やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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パオパオカフェにて。

 

 一色が参考資料にと持参してくれた予備校の資料、そこに記されていた記述。

 確かにそれが叶うなら、川なんとかさんの抱える問題を幾分か軽減出来るだろうと思う。

 

 「そうだな俺はいろ…いっし「いろはです!」…俺はいろ、は、の提案に賛成だ。」

 

 うっわあ〜、やっぱキツイですわぁ女子の名前呼び、こうやって名字で呼ぼうとすると毎日の様に皆から是正勧告を食らうんだよ。

 

 「もう!い・い・加減慣れてくださいよせんぱい。」

 

 「そうだよヒッキー、あたし達ヒッキーになら、ってかヒッキーには名前で呼んでほしいって毎日言ってんじゃん、他の男子は嫌だけどさ。」

 

 イヤね確かにさ、クラスの奴等でもグループ組んでる奴等とか男女で名前呼びしてるけど、アレ連中ってよく平気で呼べるよな。

 どういったタイミングで呼び合い始めんの、あの葉山とか金髪ドリルとかさ、お前ら付き合ってんのって位自然に呼び合ってるよな…あっ後戸部もだな、べーべー言いながら優美子だか由美子だか知らないけど。

 

 「比企谷君、貴方またアレコレと変な理屈を考えて名前呼びを回避しようと考えているのでしょう。」

 

 うっ…はい、その通りと言わざるをえませんね、だって恥ずかしいからさマジ何か抵抗感あるんだにょ…なんで俺心の中でまで噛んじゃってんのバッカじゃねぇの、しかもゲノマノズのねこメイド店員かよ『でじこ』かよ。

 そう言えばスマホででじこで変換すると『で自己』って変換しやがったんだけど、皆にはどうでもいい情報だよね。

 

 「まぁまぁ皆さん取り敢えず、このヘタレなお兄ちゃんの事は一旦置いて、まずは大志君のお姉さんの事を話し合いましょう、私も一応いろはさんの意見に賛成しておきます、一応ですけど。」

 

 「ははあ〜んさては悔しいんでしょうお米ちゃんは、このいろはちゃんの提案に大好きなお兄ちゃんが一番に賛成したもんだから!一応なんて付け加えている所がソレを物語ってますもんね、せんぱい。」

 

 「…ぐぬぬぬぅ…。」

 

 …小町ちゃんや女の子がぐぬぬぬぅとか言わないの、小町がやっても可愛いだけだから、見てみなさいそれ見て一色の奴メッチャ得意げになってるから、山の天辺から見下ろしてるから。

 それから一色もあんまり小町を刺激しないで、もっとお互い歩み寄ってよお願いだから。

 

 「あ〜ワニのステーキ美味えわ〜。」

 

 三十六計逃げるに如かず、女の闘いに男は口出ししない方が良いよな多分。

 二次被害がこっちに及んじゃ溜まったもんじゃねえもん。

 

 

 

 

 

 

 昼飯と打ち合わせを終え、俺は今パフォーマンスも終わり誰も居ない店内に設置されているリングの側にいたりなんかする。

 やっぱ気になるからさ、格闘家たる者としてはね、あらやだわ俺ったらなんか一端の格闘家ぶった事言ってるわぁ!

 

 「格闘の道を歩む者としてはやはり興味があるかね、ハチマン君。」

 

 店内の様子を見廻っていたのだろうと思われるマイヤさんに声を掛けられた。

 

 「そうっすね、ところでマイヤさん、このリング通常のボクシング等の試合に用いられる物よりも大きいですよね、それとこのリング外の四隅に設置されている装置は何なんですか。」

 

 今俺が質問した様にこのリングは、大きいんだよな、おそらく一辺が8M以上はある、俺達みたいに気弾を放てる者からするとこれだけの広さがあると、遠間から牽制や相手の出方を伺う為に気弾を放ったりとか闘いの幅が広がるから、有り難いっちゃ有り難いけどさ。

 それと四方四ヶ所に設置されている、高さが2.5M程ある白い円筒形と台座からなる機械的な装置の様な物、一体何なんだろうか。

 

 「このリングは特別製でね、8.5M四方の大きさがあるんだよ、君達にしてみれば、これ位の広さがあった方が戦術に幅が広がるのではないかね。」

 

 なる程流石長年格闘に携わって来ただけあるな、テリー兄ちゃんと闘った事もあるんだパワーウェーブをその眼で見た事もあるだろうしな、その上でそう言った気弾を使う格闘家の持ち味も活かす為に通常よりも広いリングを用意したんだな。

 

 「そうっすね。」

 

 「それと君が気にしているこの装置だが、コレは所謂バリアの様なものだ。」

 

 はぁ〜っ!?バリアってマジかよ。

 

 「ハハハハッ、驚いている様だね、これはね三重の超電磁フィールドウォールを発生し、観客や店内に気弾による被害を及ぼさない為の装置なのだよ、理論上は極限流の覇王翔吼拳を超える威力の気弾も中和出来るだけの出力を発生可能なのだよ。」

 

 マジかよマジかよ、超電磁フィールドとかそんなトンデモ科学が実現されてたのかよ。

 凄えなもしかしてそのうちミノフスキー物理学とかミノフスキー粒子とかIフィールドとか確立されるのか、うっわマジかよ遂にモビルスーツの実用化が始まるのかよ、そして更にはモビルトレースシステムも実用化され俺達格闘家がガンダムに乗り込み『ザ・キングオブ・ガンダムファイターズ』が開催されたりしてな、夢が膨らむ…そりゃ無いか。

 

 「…とんでもない物ですね、そんな物が実用化されていたなんて夢にも思いませんでしたよ。」

 

 「科学の世界は日進月歩だからね、そして格闘を売りにしているこの店にとっては、お客様の安全に考慮する事こそが第一義だよ。」

 

 確かにマイヤさんの言う通りだよな、観戦者の安全性、それが無きゃこの店の営業が許されないだろうし客だって態々危険を承知で来店する人なんて滅多に居ないだろう、それに…。

 昔の俺の様に格闘技に興味が無い人は気功とか知らないだろうからな。

 

 「ところでハチマン君、あのテーブルに集った君のガールフレンド達を私に紹介していただけないかな。」

 

 …やはり気になりますかマイヤさん、まぁ確かに今この店内で一番華やかですからね、あの四人は…。

 

 

 

 

 

 俺達は結局、何だかんだとパオパオカフェで二時間程過ごし、店を後にした。

 駅へと談笑しなが歩く四人より俺は数歩後に付き従う様に歩く、四人ともパオパオカフェで食べた料理やデザートの味に大変ご満足の様で、また行こうと賑やかに…騒がしく…話している。

 女三人寄れば姦しいって言うけど、四人になれば尚一層だな。

 が、しかしそんな中にあっても一人雪ノ下は、冷静で早々に話を切り上げた。

 

 「比企谷君、私は今日中にでも川崎さんと会って提案すべきだと思うのだけれど、貴方はどう?」

 

 雪ノ下は後ろを振り返り、俺へ問うて来た…雪ノ下に急に振り返られた俺は一瞬焦りに似た気持ちを抱いてしまった。

 それは、長い黒髪を靡かせ振り返る姿に、これが見返り美人か、などと取留めなくも思わせられたからなんだが。

 

 「お、おうそうだな、俺も雪ノ下の意見に賛成だし当然だと思うんだが、急いては事をし損じるとも言うし…タイミングがな…。」

 

 それと、もし川なんとかさんと話すにしても、大人数で押し掛けるよりも俺一人で交渉しに行った方が良いと思うんだが、それを提案して雪ノ下が納得してくれるかだよな。

 かと言って内緒で俺一人で川なんとかさんとこに行ったとして、それを後で知られたら、雪ノ下の事だ後々どんな責苦を課せて来るか…怖っ!ゆきのん怖!

 

 「だからな、先ずは俺一人でやらせてくれないか…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在の時刻は午後八時、現代は電波時計と言う便利な物があり勝手に時間合わせをしてくれるので俺のスマホに表示されているこの時刻に間違いは無い筈だ。

 因みに日本の時刻と世界の基準の時刻とされるグリニッジ標準時との時差は九時間あり、日本の方が九時間進んでいるんだ、これマメな。

 

 更に付け加えるなら、グリニッジ標準時より最も時間が進んでいるのは太平洋上の『キリバス共和国』と言う所だ。

 なので、毎年恒例秋の風物詩になった感があるボジョレーヌーボーの解禁が世界で一番早いのはキリバス共和国となるって事だ、まぁ実際行ったことないしキリバス共和国がボジョレーヌーボーを輸入してるかどうか知らんけど。

 

 あの後、俺の提案を渋る皆を説得するのに時間が掛かったが、何とか納得してもらえたら…その為に俺がアイツらに支払う代償が偉い事になりそうだ、ハァ、ゴールデンウィークの悪夢再び…。

 

 気を取り直し、俺は再びパオパオカフェへ足を踏み入れる、昼に来たときと比べ、店の雰囲気も客層も違っている。

 昼間は少ないってか殆ど居なかった酒を注文し飲んでいる人の割合が多い。

 飲酒をしているのは男女で来店している人達、所謂カップルだな…土曜の夜に男女で酒飲んでその後はチョメチョメですか、質問チョメチョメって何ですか?ハチマンコドモダカラワカラナイヨ…。

 

 そして昼間は演武のパフォーマンスが繰り広げられていたリング上では、今格闘技の試合が行われていた。

 一方はキックボクシングの使い手でもう一方はテコンドーか…試合展開はキックボクシサーの方がかなり優勢だ、テコンドー選手は派手な蹴り技ばかり繰り出しては回避され転び、転んだ所に反撃を受けダメージを蓄積されている、よくあの程度でリングに上がる気になったな。

 お客さんもブーイングの声を上げてるじゃんよ…。

 

 「…と、リングに気を取られたか、黒レースはっと…。」

 

 キョロキョロ店内を見渡し、探し求めるその姿は…居た。

 リングから離れたカウンター席になっている一角、そのカウンター内でウェイター姿でカクテルを客に出している。

 …しっかし、美人てのはどんな格好も似合うもんだな、男装の麗人、まさにそう形容するに相応しい。

 男性客ばかりか、女性客まで川なんとかさんに見蕩れている人も居るわ。

 見蕩れてばかりも居られないか、しゃあない行くか。

 

 「いらっしゃいませ。」

 

 取り敢えず俺はカウンター席の他の客とは離れた席へ座った。

 話すにしてもあまり他の人に聞こえない様にしときたいしな。

 席に付いた俺の元へ川なんとかさんが注文を取りに来たが、その顔にはお世辞にも笑顔には見えないな…店員さん客商売にそれってどうなの。

 

 「よう、ご苦労さん。」

 

 まぁ優しい優しい八幡君としては、勤労少女に労いの言葉の一言位は掛けて置くことにした、んだが。

 

 「ハァ、誰?」

 

 あらま、帰って来たのは思っきし訝しがっている声で御座いました。

 まぁこの時間帯に赤いキャップを被って目元を隠した男に声掛けられりゃ、そう思われても仕方無いのかな…若い男がグッすん、お色気無さそで、グッすん。

 

 あの日テリー兄ちゃんに貰ったこの赤い帽子、中央部の白地に『KING OF THE FIGHTERS』と黄色い糸で刺繍された帽子だ。

 

 「…俺だよ。」

 

 俺は川なんとかさんに対して目元まできちんと見える様に帽子の鍔を上げて見せた。

 川なんとかさんはそれを確認し、何か呆れとも諦めともつかない様な表情で溜息をつき、一言漏らした。

 

 

 「…こんな所迄、態々ご苦労な事で、アンタ相当な暇人なんだね…。」

 

 「まぁ今日はバイトが無いからな、確かに暇っちゃ暇だな。」

 

 川なんとかさんにとっちゃ俺は招かれざる客、だろうから嫌味の一言くらい言いたくもなるだろうけど、なまじ美人タイプの女子に言われると来る物があるよな、あらやだわ俺ってば目覚めちゃいそう…。

 

 「アンタもバイトやってんだ、はぁ…で、ご注文は?」

 

 うさぎですか?と続けて欲しかったけど、知りませんよね川なんとかさん。

 心がぴょんぴょんしませんですかそうですか…。

 

 「マックスコーヒー。」

 

 「またかい、アンタそんな物ばかり飲んでると身体壊すよ。」

 

 そう言いながらも、しっかりマッカンを用意してくれる辺り仕事は疎かにしないんだな、それに人の健康にも気遣う優しさも持っているか。

 慣れた仕草でカクテルグラスにマッカンの中身を注ぐ川なんとかさん、てか何気に俺ってカクテルグラスでマッカン飲むの初めてだよな。

 

 「はいよ、お待たせしました。」

 

 ちょっと無愛想な感じではあるが、川なんとかさんは丁寧な手付きでマッカン入りのカクテルグラスを差し出してくれた。

 

 「…おう、サンク。」

 

 「で、アンタ態々それ飲む為だけに此処に来た訳じゃ無いんだよね、こないだの話の続きでもしようてかい?」

 

 そう言いながら挑発的な眼差しを向ける川なんとかさんに、俺はまず皆で推測した川なんとかさんの現状を確認してみた。

 

 

 

 

 「…アンタ推理小説家か探偵の真似事でもしてんのかい、まぁ…大方合ってるよそこ迄知られてんなら誤魔化したって意味ないからね。」

 

 「それで、アンタがそれをどうにかしてくれるとでも言うのかい、それともハンパな気持ちで同情だけしてくれてんのかい、そうだったらハッキリ言って迷惑だし放っといてくんないかな。」

 

 「…まぁ、ハッキリと同情の気持ちが100パー無いとは言えないけどな、それと俺はお前を全力で助けようとかそんな傲慢な事を考えてる訳じゃ無いんだ、まだ小学生とか義務教育期間中の子供じゃ無いんだからな、ただ今のお前の状況を少しだけ身軽にする手段の提案くらいなら出来る。」

 

 訝しそうに、或いは忌々しそうにと言うべきか、兎に角俺に対して余り良い感情を抱いていない事アリアリの表情だった川なんとかさんだったが、今の俺の言葉に対して初めて幾ばくかの興味を抱いた様な表情を見せた。

 よし、この時を待っていた!くらえ火炎瓶だ〜〜!!

 …イヤイヤ投げないから火炎瓶、漁夫の利占めて保安官になろうとか思ってないから…。

 俺はジャンバーの内ポケットへ閉まっていた例の物を取出しカウンター上、川なんとかさんに見える様に提示した。

 

 「…これは、予備校のパンフレットかい、それが何さ…。」

 

 「ここん所、読んでみろよ。」

 

 右手人差し指で俺はパンフレットの文言の一文を指し示し川なんとかさんにそこを読む様に促す、何だか肩透かしを食らったと言った様な表情を浮かべていた川なんとかさんだが、一応素直にその文章に目を通した始めた。

 

 

 

 「…スカラシップ、奨学金制度か…そんな物があったんだ…。」

 

 スカラシップ制度、一色がこのパンフレットから見つけ出したこの制度、もしこれを受け取れるだけの学力を川なんとかさんが身に着けているのなら(総武高校に入学出来ている時点でその可能性は充分に有るとは思うけど)イケんじゃねぇか川なんとかさん!?

 

 「…あのさ、比企谷だったっけ…」

 

 お、マジ?俺の名前知っててくれたんだな…。

 

 「ありがと、もしアタシがこれを利用出来たらアンタの言うとおり、深夜のバイトやらなくて済みそうだよ。」

 

 顔を上げ、そう言ってくれた川なんとかさんの表情は、まるで何か憑き物が落ちた様な穏やかさと…男心を蕩かす様な美しさを併せた様な、と、兎に角ヤヴァい表情だと此処に明記しておく。

 

 「…はっ、イヤ礼なら一し、ウチの部の後輩に言ってくれ、コレ見つけて来たのはソイツだからな、それにまだお前がスカラシップ取れるかはやってみないと分かんねえだろ!?」

 

 俺の言葉に頷き答える、川なんとかさん…何か急に素直になってオラビックリたぞチチぃ!

 

 

 

 「アタシさ、この店の人達に謝らなきゃいけないよね…嘘を吐いてまで雇って貰ったのに、皆からするとさ酷い裏切りだよね。」

 

 自分が抱え込んでいた重石が取れて、川なんとかさんは改めて周囲を顧みる心の余裕が生まれた様だ。

 そして自分が犯した罪を自覚した事だろう。

 

 「…だな、それが当然だろうな、それが解んならお前がこれから何をすべきかも分かるよな…。」

 

 再び頷く川なんとかさん、これなら大丈夫だな、マイヤさんとの約束も果たせそうだ。

 

 「アタシ今日の勤務時間が終わったらオーナーの処へ行くよ、行って正直に全部話して処分を受けてくる。」

 

 すっかり素直な川なんとかさん、今のこいつには初めて話した時の、排他的な雰囲気はナリを潜めている…案外此方が川なんとかさんの素の状態だったりしてな。

 

 「…その必要は無いかもな、マイヤさんそれで隠れてるつもりですか?見えてますよ。」

 

 カウンター席の外れの壁際に背を預け腕組みした姿勢で此方を伺っているマイヤさんの姿が、俺の位置からは見えていますよマイヤさん。

 俺の声に答える様に、静かな笑みを浮かべてマイヤさんは俺達の方へと近づいてくる。

 

 「ハハッ、バレていたのか、参ったなこれは…。」

 

 「えっ!あ、オーナー!」

 

 川なんとかさんにとっては、突然のマイヤさんの登場…。

 まぁ俺は少し前から気付いていたけどね、マイヤさんそれ程気配を消していた訳でも無いし、単に此方に見えない様に位置取っていたつもりだったんだろうけど、マイヤさん…わりとガタイがデカイから隠れきれていませんでしたよ。

 

 丁度今なら、カウンター席の客は少ないから話すには丁度良いんじゃないか。

 

 さ、頑張れよ。

 

 川…端?だっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




トンデモ科学にご登場願いました。

八幡がテリーに貰った帽子は餓狼伝説3バージョンのキャップです。
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