やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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誤字報告ありがとうございます。

そしてお気に入り登録者数がいろはすの誕生日を超えて私の誕生日と並びました。
 読んで下さった皆さんありがとうございます。


おそらくはそれさえも平穏な日々なのは間違っている?

 「さて比企谷、察しの良い君の事だ何故自分が呼び出しを受けたか解っているだろう?」

 

 もうあといくつ寝ると黄金週間♪を迎えようとしている、4月の下旬。私事比企谷八幡は我が敬愛すべき恩師にして担任教師、そして我が青春のアルカディアたる…(か、どうか今は定かでは無いが)奉仕部顧問、平塚静先生により教師の園たる職員室へとお呼ばれしていたりする。

 呼び出しと言うと、その言葉の響きから堅苦しく重苦しく何らかのペナルティーを与えられそうなイメージを受取りそうだが、其れをお呼ばれと言ってしまうと…あら不思議そこにはなんだかドキドキワクワクが待ち構えている様なそんな響きになってしまう、日本語って不思議だね!

 

 「はっ!平塚隊長殿、誠に遺憾ではあるますが、私事比企谷八幡一等兵、何故にこの場にお呼ばれいたしたのか、皆目検討が付きませんであります!」

 

 俺は自分で自画自賛しても良いんじゃね、と思えるくらいにピシッと背筋を伸ばし、この愛すべき独…上官では無く担任教師、平塚先生へ敬礼した。

 だが、平塚先生はこの俺の正式な作法に則っているかは解らない、返答がお気に召さなかった様である……う〜ん解せぬ。

 

 「ほう、飽くまでもシラを切るつもりかね、では現物を持って聞こう。」

 

 一連の俺のアクションは華麗にスルーされてしまったよ…。

 

 「コレが何かの分かるかね!?」

 

 平塚先生はA5サイズのプリントを右手に持って俺に尋ねた。

 

 「何かと言われると、プリント用紙ですね…それがどうかしましたか?」

 

 そうプリント用紙だ、平塚先生がその手に持っているのは、紛うこと無きプリント用紙だ、それ以外にどう表現出来るだろうか。

 

 「はぁ、なあ比企谷…私が問題にしているのはプリント用紙それ自体では無いのだがね。」

 

 「問題はこのプリント用紙に君が書き込んだ文言にあるのだよ!」

 

 平塚先生はその手に持っていたプリント用紙を俺の眼の前に突き付けてくださった。

 ふむ、これはどうやら昨日提出した、ゴールデンウィーク明け、中間試験後に行われる学校行事、企業訪問の行先希望調査票だった。

 

 「あの平塚先生、この調査票は自分が行きたい場所を書いて提出する物ですよね、ですから俺は自分自身の素直な気持を、希望する行先を書いたんですけど、お気に召しませんでしたかね。」

 

 平塚先生は俺の眼の前から調査票を取り下げ机の上に戻し、右手に持ったボールポイントペンシルのキャップ部分ををトントントンと机にリズミカルに打ち付けていらっしゃる。

 

 「ああ、そうだ確かにこの調査票には自分が希望する企業名を書き込む物だ、だがな…それは現実に存在する企業に限定される物で合って、フィクション、現実に存在しない企業では決して無い。」

 

 リズミカルなトントンが最後の一言に合わせる様に、『ドンッ!』と鈍く響き平塚先生はボールポイントペンシルのトントンを止めた。

 罪無きボールポイントペンシルは漸くその身を襲った苦役からこの瞬間解放されたのだ。

 良かったね、赤いインクのボールポイントペンシル君…もう面倒いからボールペンで良いや。

 

 「何で希望する行先が民明書房なのかね、この現実世界に民明書房が存在すると言うのかね、民明書房が存在するのならこの日本の何処かに太公望書林、ひいては男塾迄も存在すると君は思っているのかね!」

 

 Oh!流石は平塚先生ジャンプ読者なだけありますね、直ぐ様そこに行き着くんだから。

 

 「私だってな呉竜府が考案した纒欬狙振弾がどの様な歴史を辿って、近現代の紳士のスポーツと言われるゴルフへと発展し移行して行ったのかその歴史を学んでみたいものだよ。」

 

 「…平塚先生、良く俺の希望調査からそこまでネタを引っ張れますね、流石ですよ尊敬します、そこにシビれるし憧れますよ。」

 

 平塚先生は俺を見据えていた目を、先程のボールペンへと視線を向け、深くため息を吐いてしまった。

 駄目だぞ!平塚先生、そんなにため息を吐いちゃうと、幸せが逃げちゃうぞ。

 

 「兎に角、この調査票は却下する、現実にある企業名を記入して再提出する様に、解ったかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 希望する企業と言われてもな、もしも俺が兄貴達と出会わなかった別の世界線の俺なら多分、希望する職業を専業主夫として希望する職場を自宅とでも書いているかも知れないけど、今の俺は鍛錬を積んで強くなって、大学に進学したら長期休暇を利用して世界を旅してそこに居る強い人達と手合せをして、見聞を広めて…将来的にプロ格闘家としてやって行くのか、それとも別の路を往くのか…考えないとな。

 

 「…別にこれと言って行きたいと思う企業と言われてもなぁ〜?」

 

 平塚先生の呼び出しから解放されて、俺は一人屋上の建屋の、昼の今の時間日陰になっている部分に位置取り、グローブとヘッドギアを収めたバッグを、別に重い荷物でもないけどそれを枕にして横になっている、既にして今日は晴れ空だから深呼吸をしたとしても、改めて青空にはならないだろう。

 手の中で先程突き返された調査票をヒラヒラと玩び、俺はこれと言って思いつかない行き先に付いて思考を巡らせているところだ。

 

 「…自分じゃあ考えつかないからな、いっその事グループを組む奴に丸投げしとくかなぁ、あっ!?そうだ戸塚!戸塚はもう一緒に行く奴決めてんのかな、もしまだなら戸塚と組んで一緒に行けば良いんじゃね!?やだ何それってすっごく幸せじゃん、全世界の俺が喜ぶまであるな。あと序に由比ヶ浜が三浦達と組まないなら誘っても良いな!」

 

 ガバッと勢い良く、上体を起こし俺は指パッチンを思わずしてしまった。

 イヤだって我ながらナイスアイディアだと思ったんですもの八幡。

 だが、その勢いの為に俺は手に持っていたプリントを手放してしまい、そのプリントはタイミング良くイヤこの場合はタイミング悪くだな、吹いてきた風に乗り空高く舞い上げられてしまった。

 

 「うわっ!マジかよ、コレはなんともはや、あらららら!!とか何とか言っちゃったりして。」

 

 風に舞い建屋の向こうに飛ばされたプリントとお別れしながら俺は、いやね俺の今の身体能力ならさ、座った姿勢のままでジャンプしてプリントをキャッチ出来たとも思うけどさ、何となく言いたかったんだよな広川節のセリフをさ。

 広川太○郎さん、素晴らしい声優さんだったよな…過去形で語んなきゃならないのがなんとも悔やまれる。

 

 「…しゃあない、平塚先生に新しいプリントもらってくるしか無いな、まぁ良いかもう一眠りしとこ。」

 

 もう一度、今度はバッグの上に更に腕枕を加えて横になってみた。

 

 空が青いぜよ、出海さん…。

 

 俺は心の中で幕末期の陸奥圓明流の遣い手に語り掛けてみた。

 当然、返事が返って来ることは無いけどな…。

 

 「これ、あんたのだよね。」

 

 はぁ!?返って来たよ返事が、嘘マジで何で…と驚いたフリをしてみたが、本当は俺には解っていたんだな、声の主とその主が居る場所がさ。

 建屋の上から此方を見下ろしながら、黒レース…ケホン…川なんとかさんが先程永遠の別れをしたと思ったプリントを手に持ち、俺に確認して来ました。

 

 「あんたのだよね、違うのかい?」

 

 「……おっ、おうそうだよ俺んだ、その拾ってくれたのか、悪いな…助かったよ。」

 

 「…ん、分かった、待ってな。」

 

 互いに確認し、川なんとかさんはタラップを伝い降りてこようとしているんだが、ちょっ!待て待て!見えてるから、また見えてるから!

 てか、また黒かよ!どんだけ黒好きなの記憶がフラバって来るよ、忘れかけてた黒の思い出がフラバって来たから。

 ああ、そういや『幕張』の奈良が昔言ってたよな黒い下着を指して黄金聖衣ってさ、そうか川なんとかさんは黄金聖闘士だったんだね、八幡知らなかったよ。

 新しい知識を八幡得ちゃったよ、さしずめ今のアーガマの艦長がブライトさんだとクワトロ大尉に教えられて、安心してランデブーが出来ると安堵していたカラバのクルーの様な気持ちだよ。

 

 「……………………………。」

 

 今俺は、タラップを降る川なんとかさんに視線を固定してしまっている。

 その視線を外さなければならないのに外せ無い、男子なら分かるよねこの気持ち!

 駄菓子菓子、女子が視線に敏感だと言う話は本当の様で、タラップを降ている途中に川なんとかさんは、一時停止して俺をまるで長年探し求めた仇敵に遭遇した様な表情を以て睨み着けていらっしゃいます。

 

 「…あんた、どうやら懲りないタイプの人間みたいだね…。」

 

 そう言うやいなや、タラップから跳び降り屋上の床に着床し、俺に対して最後通牒を突き付けてきた。

 

 「選びな、アタシにシコたま殴られて記憶を無くすか、自分からこの壁に頭を打ち付けて記憶を無くすかをね。」

 

 「…ちょっと待て、待て待て待て!

今のは不可抗力だろうが!おっ、お前言ってる事理不尽すぎだろ!?何でそんなに暴力的なの、大体がお前の言ってる事無理が有るって!お前みたいな美人タイプの女子の、それを眼にしてときめきトゥナイトしない男は男じゃ無いってんだよ、俺は悪くないとは言わないが、悪いのは思春期だ!欲望だ!煩悩だ!そして美人すぎるお前が悪い!だからそのゴメンナサイ勘弁して下さい。」

 

 俺は再び、雪ノ下に続いて二人目の女子に対してのDO・GE・ZA☆をカマしてしまった。

 

 「…………。」

 

 「…………。」

 

 「…………。」

 

 どれ位の時間俺は土下座を続けないといけないのだろうか、川なんとかさんは何も言ってはくれないし、何もして来ない…。

 このままじゃ、埒が明かないしな…少し顔を上げてみようかな、ビンタの一発位喰らわされる覚悟でさ。

 

 良し怖いけど顔をあげようか!

 

 「…………。」

 

 「…?」

 

 何か、川なんとかさんがフリーズしていらっしゃってますけど…何でさ!?

 何かものすっごい顔を赤くしているけど、それは赤い彗星のザクもかくやってかさ、シャアザクって赤ってよりピンクだよな。

 言うなればシャアはピンクの彗星だよな、どっちかってと赤いのはジョニー・ライデンじゃね?

 おっと、いらん事考え過ぎた。

 

 「…なあ、どうしたんだ…大丈夫かお前?」

 

 「……はっ!?」 

 

 「はっ!?てお前顔赤いし、何処か具合でも悪くしたのかと思ったんだが。」

 

 本当のどうしたんだよ、何か良くないモンでも食ったのか…駄目じゃないか、子供の頃母ちゃんに言われなかったのかよ、拾い食いしちゃ駄目ってさ。

 

 「な、な、な、な、何言ってんのさアンタは、人の事びっ、美じっ…ばっ、馬鹿じゃないの!」

 

 何よどうして俺馬鹿なんて言われてんの…俺、何んかした、南下もしてないし軟化もして無いと思うんだけど…川なんとかさん?

 

 「…きょっ、今日の処は勘弁してあげるけど、良いね早いとこ忘れてしまいなよ!!」

 

 川なんとかさんは、赤い顔のままに、超高速で屋上から一陣の風を吹かせて去っていった。

 

 「風のように去るぜよ、だな。」

 

 こうして俺と黒いレースとの、第二次接近遭遇は幕を閉じた、爽やか?な風を残して。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 放課後、俺は由比ヶ浜と連れ立って奉仕部の部室へと到着した。

 部室へ来る途中にも、複数の男から恨みがましい視線を浴び続け、気持ちが萎えそてしまいそうだった。

 それだけ由比ヶ浜が男子に高い人気を誇っているって事なんだろうが、何だかなぁ…そんなに人に対して恨みの気持を抱くよりも自分を磨いて、イイ男に成りゃ良いんじゃねえかよ、その上で由比ヶ浜に気があるんならアタックしろよな、由比ヶ浜だけじゃ無くてそれは雪ノ下や一色に気がある奴にも言える事だ。

 イイ男なら凭れ掛かって酒が飲めるって言ったのは、因みにだが天の道を行き総てを司る男のお婆ちゃんでは無いからね、悪しからず。

 

 「やっはろーゆきのん、あっいろはちゃんも居たんだねやっはろー!」

 

 「こんにちはです結衣先輩、それとせんぱい!」

 

 「やっ…こんにちは、お昼以来ね由比ヶ浜さん、それから…性犯罪者予備軍谷君も。」

 

 「…雪ノ下、あれは不可抗力だろう、確かに俺はお前に対して失礼をしてしまったかも知れないが、俺は決して疚しい気持ちを持っていた訳じゃ無いから。」

 

 「犯罪者はいつもそう言うのよ、不可抗力だ自分は悪くないとね、やはり貴方もその様な輩なのね…ならばその輩の芽は早めに摘むべきなのだと私は今改めて決意を固めたわ。」

 

 あの件から、一週間程が過ぎ雪ノ下の気持ちも多少は軟化している気がするんだがな、こうやって毒舌では有るけども口を聞いてくれる迄にはなってくれたしな、あれから暫くは口さえ聞いちゃくれない上に目が合うと逸らされたり、顔を赤くして鋭い眼光で睨んで来るしで、いたたまれなくて居心地が悪すぎてで針の筵に居る気分だったよ。

 

 「…もう、勘弁してくれよ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ところでせんぱい、ゴールデンウィークの予定はどうなっているんですか、暇ですよね、そうですよね!それ以外はあり得ませんよね。」

 

 一色いろは、お前は何故俺のスケジュールを勝手に聞きもしないで断定するのかね。

 俺にだって予定があるとは思わないのかねチミは、俺には崇高なる目的があるのだよ一色いろは君。

 

 「残念だが一色、俺にはゴールデンウィーク中、フルタイムでバイトのシフトに入ると言う崇高にして尊い予定が組まれているのだよ、なので俺はこのゴールデンウィーク、暇ではないってか去年もそうだっただろうがよ。」

 

 「え〜っ、でもでもそれって、休み中全部バイトで費やす訳じゃ無いんですよね!?」

 

 まぁそりゃな、働く時は働くし休む時は休む、人間には生きる上で健康に暮らすにはメリハリが必要だからな、女子だってそうだろう!?

 メリハリの効いたワガママナイスバディを手に入れる為に苦労してダイエットなんかに勤しんだりしてんでしょ!

 それと同じ同じ…あれっ?なんか違うかな。

 

 「一色、前にも言ったと思うが、休日と言うのは「休む日と書くでしたよねせんぱい!」…おう、解ってんじゃねぇかよ一色。」

 

 ね、やっぱり言ってたよね俺、覚えてたのね一色さん、だったら俺の言わんとする事も理解してくれてんだろうね。

 

 「せんぱいの何時も言うくだらないセリフ私もう結構覚えちゃいましたからねそれ位先回りできますよ。」

 

 「あ〜、うんそうなんだね!でもだと言う事は、つまりお前もそのくだらない考えに至ることが出来たって事だよね、ナイスよナイス、ベリィナイス!いろはちゃん!」

 

 パンパンパンと俺は一色がその思考に辿り着いた事を祝して惜しみない拍手を送った…のだが何故か一色はぷく〜っと頬を膨らませていらした。

 あらら、もしかして俺ってばからかいすぎたかな、からかい上手な比企谷さんになっちゃいましたかね?

 

 「もう!何でですかせんぱい!!」

 

 「…いや何がだよ?」

 

 「ど・う・し・て・初めて下の名前で私の事呼んでくれたのが、そんな小馬鹿にする様なセリフに絡めて何ですか、どうせ初めてを捧げてくれるなら、もっと雰囲気のあるタイミングの時にしてくださいよ、何なんですかもう!何で一年も待った時がこんな残念なタイミングなんですか、ガッカリですよ不本意ですよ、もうせんぱいの馬鹿、スカポンタン!八幡!」

 

 …いや、何でと言われましても俺には何がなんだか…。

 

 と言うか何だかなぁ、一色だけじゃ無く由比ヶ浜と雪ノ下まで俺の事を冷たい目で見ているんだけど、勘弁してくれよなさっきのは…なんか勢いに乗ったというか、波に乗ったと言うか、ウェーブにライドしたんですよ。

 ウェーブライダー形態に変形して大気圏に突入したんですよ。

 何なら百式の代わりに一色を背負ってキリマンジャロへ降下するから、カラバと合流しますから…勘弁してください。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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