やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
俺はテニスコートを後にし保健室に向かったんだが、そこに養護教諭の白楽先生は不在だったので職員室へと遥々やって来た。
いやね、別に遥々とか強調する必要は無いんだけどね。
扉をノックし、入室の挨拶を済ませて職員室内を見渡したが、白楽先生の姿は確認出来なかったが、俺の来室に気が付いた平塚先生が俺に声を掛けて来てくれた。
「やあ、比企谷どうしたのかね、君が呼び出し以外で職員室へ来るなど滅多に無い事だ、何かあったのかね。」
「うす平塚先生、実はっすね…」
俺は事の経緯を平塚先生へ説明し、保健室から救急箱を借りてもらった。
「どうもありがとうございます平塚先生、戸塚の治療が終わったら救急箱は返しておきますんで。」
「ああ頼むよ比企谷、ところでどうかね戸塚の練習の成果の程は?」
顧問として平塚先生も俺たちが取り組む、テニスの王子様育成計画の進捗状況が気になるのだろうし、生活指導担当と言う立場もあるだろうが、基本この人は面倒見が良いと云うかお人好しな面があるんだよな、それがプラスの方向に働けば今頃恋人の一人…。
「比企谷、君にはどうやらファーストブリッド〜ラストブリッド迄のフルコースをお見舞いせねばならない様だな。」
右手の指をメキメキしながら、このお人は物騒な事を仰る…まぁ例え撃たれたとしても全弾回避でもガードでも対応出来るけどね。
「なら俺はシャイニングフィンガーで対抗させてもらいますよ。」
「…敢えてゴッドフィンガーでは無くシャイニングフィンガーを選択するとは比企谷、君も解っているな!いやあGガンの主役機交代劇こそ歴代ガンダムシリーズの主役メカ交代劇中屈指のエピソードだと私は思うのだよ、ハハハハっ!」
「…そっすね、何気にゴッドガンダムにお姫様抱っこされてるシャイニングガンダムのラインが妙に女性的だったりするんですよね。」
Gガンなぁ、アレ当時リアルタイムで見てた人ってどんなふうに思ったんだろうか、DVDレンタルで視聴した俺としては一ロボットアニメとして楽しめたけど、それ迄のリアル路線からガラリと変わってついて行けない視聴者も多かっただろうな、何せその前番組が∨ガンだからなぁ、ギロチンとか水着のお姉さんをビームサーベルで焼き殺すとか、お母さんの頭部があのメットの中にあるのかとか考えると…。
色々脱線してしまったが、平塚先生には順調に計画は進行していると伝えると平塚先生は一つ頷き。
「最終的な報告は、依頼完了後の活動日誌の提出を以ってと言う事でな。」
平塚先生は右手を振り、職員室へと戻っていった、長い黒髪と白衣をたなびかせながら、ホントにこの人のこう云う仕草には見惚れてしまう…な。
救急箱を借り受けてテニスコートへと戻って来た俺は、そこで俺が離れていた間に起こったであろう状況に呆れとも、憤りとも着かない感情を抱く事になってしまった……。
「…コイツは一体どう言う状況だ?」
テニスコートの両サイドに男女一人ずつのペアがラケットを片手に陣取っている。
片方は材木座と由比ヶ浜、もう片方は俺や由比ヶ浜と同じ2年F組のトップカーストと目されるグループの二人だ、イケメンとして学校内でもかなり知れ渡って居るらしい、例の体育の授業の時にコートを独占していたうる星やつら…では無く五月蝿ぇ奴らの首魁と、見た目が派手で金髪ドリルヘアの(俺の印象としては我儘、唯我独尊を地で行く)女子だ。
そして周りにはコイツらのグループの男子が三人と赤い眼鏡を掛けたショートヘアのチョイヲタっぽい?女子。
ベンチでは戸塚が悲痛な表情で、その側にはゼイゼイと荒い息を吐く雪ノ下が疲れ果てた様に腰をおろしていた。
「おぉ、比企谷君じゃん!比企谷君も混ざりに来たんだべぇ!?」
トップカーストの賑やかし担当の…戸部だったかが、気楽な調子で俺に声を掛けて来た。
が、俺はそれを無視して身内(この場合は奉仕部のメンツと戸塚と材木座だな)へ確認を取る。
「雪ノ下ァ言え!コイツはどう言う事だ!」
俺のキャラでは無いかも知れないが演出を兼ねて、俺は少しばかり大きな声で雪ノ下に確認を取ってみた。
雪ノ下は一旦俯いていた顔を上げ、俺と目を合わせたが、バツが悪そうに視線を反らした。
「ヒッキー…ゆきのんを責めないであげて、あたし達も悪かったんだ…。」
「そうだぞ相棒、雪ノ下嬢だけの責任では無いのだ、我等にも非はある…。」
「八幡…ゴメンね、僕が…。」
由比ヶ浜、材木座、戸塚が雪ノ下を庇う様に自分達の非を俺へ告げようと口を開いているが、それは後で聞く。
今聞くべきは、この場の責任者の立場にある雪ノ下からだ、その経緯を聞くべきはな。
雪ノ下は荒い息を吐き、ながら一言ごめんなさいと俺へ謝罪するが、違うだろう雪ノ下、今言うべき言葉は俺への謝罪じゃ無いだろうが!
「…せんぱい、今雪ノ下先輩は疲れてますから話せる状態じゃ無いです、だから代わりにこれを見てください!」
そう言って一色が俺に手渡してきたのは、戸塚の練習の様子を録画する為に利用していたビデオカメラだ。
戸塚の練習及びフォームの確認等に利用していた、雪ノ下が自前で用意してくれた物だ。
なる程な、一色はどうやらことの顛末をずっと録画していたんだな。
コレは良くやったと評価しておこうかな、八幡的にポイント高いぞ!
ふむ、これはどうやら俺がこの場を離れてほんの間もなくの事のようだな。
『あ〜、テニスやってるじゃん、テニスぅ、あ〜しさぁ今超テニスやりたいんだけどぉ!』
金髪ドリルの声が聞こえ、一色はその声が聞こえて来た方向へカメラを向け、そこに映っていたのは金髪ドリルを先頭にコート内へと無断で侵入して来た、この連中だった。
『およ、なんだぁ結衣じゃん!ねぇ結衣あんたテニスやってんの、だったらさぁあ〜しらもヤって良いっしょ!』
『あ〜っゴメン優美子、あたし達今さ部活中なんだ、だから学校に許可をもらわないとコートをつかえないんだ。』
ふむ、由比ヶ浜はきちんと断りをいれているな、偉いぞ由比ヶ浜、この先の展開次第ではハナマルをあげても良いな。
『え〜っでもさ結衣、あんたテニス部じゃ無いしょ、だったらあ〜しらだって使えんじゃん。』
『やぁ〜そうなんだけどさ、あたし達の部で彩ちゃんの手伝いする事になってさ、それで…。』
『だったら結衣だって部外者じゃん!ならあ〜しも…『貴女聴こえなかったのかしら由比ヶ浜さんは学校に許可を取ってここに居るといった筈よ。』なっ!あんた確か雪ノ下さんだっけ?随分高飛車な態度取るじゃん!?あんた何様!』
なる程な此処で雪ノ下が出張って、金髪ドリルと口論へと発展して行く訳だ、この二人どちらもある種女王様タイプみたいだからな、さしずめ雪ノ下は氷で金髪ドリルは火ってところかな。
…待てよ、氷を水と考えると、水と火って訳だ、もしかして探せば木金土のタイプの女王様が居るかも知れないな、集めれば総武高校の陰陽五行の女王様戦隊を結成出来るかな…。
何か面倒くさい戦隊になりそうだな、チームワークも何もあったもんじゃ無いバラバラの戦隊ってかそれじゃあ戦隊の体も為さないんじゃね?
『まぁまぁ優美子も雪乃ちゃんもそれくらいにして冷静に話し合おうよ。』
首魁閣下のお出ましか、途端に金髪ドリルはデレやがったが、雪ノ下は何だかすっげー嫌そうな、嫌悪感丸出しって表情してるな。
『…貴方に名前で呼ばれる筋合いは無いわ、不快だから止めてもらえるかしら葉山君!』
『っ、すまない雪ノ下さん…だけど二人共そんなに攻撃的にならずに皆仲良くしよう、話し合えばきっとわかり会える筈なんだからね。』
…ハッ、皆仲良くね…由比ヶ浜はテメェ等にきちんと理由を話し、それは無理だと断りをいれたじゃないか、なのにそれを無視するように無理矢理テメェの我を押し通して来たのはどっちだ!
コイツが、葉山とか言ったか…コイツの言う皆仲良くってのは俺達がコイツらに対して譲歩して、その我儘を受け入れろって事じゃねぇか。
譲歩する事を一方的に押し付けられた側に、押し付けた側に対する友情なんて無ぇだろ、そこに生まれんのは反感だ、そんな相手と仲良くなんてしたいと普通のマトモな思考回路を持っていりゃ出来やしないだろうがよ。
『ではこうしないか、俺達と君達と試合をし、勝ったほうが戸塚の練習の手伝いをする、恨みっこなしでね。』
…何処までコイツ等は馬鹿なんだ、俺達奉仕部は部活として正式に依頼と許可を受けて此処に居るんだと説明を受けたにも関わらず、飽くまでもテメェの都合を押し付けやがる………。
『葉山君貴方話を聞いていたのかしら私達は『ハン!何だかんだ言って雪ノ下さんさぁ〜、あんた負けんのが怖いだけなんじゃないのぉ〜。』…何ですって、良いわ貴女のその安っぽい挑発受けて立ってあげるわ!』
………あっちゃぁ〜、雪ノ下ェ…。
「おい雪ノ下。」「何かしら比企…」
俺は雪ノ下の返事の途中で、雪ノ下に対してデコピンをお見舞いしてやった。
雪ノ下は痛む額を抑え、恨みがましい眼で俺を睨みつけるが、その眼光には普段の雪ノ下の気迫の様なものが感じられない。
こいつ自身下手な挑発に乗ってしまった負い目があるんだろうな。
「何やってんのお前は、挑発だと分かってんのに何でそれに乗るよ!?馬鹿なのか、お前がやるべき事は何だ挑発に乗る事か違うだろうが。」
俺は雪ノ下から視線を離すことなく、ジッと見つめ話す。
「お前が奉仕部を立ち上げたのは何の為だったよ!?依頼を通して自身と依頼者の成長を促す事じゃなかったか!」
「…貴方の言うとおりよ比企谷君、返す言葉も何も今の私には無いわね。」
「なぁ雪ノ下、お前ライラ大尉知ってるか?知らないだろうな、そのライラ大尉はこう言った…お勉強が出来るだけの馬鹿な子っているよね…とな、今のお前を見てるとそれがお前に当てはまる様に俺には思えてならないんだよ。
お前は学年一位の成績を誇るのに精神はてんで未熟じゃねぇか、いや未熟なのは俺達だって一緒だ何せまだまだ親のスネかじってる一介の高校生だからな、でもよ挑発だって解ってんなら何でそれを回避する路を選ばないんだ、それを選べる様になってこその成長だろうが、お前は今日その成長の機会をテメェで不意にしたんだ。」
「…………。」
俺が雪ノ下へ話し掛けている間もビデオの再生は続いている、結局葉山グループと雪ノ下達は試合をする事になり、男女ダブルスでだ。
葉山と金髪ドリルペアに対し雪ノ下と材木座ペアで挑む。
何だか金髪ドリルが中学時代テニス部だったらしく、その腕前はかなりの物だと俺にも解るが、雪ノ下は技術でその金髪ドリルの上を行っていた。
葉山もスポーツマンだけあり、それなりに上手く立ち回っている。
材木座は…パワーはあるがボールを上手く捉える事が出来ていない為、打ち返したボールがホームランレベルの打球になっていたり、ネットをぶち抜いたりといいとこ無しだ……。
それでも雪ノ下一人の力で優勢に試合は進んでいたが、それはゲーム開始からほんの三〜四分間だけだった。
元々雪ノ下は体力が無かったが、金髪ドリルの技術は一歩劣るもののそれなりのレベルには達していた様で雪ノ下相手に善戦、それがあったが故に雪ノ下の体力は僅かな時間で削られてしまったのだろう、体力を削られた雪ノ下はリタイアした訳だ。
そして、雪ノ下の代わりに由比ヶ浜が試合に出たが、力及ばず序盤にリードを覆されてしまった訳か。
「良いか雪ノ下…クールになれよ、くだらねえ挑発なんかに乗るような猪突じゃいけない。」
「あんさぁ〜どうでもいいんだけど早くしてくんなぁい?」
痺れを切らしたか金髪ドリルが催促してくるが、コイツは自分がやっている事の意味を理解してんのか、もしもして無いのならコイツはどうしようもねぇ救いようも馬鹿だ。
「ちょっと黙ってろやァ!糞ビッチがァ!!」
この連中にはいい加減俺もムカついているからな、此処は少しばかり闘気を込めて恫喝してやった…連中、闘気なんてモノ食らったことなんか無いだろうからな、全員たじろいでいやがる。
「雪ノ下俺は、まぁなんだお前の事は信じてるぞ…お前はきっと成長出来るってな、雪ノ下だけじゃ無い、由比ヶ浜も一色も戸塚も…材木座も?」
皆の視線が俺に集まる、生憎俺の眼に俺の顔は見えないが、多分今の俺の顔は赤く染まっているかも知れないな。
なんか今日の俺は柄にも無い事ばかりやってんじゃね?
その俺の柄でも無いセリフに続いて、皆がなんだか愛でる様な声で俺の名を呼んでた。
相棒、我だけ何か疑問形…と材木座が言っている様だが、八幡聞〜こえない。
身内からの話は聞き終えた結果、連中の挑発を受け雪ノ下が暴発し本来やるべきで無い事をやってしまった。
なのでこちらも、何らかの処罰が課せられるだろう。
「…さてと、ちょっくら奴等と話してくるわ。」
「…ヒッキー、あのさ…ゴメンねお願い。」
俺は由比ヶ浜の頭を人撫でし、コートへ向かう。
連中にも解らせないといけない、自分等がどんだけ愚かな行動を起こしたかと言う事を。
俺はテニスコートのセンター、ネットの向こう側にいる首魁と金髪ドリルの二人と対峙した。
「…解ってんだよな、お前等の行動がどんな結果になるかってよ、わかった上での行動だよな。」
「ハア!?何言ってるし、あ〜しらテニスやりたいからやりに来ただけだし、アンタらだってやってんじゃん!」
どんだけなんだよ、コイツは由比ヶ浜達に説明を受けたにも関わらず、それをまるで理解しちゃいないなんてな…コイツは救いようがねぇ奴と認定して構わんようだな。
「まぁ二人共、そんなに好戦的にならないで、折角なんだから皆で仲良く楽しくテニスをしようよ、優美子もヒキタニ君もさ。」
こいつ、事がここに及んでもまだそんな寝言をほざいてんのかよ、こいつと言い金髪ドリルと言い、この学校は進学校の筈だよな、だってのに人の話を理解出来て無いのかよ。
それにこの男は、俺前に言ったよな俺の名は比企谷であってヒキタニじゃあねぇと…ワザとヤッてんのか、それとも素で間違えてんのか…前者ならコイツは敵認定しても構わんな、後者だとしたら、コイツは残念な奴と認定するか。
「おいハサン、テメェは頭脳がマヌケか!?由比ヶ浜達が説明したんだろうがテニスコート使うには許可が必要だってよ、しかしアレだな、アーガマの軍医のハサン先生は子供達や乗組員の体調からメンタルのケア迄行う人格者だったけどよ、同姓のお前はそれに程遠いな。」
「…すまないが、俺はハサンでは無いよ、葉山だよ。」
ふっ、コイツ今少し気分を害したか、今迄おそらくコイツは常にトップカーストに君臨していたんだろう、なら今俺がやった様に直接的に悪意をぶつけられた事なんか無かっただろうと想像できる。
「へぇ〜、あっそ!俺今迄お前の名前知らんかったし、仕方無いよな。
お前はアレだよな、俺は前に名前を名乗った記憶があるんだが、もしかして俺の気のせいだったかな…なぁ材木座、俺確かコイツに名前名乗ったよな!?」
「…うむ、相棒よお前は確かにそこな奴に名を名乗ったであるな、我だけでは無く戸塚殿も聞いていたぞ、そしてそこの長髪君も知っておるぞ。」
材木座の言葉に戸塚も頷く、あの時の事を二人は普通に覚えていたよ、それが普通だよね、なんたって戸塚が覚えていたんだからさ。
「…だそうだ、ほんの一週間程度前の事だと思うんだが、それを覚えてないとすれば…やはりお前の頭脳はマヌケとしか言えないわな。」
ハハッ、流石に此れだけ言われると少しはコイツもバツの悪そうな顔をするのか、皆仲良くだとかなんとか口当たりの良い言葉で今迄物事を有耶無耶にしてきたんだろうが、そうは問屋が下ろさないってな。
「まぁだが、今それは置いとくとしてだ、一旦始めたからには取り敢えず着けなきゃだろうな、相手してやるよお前ら二人共俺一人でな、フッ!。」
俺は葉山と金髪ドリルを睨む、お馴染みの眼つきの悪いと評判の(平塚先生曰く特攻の拓のキャラクターの様な眼つきと評される)眼光に微量の闘気を加えてな。
それを受けた二人が僅かに後退る、ヘイヘイ!ピッチャービビってるう〜!
「おら、お前らもポジションにつけよ殺ろうぜ!」
俺はジャージのジッパーを下ろしながら促す、このくだらない試合を終わらす為に、そして事此処に至ったなのなら利用するか、この状況を。
お誂向きに見物人も集まっている、証人は十分だ。
更に此処で少しばかり力を示せば、中にはそれを見て自分もってヤル気を出すテニス部員も居るかもしれないし、新たにテニスをやりたいって生徒も出てくるかも知れない、マイナスばかりじゃ無くもしかしたらプラスの効果が現れる可能性だってゼロじゃ無いかもな。
二人がポジションに付いたことを確認し、俺もそれに続く。
「風は一人で吹いている
月は一人で照っている
俺は一人で流れ者…。」
俺はジャージを脱ぎながら唄う、ドラマ『スクールウォーズ』で大木大介が喧嘩に臨む際に唄った『東京流れ者』を。
コレも演出だ、けど元ネタをコイツらが知っているとは思えないけど、いやスクールウォーズって割と再放送やってたからワンチャンあるか。
ジャージを投げ捨てラケットとボールを材木座から受け取り、その材木座には葉山と金髪ドリルの後方に陣取ってもらう。
サーブ権は俺が貰った。
さて何発かな、コイツらのメンタルをへし折る迄に俺が打つ回数は。
先ずは一発目、俺はボール2回バウンドさせキャッチしたボールを空へ放り、戸塚に褒められた(八幡超嬉しい)フォームでラケットを振り抜いた。
一流のテニスプレイヤーが打つボールのスピードは時速250Km/hを超えると云うが、今の俺のショットもそれに遜色ないだろう。
それだけの速度、一般人が反応など出来るだろうか、否出来無い…多分。
現に、葉山と金髪ドリルは一歩も動けずにいた。
俺が打ったボールは二人の間をワンバウンドして通り過ぎて行った。
呆気にとられたような表情の二人と、その球速に驚きざわめく観衆の声、コート外へアウトしたボールに反応し、キャッチした得意気な顔の材木座、いやお前は格闘者だし出来んだろう。
『WOOOO!!!!!』
「ヒッキー!!カッコいいよお!」
「せんぱい!素敵ですう!!」
見学していた観衆が、由比ヶ浜が一色が、一斉に歓声をあげる…学校で目立つのは不本意だが、仕方無いな。
手を挙げて歓声に応えたりなんか八幡やんないよ、だって恥ずかしいし。
葉山と金髪ドリルは互いの顔を見合われている、そりゃそうだよね、君達に打ち返せるかな?出来るかな、かな?
「あ〜、予告しとくわ、次も同じ所に打ち込むから頑張ってな。」
二人を煽るため、俺は敢えて挑発的に同じ場所へ打ち込むと告げてみた。
まぁ、うん同じところに打ち込みはするよ、打ち込みはね!
ボールを受け取り一発目と同じ様に、コートにボールをバウンドさせる。
キャッチしたボールをさっきは普通に放りサーブしたが、この先が違うんだなこれが。
左手に掴んでいるボールに俺は気を込める、「ハァーッ」と一呼吸し。
気を込めたボール放り上げる。
そのボールをチョッピングライトをイメージしてラケットを振り抜く、一発目がおよそ250Km/hを超えた位のスピードだったが、この2発目はそんなもんじゃ効かないだろう。
気を込めたボールを全力で振り抜き、ラケットの真芯でそれを捉えたんだからな、おそらく400Km/hは出てんだろうな、カワサキのNinjaH2Rの最高速度並みの速度だろう。
超スピードで射出されたボールは、気のオーラを纏い、一発目とほぼ変わらぬ発射角で相手側コートの、やはり一発目と変わらぬ位置に着弾し…。
『ドゴオーン!』
と大凡テニスボールがコートに着弾した音とは思えない音を響かせ、コートの地面を軽くえぐり取りそのボールは…。
『パァーン』と気のぬけた様な音を起てて破裂四散してしまった…。
あ、これヤバイやつだ…どうしようきっと皆ドン引きしてんだろうな…。
てか、ボールを弁償しないとだよな、まぁバイトのおかげて金銭的な心配は無いけど(ボールの一個くらいなら)さ。
『WOOOO!!!!』
一発目を放った後の歓声よりも、より大きな歓声が観衆から発せられ、中には賞賛の声がチラホラと聞こえる。
そんな状況に於いて、葉山と金髪ドリルはただ呆然と立ち尽くすだけであったが、俺としてはコレで済ますつもりは無い。
そろそろ昼休みも終わるだろうし、今後コイツらにデカい顔をさせない為にもさ、止めは刺すべきだよね。
さて、もう一芝居打ちますかね。
「やっべぇ、調子乗ってコースの予告してみたけど良かったわぁ、うまい事行って。」
ラケットを右肩に担ぎ、ネット際へ歩きながら少しだけ大きな声で独り言を言う体で、二人に聞こえるように言う。
「我ながらあれだけのスピードとパワーだからな、もしアレがコントロールを外して人の身体に当たったらどうなったろうな。」
二人に眼を向けニヤリと、作る必要もなくデフォルト装備の悪人的な眼と、口元を歪ませて、駄目押しだ。
「もしアレが、女子の下腹部にでもぶち当たったとしたら、確実に子宮が破壊されるだろうな…そうなったらアレだ、将来好きな男の子供も産めなくなるかもな、フッ!」
金髪ドリルはそれを想像したのか、恐怖の小さなうめきを漏らし、その場に崩れた。
「もしアレが、男の股間にぶち当たったら、確実にそのぶら下げた二つのボールとバットは使いもんになら無くなんじゃね。」
バチコンウインクをかまし、俺は優しく告げてあげました…まる
てか俺のウインクとか多分需要無いよね。
蹲る金髪ドリルを労りながら、葉山は苦い表情をしていた。
「人の忠告を無視した挙げ句に、無様に完全敗北を喫する、人それを自業自得と言う!」
胸元で腕を組んでロム兄さんしたかったが、あいにくとラケットを持っているから出来なかった、これぞ正に片手落ちってか…お後が宜しいようで。
放課後、俺達奉仕部はことの顛末を平塚先生に報告、一色の記録した映像と言うこれ以上に無い証拠も有り、直ぐに処分は決定した。
俺と雪ノ下は、停学三日。
雪ノ下は止めるべき立場に居ながら、安易な挑発に乗った為に、俺は些かやり過ぎで在ろうと。
葉山グループのテニスに参加しなかったメンバーも停学三日。
戸塚、由比ヶ浜、一色、材木座は反省文の提出。
そして葉山と金髪ドリルこと三浦は、一週間の停学と、葉山は一ヶ月間の部活動禁止。
一時の快楽の為に痛い思いをする事になったが、これも又自業自得だ。
停学明け、登校した俺を由比ヶ浜と戸塚が笑顔で迎えてくれた。
「八幡、ゴメンねそしてありがとう、奉仕部の皆のおかげであれから新しい部員も増えたし、何人かの部員もヤル気を出してくれてさ、テニスが盛り上がって来たんだ。」
「ヒッキーゴメンね、ゆきのんとヒッキーにだけ嫌な思いさせちゃって…でもおかえりなさいヒッキー。」
まぁ停学はちと痛かったのは事実だけどな、テニス部を盛り上げる事に貢献出来た様だし、戸塚と由比ヶ浜も笑顔で迎えてくれたし…終わり良ければすべて良しだな。