やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
バンバンと俺の肩を春日野先生がにっこにこと楽しそうに叩く、しかし叩かれる俺からしたらたまったモンじゃねえってばよ!
「痛っ、痛いですって春日野先生!マジ勘弁して下さい!!」
やっぱり格闘技経験者なだけあって叩く力が半端じゃ無いんだもん。
もうこれって1秒間に十六発位叩いてんじゃねぇ…て、何処のファミコン名人なんだよ。
「あっ、ごめんごめん比企谷君、いやぁあのリュウさんが認めた少年とまさかこんな所で会えるなんて思っても居なかったからね、ん!?て事は君の言ってた兄貴達って、あの伝説の餓狼と呼ばれるテリー・ボガードさんとアンディ・ボガードさん、そしてジョー・ヒガシさんの事なんだね!」
俺はあの日、リュウさんと仕合ったあの時、確かにテリー兄ちゃん達が俺の師匠だと告げた、春日野先生が其れを知っているって事は…春日野先生は本当にあの日リュウさんが言っていた、リュウさんが会いに来たって人なんだ。
「…まぁ、はいそうっすけど…。」
俺の返事を聞き、春日野は「うんうんそうなんだ、へへへ…。」とそれはもう楽しい物を見つけたと言いたげな表情を浮かべ、そして俺達に意外な提案を提示してみせた。
「二人共今後はこの屋上を利用したい時はまず私の所に来る事、まぁ形だけだけど鍵を渡すからさ、そうすれば許可を得た上での利用になるから問題にはならないよね!尤も実際は鍵も壊れている様な物だから、侵入しようと思えばできるんだろうけどね、それでも許可を得ているかそうでないかは何かあった場合を考えると結果が違ってくるよね。」
それは俺達からするととてもありがたい申し出なんだが、俺には先生の申し出にそこはかとなく不安と言う程では無いが…そうだな、面倒な事が起こりそうな予感がするんだよな。
「でさ、お願いなんだけど…時々で良いから私もご一緒させてくれないかな、いやぁ教職に就いてからすっかり格闘方面と縁が遠くなっちゃってね、身体が鈍っていた所なんだ、だからこんな近くに将来有望そうな子達が居るなんて、もう私の中の格闘家としての血が騒いじゃうってもんだよ!」
…うわぁマジであたっちゃったよ、予感が!先生が昼飯も一緒とかマジ面倒なんですけど、けどさっき見せてくれた春日野先生の波動拳、あれだけの物を身に付けている先生が俺達を監督してくれるってのは、それなりに恩恵もあるかも知れない、そう考えればこの件は受けるべきかもだよなぁ…。
「八幡、我は先生の意見に賛成であるぞ!春日野先生は此処暫く伸び悩んでいた我をほんの数分見ただけで、我が欠点を見抜き飛ばなかった気弾を飛ぶように指導してくだされたのだ。」
「アハハハ…まぁそれは私が火引さんとサイキョー流を知っていたからなんだけどね…。」
う〜ん、まぁ材木座も賛成してるし、時々で良いってんなら俺達の側に不都合は無いしな、そう思えば俺にも否はなしかな。
「はぁ、分かりました…先生の提案を受け入れます、ただですね俺は普段昼休みは部活の仲間達と過ごしていますし、こうやって材木座とトレーニングしてるのは週一位なんですよ、それでも構いませんかね?」
それでも構わないと春日野先生も了承してくれて、此処に春日野先生が俺達のトレーニングに参加する事が賛成多数ってか反対無しで決定された、まぁ俺と材木座の二人だけだし…。
「おっと、もうそろそろ昼休みも終わりだね、そうだ材木座君!」
「はっ!何でありましょうか!?」
「君にその気があるのならさ、波動拳の訓練ちゃんと毎日やるんだよ!それからね、波動拳には更にその先があるからね、今からちょっとだけ見せてあげるよ良い?よく見てお行くんだよ!」
そう前置きをし、春日野先生は再び構えを取った。
材木座に否、俺も含めてだろうがな、波動拳のその先にある物の一端をを見せる為。
春日野先生が構える両の掌の間に淡い光が宿り、それは幾筋ものスパーク光を放ちながら次第に輝きを増す、まるでこの場の大気を震わせるかの様に、ビシビシと音をも発しながらその掌の中に気の塊がやがて球形を成しそして…。
「行くよ、これが……」
「真空ぅ…波動ぉけぇぇん!」
春日野先生の掛け声と共に放たれたそれ、波動拳を超えたその先の技『真空波動拳』…それはあの日見たリュウさんの波動拳をも超えているであろう事がひと目で理解できる。
それはまるで、一度に何発もの波動拳を纏めて放っているかのように(実際そうなのかもだが)見える。
しかも一発一発が波動拳の威力を超えているようにも思えてならない。
あんな物をまともに受けてしまったら一体どうなってしまうんだ…。
「………………。」
「………………。」
俺も材木座もその真空波動拳のあまりのインパクトに暫し言葉を無くし、動く事もままならなくなったかの様に立ち尽くした。
それはまるで、ヒッポリット星人にブロンズ像にされたウルトラ兄弟の如く…は言い過ぎだよな。
「う〜ん…久し振りだからなぁ、まぁこんなトコかな。」
「でも、リュウさんの真空波動拳はまだまだこんな物じゃ無いよ!」
イヤイヤ、先生…こんなトコって、しかもリュウさんも同じ技を使えるってマジですか!?いや違うか、春日野先生がリュウさんの技だった真空波動拳を身に付けたってのが真相だろうな。
「先生はリュウさんの弟子って訳じゃ無いんですよね…それなのにリュウさんの技を使えるんですか…。」
「へ?ああ…うん、まぁそうだね。」
結構呑気な感じで俺の疑問に答える春日野先生だが…だとしたら先生はリュウさんの技を独学で、多分だがそれを何らかの形で見て身に付けたって事なんだよな…。
「先生って…もしかして天才なんですかね……………。」
「もう、大袈裟だよ。」なんて春日野先生は謙遜しているけど、見様見真似で超必殺技レベルの技を身に付けたって人を天才と呼ばずして誰を天才と呼ぼうかだよな…ハハッ…。
「もう昼休みも終わりだから君達も早く教室に戻るんだよ、それから比企谷君今度私と手合わせしてくれるかな。」
うわっ…やっぱり来ましたね、まぁ先生程の人と手合わせ出来るのは俺としても願ったりだけど、果たして今の俺が春日野先生の相手が務まるのか、問題はそこじゃねぇかな。
「とまぁ、こんな感じで春日野先生と出会って材木座も波動拳を割と直ぐに波動拳を身に付ける事が出来て、その後も何度か昼錬に春日野先生も参加してもらう様になったんだが…。」
と、俺は皆に材木座と共に春日野先生との出会いのファーストコンタクトの経緯を話した。
「へぇ、あの春日野先生がねぇ……ねぇ比企谷、アタシも今度アンタ達の昼錬に参加させてよ。」
マジですか川崎さん!?
まぁ川崎なら腕も確かだし、先生と同じ女性だし俺としては良いんじゃないかと思うんだが……。
「ねぇねぇハッチンあたしもハッチン達の練習見学したいな!」
「それ良いですね、私も見てみたいですはちくん達の練習!」
「そうね、私も奉仕部の部長として、また将来を共にする者として是非とも見ておきたいものね。」
はぁ…女性陣全員参加表明ですか、俺としてはまぁ良いんじゃ思うんだがなぁと思うが、如何せん材木座の奴が女子に対して免疫が無いからな、こんなに大勢の、しかも超絶可愛い女子がお仕掛けたら彼奴次こそ本格的にブロンズ像になっちまうんじゃね?
「あぁ、でも材木座の奴がな…取り敢えずは彼奴にも話しておくけど、何せ彼奴は昔の俺以上にコミュ症だからな、特に女子に対しては…。」
俺は結衣達と知り合って付き合っていく内に、コミュ症をかなり克服出来たと思うんだが、材木座の奴はどうだろうかな。
「しっかしよ、伝説の格闘家リュウの技を使う教師にサイキョー流の使い手に極限流の使い手の沙希嬢ちゃん、そして俺達の技を受け継ぐ八幡か、総武高校ってのは一体どうなってんだ八幡、確かかなりの進学校だって話だったよな。」
ん?伝説の格闘家リュウだって、今ジョーあんちゃんそう言ったよな…マジかよ…否、リュウさんって凄えひとだってあの日手合せしてソレは俺にも理解できたし、なんたってケン・マスターズさんとも同門だって言うし…。
「なぁジョーあんちゃんはリュウさんの事なんか知ってんの?」
「あぁん、おう!まぁ直接の面識は無ぇんだがな、結構有名なんだぜリュウって男は、何せあのサガットを倒したって逸話があるしな、でもってそのサガットがムエタイのリングを降りて姿を消したのはリュウとの闘いがあったからだって話なんだよ。」
知って驚く意外な真実とはまさにこの事か、しかも伝説として語られる程の人なんだリュウさん…。
「俺もテリーもいつかリュウと手合わせしてみたいって思っていたんだがよ、まさかお前に先を越されるとは思ってもいなかったぜ八幡。」
「そうね、その話をアンディが知ったら八っちゃんの事をさぞや羨ましがるでしょうね!」
ウチの兄貴達、三人が三人共リュウさんと闘ってみたいと思っているのか、やっぱ凄え人だったんだなリュウさん。
俺もまだまだこれからも鍛えていかなきゃな、いつかまた絶対にリュウさんと手合わせして…そして。
「おっ!良い面構えになってんじゃねぇかよ八幡、お前ぇも一端の格闘家の仲間入りしたって事か。」
「次は絶対に勝ってやるってそんな顔してるわよ、八っちゃん!」
そんなに俺って顔に出るのかよ、はぁこりゃああれだな、俺は賭け事とか向かない人間なのかもな…ドン・ペキンバーにもマイク・ハーパーにも挑めないな。
まぁそれはともかく、ジョーあんちゃんも舞姉ちゃんも少しは俺を一人前と認めてくれたのかな。
「それで八幡師匠…その材木座って人はそれからどうなったの、波動拳って技を覚えたら今迄使ってた技はもう要らなくなったの?」
おっ、留美も材木座に興味を持ったのか…おのれ材木座奴ぇ赦さんぞ!
まぁ嘘だけどね、てか今の留美の言い方からして新しい技を覚えたから古い技はもう要らないからポイって捨てた、みたいに思って切なくなったのか…そんな技にまで思いを寄せるとは、俺の妹分ってば…控えめに言って、すっげぇ良い子だわ!!
「いや…心配しなくていいぞ留美、ちゃんとその辺りの事も説明するからな、そうだな………。」
春日野先生の出会いから翌週、再び舞台は校舎の屋上へと移る……前々から思っているが俺は一体誰に対して説明しているんだろうか…。
「……どうでありましょうか春日野先生、我の波動拳は!?」
「うん、もうバッチリだね、後は実戦で撃つべき時を見誤らない様に経験を積んで行かなきゃだね。」
「はい…………しかしですな…。」
材木座なりに一週間の間波動拳の練習を行って来たんだろう、春日野先生が言う様に材木座は波動拳をそれなりに物に出来ている様に俺にも思える。
その後に続けた材木座のしかしですなって言葉それは何を指しているんだ、何となくだが今の材木座の言葉には何かを憂いているって感じの響きがするんだがな。
「お陰で波動拳を身につける事は出来たが、我としては叔父御に学んだ我道拳を捨て去る事は出来ぬのであります。」
なる程な、確かに波動拳を覚えた今では我道拳はその下位互換位の価値しかなくなってしまう、材木座にとっちゃそれはひどく残念な事に他ならないんだろうな。
「なぁ材木座先週も言ったけどお前の我道拳は連続技に組み込めばそれなりに使えるじゃねぇかよ、遠距離や中間距離では波動拳、近接戦では我道拳って感じに使い分けりゃ良いんじゃね?」
なので俺はそう提案してみたんだが、材木座にはそれがあまりお気に召さないのか、何だか不満げに見える。
「うむ、八幡の言も一理あるとは我も思うのではあるのだが、もっとこうであるな…。」
と本人もその技の有効な使い道に思い至らない様だ、本人のお前が分かんないものが他人の俺にも分かる訳ゃ無ぇだろうがよ。
俺はそう思うんだが、まぁこれ迄の付き合いもあるし、無碍に扱うのも何だしな、少し考えてみるか……。
つか、お前の我道拳が極限流の気弾の様に飛べばこんなに悩む事も無いんだがよとは、言わないのが人情って物かこの場合。
などと俺が思案していると、春日野先生が「そうだ!」と何か閃いた様に声を上げた。
「こう言うのはどうかな、我道拳を気弾として使うんじゃなくって、拳に気を纏ったパンチとして放つってのは!」
!なる程その手が有った、材木座のやる気と鍛錬次第だがそれは案外良いアイデアの様に思えるな。
「材木座、俺も先生のアイデアは凄え良いと思うぞ、謂わば俺のバーンナックルに近い性質の技になるって訳だ。」
凄いな春日野先生、よく其処に行き着いたよな、材木座の恵まれた巨体から繰り出される気を纏ったパンチか、活用法が色々ありそうだぞ。
「ふむ…気を纏ったパンチか…なる程それは良いアイデアであるし、また汎用性も高い様に思えるな!
…そうだ閃いたぞ八幡、先生!気を纏ったパンチとしての生まれ変わった新たな我道拳とその気を纏った拳を加えた新たな晃龍拳、名付けるならばそうであるな『我道晃龍拳』と言うのはどうであろうなかな!?」
早速一つ閃いたか材木座、気を纏ったパンチによる対空迎撃技のアッパーかそれがあれば迂闊に飛び込めなくなってしまうな。
「良いねぇそれ!良し材木座君早速これから練習してみようよ!」
春日野先生も大乗り気で超早でミットを着けて、材木座の練習相手を買って出たし、こりゃ案外早く材木座の奴それをモノにしそうだなぞ、こいつは俺もうかうかしていられないな。
きっと材木座の云う我道晃龍拳なんて完成に至ったら、おそらくは超必殺技レベルの威力の技になる事間違いなしだ。
俺も一刻も早くパワーゲイザーを完成させなきゃならないな。
「でも、まだ夏休みに入る前はその我道晃龍拳ってのは完成に至ってなかったんだけど、それでも多分今頃は案外モノにしているかも知れないんだよ。」
「へぇ、ソイツは夏休み明けが楽しみだね。」
およ…もしかして川崎の中で材木座の株が爆上がりした?
『材木座ホールディングス』上場と共に最高値とか…ある訳ゃ無ぇか。
「おっ!来た来た、コイツが美味えんだよな。」
午後を過ぎて俺達の腹も減ったので、そのまま俺達はパオパオカフェ店内で昼飯をいただく事にした。
流石に大人数でカウンター席を占領し続けるのも悪いのでテーブル席へ移動して食事を摂ることにしたんだが。
「…凄い、美味しそう…。」
「そうでしょう留美ちゃん、本当に美味しいんだから沢山食べるのよ、何せ育ち盛りなんだからね!」
ウェイターさんとウェイトレスさんが運んで来てくれた料理の山を目の当たりにして留美はその分量の多さと美味そうな見た目に圧倒されて舞姉ちゃんが沢山食べる様に勧めるが、このテーブルの料理の大半はジョーあんちゃんの胃袋の中に収まるんだろうな。
「はう、ここのお料理って美味しいからつい沢山食べてしまうんですよね、でも…その後が怖いんですよぉ…。」
「うん、そうなんだよねぇ…後で体重計に乗るのがね…。」
いろはと結衣はどうやら乙女の悩みと真っ向から向き合わなきゃいけないみたいだな、けども俺から言わせて頂くならいろはも結衣も雪乃もそんなに太っちゃいないと思うんだが………ってそんな怖い顔で睨まないで二人共!
「八幡君は分かり易過ぎなのよ。」
「否、今のは俺失礼な事を考えてた訳じゃ無いから!何なら三人共魅力的だと心の中で愛でていただけだからね!」
俺の言い訳ではない本心からの言葉に三人は顔を赤く染め身を捩り始めた。
あるぇ〜俺また何かやらかしちゃいましたかね?
「もう…ハッチンってばぁもう、ほんとうにもうだよ。」
「そ、そうですよいきなりはちくんは心臓に悪すぎですよ!」
「ま、全く二人の言うとおりだわ、八幡君はもっと場という物を考えてから発言するべきだわ。」
解せぬ、俺は三人を褒め称えたつもりなんだが何故…責められているんだろうか…。
「なぁ舞…何時から俺らの弟分はこんな爆発野郎になっちまったんだ…。」
ジョーあんちゃんのしみじみとした言葉が俺達の耳朶を微かに震わせ、そして他のテーブル席の男性客からの痛い視線が俺を突き刺している様に感じる。
「誠に遺憾に存じます…。」
俺はそれを言うだけで精一杯です、別に世の中が間違っているとか思わないけどね。
密林でポチったスーパーミニプラ、コンバトラーVとクロスフレームガール、ガオガイガーが届きました。
我道晃龍拳の元ネタはテレビアニメ「ストリートファイターⅡV」に於いてケンが使用した波動昇竜拳です。