やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
俺の渡した退学届を手にした平塚先生は、その目を大きく見開いた後、嘆息し俺に確認する。
「…本気なのかね比企谷。」
しっかりと俺の眼を見据えて。
「最悪の場合はと言う事です。」
だから俺も、その平塚先生の目から視線を外さずに答える。
「せんぱい!」「比企谷君!」「ヒッキー!」
一色、雪ノ下、由比ヶ浜、悪いなお前達に何の相談も無くこんな事を決めるなんてな…。
「比企谷、此れは一応私が責任を持って預かっておくがね、はっきり言って此れが必要になる事は無いよ、何故なら君が言う最悪の事態になった時に必要になるのは、私の辞表だからだよ。」
なっ、何を言ってんだよ平塚先生、先生には居てもらわないと駄目なんだよ。
時々授業は熱血漫画の話で脱線する事はあるし結婚したいとかボヤいて俺達生徒を辟易とさせる事もあるけど、話は分かってくれるし、生活指導として生徒からは信頼されてるし、俺がふざけて書いた職場見学の行き先の事だって、立場上叱ってはいたけど、表情は若干笑ってたし、洒落の解る人なんだよな、それに中には先生の事姉貴みたいに思っている奴だって居るんだよ、俺とかさ…それに何より俺達奉仕部の顧問なんだから。
「こういった場合に責任を取らねばならないのは我々教師の、大人の役目だからね、だから君の此れが学校へは提出されないのだよ私の一存でね、この件に君は思うところが多々在り、故に行動を起こそうとしているのだろう、だからね比企谷私達にも君のその思いを支えさせてくれないか。」
平塚先生のその言葉に雪ノ下達も、頷いている。
先生ありがとうございます、そして奉仕部の皆も。
「八っちゃんがやろうとしている事はあの日のテリーと同じ事よね、それをしようと考えているのよね…八っちゃんはあの子に寄り添ってあげようと、そう思っているんでしょう。」
舞姉ちゃん、やっぱり解っちまうんだな、俺に出来る事が何かって考えてみたんだけど、結局は行き着く答えはそれなんだよな。
「え〜と、うん…舞姉ちゃんの言う通りだよ、あの日テリー兄ちゃんが俺を拾ってくれて、皆で俺を鍛えてくれて今の俺が在るんだ。」
「退学ってのは、あくまでも最悪の事態になった時であって、そうで無ければ別に辞める必要は無いんだよ、さっき留美と話をしてさ、アイツ昨日のジョーあんちゃんの言った事を実行したんだってよ、結果は芳しく無かったんだけど…でも留美はそれでも諦めて無いんだ、アイツの心は昔の俺よりもよっぽど強いんだぜ。」
だから、留美の決意の程があれば一見心配は無さそうに見える。
「俺のいじめの時がそうだったんだけど…何度か話した事があると思うけど、最初はごくありふれた嘲笑だの今留美が経験しているみたいな、ハブられたりとかそんなレベルの事だった。
今留美は皆への謝罪を決意実行して、これからもそれを続けるつもりでいるんだけど。」
「それを面白く思わない者が出て来る可能性が、それが留美さんを今の状態に追いやっている子供達である可能性が高いと、留美さんの行動によってその行為がエスカレートしてしまうかも知れ無いと言うのね、比企谷君…。」
ああ、やはり俺と同じで虐め被害に遭った事があるだけに雪ノ下の洞察力は鋭いな。
俺の憂慮しているところは正にそれなんだ、被害者達に対して留美が謝罪をして回るとなれば、それは当然で目立つ行為になる訳で、そうなるとそいつらは、虐めの主犯共は感情的に面白く無いし目障りだと感じるだろう。
そして暴力と言う実力行使った行為に出て来る、いや言葉や態度なんかも、場合によっては十分に暴力足り得るんだけどな、その連中の性質によっては直接的な行動を取るか、或いは陰に籠もって、本人達は表に立たずに、弱い子達を脅して操り暴力を振るわせたりとか。
もっと過激になれば、性的な攻撃さえ厭わなくなるとか、そんな事態だって考えられる。
「留美の謝罪で、少人数でも味方が出来りゃ良かったんだがな、今ん所上手くは行ってない。」
俺の時は、学校にもロックって心強い味方が居てくれた。
テリー兄ちゃんの弟子としては、俺の兄弟子に当たり、当然当時の俺よりも当たり前だが他の同世代の子供と比較しても、ケンカの実力はレベルが違った。
「俺がある程度の力を付けるまでの一年間、小四の夏までロックが何時も俺の側に居てくれた、まぁアイツがいなくなった途端に俺にチョッカイかける奴がまた現れたんだが、その時にはもうソイツ等も俺の相手に成らない程度のレベルになっていたがな…。」
そして小五のクラス替えでも、同じ様な事があって……。
「だから比企谷、君は留美ちゃんに立ち向かえる力を与えようと…そう考えているのか。」
ああそうだな葉山、留美がそれを望めばだけどな。
てか、立ち向かうってか迎撃だなこの場合は…『当方に迎撃の用意あり』ってな、けど本当はそんな事にならないのが一番良いんだよ、葉山お前の言う皆仲良くっての、それが叶うなら其れこそがベストアンサーってヤツだ。
残念ながら俺は、今迄その皆って括りの中に入った事が無いからそんな理想を積極的に求める事なんか出来無いし、そこ迄人を信じられないし、それに届く程に俺の腕は長く無い。
「…凄いんだな君は、俺にはそこ迄の覚悟なんて持つ事は出来無い……。」
「だよなぁ、比企谷君覚悟決め過ぎっしょ〜。」
覚悟とか凄いとか、そんなんじゃ無いんだよ俺的には…昨日留美と連中の様子を目の当たりにして昔の自分を留美に重ね合わせちまって、一人で勝手にイライラして高々一高校生の分際で何とかしてやりたいとか、そんな大それた事を思っちまって、それって多分只の傲慢ってヤツなんじゃないのかって、自分ではそうじゃねぇかと思ってんだけどな。
「ヒキオ、あーしにとって結衣はさダチなんだよね、アンタがガッコやめたらさぁ結衣が悲しむし、あーしとしてはそんな結衣の顔見たくないんだよねぇ、だからさ辞めるとかってあーしが勘弁しないかんね!」
あーしさんは目力込めて俺を見据えて居られる、金髪ドリルのヘアスタイルとか自分の事あーしとか言って、如何にもギャルって感じのキャラなのに、腐女子さんの面倒を甲斐甲斐しくこなしてみたり、今の由比ヶ浜への友情発言とか最近登場初期とキャラ違い過ぎんのとちゃいますか?
「それにあーし最近じゃ雪ノ下さんといろはの事も割と気に入ってるし…。」
マジで戸塚の特訓の時の傲慢系キャラはどこ行ったんだよ、まさか転生系中身入れ替わりでもしたのかよ!?
「比企谷君、私的にはねハヤハチにトツハチにトベハチとをまだ見続けていたいしね、ハァハァ…それにコレからテリハチとアンパチとロクハチとまだまだ私の目を愉しませて欲しいからキミに辞められると困るんだよぉハヒーッ!ブハァッ…。」
「おいコラ!人の兄貴達を変な妄想のオカズにするんじゃねぇ!」
どんだけなんだよこの腐女子は!その鼻血の量パネェなおい、まるでキャプテンサワダの腹切り並に対空に使えそうだな!!
…誰なんでしょうね、キャプテン・サワダって?
「わ〜っ姫菜っ鼻血ぃ、ほらティッシュ!」
けど、ありがとな…あーしさんに腐女子さんは…どうなん?
「八幡っ僕も、僕も八幡に学校辞めてほしく無いよ、八幡と一緒が良いよ!」
戸塚ぁ〜!俺もだよ、俺も戸塚と一緒に青春スクールライフを送りたいゼッ〜トッ!
やっぱ退学は思い留まろうかな、戸塚とのスクールライフを送れるのは後一年半だけなんだし。
「クククッ、おい八幡!俺は安心したぜ、ようやっとお前にも青春ってヤツを一緒にヤレる仲間ってモンが出来たのかも知れねぇなおい!」
トンっと俺のボディへ軽く拳を当ててきた、ツンツン箒頭のオッサン。
ジョーあんちゃんは何歳になっても変わらない、悪ガキの様に笑いながらそう言った。
「お前ぇを、学校辞めさせない為にもコレから俺がやる事ぁ、失敗が許されねぇって事だな。」
「あんちゃん、俺は…ハァ、何か格好が付かなくなっちまったな俺。」
仲間か、そうだな俺にはもう出来ていたんだよな、雪ノ下、由比ヶ浜、一色、戸塚、川崎、あと序に材木座もか…。
平塚先生の交渉により、夕刻に時間をもらい子供達に対してジョーあんちゃんによる、トークショーってのは言い過ぎから…ちょっとした講演ってのも大袈裟だな、まぁトークをカマしてもらうって事だ。
最近はジョーあんちゃんも、講演依頼なんかを積極的に受けているし、それなりに知名度なんかもあったりするしな。
「いやあ、高名なヒガシさんから子供達に語り掛けていただけるなど、とても光栄な事ですよ。」
学年主任の先生?の反応はとても好感触って感じだな、だが…やはりあの先生は、あまり良い顔して無いな。
こりゃあ、あの頃と何にも変わってなさそうだな。
あの当時で教師歴五年目で新しく赴任して来たって言ってたから、今年で教師歴十年目位になるのか、年齢的には舞姉ちゃんと変わらない位だな。
「そう言って頂けるのは、此方こそ光栄なんですけどね、ただもしかすると子供たちにとってはキツイ話になるかも知れないんですよね、それでも構いませんかね?」
「ええ、子供達にとっても他の国、世界を知る良い機会となるかも知れませんし、構いませんよ…ただですねあまり大きな声では言えないのですが、一人少し厄介な方が居ましてね、彼女が変に暴走しなければ良いのですが。」
あぁ、十中八九あの先生の事ですね、分かります、やっぱり変わって無かったんですね。
午前中にキャンプファイヤー用の井桁を組んだ広場に皆集合し、ジョーあんちゃんのトークショー(笑)が始まった。
「よう皆、野外学習はたのしんでいるかぁ!?」
百人近くに及ぶ数の児童を前にジョーあんちゃんが俺達と先生方よりも前へ、生徒達により近い位置から語り掛ける。
『はぁ〜い!楽しいでぇ〜す!』
ジョーあんちゃんの開幕の質問に、児童達は声を揃えたかの様に、ほぼ同時に返事をする。
う〜ん、相も変わらぬ超音波攻撃の炸裂だな、雪ノ下以外の皆はよく平気で居られるもんだよ。
「…雪乃、平気か?昨日もだけどお前本当にちびっ子ボイス苦手なんだな。」
「心配無用と強がりたい所だけれど、流石にこの暑さだし、それにこれだけの数の子供達の音量が加わるのは辛い物があるわね。」
雪ノ下の顔色、マジで若干青白いうえに、避暑地で山の中で標高が多少高くて緑が多いとは言え昨今の猛暑の影響でこの程度の標高じゃ平野部より幾分かマシって程度だし、体力に難のある雪ノ下には辛いだろうな。
「ゆきのん、無理しないでね…。」
「そうですよ雪乃先輩、辛いなら木陰で休みましょう。」
由比ヶ浜と一色も雪ノ下の体調を気遣う、本当に二人共優しい奴だよな。
やっぱり俺達は四人で奉仕部なんだよな、この関係を俺は大切にしていきたいって、マジで思える。
出来る事なら留美にも、こんな風に思える仲間ってヤツを持って欲しい。
「…ありがとう、本当に限界だと感じたらそうさせてもらうわ。」
「馬鹿、お前な…そこは限界だと感じる前で無きゃ意味ねぇだろうが。」
俺達奉仕部ががこんな会話をしている最中も、ジョーあんちゃんのトークは続く、流石に慣れてるなあんちゃんの語りに子供達は時に笑い、時に真剣に聞き入っている。
「はぁ、素敵ですヒガシさん……。」
平塚先生なんて、もうメロメロになってるよ、ジョーあんちゃんコリャもうアンタ先生を嫁にもらうしか無ぇんじゃ。
あ〜でも、先生って料理とか家事全般出来んのかな、俺の中のイメージとしては、かなりがさつ…ハッ!なっ、何だこの強烈な波動は…って平塚先生ですね、あなたまた俺のサイレントヴォイスを感知しましたね。
「時に比企谷。」
「はい、何で御座いましょうか?」
…平塚先生は実に良い笑顔を俺に向けていらっしゃるのだが、のだが、その眼はどう見ても笑顔を作っているお人の物では無い!
「…もし仮にだ、私がヒガシさんの嫁になれたとしたらだが、そうなると君は私にとって謂わば弟の様な存在になるのだな、さすれば私としては姉として礼を失した弟を矯正せねばなるまいな、いやあこれは腕が鳴るな。」
ハハハと笑いながら手指をメキョメキョと鳴らす平塚先生は、職業の選択を間違えているとしか思えません。
もしも先生が格闘家を志していたら、一角の強者になれたやもしれんな。
「お…お手柔らかにお願い致します、姉御…。」
「うむ、任せ給え!」
怖い、チョー怖い!あと怖い…あんちゃん、マジで頼むぜ平塚先生の事。
そんな感じで俺達が、ジョーあんちゃんの後方に居ながら、何とも締まらないやり取りをしている間にも、ジョーあんちゃんは子供達に語り掛ける。
先ずはタイという国の現状、貧困層が多くストリーチルドレンなどが多数存在している事実。
また年端の行かない子供達が、家計の為或いは将来の為ムエタイのリングに上がって、中にはリング禍により命を失う子供が居る現実。
そんな子供達の為にジョーあんちゃんは5年程前からリングにのぼる傍ら、後進の育成を始めた、少しでも不幸な事故で命を失う子供が減る事を願って。
そして、最近自身のジムを開設し本格的に指導者として、また経営者としての道を歩み始めた。
しかし、タイ国内の経済状況も厳しい物がある為ジョーあんちゃんは他国での講演活動や、ギャラや賞金の高い格闘大会へ頻繁に出場している。
まぁ、外貨を稼いでジムの経営を安定させ、門下の子供達に飯を食わせたりする為の資金にしているんだけどな。
また、そうやってジョーあんちゃんが他国へ遠征している時は、あんちゃんの盟友であり、かつてのライバルでもある『ホア・ジャイ』さんが、ジムを預かっているんだ。
俺達と一緒に居る時はバカもやるけどジョーあんちゃんは、マジで尊敬出来る男なんだよ。
「まぁ本当は、国が経済的に豊かになって、貧困層が少なくなれば子供がリングに上がる必要も無くなって、そう言った事故も無くなるんだろうけど、現実は中々思い通りにはならないんだよな。」
ジョーあんちゃんの語るタイ国の現実問題に絶句する子供、嗚咽を漏らす子供と反応は様々だが、多くの子供達に日本と違う他所の国の現実の一端を知る良い機会になっただろう。
「まぁ、暗い話はこの位にして、こっからは俺の武勇伝を皆に聞いてもらう事にするかな!」
と気分を切り替え、お次は自分の生い立ちから格闘家たるを志した理由、タイへ渡りムエタイのチャンプに迄登りつめる迄の道程、やがてそのタイトルを保持しながらもキング・オブ・ファイターズ等の異種格闘技の大会へ積極的に出場。
テリー兄ちゃんとアンディ兄ちゃんの二人との出会い。
その宿敵ギースを打倒する為の助っ人を買って出て二人と友誼を結び。
「そのアメリカのサウスタウンって街を牛耳る悪党に引導を渡す為に、そして俺はテリー達と協力して、街からその悪党を追い出したんだ。」
おお〜っすげぇ…と、子供達は関心の声をあげる者が多々いる。
この位の子供には、ジョーあんちゃんの今の話は一種の英雄譚の様に感じられたのかもな。
だけど…。
「何ですか、なんだかんだと言って結局は暴力ではありませんか、何故暴力を振るう前に対話を以て諭そうとしないのですか、そうすればきっとその方も解ってくれた筈です!」
ハァ、やっぱり来たよこの先生、兎に角暴力は駄目、相手が力で攻めて来ても力で立ち向かうわず話し合いましょう。
貴女は以前から、ずっとそうですよね花月園先生。
「あ〜、そうは言いますけどね先生、だったらアンタがその立場に立ったときにそのセリフを言えますかね。」
「くっ、え、ええ私ならばそうしますとも、私がそうすれば相手はきっと解ってくれます。」
ホント、駄目だこりゃだよこの人は何処迄平和ボケしているつもりなんだよ。
「皆さん騙されてはいけませんよ、格闘家などと言ってはいますが、それは只の暴力至上主義者なのです、暴力は何も生み出さないのです。
この世の中に必要なのは、愛を以て話し合う事です、そうすればこの世に争いは生まれず人は幸せに生きていけるのです。」
「花月園先生落ち着いてください、貴女の言動はあまりにも礼を失していますよ、折角ヒガシさんが好意で子供達に語り掛けてくれていると言うのに、貴女の偏った思想を人に押し付けるのはお止めなさい。」
おお、この学年主任の先生、立派な人だな、亀の甲より年の功ってか、しっかりとした理念を持っている人の様だな。
しかしこの花月園先生、俺が小五の時もこの人は同じ事を言っていた…四年生の時点でクラスには俺に勝てるヤツは誰も居なくなった。
俺が、そして今留美が通うこの学校は三年と五年で二学年毎にクラス替えがあるんだが、その五年次のクラスで再び俺にチョッカイを掛けて来る奴が現れた。
四年まで同じクラスで五年でまた同じクラスになった奴が、新しいクラスで新たにツルみ始めた奴に俺の事を愚痴りでもしたのかも知れない。
俺としては、相手にもならないし適当にあしらっていたんだが、こういう奴の発想ってのは凡そ似て来るんだろうな。
俺に勝てないからって、小町に手を出すと宣いやがった。
またしても、クソッタレ野郎はそんな事をホザくのかよ!
俺は、ソイツの襟首を掴み投げ技をキメた、が普通に投げたら大怪我をさせてしまうから、床に叩きつける前に留めたんだけどな、だから一切の怪我は負わせていない。
厄介な事にその場をこの先生が目撃してしまい、お得意のご講説により俺は責められたんだ。
『私はこの子の将来が末恐ろしい!』
呼び出しに応じた母ちゃんに対して放ったのがそのセリフだ、俺としてはアンタの一方的な思考の方が恐ろしいわ。
「ハァ…メンドくせぇなぁ、じゃあよ先生、アンタこんな平和な日本に留まらずにいっその事、紛争地帯にでも出張って行って、その御大層な理想を語ってきなよ!そこ迄言えるんならよ、アンタが出張れは紛争も戦争も終結させる事が出来るんだろう!?」
そして、やっぱり切れたよジョーあんちゃん。
うん…ムカつくよなこの先生はさ、しかしジョーあんちゃんの言ってる事は正論だよな、本当に会話で全てが丸く治まるんならさ、人類史に戦争なんてなかった筈だからな、しかし現実はそうじゃ無い。
「なっ、なんですか自分が出来もしない事を人にやれだなんて、貴方は何様のつもりなんですか、やはり格闘技などやっている者にろくな者は居ないんです、あの時のあの生徒もそうでした!」
うっわっ!すっげぇ矛盾、自分はその出来やしない不可能事を人に押し付けておいて、いざでは貴女が実行しなさいと言われると逆ギレって…。
ホント何なのこの人、これで良くこれまで教職に着いていられたもんだな、こんなんでも失職しないなんてマジで公務員って勝ち組って言われるだけは有るよな。
そんでもってあの時のあの生徒ってのは百パー俺の事だよな。
そんでやっぱり、なるかもだな、最悪の事態に。
「あ〜と、お久しぶりですね、花月園先生、覚えていらっしゃらないでしょうけど、先生の言うあの生徒です、お陰で
今は総武高校の生徒をやっています。」
皆には悪いけど、格闘家や兄貴を侮辱されて黙っては居られないからな、だからゴメンな皆。
俺は前へと進み出て、帽子を取って名前はまだ名乗ってないけど、名乗りをあげた。
「変わってないですね、その自分の見たい風景以外が見えると途端に機嫌を悪くして誰彼無く突っかかる所。」
学年主任さんに突っかかっていた花月園先生はまだ俺に気が付いていない様だが、自分が侮辱されたとの思ったのだろう。
「何ですか君は、子供が大人の話に割り込むなんて、どう言う教育を受けて来たんですか!?」
「へえ〜、あんちゃんが生徒達へ語り掛けて居た時に割込んで来た人の言葉とはとても思えませんね、いやはや随分と都合の良い思考をしていらっしゃる。」
ハン、と俺はお手上げポーズを取って少し挑発を試みてみた。
っても、俺が言ったことは何ら間違えの無い事実なんだけどな。
「おい、八幡お前。」
「すまん、あんちゃん…。」
俺はこの場へしゃしゃり出て来た事をあんちゃんへ詫び、学年主任の先生へ一礼し。
「花月園先生の事を知っている様ですが、君はどなたですか?」
名乗ろうとしていたんだが、先に学年主任の先生へ質問されてしまった。
「はい名乗り遅れました、俺は比企谷八幡と言います、このジョー・ヒガシの弟子で、小五の時花月園先生のクラスの生徒でした。」
その俺の名乗りに、学年主任の先生は経緯を察してくれた様だ。
おそらくこの先生も当時から在任していたのだろう、けどその時は違う学年の担当だったのだろうな、俺この先生の事知らなかったもんね。
こんなに常識を確りと弁えた先生を知らなかったなんて、どうもすいませんでした。
「…そうですか、君が比企谷君だったのですか、その節は同僚が迷惑をお掛けしました。」
学年主任の先生、高々一高校生俺に対して頭を下げてくれた、それも自分は一切関わっていないにも関わらずだ。
こう言う先生がもっと増えれば、虐めを根絶は出来なくとも、もっと少なく出来るのかも知れないな。
「登戸先生、何故その様な無礼な学生に頭を下げているのですか、下げるべきはその学生でしょう!」
学年主任の先生(登戸先生ってのか)に迄噛み付いてきたよこの人、まるで狂犬だなマジ…。
「黙りなさい花月園先生、貴女は少し頭を冷やすべきです、見てみなさい生徒達のアナタに対する表情を!」
登戸先生が言われる様に児童達の花月園先生を見る眼は、とても冷め切っていて、其処には尊敬の欠片も感じられる物では無かった、寧ろ憐憫さえ含んだ目をしていた。
「あ…あ、あ、嫌、嘘…。」
その表情を見て取った花月園先生は現実を受け入れる事を拒否するかの様にブツブツと呟いている。
登戸先生はその様子に嘆息し、他の先生方に声を掛け、花月園先生はその他の先生方に両脇を抱えられこの場から連れ出されて行ってしまった。
「…とんだ事になってしまいましたがヒガシさん、もし宜しければこのまま話の続きを語ってはいただけないでしょうか、察する処ヒガシさんにも何か思惑があってこの場を設けたのだと思うのですが…。」
鋭いな、登戸先生…こう言う話の解る先生は敵に回したら駄目だよな、そして味方に付ける事が出来れば、これ程心強い人物も居ないだろうな。
「解りました、此方の事情を察していただき感謝します。」
さて、此処から改めて仕切り直しってヤツだな。
ジョーの現状などはオリジナル設定です。
花月園先生には一応モデルと言うか、自身の体験を元にこのエピソードを作りました、ここ迄酷い先生では無かったんですけど、葉山の主張に対するアンチテーゼと言うか、葉山主張の行き着く先が極端になるとこうなるんじゃ無いかと…。