やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
「…はぁ、かっこいい……。」
ガルシア師範を一目見たあーしさんは少しうっとりとした表情でぽそりとそう漏らした、その声に周りの女性陣を見てみると、舞姉ちゃんと留美とサキサキ以外の女子達もまたガルシア師範の男っぷりにトキメキを感じている様だ。
うん、ガルシア師範ってマジで所謂イケオジってかダンディっ言葉はこの人の事を表してるんだな感じだもんな。
あっ、因みに今現在サキサキは椅子から立ち上がりガルシア師範の事を心底驚いたって感じの顔して見ていたりする。
いやさまさか、本当にまさかだよ…今俺の、いや俺達の目の前に立つ人物こそは、俺の兄貴達よりも前の時代にサウスタウンに伝説を残した極限流が誇る二人の格闘家、無敵の龍と最強の虎。
その片翼たる最強の虎ことロバート・ガルシア師範、今まさにその人がこのパオパオカフェ日本一号店に現れたんだ。
いや全くこれはどういう事なんだよ、その極限流の創始者である、タクマ・サカザキさんがここに居るってだけでも驚くべき事態だってのに、そこへ更にガルシア師範までって……。
「おっ、押忍ロバート師匠、お久しぶりです!」
驚愕の表情を押し殺し川崎は姿勢を正しガルシア師範に挨拶をするが、俺にはその川崎が未だかなり緊張している様にじられる。
いやまぁ、俺も実はかなり緊張してんだけどね、だってさあの伝説の最強の虎と極限流空手の開祖が目の前に居るんだよ、サカザキ前総帥だけでも興奮と緊張で変なテンションになりそうなのに、更に加えてガルシア師範の登場だからな、一体俺ってこれからどうなるのよ…いやマジで。
「おう沙希そう固くなんなや、けど元気そうで何よりや…しかし何やこの一団はエラいべっぴんさんとカワイコちゃんばかりやないか、まぁ若い子らは沙希の友達なんやろけど、しかしそこに元ムエタイチャンプと不知火のくノ一が混じっとるなんてなこら一体どう云う事ですのん、なあユリちゃんに師匠!?」
おお…ガルシア師範、ジョーあんちゃんと舞姉ちゃんの事をちゃんと知っていらっしゃる、何時だったかな格闘技の大会なんかで互いに顔を会わせる機会がこれまで無かったのが残念だって兄貴達も言ってたし、俺もそう思ってた(だって見たいだろ、伝説の餓狼と無敵の龍と最強の虎の仕合いとかさ)それがまさか今日、此処でこんなふうに邂逅を果たすなんて人生何が起こるか分かったもんじゃないな、まぁ此処にテリー兄ちゃんとアンディ兄ちゃんが居ないのが残念だけどな。
「おいおい最強の虎さんよぉ、アンタだってパオパオカフェってトコがどんな店なのか知らない訳じゃ無いんだろうがよ!?」
なんて俺が感慨にふけっていたら、ジョーあんちゃんがガルシア師範の言に対して挑発的反応をしてるし、いや全く何でこう俺の兄貴達は喧嘩っ早いのさ、アンディ兄ちゃんは二人と比べればそうでも無いけど…。
「ん、おうそら当然知っとんで、此処はカフェでありレストランや飲んで食って会話を楽しむ処や、ほんでまぁ格闘も楽しめるんやけどな。」
それに比べてガルシア師範は飄々とした軽い感じでいなす様に受け答えた、流石に対応が大人だよな…うん。
「チッ……。」
………ハァ、本当にさぁウチの兄貴分と来たら、しょうが無ぇんだからさ。
頼むからさ喧嘩とか止めてくれよな、こんな公衆の面前でさ、まぁ喧嘩じゃ無くて二人が正式に仕合うってのなら俺としても…それは是非とも見たいけどさ!
けどまぁしゃあなしだな、ここは一つ俺が…ってかヤバっ、そう言えば俺達って!
「あっ、あのですね、そう言えば俺達まだ極限流の皆さんに名乗っていませんでしたよね、何か礼を失したみたいで本当にすみませんでした。」
俺は立ち上がり、極限流の御三方に詫びを入れた、全く俺達ってばどうかしてたよ、挨拶これ大事!
「今更かもですけど名乗らせて頂きます、俺は比企谷八幡と言いましてサキ…川崎とは高校の同級生で同じクラスに所属しています、それからここに居るジョーあん…ジョー・ヒガシは俺にとって兄貴同然の人で俺はこの人からムエタイを学んでいます。
それから不知火舞さんも姉同然の人でして、此処には居ませんけど俺の妹が不知火流の手解きを受けていまして、なんと言うか俺にとっては二人共家族同然の人達なんです。」
とまぁ何とか挨拶は出来たんだけどもさ、皆さんの反応は如何なものかな。
「うむ、丁寧な挨拶痛み入る、では改めてわしも名乗り直そう…。」
ふぃ〜っ、よ、良かったぁ、サカザキ前総帥が俺の名乗りに返礼を返してくれたお陰で何とかこの場は収集が付きそうだ、本当に感謝ですサカザキ前総帥。
それを期にこの場の皆が改めて名乗り挨拶を交わし場は何とか穏やかなものとなり、俺としてもほっと一息ってところだな。
「……と言う訳で沙希坊と大志坊が我が極限流に入門して来てな、ワシは甲斐甲斐しく弟の世話を焼く幼い姉と、その姉の言う事を聞き分け良く聞く幼い弟の姿に、我が子らの幼い頃の姿を重ねてしまったと言う訳なのじゃ。」
互いの紹介を終え、俺達はサカザキ前総帥から川崎姉弟との出会いの経緯をお聞きしている、サキサキさん貴女昔から弟大好きブラコン姉ちゃんだったのね。
以前聞いた事があるんだが、サカザキ前総帥は若くして事故で奥さんを亡くされ、その事故に裏社会が関わっていたらしく…それは強大な力を持つサカザキ前総帥を自陣に取り込むべく起こされた陰謀だったらしいんだが。
サカザキ前総帥は自身と家族を巻き込んだ犯人を追うべく、残された家族であるまだ幼いサカザキ総帥とユリさんを残し旅立ったのだそうな。
けど…よくよく考えると年端も行かない子供を残して姿を消すとかトンデモナイ親父だよな…………。
まぁ、それは敢えて口に出すまい、だって怖いじゃん、とても七十歳を超えているなんて思えない貫禄してるし。
「ほう、そんで創設者自ら沙希嬢ちゃんの指導を買って出たって訳かよ。
しかし其処は流石と俺も言わざるを得ねぇな、実際沙希嬢ちゃんの実力は大したもんだ、あんた達の指導と沙希嬢ちゃん自身の精進、それから嬢ちゃんの才能ってヤツが見事にマッチしたって事だろうからな…。」
サカザキ前総帥とジョーあんちゃんの自分に対する高評価発言を聞く川崎は、恥ずかしいんだろうな、顔が真っ赤になってるよ。
その気持ち良く判るぞ川崎、俺も千葉村で同じ様な事を経験して凄え痛たまれない気持ちになったからな。
「うむ、指導を始めて直ぐにわしは沙希坊に才能を見出した訳なのじゃが、その才は拳撃よりも蹴りを主体とするスタイルこそが沙希坊には合うであろうと解ってな、其処でわしはロバートをイタリアから呼び沙希坊の指導に当たらせたと言う訳じゃ。」
なる程な、そう言う経緯を経て川崎はガルシア師範の技をメインとして学んだって訳か、しかもそれに加えて極限流の創始者の教えもか、なんて贅沢なんだよサキサキさん。
「とは言うても俺は基本的に家業とイタリア支部の運営を任されとるさかい此方に常駐出来へんからな、日本とイタリアを行ったり来たりやったんや、せやから沙希が強うなれたんは師匠のお力と沙希自身の努力の賜物でもあるんや。」
うん、そうでしょうね…サキサキって一見すると昔のスケバンみたいな雰囲気してるけどさ、言うなれば初代『3年B組金八先生』の三原じ○ん子さんみたいな感じか、或いは映画『ビー・バップ・ハイスクール』の宮崎○純さんとか、でもな実はサキサキは根が凄い真面目なヤツだからな、しかしそれが行き過ぎてあの深夜帯のバイト事件に繋がってしまった訳なんだけど……ね。
「俺らの事はこの辺にして、後は自分等の事を教えてくれや。」
ガルシア師範の要望により、これから極限流の皆さんへ俺達の事を語る事と相成った。
「しかし自分どえらいなぁ、女の子三人といい関係になるなんて、しかも三人が三人共えらい可愛こちゃんとはなぁ、ほんま大したもんやで自分。」
ガルシア師範が俺といろは、結衣、雪乃の三人との関係を知ってその様に弄っているのは、いろはのやつが『私は一色いろはと言いまして、このはちくん、あっはちくんと言うのは比企谷八幡さんの事です、そのはちくんの婚約者ですよろしくお願いします。』なんて真っ先に自己紹介してくれやがった為で、それに続いて結衣と、雪乃も負けじと自分達も俺の婚約者だと宣言してくれまして…お陰で俺は皆様にそれを肴に弄くられているわけですハイ。
「そうなんですよ、ハッチンは凄いんです、初めて会った時なんてアタシがサブレのリードを離しちゃって、サブレが道路に飛び出しちゃって、そこに通り掛かったハッチンが走っていって助けてくれたんですよ、ハッチンあの時すごいカッコよかったなぁ…。」
あ〜っ、もしもし結衣さん、君がニコニコ笑顔で嬉しそうに褒めてくれえいるのは、こちらとしてもまぁ嬉しいんですけどね、知らない人にサブレとか言っても解らないだろうし、走っていって助けたって言っても、きちんと状況とか伝わっていないんじゃないかと思うんですけど。
「結衣さんそれでは皆さんに伝わらないわよ、全く…貴女は学力は向上している筈なのにそういった所は以前とあまり変わらないのね…はぁ。」
雪乃が結衣の要領を得ない説明に嘆息し、改めて皆に俺達の出会い、その馴れ初めに付いて語ってくれた。
「ほう、なる程なムエタイチャンプに鍛えられた力を使こてこの桃髪の娘のワンコを助けたってか、そらこの娘からしたら白馬の王子様が颯爽と現れて家族を助けてくれた様なもんやんけ、自分八幡やったか!?なかなかイカス事やるやないか!」
「うむ、咄嗟の事態に対してその様に動けたと言う事は、普段から確りと鍛錬に励んでいたと言う証、八幡少年よお主は師の教えを決して疎かにせず精進を続けているのだな。」
「うんうん、八幡くんが将来ムエタイのチャンピオンの座に輝く時が楽しみだわ。」
うわっ、何かめっちゃめちゃ嬉しいんですけど!極限流の皆さんからこんなに評価していただけるなんて、何ともこれは光栄の極みってヤツ!?
だけど皆さん一つ勘違いしていらっしゃるんだよな、それは。
「あ〜なんだ、こいつは別にムエタイの選手って訳じゃ無ぇんだよ、何故ならコイツに技を仕込んだのはな俺だけじゃ無いからな。」
ジョーあんちゃんはぶっきらぼうな調子で極限流の皆さんへ、俺に代わってその勘違いを正そうとしてくれた。
その言葉を聞いた極限流の皆さんは、当然ながらどういう事だと訝しむ様な顔でジョーあんちゃんと俺を交互に見ていらっしゃる。
「…あんたらも名前位は聞いた事があると思うけどよ、コイツに技を仕込んだのは俺とテリーとアンディの二人、ボガード兄弟もだ。
つうか、コイツのスタイルの基本形はテリーの技だから言うなれば総合格闘ってところか。」
ジョーあんちゃんの言葉を聞いた極限流の皆さんの顔に浮かんだ表情は驚愕…と言うのは大袈裟か、まぁ精々いいところ『えっ…マジ!?ちょっと意外なんですけど!』位だな。
「…そらほんまかいな、噂に聞く伝説の餓狼テリー・ボガードとアンディ・ボガード、そんであんさんジョー・ヒガシの三人が師匠って、こらまたどえらい豪勢やなぁ、まるでてんこ盛りやないか、イヤイヤこらたまげたわ。」
三人を代表する様にガルシア師範がその様に俺の事を評してくださり、サカザキ前総帥とユリさんもその言葉に『うんむ…』って感じで頷いている。
なんか今の俺の気持ちは『大変恐縮であります!』て気分なんだが、てんこ盛りって表現はちょっと…。
「その話だけ聞くと、皆さんはちくんの事を大した人だと思うかもですけど、はちくんって案外おバカさんな所もあるんですよ。」
極限流の皆さんの中での俺の株価が急上昇してんじゃねってその時に、その株価を下げるべく(なのだろうか?)いろはがいきなりその様に宣いました。
いろはさん、貴方は一体何を目的としてその様な事を仰るのでせうか?
「はぁ、誠に遺憾なのですけど私としてもいろはさんの言を否定する事が適いません……。」
其処へ、いろはの一言で下がった株価を更に下げるべく雪乃からの追撃ちが掛った!?
雪乃さん貴女まで、なして!?
「あはは…はぁ、確かにハッチンってさ何時も何か変なネタ言うよね、ほら千葉村でさヒガシさんが言ってたけど、アレってハッチンのパパの影響なんだってね。」
……結衣さん貴女もですか、そうですか、此処には八幡株を買い支えてくれる出資者は存在しないのですか(泣)
「ああ、そう言や此処でアタシと一緒にヤクザ者を追い払った時もアンタってネタを口走ってたよね、連中に何者かって聞かれた時アタシが極限流空手の川崎沙希って名乗ったら、アンタそれに続けて『同じく伊坂十蔵』って、あれってさアタシは偶々『大江戸捜査網』の再放送を観た事があったから理解出来たけど、てかそれはどうでも良いんだけどさ、アタシはあんな場面であんな事を平然と言うアンタの事さ理解に苦しむよ…。」
サキサキさんが、遂にこの俺にとどめを刺して下さいました。
結局八幡株は再び持ち直す事なく、上場廃止、不渡りを出してしまった様であります。
極限流の皆さんもジョーあんちゃんも俺の事をシラケきった様な目で見ていらっしゃいます。
ジョーあんちゃんなんか『お前ぇは本当にアホだよな』とその目で俺に言っているようだ…。
『八幡です…ここに居る皆の視線が痛くて堪らないとです。』ぐすん。
「八幡師匠、私の時も名前教えてっ言ったら『俺は貧乏旗本の三男坊の徳田新之助だ』って言った…。」
ぐはっ……ルミルミさん貴女の一言が止めの一撃、つか死体蹴りだよね。
「アンタねぇ留美にまでそんな事言ってたのかい、ホントにさぁアンタのそれはある意味病気だよ…はぁ、なんだってアタシはこんなのを……。」
俺は五人の女性に連続して打撃を食らってしまいました…これってアレに通じるんじゃね、一瞬にして五発のパンチを繰り出す志那虎一城の必殺技『スペシャルローリングサンダー』に、違うか、違うよな、向こうはほんの一瞬の間に一人で五発のパンチを繰り出すんだから。
なんて事を連連と考えていたら留美かぽそりと呟いた、それは…。
「昨日調べたら、松○健さんカッコよかった……。」
おおっ!留美さん、貴女結構渋い趣味してますね…いや確かに俺もマツケンさんカッコいいと思うよ、てか昔の時代劇俳優さんて大抵格好良いんだけどさ。
「あっ、でもですね、私ははちくんのそう言うところもひっくるめて、全部大好きなんですけどね!雪乃先輩と結衣先輩はどうなんですか?」
今いろはが言ったそれは、別に取り繕っている訳では無いって事は重々理解している俺ではあるんだが、この数分間でアゲて落してまたアゲてってやられてもさ、ちょっと俺としては素直に喜べないんだよなぁ…。
おにょれぇいろは奴ぇ、雪乃と結衣に振りながらも、俺がいろはの事を見てるの知ってパッチンとあざと可愛いウインクとかキメやがって、今更そんなんやってもなぁ……か、可愛くしかないんだからね!
「あっ、あたしだってそうだよ!だってハッチンはあたしの初恋の人だし、それに人ってさ誰だって欠点とかあるじゃん、あたしなんか出来ない事とか苦手な事いっぱいあるし、けどハッチンはさ色んな事いっぱい知ってて色んな事出来てさ、だからあたしさ凄いなって思うよ…えへへぇ。」
うん、そう言やよくよく考えると結衣はあんまり俺の事を落とす様な発言してなかったよな、もしかして結衣って三人の中じゃ癒やし系枠なのかな…結衣もまた俺に向かって、ウインクじゃ無いけどニッコリ微笑みながら小さく手を振ってる、その動作に連動する様に結衣の持つ豊かなお宝も小さく震えていたりするのに…視線がロックオン…駄目だぞ俺、自重自重!
「…ええ、勿論私もそうよ貴女達二人に負けないくらいに八幡君の存在を誰よりも大切な男性だと、私が生涯寄り添うべきただ一人の人だと確信しているわ八幡君、それに痘痕も笑窪と言う言葉もあるでしょう、私にとっては貴方の欠点さえも笑窪と同義なのよ。」
雪乃って、かなりの毒舌家で俺は、しょっちゅうその口撃に凹まされてんだけど、其れでもその後はなにかとフォローもしてくれるし、特に知識が豊富だから多方面に渡って支えてくれるし、料理は美味いし…俺、完全に胃袋掴まれてるよな。
「フハハハ…」
三人の俺に対する最終的な評価を聞き終えて直ぐに、サカザキ前総帥がさも愉快とばかりに笑い、そして一言こう言った。
「いや此れは愉快だな八幡少年、英雄色を好むとも言うが、フハハッ…どうだな八幡少年、我が極限流の門下とならんかね!?」
と………。
極限流の御三方の口調が難しいです。