やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
年末のデスドライブが始まりました。
家に帰って飯風呂、寝て、また出勤彼は願い出、彼等は語る。。
さてと、サカザキ前総帥もどうやら俺の極限流への勧誘も諦めてくれた様で、めでたしめでたしだな。
あとは一応極限流の皆さんにも、留美の事を伝えておかなきゃだよな。
そうと決まれば早めに…と、思っていたところ不意に、まぁ俺視点から見ての不意になんだが、ガルシア師範が唐突に笑い出した、そして。
「いやスマンすまん、まさかこないな結果になるとは思わんかったわ…しかしな八幡、そう呼ばせてもろてもかめへんよな。」
「あっ、はいっす……。」
うわぁ、マジでかよ!?あの最強の虎に俺の名前を呼んでもらえるなんて…やっべぇ『めっちょ』嬉しいんですけど。
「ホンマに俺はお前の事が気に入ったわ八幡、ええやないか!兄弟分と家族との絆とかめっちゃ浪花節やないか、なぁムエタイチャンプ、アンタらホンマにええ弟分育てたな、噂に聞いとった伝説の餓狼達はどうやら一格闘家としてだけやのうて、指導者としてもかなりのモンみたいやな、それとそっちの不知火のくノ一の姐さんもやろ、技とかの事は知らんけど、姐さんも八幡の事をよう可愛がって面倒見てたんやろ、せやからウチの沙希にも気に入られる様な男になったんやろうな。」
しかも俺の事を気に入ってたって仰ってくださった上に、俺を鍛えてくれた兄貴達の事も高く評価して頂けた様だな、うんそれもまた嬉しいな、テリー兄ちゃんは俺とロックを、アンディ兄ちゃんと舞姉ちゃんも同じく北斗丸始め道場の門下生の人達を、ジョーあんちゃんだってそうだよな、ジムをやって後進育成にも携わってんだから当然だな。
「へっ、俺達ゃコイツにずっと付きっきりで見てやってた訳じゃ無ぇからな、そりゃあある程度の事は教えちゃやったがよ、だからコイツは俺達が居ない時ゃあそいつを元に、後は自分で毎日欠かさずに鍛錬を続けてきてたんだよ、まぁだからな、コイツは俺達に育てられただけじゃ無くてな、勝手に自分で育って行った部分が割と多いんだよ。」
ガルシア師範のお言葉にジョーあんちゃんは何だかわざとぶっきらぼうな感じで返事を返したけど、その顔には嬉しさの成分が見て取れるんだよなぁ…ハハッおやおや、なんか照れておられますなジョーあんちゃん、そりゃやっぱあんちゃんだって最強の虎に褒められて悪い気分じゃないんだよな、しかしオッサンのツンデレとか誰得なんだよ。」
「あぁん、おいコラ八幡!誰がツンデレで誰がオッサンだぁこのヤロー!」
おっと、俺とした事がまたしてもお口のチャックが緩んでいたようだ、全く仕事しろよな『スティッキー・フィンガーズ』つか此処で俺がアンタだろアンタ、なんて反論でもしようものならジョーあんちゃんの事だからきっと更に噛み付いて来るだろうから、此処は一つ誤魔化しておこう……。
『ピュー、ひゅ…ピュヒュ〜♪』
パオパオカフェ店内の俺達が陣取ったテーブル周辺に俺が吹く口笛の音が優しく響いていく。
心なしか口笛を吹く俺を見る皆の目がちょっとだけ冷たい様な気がするのは、うん気のせいだね!
「オイ、まともに吹けもしねぇ口笛なんかで誤魔化すんじゃねぇ!」
なん…だって…俺が口笛を吹けていないだって、それじゃあ俺は空き地へ行けないじゃないかよ、空き地へ行ったら知らない子がやって来て遊ばないかと笑って言ってくれないじゃないかよ…いやいきなり知らない奴に遊ばないかとか言われてもさ、やっぱり訝しさのほうが先行しちゃうから早々と『おう、良いよ遊ぼうぜ!』なんて承諾できないよな、それに元ボッチの俺にそれはハードルが高過ぎるし。
まぁ良いか別にさ、しかしどうやら俺は『ピューと吹くハチマン』にはなれそうに無い様だな、残念ながら。
「まぁ、これ以上話が脱線するのも何だからさジョーあんちゃん、これ位にしとこうぜ。」
「脱線させてる張本人が言ってんじゃ無ぇってんだよ!しかしまぁヘタに何か突っ込んじまうとお前ぇをツケ上がらせるだけだからな、この辺にしといてやるぜ。」
おう…流石に解っていらっしゃるな、ってかツケ上がるとか言うの止めてよねマジで、俺はツケ上がったりなんかしませんからね、多分いや絶対…目指すべき目標を見失わない限り絶対な、あと守るべき大切なもの達がある限りはな。
てゆうか、さっさと本題を話してしまわなきゃだろうがよ、俺のバカ。
サカザキ前総帥はじめ今目の前に居る極限流の御三方に対し改めて神妙な面持ちで以て俺は相対する。
「…あのですねサカザキ前総帥、ガルシア師範、ユリさん、俺は今日から此処に居るこの娘に、留美に格闘技の手解きを始めたんですけどっすね、正直に言ってまだまだ半人前の俺が人に指導するなんて早すぎると言いますか、身の程知らずと言われても否定出来ないんでしょうけど、けど約束もしてしまいましたからそれを反故にも出来ません、でも俺じゃまだ力不足って事も理解しています。
それでですね、俺と一緒に川崎にも留美の指導を頼んだんですよ、なので留美に極限流の技と精神も伝える事になると思いますけど…なんと言うかこんな事後承諾みたいになってしまいますけど、許可していただけないでしょうか、どうかお願いします!」
俺は立ち上がり、極限流の御三方に対して腰を折り深くお辞儀をした。
サカザキ前総帥の勧誘を断っておきながら、自らはその極限流に属する川崎の好意を頼って留美に対する指導の協力を要請しているんだから、見ようによってはそれは他流派の技を盗む行為と見做される可能性だってあんるだ、相手によっちゃそれを否とする可能性が高い。
「…お、お願いします。」
俺は頭を下げた体勢からその声を聞いてしまった、それは紛れもなく留美の声帯から発せられた言葉である事が直ぐに理解出来た。
俺はその声に、はっとして思わず腰を折ったまま留美の方を見やると、留美もまた俺と同じ様に立ち上がり頭を下げていた……情けねえな俺ってさ、俺を信じてくれてその俺と同じ格闘の道を歩む事を選んでくれた小さな女の子にこんな風に、頭を下げさせる事になるなんて。
「…留美、お前までそんな事……。」
この状況、俺は留美に対してそう一言呟くしか出来なかった、ごめんな留美、俺が不甲斐ないばかりにお前にまでこんな事を…。
「私が望んだ事を八幡師匠は叶えてくれたから……。」
そんな事を留美は言ってくれた、本当にいい子だよお前は、小町と戸塚に続く第三の天使だよな、うん。
俺は留美のその一言に何も言わず、ただ静かに頷いた、ありがとうな留美これからも一緒に頑張ろうな。
心中改めて決意した俺と留美は再度極限流の御三方に頭を下げた。
だがそれは…それだけで終わりじゃなかった。
「ご隠居、ロバート師匠、比企谷に頼まれたからって事もありますけど、アタシ自身も留美を鍛えてやりたいと思ってます、留美にはどこかアタシと近しい何かを感じるからってのもありますけど、留美の母親の鶴見先生には個人的にお世話になっているから、その恩返しって程じゃないけどアタシに出来る事があるなら協力したいんです、だからアタシからもお願いします。」
川崎もまた立ち上がると己の師に対して願い出、そして深く頭を下げた。
川崎…すまない、俺がお前に話を持ちかけてしまったばかりに………。
「川崎…お前まで……。」
「言っただろう比企谷、アタシは個人的にも何かと鶴見先生にはアドバイスをしてもらっているってさ、だからね。」
『すまん』と、俺は川崎と留美に目礼を以て謝した、やっぱり川崎っていい奴なんだよな。
前に大志の奴が言ってたっけ、川崎は共働きで何かと忙しい両親に代わって下の弟や妹の面倒を見ているって、そしてそれはずっと前からだったんだろう、優しいヤツなんだよな本質的に。
そう、きっと川崎と大志が極限流の門下となる前から、そしてそんな姿をサカザキ前総帥は見て二人の事を。
「フハハ、ハーハッハッハー!、イヤイヤもう良い三人共顔を上げなさい。」
俺達を見かねたのか、それとも呆れたのか…いや呆れたって訳じゃ無いよな。
サカザキ前総帥はさも愉快そうに笑声をあげてその様に促してくれて、俺達はそれを受け顔を上げると、サカザキ前総帥始め極限流の御三方皆その顔には負の感情など一切無い、とても良い笑みがあった。
「…あ、あの…!?」
「うむ、別段我らが反対する理由も無いのだ、気兼ねなくやると良い!」
へ!?でも…本当に反対しないの、なんかさこう『流派の秘伝を漏らすでないぞ!』的な事とかさ…そう思った俺は御三方にそう質問してみたんだが。
「ハハハッ、そんなん今更やで八幡、俺らの極限流は師匠が創設してからそれなりに時も過ぎてんねんで、その間に俺やリョウを含む多くの門弟が彼方此方の大会に出とんのお前かて知っとるやろうが。」
「そうだよ八幡くん、それに私だって若い頃はそれなりに大会にも参加してたしね、お店に行けばさそんな試合の記録映像なんかも売ってるし、ネットに動画とかもアゲられてるからね、今更今更っちよ!」
はぁ、確かにその通りかも知れませんけどですね、とはいってもその流派のトップにいらっしゃるであろう人達がですよ、そうあっさりと…いや勿論俺的にはとてもありがたいんですけど。
「それにな八幡、俺は何やこうおもろい事になりそうな気がすんねん。
俺らの極限流と伝説の餓狼達の技の双方を学ぶ者とか、それが将来どないなるかホンマ楽しみやないか!」
「うむ、ロバートの言うとおりだ八幡少年、わしも同様其処に興味がある。」
「それにさ八幡くん、もしかすると君も知ってるかも知れないけど、ロバートさんと私はお父さんに教わった極限流の技に独自のアレンジを加えてるんだよ、勿論アレンジを加える為には基礎を確りと学んでこそなんだけどね。
だからさ、技なんてものは人や時と共に変化する物なんだって思えば良いんだよ。」
極限流の御三方からの思わぬ好感触に若干ながらホッとしている俺が居る、んだけど…本当に良いのかなぁ。
まぁ確かにユリさんが言うとおり、俺も兄貴達に教わった技の幾つかに多少のアレンジを加えたりしている、それは基本をきちんと学んだからこそ出来たんだって事も解っているんだけど。
「おい八幡、極限流のオッサン達も構わねえって言ってんだからよ、其処は素直に受け取っとけよ。」
俺が逡巡しているのを見かねてか、ジョーあんちゃんがそう促すんだが、イヤイヤ初対面の人をオッサン呼ばわりとかヤバイんちゃいまっか、おっとガルシア師範の口調が移っちまったぜ。
「せやせや、ムエタイチャンプの言う通りや、って誰がオッサンやねん!」
おお!本場関西の突っ込みが炸裂したぜ、てゆうかガルシア師範って確かイタリアの人だったよね、それが何で関西弁なんだろうな、今更ながらの疑問だけどさ。
極限流空手創始者からの許可をいただき、これで俺と川崎による留美への指導は誰に気兼ねする必要も無く行えると言うものだ、それはさておきそう言えば何でサカザキ前総帥達、極限流の御三方は日本に、更に言えば何故このパオパオカフェに来たんだろうか。
『今更ながらの疑問PART2』それを聞いといた方が良いのではないだろうか、まぁ言ってしまえば『あっしには関わりの無いこって』なんだけど、極限流門下の川崎には関係して来る事柄かもだからさ。
「あの、お聞きするのが遅くなりましたけどご隠居達は今回どうして日本に来られたんですか。」
あっやはり聞いちゃうんですね川崎さん、そりゃそうだよな、極限流に関しては部外者である俺でさえ気になっている事なんだから、ただでさえ好奇心の塊の様な千反田……イカン何かいつの間にか別の作品の別の人物について語ろうとしていたわ、気をつけないとな。
極限流門下の川崎ならば尚の事気になるだろう。
「それな、最初俺とユリちゃんは師匠から連絡を受けたんや、沙希に会いに日本へ行くぞってな。」
「そうそう、そうなんだよね、だから先ずはその辺りの事をお父さんが皆に話してよ。」
なる程今回の御三方の来日はサカザキ前総帥が言い出した事なんだ、けどただ単に川崎に会う為だけに極限流一門の首脳部の人達が来るわけ無いよな、その他にも何か理由があるんだろうな。
「うむ、一月程前の事なのだがな、皆知っての通りわしは隠居の身故に暇を持て余しておってな、その様な訳でわしはサウスタウンのパオパオカフェへと赴いたのだ。
サウスタウンのパオパオカフェはなんと言っても格闘技のメッカ故に新たな若く威勢の良い格闘家や、噂に聞く伝説の餓狼テリー・ボガードとも会えるのではないかと思っておったのだかそれは叶わなかった、ジェフの倅がどれ程の漢か知りたかったのだが残念だ。」
へぇ、サカザキ前総帥がねえ…けど残念だなテリー兄ちゃんとは会えなかったのか、もし二人が会ったらどうなっていたんだろうな、流石にサカザキ前総帥は七十歳を越えてんだから、仕合うとかって事は無いだろうけど。
てか、サカザキ前総帥はテリー兄ちゃんとアンディ兄ちゃんの親父さんとお知り合いだったのか……。
「テリー・ボガードには会えなかったのだがな、其処でわしは店のオーナーであるリチャード・マイヤ殿と出会ったのだ。
其処でリチャード殿が教えてくれたのだ、この日本に新たにパオパオカフェを開店させた事、そして其処に極限流の使い手の娘がアルバイトとして勤めていることをな。」
「ほんで師匠がよくよく話を聞いてみると、それが日本の千葉っちゅう街の事で、そんでその娘っちゅうのが沙希やったって訳なんや。」
なる程、今回の出会いは其処に繋がるんだな、本家本元のパオパオカフェでサカザキ前総帥とマイヤさんが出会い、二人の間で日本の事、極限流の使い手の事なんかが話し合われた結果、サカザキ前総帥としては孫娘の様に思っている川崎の現状を知り会いたくなったと言うことなのね。
その旨俺が確認の為に伺って見たところ「無論それもあるのだがな、実はこれを機に我が極限流の新たな道場をこの街に開設出来ぬかと思っておるのだ、この街には沙希坊と大志坊も居る事でもあるのだしな、近場に道場があれは二人も以前の様に頻繁に顔を出せるであろうと思ったのだ。」とサカザキ前総帥は胸元で腕組みをして頷きながら仰られた、マジで孫の事が可愛くて仕方が無いお祖父ちゃんそのものだな、しかしその為に道場までとはな、まさに『発想のスケールで負けた…。』だな。
「とは言うてもや、まだ何処に出すかとかも決まってへんのや、先ずは物件探しから始めなあかんねんからな。」
でしょうね、取り敢えず思い立ったが吉日って感じで日本に来たはよい物のって事なんですね極限流の皆さん。
「あの、それでしたら私の家が協力出来るかも知れませんけれど、その私の実家が建設会社ですので。」
控え目な声で雪乃が御三方に対し申し出た、そうだった雪乃の実家って建設業を営んであるんだから、その関係で不動産会社との繋がりもあるだろうから、確かにイケるかもな。
「おおっなんと、それは真かね美しいお嬢さん!?」
サカザキ前総帥が喜色を顕に雪乃の言葉に食いついた、そりゃノープランで来たところに建設業社との繫がりが出来る可能性があるとなり、上手く行けば話が早期に纏まるかもだしな。
しかしサカザキ前総帥から見てもやっぱ雪乃って美しいとか思われる程の器量良しなのね。
「はい、もしよろしければこれか家に連絡をとってみましょうか。」
「おお!それは有り難い、お嬢さん是非ともお願いしたい、この通り宜しくお頼みする。」
サカザキ前総帥が年齢を感じさせない如何にも威風堂々した姿勢から、雪乃に対して頭を下げ願い出た。
「はい分かりました、では失礼しますね。」
雪乃が了承してスマートフォンを取り出すと早速とばかりに、おそらくは雪乃ちゃんママに電話連絡を取るつもりなのだろう。
結果、雪乃からの連絡により雪ノ下建設を通す前に、一度極限流の皆さんとお会いしたいとの雪乃の両親からの要望により、明日雪ノ下家へと御三方が訪問する事となったのだった。
「家の両親の我儘の為に皆さんに御足労をお願いする事となってしまい、申し訳ありません。」
雪乃は本当にすまさそうに御三方に頭を下げた、しかし極限流の皆さんにお会いしたいと言い出すとは、もしかして雪乃の両親って格闘技マニアなのか!?
「良いのよ雪乃ちゃん、此方からお願いしたんだし、気にしないでね。」
「そうやで雪乃ちゃん、ホンマにおおきにな、お陰で物件探しで苦労せんと済むかもしれんのやし、ホンマ気にせんといてや。」
ユリさんとガルシア師範が雪乃の事を労い謝し、雪乃もそれを受けお二人に柔らかな笑みをむけた。
「良かったねゆきのん!」
「ですです、雪乃先輩!」
雪乃の両手に結衣といろはが自身の手を添えて優しく雪乃へと微笑む、そんなゆるゆりを始めた三人に、俺はめっちゃ気持ちが和んだ、それは三人の信頼関係の現れだから。
うん、とても良いものであるな『ゆるゆり』は、マ・クベがキシリア様に贈った壺よりも絶対に良いものだぞ、間違い無い。
「うん、良い笑顔だね雪乃ちゃん、結衣ちゃん、いろはちゃん、けど、うぅ〜ん私としては沙希ちゃんを応援しないとだけど、此れは強敵だらけだよ沙希ちゃん!」
「なっ、何言ってるんですかユリさんはもう!アタシは別にそんな事…。」
雪乃達三人を見てユリさんはそう評して、更にサキサキをけしかける様な事を仰られる。
そしてサキサキはユリさんの発言に興奮気味に反論しようとし、トーンダウンしてしまった。
その様子に三人が、川崎に対してまるで警戒をしているかの様な強い眼差しで以て彼女を見つめている。
……そのなんと言いますか、本当なのかね…川崎が俺の事を……。