やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
〜葉山隼人の場合〜
正直…俺はヒガシさんが語る比企谷とヒガシさん始めあの有名なテリー・ボガードさんやアンディ・ボガードさん達との関係を知り、いや…知ってしまった為に自身の思いに揺らぎを感じている。
「…幸い八幡と家族の関係は互いのちょっとした気持ちと、考え方のすれ違いだったってだけだったんだよ。」
「そうね、なまじっか八っちゃんがお兄ちゃん気質を発揮して両親に気を遣い過ぎて上手に甘える事が出来なかったのもあるし、小さいのに身の回りの事を小器用に熟してしまう八っちゃんを見て、安心しきってしまった両親にも問題があったのよね、そして何よりも八っちゃんはこまちゃんが可愛くって仕方が無かったのよね、だから小さいのに頑張って、お兄ちゃんしないといけないと思っていたのよね。」
テリー・ボガードさんは幼かった比企谷と、その家族との関係が改善修復が不可能であったならば、比企谷を自分が引き取り育てるつもりでいたと言う、だけど…養子縁組をするにしても外国人であるテリーさんがそう易々と親権を獲得できる物でも無いだろう。
「そんな事は解ってんだ…あ〜いや、何せテリーだからな、法的な事とかは深く考えちゃいなかったろうなぁ、何せテリーだからなぁ…。」
「そうなのよね、何せお兄ちゃんだからねぇ〜、今にして思うとロックの親権だってよく取れたものよねぇ…。」
それを俺が指摘するとヒガシさんと不知火さんは、呆れたかの様にため息混じりにそう漏らした。
日本とアメリカでは法律も当然違うだろう(しかも国だけで無く州に拠っても違うと聞くし)テリーさんは、その比企谷にとっては同門の兄弟とも言えるだろうロック・ハワードと言う少年の保護者になれた事を不知火さんは、まるで七不思議の一つの様に回想しているし。
ハハハ…テリー・ボガードさんと言う人は一体どんな人なんだ…。
「まぁ親権云々は抜きっ、てか最悪を想定しての事でよ、テリーの奴は本当は信じたかったんだろうな、比企谷家の皆の絆って奴をよ…」
ヒガシさんはそう言って、頭をガリガリと乱雑に掻いた後、比企谷の妹の小町さんへと目を向け、不知火さんもほぼ同じタイミングで隣にいる小町さんの肩を優しく抱いてあげている。
「あの頃の私達は…お兄ちゃんに甘えていたんです、舞お姉ちゃんが言った様にお兄ちゃんが家の中の事殆ど熟せてたから小町の事をイツモ思っていてくれたから…でも、テリーお兄ちゃんとジョーお兄ちゃんとアンディお兄ちゃんと舞お姉ちゃんが、ちゃんと話す機会を作ってくれたから私達家族はちゃんと向き合う事が出来たんです。」
「まぁ、こまちゃんはまだ小学校に上がったばっかだったから難しい話は解らなかったでしょうけどね。」
小町さんが回想を語り不知火さんがそれに付け加える、確かに小学校の低学年児童には話が難しいかも知れないが、彼女は小さいなりに家族に兄に対する想いがあったのだろう…。
その後比企谷達家族の関係は改善が見られ、比企谷と両親は積極的に話をする様になり、比企谷は特に父親の影響を受けて、やたらと昔の古いアニメや漫画、映画やドラマといったメディアに嵌ってしまい、その手のネタを口にする様になったのだそうだ。
「はは〜ん、そうですかそうですか、あのせんぱいの良く分からないネタの出どころろは、お父様だったんですね。」
「おうよ、比企谷の兄貴、八幡と小町の親父はよ所謂オタクって言葉が生まれた辺りの時代のよ、謂わば年季の入ったオタクってヤツだな。」
「そうなんですよ、家にはお父さんが子供の頃から集めてた本とかビデオとかいっぱい有るんですよ、それもビデオだけで二種類も大きさが違うのが有ったりするんですよ、お母さんはどうにか処分したいと思っているんですけど、お父さんとお兄ちゃんが断固反対していて、お母さんに土下座して捨てないで下さいってお願いしてるんですよ。」
「あぁあれな、VHSとβとかって言ってたっけか、俺には大きさ以外に違いは解らんが、VHSは俺が物心ついた時はまだあったかな…と何か話が脱線しちまったな。」
「ほほう、それはそれは、私達の様な人種にとってのお宝が眠っているかも知れないねぇ!?」
タハハ(汗)姫菜、優美子じゃ無いけど自重しような…。
確かに話は脱線してしまったな、でもテリーさん達との出会いと尽力により比企谷とその家族はその絆を確かめ合う事ができたんだな、ならば俺は…。
あの頃、雪乃ちゃ…雪ノ下さんと同級生の女子達との確執を、俺はなんとか治めたいと思い皆の仲を取り持てないかと話し合いの場を…だがそれは結果として雪ノ下さんを追い詰める結果となって、俺は……………。
「…ヒガシさん、なぜテリーさんはそこ迄…比企谷家の為にそこ迄の事が出来たんですか。」
俺は今、心から知りたいと思っているんだ、人を救う為の行動の意味を。
あの日の俺は、何を間違ってしまったのか、そして今も…皆が仲良く笑い合う事が出来ればそれが一番良いと思う、その俺の気持ちは今も変わらない。
だけど、あの件は、その思いによって生まれた綻びだったのだろうか…。
「…俺ぁテリーじゃ無ぇから、アイツの心の内の全部を理解出来てる訳じゃ無ぇがよ、もしかすっと彼奴の生い立ちってヤツが関係してんのかもな。」
ヒガシさんはそう言うと不知火さんに目配せをする様に視線を送り、不知火さんもそれに静かに頷いた。
「テリーとアンディはな、血の繋がった実の兄弟じゃ無ぇんだ。」
ヒガシさんから語られるテリーさんとアンディさんの生立ちは、平和な日本と言う国で育った俺にはあまりにも衝撃的だった。
「物心つくかつかないかって、年頃のガキがよ、実の親に捨てられっちまうんだぜ。」
それだけなら、稀に日本でもある事柄だろう、しかし…。
テリーさんとアンディさんを養子として迎えてくれた格闘家の『ジェフ・ボガード』さん、その人のもとでお二人は幸福と呼べる日々を得る事が出来た。
だけど、その幸福は長くは続かなかった、二人の養父ジェフ・ボガードさんが殺害されてしまったのだ。
「まだ十歳やそこらのガキがだぜ、復讐を誓ってそれぞれの道を歩む事にしたんだよ。」
テリーさんは、養父ジェフさんの師匠でもある『タン・フー・ルー』老師のもとで、アンディさんは不知火舞さんの祖父『不知火半蔵』さんのもとで、それぞれ修行に励み、十余年の歳月を経て遂にその仇を討ったのだそうだ。
その時ヒガシさんはテリーさん達と出会い意気投合、その仇討ちの手伝いを買って出たのだと云う。
「つっても、結局ギースの奴は死んじゃいなかったんだがな、だがよサウスタウンの裏社会を牛耳っていた奴が失脚したお陰で、サウスタウンも少しは風通しが良くなったみたいでよ、テリーの奴はサウスタウンヒーローなんて呼ばれる様になりやがったんだが、アイツにとっちゃそんな肩書きなんざどうでも良いもんだからな。」
仇討ちなど、法治国家である現代社会では、まず思い至ったとてしも、まずそれを行う事など出来ないであろう。
俺も将来は父の後を継いで弁護士への道を進もうと志望している身としては、仇討ちなどと云う行為など辞めさせるべきだと思う…が、もし俺が当時のテリーさん達と出会ったとして、果たして辞めろと言えただろうか。
「ですが、数年の時を経て再びサウスタウンにギース・ハワードは戻って来たのですよねヒガシさん、不知火さん。」
「ええ、秦の秘伝書を巡る騒動の末ギースは、再びサウスタウンのギースタワーに陣取ったわ、そして丁度その頃にテリーは母子二人暮しだったけど、その母親を亡くしてしまったロックと出会い、引き取ったのよ。」
「ロックの身の上に、自分と通じる物を感じたんだろうなテリーの奴は、そしてロックに伝えたかったんだろうよ、格闘の技もだがそれ以外の生きていく上での、人として男としての有り様って奴をよ、それは八幡に対しても言える事なんだろうがよ。」
ロック・ハワード君と比企谷、生い立ち境遇も国籍も違う二人の少年に、何故テリーさんは自らの持つ力を伝えようと思ったのか俺には分からない。
比企谷の中にテリーさんは何を見出したのか、それが解れば俺も…。
「まぁ…俺の場合は、その場は見ちゃいねぇんだが、テリーと八幡に話を聞いてな、喧嘩も出来ねえヤラれてもやり返せなかったガキがよ、自分以外の誰かの為に怒る事が出来る奴だって知ってな、アイツは彼奴なりに小さな勇気って奴を持ち合わせている男だと感じてな、そいつを誰かの為に奮い起こせるんだぜ、勇気って奴はよ教えたからっておいそれと見に付ける事が出来るようなもんじゃねえんだ…そう言う男にはよ、同じ男として何か伝えてやりてぇてよそう思っちまったのさ。」
案外テリーとアンディもそう思ったのかもな…ヒガシさんはそう締め括る。
小さな勇気、話し合いではなく拳を振るう事が勇気なのか…分からない今の俺には。
居たたまれない気持ちを抱いて、皆から一度離れて頭を冷して来たは良いものの、戻ってみれば由比ヶ浜が涙を流していた。
何事だ、何がありましたのん?ジョーあんちゃんと舞姉ちゃんと小町は俺と涙を流す由比ヶ浜を、何だかとっても非っ常〜にキビシイッ!では無く、生温かい眼差しで見てやがる。
もっとも〜っとタケモット、ピアノ売ってちょ〜だい!もっと、も〜っと見てちょうだい、嘘です止めてちょ〜だい!
クッ…思わずてなもんや三度笠っちまってからのタケモトピアノのコンボってか、なんちゅうか本中華、冷やし中華は正に今が旬、良し解った帰ったら食いに行こう勿論トマトは抜いてもらうがな…じゃあねぇよ!一体何だってのさこの状況。
由比ヶ浜は嬉し涙って言ってるけど、果たして喜べる様な出来事が何かあっただろうか?
「おい八幡喜べ!結衣嬢ちゃんがな、あん時の嬢ちゃんだったんだよ!」
はあ?そう言われてもな、あん時のって何?猪木…ってスンマセン何にもおもんないですね。
「んだぁ解かんねえのかよホラあん時だよ、千葉マリンでテリーと京が仕合った日だよ、序に俺達が出会った日でもあるけどよ!」
「ジョーは説明が下手なのよ、話を聞いていない八っちゃんに最初に結論を言っても分かんないでしょうが!」
へっ!ちょっと待て、それってつまりは由比ヶ浜があの時彼処に居たって事だよな。
「ヒッキー、あの時はありがとう…あの時さ、ヒッキーがあたしを転ばない様に支えてくれて、泣き出しそうになってたあたしを助けてくれて…すっごく嬉しかったよ!また遊ぼうねって約束したのにずっと会えなくて、あたしもう会えないのかなって諦めてたんだ、けど…あたし会えてたんだねヒッキー…。」
何ですって…チョット待て、お待ちになってティーチャー!って別に平塚先生を待たせようとは思ってないけど、それを言ったら、ジョーあんちゃんと平塚先生の今後の方がどうなるかだよ。
それより今は由比ヶ浜の事だよな、まさか…マジであの時のあの子が由比ヶ浜だったのかよ。
あの頃学校じゃ男女問わず疎まれて、マトモに相手もしてもらえなかった俺と普通に接してくれた、あの笑顔の可愛い女の子が由比ヶ浜…。
「マジか…結衣があの時の虫歯ちゃんだったのか!」
俺のこの発言に小町が「ズコー」と言ってくれた、流石は世界の…いや俺の妹ちゃんは分かっていらっしゃる。
「もうヒッキーはっ!あの時あたし言ったじゃん虫歯じゃ無いって、ただ歯が生え変わってただけなんだって!」
もう、台無しだよぉ〜…とか由比ヶ浜はテーブルをパンパンと叩きながら不服申立をしていらっしゃるが、俺にその辺のカッコ良さを求められてもな、だって俺は俺であり続けたいそう願った訳でだからさ、だけど幸せのトンボが何処へ飛んで行こうが別に良いんだけどね、だって俺、虫とか超ニガテ(E)だしさ。
でもそうか俺達は、また会えていたんだな…また遊ぼうね…あの子はそう言ったけど、会えるかどうか何て解りゃしないと、内心期待はするなって自分に、あの頃の俺は言い聞かせていたんだよな、だってなあの日俺は最高の兄貴達と姉貴と兄弟に出会えたんだ、それ以上を望むのは…何か贅沢が過ぎるって、ガキながらに思っていたんだよ。
ったく、高々小三のガキが何を思ってたんだろうな、我ながらさ。
「…だからだったのか、入学式の日に触れた結衣の頭に何だか妙な懐かしさを感じたのは…。」
「あっ…うんあたしも思ったよ、ヒッキーがあの子だったら良いなって…。」
由比ヶ浜…お前もそう、思ってたんだな。
「ヒュ〜ヒュ〜!いやぁ舞お姉ちゃん何だか周りの空気がお熱いですね〜!」
「うんうん、ホントにねぇ〜今ならブラックのコーヒーが八っちゃんの好きなマックスコーヒー並の甘さに感じるでしょうネ!」
くっ、身内の女性陣がうざったい件について。
更にはジョーあんちゃんと平塚先生、そしてあーしさんと腐女子さんまでが生温モードに突入してんのか!?
「せんぱいせんぱい!私もです私もあの時居たんですよ、あのステージにほらほら覚えていませんか!?テリーさんが小さなレディって言ってくれた、可愛いいろはちゃんですよ!」
一色の奴が、身を乗り出してアピールして来たが、はてな。
そんな期待に瞳を輝かせても、小さなレディね…。
「ああ!あれだお前ロックに色目使ってたオマセさんかよ、そう言やあの子も亜麻色の髪だったよな!」
ぷふっ…と雪ノ下が暫し黙考して導き出した俺の結論に吹き出してしまい、一色は顔をメッチャ赤く染めてプルプルと震えだし、他の皆の顔にも笑みを抑えているように見える。
「もう!何ですかせんぱいはぁ!確かにあの時は金髪の美少年にときめいちゃいましたし、何だったら今のロックさんも素敵だとは思いますけど、せんぱいだって私の中では相当なレベルの格好いい男子なんですからね、それに今のいろはちゃんはせんぱい一筋なんですから、そんな言い方しなくても良いじゃないですか、結衣先輩との再会の時を思い出したみたくチョッピリロマンチックな要素を加えてやり直して下さい、ごめんなさい!」
イキナリごめんなさいされちまったよ俺…いやいや、さっきも言ったけどね、俺にそんなの求めないで、何なのさロマンチックな要素って、そんなにロマンチックが欲しいならCCBか橋本潮さんにでもお願いしなさいな、きっとロマンチックが止まらなくなるか、ロマンチックあげるよって言ってくれるから。
どうでも良いけど、仮面ライダーエグゼイドってCCBのメンバーの人に見えるよな、俺所見の時思わず言っちゃったもん仮面ライダーCCBってさ。
「…あ〜、何かスマン。」
三十六計じゃ無いが、ココは一つ謝っておこう、なんてったって俺は平和主義者だからな。
「解ってくれたんですね?」
いや、あんまり解ってません、ごめんなさい。
「…むぅ、その顔は今一解ってない顔ですよね。」
うっ!鋭い…まるで砥いだばかりのナイフのエッジの様だぞ一色いろは。
それを以て傷付けられるのは、この俺ルパン三世…では無く比企谷八幡なんですね。
「なのでせんぱいにはペナルティーとして次の日曜に私とデートしてもらいます!」
「なっ!?チョット待てっ!日曜は不味い、だって「プリキュアを観るんですよね!」…あっいや…。」
不味いぞ先読みされた、何なんだコイツは先読みのシャアかよ…考えろ八幡、このピンチを切り抜ける手立てを…。
「…違うぞいろは、いや違わないんだけど、あれだ日本の男の子としては日曜の朝は『ミユキ野球教室』を観なければいけないんだ、知ってるかいろは『ミ〜ユキミユキ服地はミユキ、紳士だったら知っている服地はミユキと知っている』んだ!そして当然真の英国紳士を目指す俺としては、服地はミユキと知っているんだよ!」
「もう!せんぱいは何処のジョースター家の一人息子なんですか、隠れてパイプをふかすんですか、勝てもしないのに女の子の人形を取り返す為に不良に立ち向かうんですか、それって女子としてはとってもときめくシチュエーションですけど、せんぱいが怪我したりする姿を私は見たくはありませんから、少しは自重さてください!」
「…てか俺としてはそのミユキ野球教室ってのに対して、突っ込みたいんだかよ…一体いつの時代の番組よ?」
なんだかんだ、何時ものグダグダな雰囲気になっちまったが、まぁコレで良いのだ。
そして、一人になった時にルミルミの置かれた状況にあれこれ考えてみたが、結局俺に出来る事はあまり無いと言わざるを得ない、だから。
「ジョーあんちゃん、平塚先生…もしかしたらだけど、二人の力を貸を貸してもらう事になるかも知れない…その時はどうかお願いします。」
俺は二人に頭を下げて願った、今はまだどうなるか解らないが、もしもの時は世界的に知名度のあるジョーあんちゃんと小学校の先生に渡りを付けてもらう為に平塚先生に尽力を願わなければならない、それはまだ一介の高校生にどうか出来る事案では無いかも知れないからな。