり女子生徒に人気があるんだよな、この昼錬始めて最初の頃は女子生徒の見学者が男子より多かったしな。

 しかし、今回あまり女子生徒の見学者は必要ないんだ、何故かってそれは戸塚がこの練習を通して強くなり、他の部員のやる気を起こさせる事が最大の目標だからな、その為には男子、特にテニス部の男子にこの事を知ってもらい、更に興味を持ってもらい、出来ればその連中にもやる気を出して貰えれば万々歳なんだよ。

 だからこの見学者が増えている状況、俺の目論見通りに運んでいると言って良いだろう、後は見学者にテニス部員が居て、戸塚に続こうと志してくれる奴が現れてくれればな。

 

 (しかし、ただ単に雪ノ下、由比ヶ浜、一色達奉仕部美少女チームを見に来ているだけ、なんて連中だけだとしたら…俺の目論見的にはハズレたんだけど、その至極個人的な俺の感情なんだが、彼女達をそんな好奇の目に晒させて居るとなると俺的に面白く無い…。)

 

 

 

 だが、好事魔多しとは良く言ったものだ…。

 

 「うぅっ!………っつ。」

 

 右に左にとコートの中でボールを追い弾き返していた戸塚が、足を縺れさせて転び膝を負傷してしまった様だ。

 

 「戸塚ぁ!」「彩ちゃん!」

 

 「戸塚殿ぉ!」「戸塚先輩!」

 

 雪ノ下を除く俺達四人は、その状況に焦り思わず大声を発し戸塚の名を叫んでしまった。

 膝を抑えながらも立ち上がろうとする戸塚の様子から、怪我それ自体はそれ程大した事は無さそうだ。

 

 「…っ、ゴメンね折角皆が手伝ってくれてるのに…。」

 

 ただの擦り傷の様だし、大した事無さそうとは云え、それでも痛いものは痛いんだ、なのに戸塚は何より先に俺達に詫びの言葉を述べる。

 

 「彩ちゃん、彩ちゃんは何も悪くないんだよ!だから謝らないで…それよりも足は大丈夫?」

 

 「そうですよ戸塚先輩!先ずは一旦ベンチで休みましょう。」

 

 「そうであるぞ戸塚殿!先ずは傷口を洗い、それから治療であるぞ!」

 

 そんな戸塚だからこそだろう、皆がそれぞれに口々に戸塚の身を案じるのは。

 しかし一人だけ、雪ノ下だけは違っていた、ベンチで休む戸塚に対して雪ノ下は言った。

 

 「…まだ続ける気かしら戸塚君。」

 

 この物言い、一見すると雪ノ下は冷たい奴の様に感じられるかも知れないが、そうじゃ無いんだ。

 

 「うん、折角皆が手伝ってくれてるんだし…それに僕自身何だか手応えを感じ始めているからね。」

 

 戸塚の返事に雪ノ下は「…そう解ったわ。」と言い踵を返し俺達から離れて行こうとしている。

 雪ノ下がこれから行おうとしている事は何も雪ノ下がやらなけりゃならない事じゃない。

 

 「待てよ雪ノ下、お前はココに居ろよな、保健室には俺が行く。」

 

 雪ノ下は保健室に行き、先生を呼ぶか救急箱を借りて来ようとしているんだ、雪ノ下は基本的に不器用な奴だからさっきみたいな物言いをしてしまうが、別に冷血だと云う訳じゃ無い。

 その本質は優しい奴なんだよ、ただ過去の経験とかそう言った外的要因の影響で人付き合いが下手なだけ(その辺り俺と似ているのかも)なんだよ…多分。

 

 「お前は奉仕部の部長だろう、ならこの場の責任者な訳だ、こう言うのは部員に任せて、部長のお前はデンと構えていろよ。」

 

 俺に声を掛けられ、立ち止まった雪ノ下は自身の行動を俺に読まれた事に意外そうな顔をしたが、俺の意見には了承してくれた。

 

 「…そうね、比企谷君貴方に任せた方が良い様ね、お願いするわ。」

 

 「おう、任された。」

 

 「由比ヶ浜、一色、後序に材木座、お前達も少しの間此方を頼むな。」

 

 由比ヶ浜と一色も居る、この二人ならきっと雪ノ下をサポートしてくれる、二人は俺や雪ノ下と違ってコミュ力が高いから、特に一色はそのあざとさと云うか人当たりの良さと、意外と頭も回るから対外交渉とかも任せられそうだ。

 由比ヶ浜はアレだ、うん、場の雰囲気を和らげてくれるかな。

 硬いオージービーフを柔らかくするために漬け込むワインみたいな…ちと違うか。

 材木座はホントにオマケだ、スーパーミニプラに付いているガムみたいな程度の存在だ。

 オマケのガムみたいな程度の能力…このネタ前にやったな!?

 

 …てか、俺はちょっとこの場を離れるだけなのに何でこんなに説明してんの。

 

 「うん!行ってらっしゃいヒッキー、気をつけてね。」

 

 朝、仕事へと出てゆく旦那を送り出す新妻の様な返事をする由比ヶ浜…あっ、ヤバイ由比ヶ浜の新妻の手料理とか…あまり想像したくねぇ…ガハママさんも由比ヶ浜の料理はまだ人様に出せるレベルへは至ってないと言ってたし。

 

 「ハイ、せんぱい!いろはちゃんに任せておいてくださいね♡」

 

 あざとさ可愛く敬礼しながら返事をする一色いろはさん、俺言ったよね♡をつけてかわいいのは上坂す○れさんだけ…じゃない様だな、遺憾ながら。

 

 「ちょっ!相棒よ、我序にって酷くない!それ酷くない!!」

 

 材木座が何か言っている様だが、聞こえません。

 

 

 だが、俺がこのテニスコートを離れてしまった僅かの時間の間に、面倒事が起こってしまっているとは、この時俺は想像してもいなかった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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