やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
パオパオカフェ、それはテリー兄ちゃんとアンディ兄ちゃんの故郷、アメリカサウスタウンにブラジルから渡米して来た自身もカポエラの使い手である…オーナー(やばっオーナーさんの名前覚えて無いわ。)が表裏問わず格闘技が盛んであったサウスタウンにそのオーナーさんが最初の一号店を開いたのが始まりだったそうだ。
店内には試合用にリングが常設され、腕に覚えのある猛者やプロの格闘家さえもが、そのリングに上がる事が有りそれを見たさに格闘家が、マニアが数多く集い又店内で出される飲食物の味も良く、舌の肥えた者達の胃袋も掴み上々の評判を呼び、店は繁盛しサウスタウンを中心に店舗数を増やして行き現在は海外にも展開しているそうだ。
かつて、十年近い修行を終えたテリー兄ちゃんとアンディ兄ちゃん(当時二十歳位だったそうだ)が養父さんの仇を討つべく戻って来たサウスタウンのパオパオカフェ一号店に於いてテリー兄ちゃんはオーナーさんと試合い、その後意気投合しテリー兄ちゃんはそこの常連客となったそうだ。
っても当時万年金欠野郎のテリー兄ちゃんはしょっちゅうツケで飲み食いし、店内で労働或いは店内での試合に出る事で料金の支払いに替えていたそうだ…。
そのパオパオカフェ、日本一号店がこの千葉にオープンしたのが先月の事だ。
「て事でパオパオカフェってのはな格闘技のメッカと呼ばれてんだ…ところで大志お前の姉ちゃん、何か武術の心得があるんじゃねえか?」
あの黒レースとの第一次接近遭遇を果たした日、川なんとかさんが放った飛び蹴りは半端なもんじゃ無かった。
あれは相当な破壊力が有っただろうなそしてあれだけのジャンプ力と飛距離、一体どれ程の物なんだ。
「分かるっすかお兄さん、実は俺んち三年前に千葉に越してきたんすけど、前に居た街で俺達近所の空手道場に通ってたんです、姉ちゃんは凄え才能が有ったみたいで師範たちに凄え可愛がられてたんす、だから引っ越しする事伝えたら道場の人達すごく残念がってて、でも何時でも遊びに来いって言ってもらえましたっす。」
そうか空手か、大志達が通ってた道場がどこの流派かは知らないけど、才能を認められるってのは大したものだな。
でもってバイトに応募するにあたって特技或いは趣味の欄に空手とでも書いたんだろう、それでパオパオカフェに採用された可能性が高いな。
「ほぇ〜、サキサキってそんなに凄いんだぁ!」
「ですねぇ、たまにテレビなんかで空手女子とか紹介されたりしてますけど、割と可愛いかったりしますもんね。」
由比ヶ浜は単純だから素直にサキサキ凄えと、一色は空手女子のルックスとかそっち方面に感想が行くのね。
でもまぁ皆の感想は置いといて、パオパオカフェは身内が世話になってるし、話を通すべきだよな。
今此方の時間が午後六時半だから、向こうは…早朝だな、起きてっかなぁ!?
俺はポケットからスマホを取り出し、某通話アプリを起動し、待つこと数秒。
『…八幡か、どうしたんだこんな朝早くに?』
『ロックか、それテリー兄ちゃんのスマホだよな、て事はやっぱりテリー兄ちゃんまだ寝てるんだな…。』
テリー兄ちゃんのスマホに掛けたのに応対したのはロックだった、もうそろそろ二人共早朝トレーニングの時間だろうから起きてるかもって思ってたんだが。
『イヤ、寝てると言うよりもついさっき横になったと言ったほうが正確だな、テリーの奴昨夜飲みに行って久し振りにダックと会ったらしくてな、そのまま二人で深夜まで飲んでいてほぼ朝帰りって訳だ、今ソファで唸ってるよ。』
テリー兄ちゃんェ…。
『ところで八幡、こんなに朝早く連絡して来るって事は何か急ぎの用事でも有るのか?』
流石はロック、此方の状況を直ぐに察してくれたか。
まったく…イケメンで気配り上手で、家事万能と来てやがる、コレで彼女が居ないってのが信じられないよな、アイツの場合女子に対して免疫とか抗体が無いのかもな…抗体、アンチボディ…もしロックがオルファンのプレートと出会ったらブレンパワードがリバイバルするんだろうな、多分。
俺!?俺だったらグランチャーかなやっぱ、バロンズゥカッコいいじゃん。
『流石だな理解が早くて助かる、なぁロック、テリー兄ちゃんってパオパオカフェのオーナーさんと連絡取れたりとか出来るかな?』
『パオパオカフェのオーナー?リチャードの事か、まぁ最近はテリーもそれなりに収入も安定してるし、ツケも精算してるから大丈夫だろう。』
『そうか!だったら安心だな、実はな此方のパオパオカフェで面倒な事が有ってな………』
俺は川なんとかさん絡みの経緯をロックに説明した、テリー兄ちゃん経由でオーナーさんに事情説明が出来ないかと、更にはあまり事を荒立てずに対処して貰えるように頼んもうと考えている事を説明した。
『ちょっと待ってろ八幡、今テリーが起きてきた、電話代わるってよ。』
『そうか、サンキューなロック…ところでお前日本語また上手くなったな。』
『お前の英語もな八幡、それと次に闘る時も俺が勝つからなじゃあテリーに代わる。』
そう、今の一連のロックとの会話、俺は英語でロックは日本語で話していた。
此れは昔から俺達が良くやっていた事だ、お互いに英語と日本語を学び実践する為にだ。
それにしてもロックの奴、前回の来日時の勝負で勝ち越したからって調子付くなよコンニャロメ。
『…よう、ハチマン、リチャードに話があるって?』
おいおいテリー兄ちゃん、あんまり酔いが覚めてないだろ…。
「あぁ悪いなテリー兄ちゃん、朝っぱらからさ、パオパオカフェのオーナーさんはリチャードさんってたっけか?」
『…ああ、そうだぜ、リチャード、リチャード・マイヤってんだ。』
俺はテリー兄ちゃんにもロックに話した川なんとかさん問題を説明した、オーナーのリチャード・マイヤさんがサウスタウンに居るんだったら、テリー兄ちゃんに話を通してもらって、出来ればマイヤさんから日本のパオパオカフェの責任者に指示を出してもらえれば事を穏便に済ませる事が可能じゃね、と考えての事だ。
『なる程な、そう言う事か…だったら今なら好都合だな、お前運が良いぞハチマン、幸いリチャードは今そっちに居るからな今から俺がリチャードに連絡してみて折返し連絡するからちょっと待ってろよ、じゃあ一旦切るぞ。』
「あぁ、頼むよテリー兄ちゃん、ほんじゃ後で。」
ポチッとなっと通話を切り周りの皆を見渡すと…小町以外の皆が何だか変な顔をして俺に注目しているよ、俺何かしたのか?
「ほえ〜、ヒッキーさっきの電話初めは英語だったよね、凄いヒッキー英語話せるんだ良いなあ!」
「ですです!それに今のって前に言ってロックさんって人ですよね、あの王子様みたいなイケメンの人ですよね!」
やはりトップバッターとして最初に切り込んできたのは由比ヶ浜と一色だったか、この二人には前にロックの写真見せたからな。
「比企谷君、貴方欧米で暮していた事が有るのかしら?今の英語はあちらで十分に通用するレベルだったわね。」
そして海外留学の経験がある雪ノ下からも、俺の英会話能力に対してお墨付きがいただけた。
いや、海外どころか飛行機にも乗った事無いけどね。
「まぁな、小三の頃からネイティブスピーカーに教わってたからな、小町もだけどな。」
「ねぇお兄ちゃん、テリーお兄ちゃん何て言ってたのそれとロックお兄ちゃんも、あっちょっとロックお兄ちゃんに電話してみよっかな!」
ちょいと小町さんや、一度聞いて来たならさ、聞き終わってから電話しなさいな…お兄ちゃんまだ説明して無いよね。
取り敢えずスマホは一旦置きなさい、説明しますから。
いや、小町が皆…特にロックの事大好きなのは知ってるから話したいの分かるけどさ、なんたって小町の初恋の相手はロックだったからな。
俺と親父はハッキリ言って小町を、特に親父は溺愛していて、『小町は嫁にはやらん』と常々言っているし、それには俺も同意だが、でも相手がロックならまぁ許せるかなと思わなくも無い。
だけど…肝心のロックは完全に小町の事を妹として接してるからな。
それから数分後、テリー兄ちゃんからの折返しの連絡が入り、俺はパオパオカフェのオーナー、マイヤさんと会える事になった。
『明日は土曜日だからお前学校休みだよな、午後に時間が取れるからその時間にパオパオカフェへ行けるか?』
「ああ大丈夫問題無いよ、だったら昼食後位の時間が良いかな。」
『ああそれが良いな、明日そっちの時間の、じゃあ午後一時にってリチャードに伝えとくなハチマン、それからパオパオカフェの場所は知ってるんだよな?』
「解ったそれで問題無いよ、場所はベイサイドタウンの海沿いだったよな、テリー兄ちゃんサンキューな明日行ってくるよ。」
『おう、リチャードにもよろしくな、それからコマチや皆にもな、上手くやれよハチマンじゃあな。』
再びポチッとなっと通話を切り、明日俺がパオパオカフェを訪ねて行く事を皆へ伝える、まぁ小町は電話でロックと談笑中で聞いちゃいないが、それを見ている大志の目が失恋した奴みたいで、うぷぷぷぷぅ〜。
大志よ、悲しくても此処で泣くなよ。
涙ふくハンカチも無いし。
愛が壊れたお前の心を優しく包む椅子なんて無いぞ。
第一此処は失恋レストランじゃあ無いから!サイゼリヤだから。
「では明日の待ち合わせ場所を決めましょうか。」
雪ノ下が提案するが、俺としてはあまり大勢で押し掛けるのは先方に対してあまり良い印象を与えないのでは無いかと思える、なので俺は皆にその旨を伝え了承してもらった。
「でもさ、そのパオパオカフェって喫茶店みたいなトコなんだよね、だったらさお客としてお店に入るくらいなら別に良いよね、食事も美味しいんでしょヒッキー。」
うっ、こういう時だけ無駄に判断力を発揮しやがりますね、由比ヶ浜さん。
何時もそれだけの判断を下せたら、そうだな…深夜アニメのヒロイン出来んじゃね。
『判断上手の由比ヶ浜さん』とかさ、主人公は尽く打つ手を先回りされて追い詰められる…何か、それって由比ヶ浜のキャラじゃねぇな。
「結衣先輩ナイスです、せんぱいはオーナーとお話ししてもらって、私達はお店でお昼のひと時を楽しみましょう、雪乃先輩!」
「そうね、お昼の時間帯なら川崎さんと顔を会わす事も無いでしょうし、一度現場を下見するのも悪く無いわね。」
はい、コレは女性陣全会一致で可決されましたね、再び俺は少数派野党の立場に追いやられてしまいました。
この女子達の連帯力と来たら、少数派男子たる俺に反撃の余地はない。
「ハァ解ったよ、但し店に行く時間は俺とずらしてくれよ…あくまでもお前達は店に客として食事に行くだけであって、マイヤさんと会うのは俺だけだ。」
それだけは皆に徹底してもらわないとな、しかし俺だって本当は美味いと噂のパオパオカフェの料理を食ってみたいんだけどな、それは後日か…時間が有りゃあ明日食えるかな。
「お兄ちゃんもう出る時間なんだね、大志君のお姉さんの事上手く行くと良いんだけど、そこはお兄ちゃんに懸ってるかな。」
「どうだろうな、結局のところ大志の姉ちゃんの問題の根っこが何処にあるかまだ解ってないからな、いや金銭問題って事は解んだけどな、まぁ取り敢えず俺はもう行くわ。」
「うん、お兄ちゃん行ってら!」
小町…また変なとこ略しやがって、可愛いから許すけどね。
だが川なんとかさんが金を必要としている理由か、大志から聞いた為人、俺が実際に話してみて感じた印象…どっちも悪印象を抱く事は無かった。
なのでおそらく、遊び金欲しさって事は無いだろう、なら何か…大学進学の為か、その可能性は高いと思う。
元から総武高校は進学校だし、そこに入学出来た時点で川なんとかさんの学力は高いと言える、が由比ヶ浜が入学出来たと言う事実は意外と言うしか無いだろう、今は雪ノ下が勉強を見てくれているからそれなりの成績をキープしちゃいるけど。
進学か…それを考えているなら、川なんとかさん予備校に通ってるのかな、予備校の費用も馬鹿にならないだろうし、大志も今小町と同じとこに通ってるんだから相当な家計的負担になるんじゃないか…
そうか、予備校か!川なんとかさんは進学の為の資金と予備校の費用を同時に捻出しようと考えて、深夜帯のバイトに手を出したんじゃないのか…だとするとそのどちらかの負担額が減れば、何も無理して深夜帯のバイトなんかやらなくても済むって事じゃね?
「ふむ、取り敢えずこの考えを皆にも検討してもらうか。」
スマホを取り出し、某アプリを起動し皆にメッセージを飛ばす。
多分あいつらもそろそろ何処かに集合してるだろうからな、三人にも話し合ってもらえば何かしらの回答が得られるかもな。
駅前の駐輪場にダクネス号を預け、駅のホームで電車を待つ。
俺はそのホームでこれから会うリチャード・マイヤについて思いを馳せる、予めテリー兄ちゃんにマイヤさんはカポエラの使い手だど聞いていたから、昨夜はネットでそのマイヤさんの試合の動画がないか探して見たが残念ながら見つける事が出来なかった。
しかしその代わり、そのマイヤさんの弟子である『ボブ・ウィルソン』さんの動画を見つけ視聴した。
何と言うかカポエラと言う武術の動きはあまりに独創的と言うか、その動きのリズムはまるでダンスの様な動きだな。
蹴り技が主体の武術ではあるが、まるでそのダンスの様な動作が加わり正面から相対したとしたら、きっとその技の出処が掴み辛いだろうなと思わずにはいられないな。
電車を降り、駅の改札を通り抜けてベイサイドタウンの海沿いを目指し歩く事暫し、俺はそこに発見した。
遠くからでもよく目立つ、大きな看板とそれに見合う大きな建物を。
パオパオカフェ日本一号店の威容がそこにあった。
「まぁ、店内で格闘試合が行われてんだし、リングが設置してんだからこの位の大きさは必要だろうな…。」
その店舗の大きさは、ちょっとしたホムセン位の規模は有るだろう。
むしろその位の規模がないとリングの設置なんて無理だろうな、それに加えてキッチンやスタッフルームなどのバックヤードその他、それから客の収容人数や利益率なんかも考慮しないといけないだろうし、この位になるのは必然か。
今から此処に入っていくのか、どんな人なんだろうな…リチャード・マイヤさん、まぁテリー兄ちゃんと長年友人付き合いしている人だしそんなに心配する必要は無いかも知れないとは思うんだけどな、元々俺自身が基本人付き合いが下手な人種だからな。
さて褌って奴を締めて事にあたらないと…だな。