やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
葉山の言葉を遮ったジョーあんちゃんは、真剣な面持ちを以てその葉山の眼を見据えている。
「なにもな坊主、俺はお前の意見を全否定する気はねぇんだがよ…世の中話し合うって事が大事な場面てのも多々あるさ、俺が留美嬢ちゃんに提案した、これ迄に同じ目に遭った子達に詫びを入れてみろって事も一つの話し合いだしな。」
何かこんなのは俺のキャラでも柄でも無いなんて事を、ジョーあんちゃんは照れ隠しの様に頭をガリガリと掻きながら言った。
「だったら、留美ちゃんとあの四人も話せば分り合えるんじゃないですか、互いがきちんと腹を割って話し合えばきっと。」
それに対して葉山はあくまで持論の理想論を以て、ジョーあんちゃんへ対そうとするが葉山よ、加害者であるあの四人とその被害者でもあり、留美が詫びねばならないであろうとジョーあんちゃんが言った子達ではその立ち位置からして全然違うだろう。
「コイツは俺の見立てなんだがな、さっき留美嬢ちゃんの話しを聞いてみて思ったんだがよ…嬢ちゃんとあのその四人の子達な、おそらく話し合いでどうこう出来る状況はとっくに通り越してるぜ。
物事には大抵それに応じた場や時っもんがあるんだがよ…まぁ関係無い話なんだが、俺達格闘家なら試合に向けてのコンディション作りから始めて、試合当日にその肉体と精神がピークを迎えられる様に持っていくんだが、そこ迄の道のりで、その時々それに応じたトレーニングメニューを熟して、その時その時に心と身体に聞いて診るんだよ、どうだまだやれるか!?平気か!?ってよ、そんでまだまだイケるって解ると、よっしゃだったらトコトンやろうぜっとかって心と身体と会話するって訳だ。
そうだなこの場合…おい八幡、それから皆もだがよもしもだ、この坊主が言う様に話し合いの場を持ったとして、その後どう言う事が起こるかって事を、少しばかり考えてみようや!?」
葉山に諭しながらも、俺達に話を振って来た、この場に居る皆に、それぞれに色んな考えがあるだろうしな、有り得る可能性を考えてみるのは有用だろうな、所謂ブレインストーミングって奴だ。
「そうだな、先ずは年上のイケメン兄ちゃんの言葉に従ってあの四人も話合いのテーブルに付くだろう、で口先だけで『はい、イジメなんてもうしません』とかって言うんだろうな、けど…。」
「けれど私達が居なくなった後、留美さんは彼女達に更なる虐めを受ける事になるでしょうね、年上のお兄さんに告げ口をした卑怯者だのと罵り、よりエスカレートした手口を持ってしてね。」
俺の言葉を繋げる様に雪ノ下が後に続けてくれた、恐らくは雪ノ下もその様な目に遭わされたクチなのだろうな。
俺の場合と一緒だな、あの日テリー兄ちゃんが俺を助けてくれたとしても、その後日本に残ってくれなかったら、俺は後日奴等にもっと酷い目に遭わされたかも知れない『あん時は外人のオッサン(奴等主観だとそう言いそう)に邪魔されたけどこれからはもっと酷い目に遭わせてやるから覚悟しろ』とか言われてさ、それにあの時アイツ等小町にまで手を出そうとか言っていたからな…クッ思い出したらまた苛ついて来たぜ!
「しかしそれは、あまりにも彼女達の事を冷たく見やしていないだろうか、俺達が情理を以て諭してあげれば、自分の悪い所に気が付いて反省してくれるかも知れないだろう、現に俺達だって…比企谷、君達のアドバイスのお陰で話し合って纏まる事が出来たんだ、そうだろう戸部、此処には居ない大和や大岡だって分かり会えたんだ!」
あぁ、例のチェーンメールの件な…確かに俺は葉山に言ったよ、その件をなあなあで済ますなとな、その言葉を受けて葉山は戸部達と話し合いの場を持ち、それが功を奏して前以上に仲間としての絆が深まったんだろ?。
かつて雪ノ下に対して失敗したであろうと思われる、皆仲良く話し合おうの精神…それが時を経て戸部達の時は上手く行った、所謂成功体験だな。
けどよ葉山、それは…。
「隼人君、俺さ思うんだ…あれは俺達三人誰が犯人になっていてもおかしく無かったてさ、だって現に俺だって内心は思ってたもんよ、ハブられたく無えってさ、もしアイツがあんなやり方をして無かったらもしかすっとさ、俺っちも別の方法で、二人の内の一人を蹴落とす方法を考えてたかも知れないっしょ…。」
「……と…べ!?」
葉山は今の戸部の告白を受けて、さも意外で不本意だと言わんばかりの表情を浮かべている、もしかして葉山は戸部達が和解する為の現場を設けただけで、その話し合いそれ自体に参加していなかったのか?
でなければ、今葉山の浮かべる表情の理由が成り立たない。
そして、だとすると葉山の言う皆仲良くだの話し合おうだのと言う触りの良い言葉は…なんともはや中途半端な気持ちの現れの様だな。
「それこそさ、ヒガシさんが言った時と場があの時ドンピシャハマったって事じゃないべか?
そんでルミルミっちはさ、その時期を逃しちまったって事なんしょ!?
ゴメン、俺っちってあんま頭良く無ぇからさ上手いこと言えてないべ…。」
最後はなんとも戸部らしい、口調で照れ隠しの様に話を締めたが。
戸部、俺には今のお前の言葉はさ、決して頭が良く無いとか上手いこと言って無いとか思わなかったぞ。
「戸部、そう自分を卑下する必要は無いよ、君は君なりに留美君の置かれた状況や君の友人達との出来事を踏まえ、そして慮ったうえで語ったのだろう、そうだね現国教師としては良い点数はあげられないが、生活指導担当としては花丸とはいかないまでも、三重丸位は進呈しても良いと思うよ。」
平塚先生にも高評価を頂いたじゃないかよ戸部、てゆうか平塚先生のセリフって久しぶりに聞いた気がするな、前回先生セリフ有ったよな、つか前回って何だよ前回って!?
「隼人君、女ってね…隼人君が思っているよりも…もっとずっとドロドロしてるんだよ、そのやり方は男子の其れよりももっと陰湿でねちっこいんだ…特にまだ学校と云う世界しか知らない小学生の女子じゃ尚更だよ…。」
これ迄、この場で殆ど口を開いていなかった腐女子さんが、妙に真剣味を帯びた口調で葉山に意見しやがった。
眼鏡に隠れている為目線は何処を見ているのか判然としないが、その語り口調からは実体験に基づいて語っている様に思えてならない。
「…姫菜、君迄そんな…。」
「だから私は思うんだ!何も学校の中だけが世界じゃ無い、もっと広い世界に羽ばたくべきだと、だから私は留美ちゃんに勧めるわ!私が通った道を、果てしなく続くヤオイ坂を!!」
「世間では腐界だとか、蔑まれているけれど私はその道で友達百人出来ま「姫菜そこ迄にしな!擬態、擬態するし!」ムッハ〜ッ!」
珍しく真面目モードで行くのかと思えば腐女子さんはやはり腐女子さんだったのね…かつて『風魔の小次郎』と『聖闘士星矢』の間に連載され僅か3巻で打ち切られ、今何処に需要があるのか解らんが細々と執筆されている、某○坂の第3巻最後のセリフをパクった様なセリフを吐いたうえでとんでも無い腐教活動に結び付けやがった。
この腐女子…やりやがる、やりやがるのは良いが腐女子さん、小町と奉仕部の三人には決して腐教しないで下さいね、八幡との約束だぞ!
そう言や、聖闘士星矢の後に連載された『SILENT KNIGHT翔』ってのも打ち切りだったよな(泣)
そしてあーしさん、毎度の事ながらマジでご苦労さまであります、腐女子さんの腐教活動を止める事が出来るのは君だけなんだ!
俺は君を常に応援しているぞ、コッソリと影から見付からない様にな、だって見付かったら面倒だし、やたらと俺を誰かとカップリングしたがるじゃん…。
「…それでよ坊主、お前は一体あの子に対して、どうしたいって思ってるんだよ?」
ジョーあんちゃんが葉山に対して発したそれは、俺としても是非とも知っておきたいと思っていた事柄でもある。
「…俺は、出来れば留美ちゃんを助けたいと思っていますよ、俺の出来る範囲で…。」
出来る範囲でね…つまり葉山は自分のできる範囲を超える様な事態であれば、そこでルミルミを見捨てるって訳か。
「…出来る範囲でか、じゃあハッキリ言ってやるぞ坊主、高々高校生の小僧にあの子は救え無ぇよ…その程度の覚悟じゃな!」
そうなんだよな、ジョーあんちゃんの言う通りだ、葉山だけじゃ無い。
それは、ジョーあんちゃんの言葉は俺達にも当て嵌まる、何の力も経験も実績も無い高校生に何が出来る?
今の俺達に出来る事って言や、精々が大人を頼って、この場合は平塚先生を通してルミルミの学校の先生に虐めが恒常的に行われているって事をリークして、注意して見てもらい、その都度小学校の先生に注意指導してもらう様に要請する位か。
「…その昔な、一人の外人の男が旅先の小さな公園で小さな小僧と出会ったんだが、その小僧はいつの頃からか虐めを受ける様になってしまっていたらしくてな、始めの内は今の留美嬢ちゃんが受けている様な事柄だったんだが、それが暴力に発展する迄に大した時間は掛らなかった…」
おいちょっと!ジョーあんちゃんが今語っているのは、俺とテリー兄ちゃんの出会いの話じゃねぇかよ!
あの公園でテリー兄ちゃんとロックと出会い、アンディ兄ちゃんとジョーあんちゃんと舞姉ちゃんと出会い、千葉マリンでこの眼に焼き付けたテリー兄ちゃんと草薙さんとの仕合い、闘う男の大きな背中…。
「…でだ、その男は結局国へは帰らずに一年間この国で暮らし、その小僧に寄り添ったんだよ、闘う為の牙をその小僧に授ける為にな…人に手を差し伸ばすって事はな坊主、本来は、お前それだけの覚悟が必要な行為なんだよ、お前に出来るか?まだ高々十七年かそこらしか生きていない小僧っ子に、それがよ。」
「…一年も、見ず知らずの子供の為にですか…何もそこ迄…。」
そう一年間もだぜ…凄えだろう葉山、一年間テリー兄ちゃんは俺にロックと一緒に修行を付けてくれた、お陰で俺は力を付ける事が出来て、暴力を跳ね返す事が出来た…ただそれは単なる暴力による力だけの事じゃ無い。
漫画やアニメとかなら、ありきたりな設定だったりするんだろうけど、俺が授けて貰ったのは立ち向かう勇気もだ、臆病でヘタレなヲタガキが兄貴達と触れ合って授けて貰ったのは心の力もだ。
またまたありきたりな言葉だが、それはまさに『心・技・体』って奴だ。
尤もそれはまだまだ道半ばなんだけどな。
だがよテリー兄ちゃんが凄いのは其れだけじゃ無いんだぜ、俺だけじゃ無くてロックもまたテリー兄ちゃんに手を差し伸べられた人間なんだよな、お袋さんと二人暮しだったロックは病気でそのお袋さんを亡くし天涯孤独(実際には父親は居たらしいが)の身となった処をテリー兄ちゃんに拾われ実質養子にしてもらってんだからな。
そう云う行動をサラッと出来る処がテリー兄ちゃんの凄い所だよな。
葉山、お前は何もそこ迄と言ったが、俺は思う…もしテリー兄ちゃんが日本に残ってくれなかったら俺はどうなっていただろうかって…まぁさっきも思った事だから、此処でまた語る事も無えな。
あ〜っ!けどよ、何てかさ…名前は出して無ぇけどさ、自分の昔の事を話されると何かこう、いたたまれ無えってか恥ずいってか。
ハァ、ちと頭冷やして来っかな、考えも浮かば無ぇしな。
「…悪りぃ、俺ちと外すわ…。」
「ほへ?ヒッキーどこ行くの?」
立ち上がった俺に由比ヶ浜が、すかさず声を掛けてくれた、そんな心配そうな顔すんなよ、何でも無えからさ。
「あ〜、アレだ俺はハガキ職人だからな『欽ドン!良い子悪い子普通の子』と『鶴光のオールナイトニッポン』の「あの歌はこんなふうに聴こえる」のコーナーに投稿するネタを考えなきゃだから、ちょっと失礼するぜ、俺程のハガキ職人になるとこんな場所も常にネタを考えているものなんだよ、シュ!。」
ヒビキさん敬礼ポーズを決めて、この場を離れようとする俺を由比ヶ浜達は微妙に呆れを含んだ(多分微妙だよな、あからさまじゃあ無いよな)瞳と乾いた笑を浮かべて居られる、あれ?もしかして俺、何かやっちゃいましたか…と某なろう系の主人公みたいな事思ってないかんだからね。
こう言う場合は、恥ずかしさなど微塵も見せることなく立ち去るべきだ!
「比企谷八幡はクールに去るぜ!」
此処で一端、物語は比企谷八幡の視点から他者へ移す。
「八幡どうしちゃったのかな、大丈夫かな…八幡ってさ何時も話す時に色んなネタを混ぜたりして、ちょっとふざけた事言ったりするけどさ、でも八幡は優しい人だから普段はふざけていても、誰かの為に一所懸命に行動出来る人なんだよね、僕も八幡にすっごく助けてもらったからさ、でも今の八幡って何時もと違って何か変だったよね…。」
この場所から離れて行くヒッキーの姿を見つめながら彩ちゃんが、心配そうな感じでそう言う、それはあたしも同じ気持ちなんだ。
入学式の日にあたしとサブレを助けてくれた命の恩人、ちょっと目つきは怖めだけど、あたしの知ってる中で誰よりも優しくて強い人だもん。
「平気ですよ戸塚さん、お兄ちゃんのアレはあからさまな照れ隠しですから、だってジョーお兄ちゃんがいきなり昔の自分の話をし始めたから、多分いたたまれ無ぇ〜とかって思って頭を冷しに行ってんですよ、それとお兄ちゃん留美ちゃんの事助けたいって思っているんだろうけど、良いアイデアが浮かばなくてチョット苛ついてるんですよ。」
彩ちゃんの疑問に小町ちゃんが、答えてくれた…ってか、ヒガシさんが言ってた小僧ってやっぱヒッキーの事だったんだ!
「ちょっ…ヒガシさんが言ってた子供ってヒキオの事なん!?」
アハハ、あたしが声に出す前に優美子が言っちゃったよ、あたし達は車の中でちょっとだけヒッキーとヒガシさん達との関係がどんなものか聞いたけど、優美子達は聞いて無かったもんね。
虐めに遭っていたヒッキーをテリー・ボガードさんが助けて、それから格闘技を教わって…そのテリーさんの弟さんで舞さんの旦那さんのアンディさんとヒガシさん、それからあたし達と同い年の男の子ロック君。
そんな素敵な人達と出会えたから、一緒に頑張って訓練したから、ヒッキーは強くて優しくてその…えっと、カッコいい男の子になったのかな。
「まぁな、実はそうなんだ。」
あっ、ヒガシさんあっさり認めちゃった…あたしはてっきりヒガシさん誤魔化しちゃうのかなって思ったんだけど、よく考えてみたら、小町ちゃんも居るんだし、舞さんだって居るんだもんね、だったら誤魔化す必要も無いか。
「でもさ、ジョーお兄ちゃん、小町はあの時のテリーお兄ちゃんのあの言葉…今でも忘れないよ、あの時はさ小町はまだ小一だったから完全に理解出来てた訳じゃ無いけど、お兄ちゃんがテリーお兄ちゃんに取られちゃうんじゃないかってさ、すっごく不安だったんだ。」
まだ小っちゃかった小町ちゃんが、テリーさんにヒッキーを取られちゃうって思ったって、どう言う事だろう、舞さんやヒガシさん皆ヒッキーと小町ちゃんとすっごく仲良いのに、昔何があったんだろう皆の間で?
「ちょっとお米ちゃん!ヒガシさんと舞さんも!どう言う事ですか!せんぱいを取られちゃうって、ちゃんと私達にも解る様に説明して下さい!」
いろはちゃん、ちょっと怒ってる…大好きな人が、昔と事って言ってもさ、すっごく辛い思いをしていたかも知れないって思ったら、そんな風に思っちゃってもおかしく無いよね、あたしだって…それにゆきのんだってきっと。
「ヒガシさん、不知火さん、それと小町君…教師としては、必要以上に生徒のプライバシーに深く立ち入るべきでは無いと思いますが、もし差し障りが無いのでしたら聞かせていただけませんか、比企谷と貴方がたとの間にあった事を。」
平塚先生も知りたいと思ってるんだ、先生の場合はヒガシさんの事が好きだからなんだろうかと思わなく無いけど、けどさ平塚先生ってかなり生徒思いの良い先生だとあたしは思うから、今のはホントにヒッキーの事を思いやって言ったんだろうな。
「…まぁ、こうなっちまったらしゃあねえな、小町も舞も構わないよな、話ちまってもよ。」
ヒガシさんの確認に小町ちゃんと舞さんも賛成みたいだ「まぁ小町は最初から殆どそのつもりだったけどね!」とニッコリ笑って言った。
小町ちゃんにとっては、とっくの昔に終わった話で、もう今は思い出になってる事だから平気って事なのかな?
そしてヒガシさんは話し始めた、改めて最初から。
ヒッキーとテリーさん達との出会いの日からの出来事を。
そしてあたしは、ヒガシさんの話から知る事になったんだ…。
それを知って、あたしはいつの間にか涙を流していたみたい、そして…。
「おい、どうしたんだ結衣!?何で泣いてんだよお前、大丈夫なのか?」
ヒガシさんが話終わった頃、ヒッキーはいつの間にか此処に戻って来ていたみたい、あたしの涙を見て心配してくれたんだね。
でもね違うんだよヒッキー、この涙はね…嬉し涙って言うのかな?うん、嬉しくても涙って出ちゃうもんなんだね…。
だって、あたしは!
あっ、でもヒッキーが小学校に上がって直に簡単な料理を作れるようになってたって知って、あたしは地味にショック受けちゃった、あたしなんか一年以上ママに教わっているけど、まだまだゆきのんや小町ちゃん、いろはちゃんには全然叶わないレベルだもんね…。
先週は佐世保のオッサン、風邪っぴきと三ヶ月間の休業からの現場復帰に身体が付いて行けず…何もやる気が起きませんてました。