やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
テリー兄ちゃんの対戦相手の服装、学生服姿に思わず呆気に取られた俺は、何だか格闘技と言う物が分からなくなった様な気がした。
えぇ?格闘技ってそれで良いのん?
テレビで見たボクシングは上半身裸だけど、下は大きめのトランクスに細身のブーツみたいなシューズを履いて、グローブ着けてるし、柔道や空手は道着を着ているし、なのに学生服って!?
と格闘技のなんたるかに、思いを馳せている俺、比企谷八幡だったが…
よくよく考えれ見るとリング上に居るテリー兄ちゃんだって、Tシャツにジーンズ&スニーカーに指貫のグローブを着装しているんだし…
…これで良いのだ!何処かからバカダ大学卒のパパの声が聴こえた気がした。
だからそれについて考えるのを止めたよ俺は、カーズじゃ無いけどね。
その対戦相手の学ランの兄ちゃんについて知った事を述べてみよう。
その名は草薙京さん、草薙流と云う古武術の使い手で、若き天才格闘家として有名らしい。
学ラン姿に気を持っていかれたが、その容姿はすらっと細身に見えるが、テリー兄ちゃんと変わらない位の身長と付くべきところにはシッカリと筋肉が付いていて、只者ではない雰囲気を醸し出している。
顔貌はすっごいイケメン…
きっと女子にモテモテだろうな。そういや昔神聖モテモテ王国って漫画有ったよな。
まぁどうでもいいや。
しかし、テリー兄ちゃん、アンディ兄ちゃんといいこの学ランの兄ちゃんもだが、この日出会った格闘家の人達ってやたらイケメンばっかだよな。
格闘家になるための必須条件なのかイケメンが…
あっ!でもジョーあんちゃんは…
否、あんちゃんだってカッコイイと思うよ、でもイケメンって感じじゃなくって、何と言うか………そう!男前って感じだ!
…脱線してしまったが、学ランの兄ちゃん。
草薙京さんなんだが、この時何と年齢が…二十歳だったんだと……。
ハァッ!草薙さん、もしかしてダブってるんj……。
…何だか悪寒を感じたから、コレについては語るまい。
学ランの兄ちゃんについては、これ位で良いだろう。
で、学ランの兄ちゃんサイドのコーナーには、三人の男が控えていた。
その特徴だが、俺から見て左側に居る一人目は、平均的な背丈の青っぽい学生服を着た腕白小僧っぽい見た目の兄ちゃんだ。
学ランの兄ちゃんの様に袖を腕まくりしているので、その影響を受けているんだろう。
「草薙さ〜んっ!ファイトで〜す」
大きな声で、声援を送っている。
名前は知らない。
二人目、真ん中に立っている人は、金髪のスラリとした長身の、イケメンな兄ちゃん、見た感じナルシスっぽい。
またイケメンかよ…やっぱり格闘家イケメン必須条件説が、真実味を帯びてきたな。
だが、その金髪さん…見た目が何と言うか………ポルナレフだな!
大丈夫かな、便器とか舐めさせられたり…………止めておこう、これ以上の言及は。
この人の名は二階堂紅丸さん、シューティングという格闘術の使い手だそうだ
。
そして三人目、身の丈2メートルを超えているであろう大男、職業は格闘家以外の何者でもないって感じの、厳ついオッサン。
あぁ良かった、格闘家イケメン必須条件説なんてなかったんや!
やったね八幡! おめでとう八幡!
……………ちょっとしつこかったかな、何も補完とかしてないしな、失礼しました。
この厳ついオッサン、胸元で腕を組み学ランの兄ちゃんに対して「うむぅ!」
と頷いている。
その姿、威厳ありありだな!おい。
この人は大門五郎さん、元オリンピックの柔道金メダリスト、柔道をベースにした独自の格闘術の使い手。
学ランの兄ちゃんサイドへの言及はこの位で良いだろう。
アナウンスすべき事を終えたリングアナは、場内へと一礼しホームベース側からリングを降りて行き、リング上には対戦する二人とのレフェリーの三人だけとなった。
レフェリーからの注意事項を聞き終えた二人は、其々のコーナー側へと離れて試合開始の合図が告げられるのを待つばかりとなった。
テリー兄ちゃんは、俺達の方へと一度眼を向け、右腕を水平へと伸ばしサムズアップをして見せた。
『よく見ておけよハチマン!』
声には出さずにテリー兄ちゃんは俺にそう言っている、俺にはそう感じられた
。
絶対にそうだと断言出来た、それは俺だけの真実だ。
そして、リング中央を居るレフェリーが、右手を垂直に伸ばした。
まもなく試合開始の合図が告げられるのだろう。
その時だった………
テリー兄ちゃんは左手に持っていたジャンパーを自分から空へと投げ出した。
そしてそれを追うように自身も空へとジャンプし「Let’Party!!」と叫びながら、なんと空中で自分が投げたジャンパーを着込んだ!!
首筋と腰の辺りの2ヶ所で結えた長い髪をたなびかせ、ジャンパーの背中の星のマークを煌かせながら、テリー兄ちゃんはリングへと着地し、ファイティングポーズを取った。
何だよ今の!?すげぇカッコイイ!!
テリー兄ちゃん最高かよ!!
この一連のテリー兄ちゃんのアクションは、小3男児の俺のハートをバッチリとキャッチした!。
プリティでキュアキュアな伝説の少女戦士のアニメ並みに俺のハートはキャッチされた!
因みにこの時学ランの兄ちゃんも何かパフォーマンスをやってたみたいだが、俺の眼はテリー兄ちゃんに釘付けだったから見ていなかった。
テリー兄ちゃんがリングへ着地しファイティングポーズを取ってから数秒、遂にその瞬間が訪れた。
「ファイト!」
レフェリーより試合開始の合図が告げられた。
開始前の派手なパフォーマンスとは打って変わって、試合は静かな立ち上がりとなった。
二人は軽くリズムを刻みながら、ゆっくりと時計回りに廻りながら、徐々に徐々にとゆっくりとその彼我の距離を詰めてゆく。
やがて、テリー兄ちゃんはホームベース側へ、学ランの兄ちゃんは二塁側へと移動、互いに半身に構え対峙する。
その距離は5〜6メートルといった所だろうか。
歩を止め互いにファイティングポーズを取りつつその視線を合わせ、その顔は不敵な笑みが浮かべ、そして示し合わせた訳では無いだろうが、二人は同時に動き出す。
ダッシュし、その彼我の距離を詰め遂にその距離は、互いの拳が届く距離まで接近。
いよいよ始まるんだ、本当の意味での闘いが。
俺は固唾をのんで、その瞬間の訪れを見落とすまいと、二人から視線を外す事なく凝視し続けた。
シュッ!!と響き渡るのはパンチを繰り出す音か、それとも二人の口から洩れ出た声なのか。
ほぼ同時に繰り出された二人の拳、それは直撃する事なく、二人共的確にそれをガードした。
ガードの上からでも、ビシリと甲高い音を響かせる二人の拳、その打撃力の高さを感じさせるに十分だ。
それに興奮を掻き立てられ観客のボルテージは一気にたかまった。
『Wooooo!!』
大勢の人々の声が掛合わされた歓声は
、意味を為さない狂声となり会場全体に木霊する。
大歓声の中のリング上で繰り広げられるのは、二人の男の攻防戦。
拳打が、蹴りが、繰り出されては防御し、或は捌き、回避し、未だクリーンヒットは互いに許していない。
そのハイレベルの攻防に、大歓声に湧いていた観客達も次第に声を失い、やがて先の俺と同様に固唾を飲み、相対する二人の男達の一挙手一投足を見逃すまいと身構えている様だ。
いつ果てるともつかぬ、二人の格闘家による緊迫の攻防戦。
だが遂にその流れを変えるべく動いたのは、学ランの兄ちゃんだった。
「喰らえぇッ!!」
声を発しながら放たれた、学ランの兄ちゃんの拳はテリー兄ちゃんのボディめがけて繰り出されたんだが、驚くべきはその拳……それは燃え盛る炎を纏っていた。
拳を振るう軌道を追うように、風に靡く炎。
…嘘だろ、何だよそれ……。
炎を纏ったパンチを見た、俺の思いは正にそれだった。
拳から炎が放たれる、そんなの漫画やアニメの中の必殺技みたいな物が現実の世界に有るなんてそんなバカな。
もし、もしそんな物が、そんな物をテリー兄ちゃんが喰らったら……
テリー兄ちゃんが死んじゃう!?
「アンディ兄ちゃん!ジョーあんちゃん!テリー兄ちゃんが、テリー兄ちゃんがっ!」
二人に向き直り俺は必死の形相で訴えるも、当の二人は。
「心配要らないよ八幡、兄さんなら大丈夫だ!」
アンディ兄ちゃんは冷静な声音、でそう言った。
「あぁ、アンディの言うとおりだ八幡
。こっからだ、いよいよ面白くなって来やがったぜ!」
左手の掌に右の拳を叩きつけ、ニヤリと笑いながらジョーあんちゃんは言った
。
「……………………」
二人はそう言うけど、あんな光景を初めて見た俺には、とても二人が言う様に大丈夫だとは思えなくて、不安は募るばかりだ。
そしてリング上では更に、学ランの兄ちゃんの攻撃が繰り出される。
「ボディが甘いぜ!」
学ランの兄ちゃんの掛け声と共に再び炎の拳が、テリー兄ちゃんへと向けて繰り出される。
たが、それはテリー兄ちゃんのボディへヒットする事は無かった。
テリー兄ちゃんのボディは甘くは無かったって事だ。
学ランの兄ちゃんの攻撃をギリギリまで引きつけた後、サイドへスウェーで躱し、そして空振りによる反動により体勢を崩した学ランの兄ちゃんへ、遂にテリー兄ちゃんの一撃が加えられる。
「シュッ!」
短い呼気と共に繰り出される、右のストレートパンチ、テリー兄ちゃんの放ったそれは、学ランの兄ちゃんの頬へ深々と突き刺さった。
「うぅッ」
学ランの兄ちゃんの発した呻きの声、この試合における最初のクリーンヒットはテリー兄ちゃんによるものだ、さっきの学ランの兄ちゃんが繰り出した炎のパンチに比べると地味に思えるかも知れない、だがそれは次に繋がる、テリー兄ちゃんによる攻勢の最初の一歩。
テリー兄ちゃんのパンチにより、更に体勢を崩された学ランの兄ちゃんに、追い打ちが掛かる、テリー兄ちゃんは学ランの兄ちゃんの懐に潜り込み、下方よりパンチをボディ目掛けて叩き込む。
軽く身体をくの字に歪める学ランの兄ちゃん、テリー兄ちゃんの更なる追撃が加えられる。
それこそが、アンディ兄ちゃんとジョーあんちゃんが言った、心配入らないと言った理由。
学ランの兄ちゃんの炎の拳にも負けない、テリー兄ちゃんの必死の拳。
ダメージに身体を歪める学ランの兄ちゃんを他所に、テリー兄ちゃんは両の手をバッと斜め上方へと挙げる。
所謂バンザイのポーズだ、瞬間バンザイのポーズを取った後、軽く身をかがめグッと力を溜め込むテリー兄ちゃん。
そして勢いを付け左の腕を前方へ突き出し、身体は相手に対して半身の構えとなり、右腕を下方で軽く曲げ拳を己の腰の辺りに構える!
「バァーンナックゥッ!!」
相手に対しての真っ直ぐに伸ばした左腕、その拳に青白い炎の様なエネルギーを纏い、リングより足が離れ滑空するかの様に相手へと高速で突進して行く。
『Bagoooon!!!』
高らかに打撃音を響かせ、その拳は学ランの兄ちゃんの頬へとぶち当たる、その威力の前に学ランの兄ちゃんは、ダウンした。
そう、テリー兄ちゃんも持っていたんだ、学ランの兄ちゃんの炎とは違うけど
、超常の技を必死の拳を。
「どうだ八幡、俺の言った通り面白くなっただろうがよ!」
ニヤリ獰猛な笑顔でジョーあんちゃん
は俺に呼び掛ける。
「八幡、今のがバーンナックルだよ
これまで兄さんが築いてきた伝説の礎と言っても過言では無い、兄さんの代名詞と言える技だよ。」
アンディ兄さんは、冷静な態度を崩さずにそう言った。
「勝ったんだよね…テリー兄ちゃんの勝ちだよね!?あんな凄いパンチが当ったんだ、テリー兄ちゃんの勝ちなんだよね!!」
俺はバーンナックルのヒットのインパクトの強さに、テリー兄ちゃんが勝ったんだと、そう思い皆に確認する様に尋ねる。
だがしかし、帰ってきた答は。
「まだよ八っちゃん、まだまだこれからよ、京君はあれだけで勝てる程甘くはないわ。」
『そんな筈は無いんじゃね?』舞姉ちゃんの返答に俺は心の中でそう反論するんだが、それに続きジョーあんちゃんが声を出し俺に言う。
「舞の言うとおりだ、見ろ八幡あの野郎もう立ち上がるぜ。 全く可愛気のねぇ野郎だぜ。」
ジョーあんちゃんの言葉に俺はリング上を見る。
ジョーあんちゃんの言った通りだ、学ランの兄ちゃんはダウンのダメージを感じさせない、しっかりとした足取りで立ち上がった。
その眼は鋭い眼光を湛え、不敵に笑いながら学ランの兄ちゃんは立ち上がったんだ。
二人の格闘家の闘いはまだ終わらない
。