やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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黒のレースは魅惑に輝く。

 

 疲れた、俺は疲れているんだよ、何ならもしかしたら憑かれているのかも知れないまである。

 

 何で疲れているかと言うとね、昨日は土曜日だったんだけどさ、俺はその貴重な休日である所の土曜日を休む事が出来なかったのです。

 それは何故なのか…我が奉仕部唯一の一年生部員にして、俺にとってただ一人の後輩にして、最近はもう妹分認定しても良いんじゃね?と思い始めている。

 そう!皆様ご存知の…って何処の皆様なのか、ワタクシ存じ上げませんトコロの、あざと系ゆるふわギャル一色いろはに一日付き合わされたからであった。

 

 『だってせんぱい私の誕生日、停学で祝ってもらえていませんから、その穴埋めの為にもせんぱいはいろはちゃんに一日付き合わなければいけない義務があるんですよ、当然ながらせんぱいに拒否権など存在しませんからね。』

 

 との有り難(迷惑)いお言葉により、付き合う事と相成った訳なんだよな。

 いやいや一色さんや、俺、遅ればせながらだけどさ、誕生日プレゼント渡した筈だよね。

 

 『すまん一色、遅れたけどほれ、まぁなんだおめでとう、誕生日よ…。』

 

 気のせいのはずはないんだけどなぁ、俺渡した筈なんだよ、まさかいつの間にか俺はD4Cに一色にプレゼントを渡していない平行世界に連れ込まれたのか?

 それってヤバいじゃん、もしこの世界の俺と俺が出会ってしまったら…。

 

 一色を自宅へ送り届け、帰ってきた俺の様子を見てを見て小町は驚きと心配の声をあげた。

 眼鏡を掛けていたにも関わらず、リビングに座り込んだ俺の眼が朽ち果てたかの様に生気を無くして見えたそうだ。

 まるでその役割を終えて、錆びくれ朽ち果て惑星デロイアの片隅に佇む『ダグラム』の様だったとは親父の談だ。

 

 

 

 朝のトレーニングを終え、シャワーと食事を済ませ、プリティでキュアなアニメが始まるまでの時間を俺は動画を観て過ごすことにした。

 

 「…やっぱ凄えなこのお二人は。」

 

 「およ、お兄ちゃんまたなんか動画みてんの、何なに、エッチなの!?駄目だよ小町が居るんだからそんなの見ちゃ駄目・ダ・ゾ!」

 

 …自室よりリビングへ降りてきた小町がお約束の様にアホな事を言いやがる。

 何なのその人差し指を顔の側でフリフリさせて片目を瞑って、決め顔しやがって!

 

 八幡可愛いと思います!

 

 「馬っ鹿お前、違うからね、朝っぱらからそんなの見ないから。」

 

 「もう、お兄ちゃんってばそんなの小町分かってるよ冗談だってば、冗談。」

 

 あらやだこの子ってば何言ってんのかしら、みたいな言い方しやがって…。

 しかもすっげぇ良い笑顔で…殴りたこの笑顔。

 

 嘘だけどな、千葉の兄貴が可愛い妹に手を出すわけ無いだろう…たまにデコピン位はやるけどさ。

 

 「それで、今日は何見てたの、格闘技の試合か何か?」

 

 そう言いながら俺のノートPCを覗き込んでくる。

 慎ましやかな膨らみを俺の背中に押し付けて、全く兄妹とは言え無防備過ぎやしませんかね小町さん。

 

 「…何かさ、随分古そうな映像だね、昭和の映像かな?」

 

 「確かに古いけど平成の初期だよ。」

 

 俺が視ていた映像はニ十五、六年位前の映像だから、確かに古いっちゃ古いけど、それでも色々と学べる事だってあるんだからな。

 

 「コレはな、極限流のリョウ・サカザキ現総帥とロバート・ガルシア師範の若かりし頃の試合の映像だ。」

 

 当時おそらくは、20代前半だと思われるお二人の直接対決を収めた貴重な映像だ。

 うp主さん、あざした!

 

 サカザキ総帥とガルシア師範、それぞれが別の人と闘っている映像は何度も視ていたけど、直接対決の映像を視たのはこれが初めてだ。

 結果はサカザキ総帥の勝利だが、ガルシア師範の健闘も光っていた、実際途中迄はどちらが勝っても可笑しく無い試合内容だったと言える、まぁ何にしろ素晴らしい試合だった。

 流石は無敵の龍と最強の虎と並び称されているだけの事はある。

 

 「ふ〜ん。」

 

 小町はあまり関心を示さなかった。

 

 ▶ハチマンはおいでおいでをした。

 

 ▶コマチはリビングをあとにした。

 

 ▶ハチマンはけいけんちをえられなかった。

 

 ▶ハチマンはゼロエンをてにいれた。

 

 

 

 

 

 

 週が明けて数日、葉山と三浦の停学期間が終わり、二人は登校してきた。

 材木座が小説を投稿したかは、俺の預かり知らぬところであるが。

 登校一番三浦は、由比ヶ浜と海老名に労わられていた、その変わらぬ由比ヶ浜の優しさに三浦は救われた事だろう。

 

 「ゴメン結衣…それとあんがと。」

 

 「うん、おかえり優美子。」

 

 何だか今、俺はその三人を父親の様な気持ちで見つめている。

 決してそこに疚しい気持ちは無いからね、ハチマンウソツカナイ。

 

 と、そんな三人を見つめていたら、あらあら眼が合っちゃったよ。

 うわぁ、何か三浦が俺を睨んでるよ、顔を真っ赤にして…そりゃなぁ我ながら三浦には酷い事言ったからな、嫌われんのも当然だよな。

 て!ちょっとまって、何此方に近づいてきたよ、喧嘩上等なの!?

 嫌だよ俺、素人のしかも女子と喧嘩するなんて。

 アレコレ考えてたら三浦さんってばもう、俺の所に到着しましたよ。

 

 「………………。」

 

 むっ、無言で上から睨むの止めてもらえませんかね。八幡ってばチキンハートの持ち主だからね。

 これ前にも言ったよね、大事な事だから試験に出るからね、きちんと板書しとくんだよ、後から泣いても知らないよ。

 

 「…ヒッ、ヒキオ、こないだはゴメン迷惑かけたし…。」

 

 まっかっかの顔を背けて俺に詫びをいれる三浦、やだ何なの三浦ってばいきなり俺に詫びるなんて、もしかしてアレかこれが噂に聞くツンデレって奴なの、マジかよ本当に存在していたのかよ!

 これってもしかして国宝指定レベルの出来事か…。

 

 「…………………、おっ…おう、まぁ済んだ事だし、そのな、お前も反省してんだよな、ならもう気にすんな…そのアレだ俺もあの時は言い過ぎた、スマンかった。」

 

 「ん、わかったマジゴメンだし。」

 

 しかしな三浦、今のお前の少しばかり謙虚と言える態度を、何であの時見せなかったんだよ、俺にはそう思えてならなかった。

 去りゆく三浦の後ろ姿を見送り、元鞘に収まったように見える葉山グループを見ると、葉山が俺の方を視ていた。

 あら目線が合っちまったよ、やだなぁココから恋が始まるなんて事態にならないよね。

 そんな薔薇の花びらが飛び交う展開お断りだからね。

 『ハヤハチキター!』なんて誰も言ってない、ハチマン聞こえない。

 

 それはさて置き葉山の奴、何か妙にバツの悪そな顔してんな。

 まぁ良いけど、テニス部の件みたいな事にならなきゃ俺には関わりない事だからな。

 

 「優美子がね、ヒッキーとゆきのんに謝りたかったって言っててさ、ヒッキーありがとう、優美子の事許してくれて…やっぱさヒッキーは優しいね。」

 

 俺の隣の席に腰を下ろし、由比ヶ浜はニコニコとしながら何かこっ恥ずかしいし事を言っているけど、もうすぐ一時限目始まるから早く自分の席に戻りなさい由比ヶ浜さんや、お前が俺に話掛けに来るとクラスの男連中の視線が痛いんだからね。

 

 「別に優しくなんか無いぞ由比ヶ浜、あの時は俺も三浦に言い過ぎたし…それに由比ヶ浜は友達なんだろう三浦と、ソレだと何か気まずくなるだろう…。」

 

 「もう…ヒッキーは、そうやってあたし達の事をちゃんと考えてくれるんだから、だからヒッキーは優しいんだよ…それとさ、あの、ほらあたしさ6月が誕生日だからさ…そのね、あたしもいろはちゃんみたいにヒッキーとお出かけしたいな、なんて…」

 

 あうっ、もじもじと身体を小さく小刻みにくねらせ、両手の人差し指をちょんちょんさせ、更に顔を紅潮させ遠慮気味にお誘いの言葉を告げる由比ヶ浜の仕草が……その、遠慮して言っても、可愛すぎるだろ!

 

 だけどね由比ヶ浜さん、俺さ一昨日の土曜日一日、一色に付き合わされた訳なんですよ、それがね俺にとっては散々な一日となったのよ、一色の奴俺の事からかいやがってさ、普通そんな時に男をその…あれ、下…ラン、ええぃ!ランジェリーショップに連れて行ったりするの?

 行かないよね!いや俺、抵抗したよ、だって恥ずかしいしじゃない、ただ恥ずかしだけじゃなくてさ、女性の園へ連行されてさ、不審者か犯罪者でも見る様な眼で見られてさ…。

 

 『せんぱ〜い、見てくださいコレなんかどうですか、私に似合うと思いませんかぁ!』

 とか言って現物を手に取って俺に見せる訳ですよ、何なの?いじめなの、そう言うの良く無いと八幡思うんだ。

 いやね、思わず想像しましたよ、その下着を身に着けた一色いろはさんの姿をさ。

 俺だって思春期なんだよ、春を思う時期なんだよ!舐めちゃいけないよ、思春期男子の妄想力をさ。

 あっ、ヤバい思い出したらまた、疲れ始めた……。

 

 「ちょ!どうしたのヒッキー!何か目が変だよ、死にかけてるよ!しっかりしてヒッキー!死んじゃ駄目だよぉ!」

 

 あぁ、何か身体がガクガクと揺らされている気がするぅ〜…。

 あ〜ァ〜カ・ラ・ダが揺れるう〜頭が揺れるう〜、アタシ怠惰ですか?脳が、震える。

 

 

 「…由比ヶ浜その辺の事はだな、誠に遺憾ではあるが前向きに検討して内容を吟味した上で商品の発…送を以って変えさせていただきたいと思いま…す。」

 

 「えっ?なにヒッキー!何か途中から意味分かんなくなってるし、前向きに検討って、検討だけで断っちゃうパターンだよねしかも遺憾って何で!?」

 

 俺の身体の揺れと脳の震えは、HRが始まる時間迄は続いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ダッ!セイッ!」

 

 材木座が必殺技、断空脚を繰り出し迫りくる。

 

 「ウォリャ!ハッ!」

 

 俺はその断空脚の技の終わりにタイミングを合わせて、ファイヤーキックで迎え打つ。

 良しタイミングはドンピシャだ!

 

 下段へのスライディングキックで体勢を崩させ、ニ撃目の上段蹴りでその身体を宙へ浮かせる!

 

 そして、すかさず追撃を決める!

 

 「空破弾!!」

 

 俺は身体を屈ませ前転、その勢いを技の力に変え弧を描く様に空へ舞い、両脚を合わせ空へ浮く材木座へ蹴りを叩き込む!

 

 「ぐわ〜ぁ!!」

 

 材木座は屋上のアスファルト防水された床に背中から叩きつけられた。

 

 断末魔の如き悲鳴を響かせながら。

 

 

 

 

 「…はぁ、はぁ八幡よまた腕を上げたな、流石は…はぁ、はぁ我が相棒よ…はぁ、はぁ…。」

 

 俺は、ヘッドギアと両手に着けたスパーリング用のグローブを外しながら、はぁはぁと息を切らしながら喋る材木座の評価を聞いた。

 ムクリと背中を起こし、アスファルト防水の床に座り、材木座も俺と同じ様にグローブとヘッドギアを外す。

 

 「取り敢えず息を整えてから喋れよ材木座、それからお前は断空脚に頼り過ぎじゃねぇか、さっきの断空脚は何かやけっぱちで出したんじゃねえの!?」

 

 ジャージを脱ぎながら、俺は材木座へ今のスパーリングで感じた材木座の技の組み立てに対する欠点を指摘した。

 材木座の巨体から繰り出される断空脚は突進力も合わさり、直撃させれば大ダメージを与えられるだろうけど、その技単体で博打の様に出してたら、そりゃ返し技を食らうっての。

 何せもう、俺と材木座は一年もこうやって定期的に組手やスパーリングをやってんだからな、技のモーションもある程度解ってるかね。

 因みにだが、この材木座との昼休みのスパーリングは例の材木座バーサーカーモードを発現させて以後着用する事にした。

 流石に学校で、あの時みたいに二人してボロボロになるのは不味いだろうからな。

 備えあれば憂いなし、だからね。

 

 「…うむ、我も実は最後はヤケクソ気味になった感は否定できぬな、八幡お主に我の出方を尽く読まれている様に思えてな、どうにか流れを変えられないかと出してみたのだが、ムハハハっ!見事に迎撃を食らってしまったわ!」

 

 ムハハハって笑い事じゃねぇだろ、曲がりなりにも格闘者なら日々研鑽を怠らず、だろ!

 

 

 

 俺と材木座はスパーリングを終え、ストレッチで身体を整えながら、お互いの反省点を挙げ、互いのフォームを確認し合い、ドリンクを飲み一息ついた。

 この昼のメニューはニ〜三十分程で終る、残りの時間は二人で雑談しながら時間まで過す。

 まぁ話す内容なんて、別に大したことじゃ無いけどね、お互い読んだ本の話とか材木座のラノベの構想だの、後は材木座の中二病的発言に突っ込んだりどツイたり。

 屋上からテニスコートに居る戸塚を遠く見守ったり、愛でたり。

 

 「のう八幡よ、やはり戸塚殿の可憐さはこの学校に於いて群を抜いていると思わぬか、戸塚殿の笑顔を見るだけで我、御飯三杯はイケてしまうぞ!」

 

 「おい材木座、戸塚をそんな変態的な眼で見てんじゃねえぞ、戸塚はなそんな眼で見て良い存在じゃ無いと何度も言っただろう!」

 

 「わっ、解っておるぞ八幡!戸塚殿こそこの学校に舞い降りた天使、その天使をドロップアウトなぞさせてはならん事もな。」

 

 …まぁ大体こんな話をしてんるだが、今日はこの後予期していない出来事が起こった。

 

 「ふあ〜ぁ!」

 

 この屋上に今居るのは俺と材木座だけの筈だ、なのにその屋上に俺たち以外の人の声が、しかも今のは女子の声だ、それも何だかアクビっぽい。

 

 声が聞こえた方向とその声の主が居るである場所は、俺も多分材木座もきがついているのだが、此処は様式美として。

 

 『だっ!誰だ、どこに居る!』

 

 と心の中で叫びながら、キョロキョロと辺りを見回す。

 が、直ぐに飽きました。

 

 その女子の声が聞こえてきたのは、この屋上へと登る為の階段、そこは建屋となっている為屋上から更に一段高くなっていて、そこには給水タンクが添えつけられている。

 そこに女子が居るのは確実だ。

 

 「よいしっつとぉ〜、ふぁ〜。」

 

 その声と時同じくして、ムクリと起き上がった女子の上半身が見えた。

 見えたのは後ろ姿だったが、その女子は長い青み掛かった髪をポニーテールに纏めていて、う〜んと伸びをしながら両手を空へ挙げ、はぁと伸び終わり手を下ろしヨイショとばかりに立ち上がると、頭を軽く掻くと、どうやら俺達に気が付いた様で、俺達に視線を向けてきた。

 始めは何だか眠そうな目をしていたその女子だが、やがてそれは胡乱げな視線に変わった。

 あら何?彼女ってば、もしかして俺達の事変質者とでも思っているのかしら?

 

 しかし俺はこの女子に見覚えがある、俺と同じ2年F組の生徒だ、名前は確か川…川…川なんとかさん。

 

 右手を腰にあてポニーテールを靡かせ俺達を見下ろす姿は贔屓目に見てもカッコ良く見える、タイプとしては(第一印象だが)平塚先生に近い様な気がする。

 

 彼女は、クラスでは静かに過ごしていて、俺は彼女が誰かと話している所を見た事は無い。

 こんな事に言うと、『お前なんだかんだ言って女子の事良く見てんじゃん』何て言われそうだけど、そこは元ボッチの習性で、周囲にどんな存在が居るかを取り敢えずは確認してんだよ。

 だから別に女子だけを見てんじゃ無いんだからね、だから俺の脳内の雪ノ下さん、そのスマホを仕舞おうね、110番を押さないで!

 

 なんて事考えていると、その時風が吹いた(ターンエーガンダムの予告調で)。

 

 その風は、この世の誰でも無く俺と材木座の味方となった。

 

 その風は爽やかに舞い、給水タンクの側に立つ彼女、川なんとかさんのプリーツスカートを鮮やかに舞いあげ、その中の美しきお宝をお披露目してくれた。

 

 「…黒のレース、だと!」

 

 黒のレース、それは魅惑の輝き。

 

 黒のレース、それはビビッドカラーでは無くとも、センチュリーカラーであろう。

 

 何が言いたいかと言うと……。

 

 川なんとかさん、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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