やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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少年は、餓狼の出陣を見届ける。

 

 リムジンを降り、試合会場の場所を知った俺はそのスケールに言葉を失い、只呆然とその会場を見上げた。

 その会場とは、千葉県民ならば誰もが知っているであろう、千葉マリンスタジアムであった。

 当時格闘技の事など殆ど知らなかった俺だか、偶にテレビで放送されているボクシングや柔道等の試合は、体育館みたいな屋内で行われているみたいだったので、てっきり県内の何処かの体育館で行われるもんだと思っていたんだが……

 

 まさかの千葉マリン、結構のん気していた俺もこれにはびびった!

 

 ……すいません調子に乗って、またまたジョジョネタぶっこみました。

 またまたやらせて頂きまし……もう言いません…暫くは……。

 

 だが、会場が千葉マリンだと知りビックリしたのはマジで、これからこの場所で何が起こるかそれを思うと気後れしてしまったのは本当の事実だ。

 

 会場のスケールに息を呑み、フリーズしている俺に「ほれハチマン、ぼうっとしてないで早く行くぜ」軽く俺の肩に手を置きテリー兄ちゃんが声を掛けてくれた。

 その声のお陰で、再起動を果たした俺は皆と共に関係者入場口から入場して行った。

 

 入場後俺達は、テリー兄ちゃんの為に用意された選手控室へと入室した。

 時刻は午前十時を過ぎていたが、テリー兄ちゃんの試合開始の時間にはまだまだ時間的な余裕は、十分に有り此処で漸く俺はこの日のイベントがどういった物かを尋ねる余裕を持てた。

 

 今回開かれたこの格闘大会は、世界的規模で開催されたもので、先ずは各国で代表者決定の為の予選会が開催され、テリー兄ちゃんは、アメリカ大会で優勝し決勝大会へ出場。

 全米及びヨーロッパブロックにてトーナメントを勝ち抜きこの日の決勝戦へと駒を進めて来たとの事だ。

 

 そして、決勝戦の相手は日本人の選手で、因みにアンディ兄ちゃんは、日本代表決定戦の決勝戦に於いてその人に敗れ世界大会出場を逃したのだそうだ。

 

 ジョーあんちゃんはと云うと、本当はタイの予選大会へ出場したかったのだそうだが、残念ながらムエタイのタイトルマッチの日程が被った為に出場を断念したのだそうだ。

 「もちろん、タイトルは防衛したに決まってんだろ!ナァ〜ハハハハッハ〜ッ!」両手を腰に添え高らかに大笑しながら、ジョーあんちゃんは言った。

 

 話をこの日のイベントの内容説明へと戻すと、この日行われるのは2試合で一試合は勿論テリー兄ちゃんが出場する決勝戦。

 もう一試合は、三位決定戦となる試合が行われるとの事。

 試合はこの2試合だけなんだが、せっかく行われる大々的イベント、試合だけでは時間的にも短い物に為るであろうと言う事で、試合開始前にアイドル歌手のコンサートが、開かれこの大会に彩りをそえるのだとか。

 

 因みにその歌手とは、芸能人に疎い俺でもその名は知っている。

 

 その名は麻宮アテナ。

 

 歌って踊れて、格闘も出来るサイコソルジャーと云う触れ込みのアイドル。 

 何で俺が知っていたかと云うと、小町がファンだからだ。

 もし小町がファンじゃ無かったら知らなかったと思うよきっと、俺だからな。

 

 

 

 暫しの間、控室でまったりとした時間を過ごす俺達、モニターで麻宮アテナのコンサートの様子を見たり、正午には主催者サイドが用意してくれた昼食(テリー兄ちゃんが、ファストフード好きなのでハンバーガーやホットドッグ等が用意されていた)を頂いた。

 やがて腹がこなれた頃、テリー兄ちゃんは試合に向けてのアップを始めた。

 

 ジャンパーを脱ぎTシャツ姿で、ストレッチを始め、身体をほぐした後アンディ兄ちゃんがミットを構えパンチを、キックを連続してフォームを確認しながら繰り出す。

 

 バシバシ、ビシビシ、ドスッ、ズドンッ、文字化するとそんな感じか、パンチやキックの繰り出すスピードや打角によりミットより発せられる打撃音が変化する。

 響き渡る打撃音、飛び散る汗、その迫力、その全てが初めて見る物、そして聴く音。 

 俺はその全てに魅入られたかの様に言葉無く、ただただその光景を見続けていた。

 

 

 そして時は来た。

 

 

 控室へと主催者側の係員が訪れ、リングへの入場を促す。

 

 「準備は良いよなテリー!」 

 「出番だよ兄さん!」

 「勝って世界一よテリー!」

 「Terry.It’s the Beginning of The party!」

 皆がそれぞれに、テリー兄ちゃんへと声を掛ける。

 

 「…OK!」 

 

 静かな口調で一言だけ、テリー兄ちゃんは、汗で湿ったTシャツを着替えながら返事を返し、袖の無い赤い、白抜きの星のマークが背中に輝くジャンパーを右手に持ち「…ハチマン、これから始まる事を、お前のその眼でしっかり見てくれよな!そいつを見て、お前自身がどうしたいか、どうすべきか決めるんだ、良いな!」と俺に言う。

 

 「…うん…分かったよ…テリー兄ちゃん…」

 俺はそうテリー兄ちゃんへ返事を返した。

 

 「ヨシッOK!行こうぜ!!!」

 

 案内係の後を、テリー兄ちゃんを先頭にその後を皆が続き、試合会場へと出陣して征く。

 もちろん俺も皆と共に征く、これから始まるテリー兄ちゃんの闘いをこの眼で見届ける為に。

 それが俺の未来にどんな影響を与えるのか、このときの俺はそれを知る由もなかった。

 

 控室からリングへと続く廊下へ出るとテレビカメラが待ち構えていた。

 闘いに赴くテリー兄ちゃんの様子をカメラに収めるためだろう。

 流石は世界大会決勝戦だけに、テレビ放映もされるのだろう。

 

 おそらくテレビでは、入場の様子なんかも、局アナが過剰な抑揚を付けた口調で解説しているに違いない。

 

 俺はと云うと、あらやだ八幡ったらテレビに映ってる?マジテレビデビューしちゃた?そんなの困る〜、映すなら事務所通してくれてからにしてくれないかしらぁ。

 等と一人脳内遊びをする余裕など有る筈も無く、テレビカメラの存在する現実に、俺が闘う訳でも無いのに妙に緊張してしまった。

 

 闘う訳でも無い俺がこんなにも緊張しているんだ、これから闘うテリー兄ちゃんの心境は如何なものか、俺達の前を歩み征くその背中から、その思いを感じ取る事はこの時の俺には出来なかった。

 

 まぁ今なら少しは解るかもな。きっとこの時テリー兄ちゃんのその表情は、不敵な笑みを湛え、闘いの前の緊張とワクワクを抑え込み、その力を爆発させる瞬間を今か今かと待ちわびている。

 きっとそんな感じなんじゃなかったのかなと思うだが、どうだろうな、俺は本人じゃ無いしな。

 

 

 

 話を戻そう、通路を通りやがて到着した入場ゲート。

 そこは千葉マリンスタジアム一塁側ベンチ。

 入場ゲートは、そこに設えられてあり、どうやら場内アナウンスによる紹介コールの後、ゲートを通りリングインする手はずになっているらしく、一塁側ベンチに一旦待機する。

 

 先ずは、相手側選手の紹介と入場が先で、三塁側ベンチより入場するとの事。

 

 一塁側ベンチは、ゲート等を設置した事により、外側(グラウンドや観客席等の様子)は見えなくなっていて、当然三塁側もだろうが、しかし場内アナウンス等の音声は聞こえてくる訳で、否が応でも緊張感が高まる。

 

 どうやら場内アナウンスにより三塁側の、相手選手の入場が始まった様だ。

 割れんばかりの歓声が木霊する、その音量に俺の緊張感は更に高まり、心臓の鼓動は痛い程にそのビートを刻む。

 

 止まれ、止まれよ心臓!否止まっちゃ駄目なんだけど、この時の俺はそんな心境だったんだ。

 仕方ないよな、ボッチの俺が大勢の人前に出るんだ、自分が試合する訳じゃ無くてもそう感じたって仕方ない。

 

 うん、仕方ない。

 

 そして時は来た、場内アナウンスによりテリー兄ちゃんの名がコールされ、俺達は入場を始める。

 テリー兄ちゃんを先頭にゲートを潜り抜けグラウンドへ、そこに設置されたリングへと向かう俺達に降り注ぐ観客席から響き渡る大歓声。

 大きな声で、手を拳を振り上げ、振り回しながら叫ばれるテリーコール。

 

 超満員のスタジアムから響くそれに圧倒された俺の心境は、恐怖。

 その状況が、熱狂する観客達が、大勢の人の口より発せられ混じり合った音が重力と成ったかの様に、俺の身体はそのプレッシャーに押し潰されてしまうんじゃないかとの思いに駆られてしまい、動けなくなってしまった。

 

 視野狭窄状態、周りの状況も分からない。恐怖感だけが心に拡がる、周りがまるで自分の敵ばかりで在るかの様な感覚に陥り、支配される。

 

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

 

 でも足は竦み逃げ出す事も叶わない状態、何も、どうする事も出来ない。

 

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

 

 

 だがその状況は、打ち破られた。 

 

 その状態を破ってくれたのは、俺の両肩と頭に置かれた暖かさ。 

 右肩にアンディ兄ちゃんの左手が、左肩に舞姉ちゃんの右手が、そして頭の上にジョーあんちゃんの手(見えないがおそらく右手だろう)がそっと添えられて、そして俺の正面にロックが立ち、優しく俺には微笑みかけながら頷いた。

 大丈夫だよ、ロックの声無き声が俺には聴こえた様な気がした。

 

 

 そうだ、今俺の周りに居るのはこの人達だ。初めて会ったばかりにも関わらず優しく俺に接してくれた人達。

 

 その人達が居てくれる、恐れる事なんか無いんだ。

 だから安心して、これから起こる事を見届ければ良いんだ。

 テリー兄ちゃんの闘いを、その背中を。

 

 

 気を取り直し、テリー兄ちゃんの後を追い、リングサイドへそして俺はまた驚いたその舞台に、テリー兄ちゃんが闘うリングの大きさに!

 

 例えば、これは後に調べて知ったんだが、ボクシングのリングだとその大きさは、一辺が5.47mから7.31mの範囲内で、床面の高さは1.22m以内と定められているのだそうだが、この日設けられたリングは、その大きさを遥かに超えていた。

 

 おそらくは一辺が20m位有ると思われる、そして床面の高さは当時の俺の喉元位だったから1m弱といった処だろうか。

 そして、一塁側サイドのリングのセンター辺りにはそのリングへと登る為のステップが有りそこからリングイン出来る様になっている。

 当然だろうが三塁側サイドも同様の造りのはずだ、当時の俺の背丈じゃあ見えなかったけどな。

 

 その床は柔らかい素材のマットの様な物が敷かれていて、ボクシングのリングの様なロープは張られていない。

 まぁあれだ、ドラゴンボールの天下一武道会の武舞台を石造りでは無くマットにした様な感じだな。

 

 

 「大変長らくお待たせ致しました。只今より………」とリングアナが、メインイベントの開始を告げる。

 テリー兄ちゃんと対戦相手のプロフィール等の紹介、主催者や協賛企業等の紹介と意外と長くスピーチしていて、会場の観客はうんざりしていたんじゃないかと思うんだが、案外そういった事もイベントとして楽しんでいたりしている人も居るのかな、知らんけど。

 

 俺はその間ずっとテリー兄ちゃんの背中を見ていたから、聞いて無かったけどな。

 

 

 「それでは、両選手リングへ入場願います!」

 

 漸く、テリー兄ちゃんと対戦相手がリングへと登る時が来た。

 大音量のBGMが流れる中颯爽と、テリー兄ちゃんは早足にステップを登りリングインした。 

 左肩にジャンパーを掛けたまま右手を突き上げ、観客の歓声に応える。

 

 対戦相手の選手も又テリー兄ちゃんと同じ様に、観客の声援に応えているんだがその何と言うか。

 

 その容貌は、サラサラの黒髪に額には白いバンダナを巻いた、メッチャイケメンな若い兄ちゃんなんだが…。

 

 その服装が。

 

 

 ボタンを外し、袖まくりをした…

 

 

 学生服。

 

 

 所謂学ランだ。

 

 

 俺はこの兄ちゃんを学ランの兄ちゃんと呼称する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 




 当初は、KOFのキャラを出すのだから3ON3マッチで行こうかと思っていましたが、餓狼伝説シリーズとのクロスオーバー作品なので、一対一の対戦で行く事にしました。
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