やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。 作:佐世保の中年ライダー
思わぬ発言とは正に、テリー兄ちゃんがこの時に発した発言で有ろう。
「どう言う意味ですかテリーさん。」
そのテリー兄ちゃんの言葉に、衝撃を受けた両親は恐る恐ると言った感じで、テリー兄ちゃんに問いかける。
「あんた達にハチマンに対する愛情って奴が無かったら、そんな人間の元にハチマンを置いとけないからな、その場合はまぁ、そうしていたって事さ、例えば金で子供を売る様な親だったりとかだったら、今日の試合の賞金全部くれてやってでもそうしたさ。」
「けどまぁ、あんた達には我が子に対する愛情って奴がちゃんと有った、だからもう俺がそれをする必要は無い、だろう親父さんお袋さん。」
「はい。」
テリー兄ちゃんの言葉とそれに続く問に両親は確りと応えた、その答えに皆は納得したとばかりに頷く。
「よっしゃあ!八幡の自宅での環境問題はひとまずコレでヨシだな、あとは夏休み明けの学校問題だ。」
「そこは御両親が、学校に対して行動を起こさないとね。」
「あぁ、なんと言っても兄さんとロックが撮影した映像という何よりの証拠もあるんだ、その子供達には然るべき報いを受けさせなければいけない。」
「それだけじゃあ終わらねぇ、それ以外にも八幡を虐げていた奴も居るんだろからな、そこの対処も確りとやらねぇとな。」
「ええ、その為にも活かさせて貰いますよこの映像、抑止力として確りと役立てます。」
大人達が俺の為の今後の方針を話し合ってくれている、この日最初にテリー兄ちゃんとロックに出会った事で俺の置かれた状況は一変した。
少なくともそれは悪い方向にでは無いだろう、それは今現在の俺の状況に表れているしな。
一通りの話を終えその後始まったのは親睦を兼ねた宴会だ。
夕飯として母ちゃんが作った料理だけでは、皆の分は賄えないので出前を注文し、更にアルコールやジュースなどの買い出しに親父を駆出して、ある程度の物が揃った所で始まったささやかな宴会。
それはとても楽しいひと時だった。
大人達は共に酒を酌み交わし、次第に酔いが回りおかしなテンションになって行き、子供組はそんな大人達を少し呆れながらも笑って見ている。
俺個人としては小町がそれを喜んでくれた事が、堪らなく嬉しかった。
普段は寂しい我が家がこの日は大勢の人で賑わっていて、豪放で気さくな格闘家の兄ちゃんや姉ちゃん達が明るく場を盛り上げる。
そんな皆の周りを行ったり来たり、ニコニコ笑顔で動き回る、そんな小町を皆も笑顔で受け入れる。
正にマイスウィートエンジェル、コマチエル!
その魅力の前に皆ノックダウン、カウント無しのレフェリーストップによるKO勝利。
序にその宴会の中で起こった出来事のいくつかをここで語るとしよう。
先ずは親父だ、親父のやつと来たら舞姉ちゃんの色香に迷ったか、鼻の下を下げまくってだらしない顔晒しまくって、挙げ句果には母ちゃんにどつかれる始末だ。
まぁ親父の気持ち判らんでも無い、だってホラ舞姉ちゃん超美人だし、あと美人だし。
後母ちゃんもだな、母ちゃんも余り親父の事言えないっていて八幡思うの。
だってアレだ、テリー兄ちゃんとアンディ兄ちゃんの事見て顔をうっとりさせてんだからな、そりゃあ二人共イケメンだしさ、女の人からすりゃなぁ…。
それに母ちゃんロックの事もすっげー慈しみの眼を向けて見てんだよな、あれか!?将来のイケメン候補に今のうちからツバをつけとく的なもんか?
それからジョーあんちゃんなんだが、親父の事をしばき倒す母ちゃんのバイタリティーに、すっかり母ちゃんの事が気に入ったらしくて、母ちゃんの事を姉貴と呼ぶ様になったんだよな、最初は姉御と呼ぼうとしたんだが、ソレは止めてとの母ちゃんの希望から姉貴呼びとなったんだ、因みに後に親父の事も兄貴と呼ぶ様になるんだが。
そんな感じに宴の夜は更けて行き、翌朝大人達が二日酔いに苦しむ事になったのは、至極当然の事であった。
そして翌朝、俺は遂に、遂にテリー兄ちゃんから、格闘技の手解きを受ける事になっ……らなかった。
翌朝大人達が二日酔いで唸っていてそれどころでは無かったからだ。
俺達子供組は、醜態を晒す大人達に水や牛乳を飲ませたり、インスタントのしじみの味噌汁を用意したりと、忙しかった。
結局、大人達が復活したのは正午に近い時間だった。
こんな大人達を見て思うんだが、結果として苦しむ羽目になる酒なんて何で飲むんだろうか、結果が分かっていても飲みたくなる程に美味いものなのか!?
まぁあのディオ様が人間辞める前に飲まずにはいられないって言ってた程の物だしなぁそんなもんなのか、つかあれはストレス発散の為だよな、ダメダメじゃん。
テリー兄ちゃんが、二日酔いから醒めて動ける様になるまで、夏休みの宿題やらやってたら、テリー兄ちゃんが俺とロックに、其々日本語と英語を教えて合って見たらどうかと提案してくれて。
二人共否やは無く、そのアイデア頂きました!と言う事で教え合う事にしたんだ、とはいっても始めは品物の名前とか其々日本語と英語で何と言うかとか、まぁそんな程度の事からスタートした。
漸く、修行が始まる。
それはその日の正午を過ぎ、昼食を済ませた後の事だ。
まず始めはストレッチからだ、筋肉を解す事で柔軟性を増し怪我をするリスクを減らす為に。
そして体力増強の為の長距離ランニングや瞬発力強化の為の短距離ラン、筋力アップの為の腕立て腹筋等のマッスルトレーニング。
その後、パンチやキック等の基本動作等のトレーニングだ。
但し、これ等はまだ俺達の身体が成長期を迎える前の子供で有る事から、必要以上の無理なメニューは組まない。
メニューの増加は俺達の成長に合わせて行う、という事で。
「ハチマン、俺の格闘スタイルはマーシャルアーツって言うんだかな、その元になっているのは八極聖拳と云う流派の拳法なんだ。」
「その八極聖拳の技は、体内の気を高める事によって成されるんだ、つまり体内に蓄積する事で防御力を高め、拳や脚に集中する事で攻撃技として放出するんだ。」
そうか、あの試合で放ったバーンナックルとかパワーウェイブとかの輝く様な光は気のエネルギーなんだ!
おお!なんかドラゴンボールぽいぞ、その事実に俺の気持はものすっごく昂ぶった。
気を高める為に行う修行は、心身を鍛える事だ、先に行なった肉体的トレーニングは勿論の事、精神修養の為の瞑想、そして呼吸法等だ。
瞑想により己の内と向き合い、気の流れ等を知ること。
呼吸法により外気を取り入れる事により、ウチなる気と外気を融合させて更にその気を高める。
まぁ言うは易し行うは難しだ、一朝一夕で身に付く物では無い、現に修行を始めて数年経った現在でもまだまだ極めたなんて言え無いからな。
「……………………。」
早速気の鍛錬を始めてみた、眼を閉じて胡座を組み黙って座っている。
本当に黙って座って居るだけだ、まるで何も感じない。
本当にこれで良いの、次第に俺は心の中に色々な思いが浮かぶ、これって雑念って奴かな。
「ハチマン、こんな事で良いのかなんて考えているだろう!?」
テリー兄ちゃんは俺の状態を見て、その俺の心境を言い当てる。
やっぱ判るよな、きっとテリー兄ちゃんも通って来た道なんだろうな、でもマジでそう思ってしまうのは仕方ないんじゃね!? この時の俺はそんな顔をしてテリー兄ちゃんを見た事だろう。
鏡を見た訳じゃ無いからな、自分の顔なんぞ分かりようが無いさ。
「ハチマン、俺の手を握って眼を閉じてみろよ。」
左手を差し出して来たテリー兄ちゃんの、その手を自分の左手で掴んで言われた通りに眼を閉じてみた。
「今から俺がお前に俺の気を送るからよ、ちょっとビックリするかも知れないけど、心配する事は無いからな……そんじゃ行くぞ。」
そう言うとテリー兄ちゃんは俺に自分の気を送り込んで来た。
瞬間、俺の身体に確かに何かが流れ込んで来る感覚が走った。
「うわあぁっ!!」
予想だにしない不思議な感覚に、思わず悲鳴を挙げた俺、あらやだはずらかしい。
「テリー兄ちゃん、何これ何これ!」
その感覚が何なのかテリー兄ちゃんに尋ねる、興奮の為何これ何これってサーバルった言い方になったけど、この時はまだけもフレ放送前だったからハチマン知らない。
「ハハハッ、今のが俺が送り込んだ気だ、落ち着けハチマン何の害もないからよ。 それよりもう一度目を閉じてみるんだ、眼を閉じて、そうだなゆっくりと深呼吸をしてみろ。」
テリー兄ちゃんの言葉に従い、眼を閉じて鼻から思いっきり空気を吸って、口から「ハアーッ」と吐いた。
「ハチマンそんなに思いっきりやらなくても良いんだ、ゆっくりとだゆっくり吸って、静かに吐くんだ。」
その言葉に従いゆっくりと、静かに深く呼吸を繰り返し行う。
「どうだ感じるか、気が体内を巡るのを。」
「…うん」
最初はどう表現したら良いか、そうだな荒れ狂うだとちとオーバーな感じだけど、いきなり自分の中に流れ込んできたものに違和感と云うか電流…とも違うかな、暖か、否熱いエネルギーが(あぁ自分の語彙力の無さが恨めしい。)駆け抜けてゆき放散される様な感覚がしたんだが、呼吸を整えてみるとそのエネルギーは静かに体内を巡りやがて穏やかに身体の中に充ちて往く、不思議な感覚だ。
「そいつを自分自身で出来る様に成らないといけないんだ、ハチマン。」
「うぅん、なんかすげえ難しそうだよテリー兄ちゃん、俺出来るかな?」
先行きの困難さが思いやられ、不安を口にする俺ガイル。
さっきも言ったが、一朝一夕で出来る様になるものでは無い。
「ハハハッ、そう簡単に出来る筈が無いさ、焦るなよ時間を掛けてゆっくりと身に着けて行けば良いんだ。」
ゆっくり、ゆっくりとか…
でもさ、テリー兄ちゃん、そんなにゆっくり出来るのかな。
だってテリー兄ちゃんはアメリカ人でさ、だから何時までも日本に居る訳には行かないんだよね。
「………。」
そう口に出掛かった、けど言い出せ無い。
出て来たのはまるで自分の思いを誤魔化すかの様な言葉。
「…じゃあさ、ロックはどうなの?」
俺の口から出た自分の名前に、ロックはキョトンと首を傾げ、テリー兄ちゃんはやれやれと言いたげに、俺の問に答えた。
「そりゃあな、ロックは俺と一緒にチョトばかり長くお前よりも修行してるからな、今はそれなりに身に付いて来ているさ、えぇとこう言うの日本語で何て言うんだ…?」
「一日の長だよ、兄さん。」
日本語の言い回しが、浮かばないテリー兄ちゃんにアンディ兄ちゃんが、助け舟を出し言葉を教える。
流石はアンディ兄ちゃん、日本に長く住んでいるだけに、良く日本語を理解していらっしゃる。
「Thanks、アンディ!」
「それだハチマン、ロックだってある程度身に付ける為に其れなりの時間が掛かったんだ、だからソイツは当然の事だと思っとけよ。」
「…うん…。」
言えなかった。ずっとは無理だとしても出来るだけ長く此処に居て欲しい、もっと長く一緒に修行したい。
兄ちゃん達とロックと……。
「お兄ちゃん、お母さんがスイカ切ったよ〜、皆で食べよう!」
タイミングが良かったのか、両親と小町がスイカを持って来てくれて、状況の切り替えが、取り敢えずは出来そうだ。
今は考えないで居よう、今は教えてもらった事を一つ一つ見に付ける事を優先するんだ。
「いやースイカ食ったのなんか随分と久し振りだぜ、日本の夏はやっぱコレだよなぁ!」
「あぁもう!ジョーてば、種を飛ばさないでよ、子供じゃ無いんだから!」
「初めて食ったが、塩を効かせるとすっげぇ旨くなるんだな。」
「うん美味しいね、確か千葉県はスイカの収穫量が日本でもトップクラスじゃ無かったかな!?」
スイカを味わい、思い思いにその感想などわ口にする皆。
しかしアンディ兄ちゃん、良くスイカの収穫量なんか知っていたよな、もしかしてアンディ兄ちゃんってイケメン農業系アイドル格闘家として鉄腕DASHのレギュラー狙っていたの? 違うか、違うよな。
スイカを味わい人心地付いてのまったりタイム。
そんな時テリー兄ちゃんが、家の両親に話し掛けた。
「親父さんお袋さん、チョトばかり相談と頼みが有るんだが良いかい」と切り出した。
「実はさ、ハチマンの修行の為にも暫く日本に居ようと思っているんだが、この近くに手頃なアパートメントが有れば借りたいんだがどうだろうか、それとその間ロックをハチマンの学校に通わせたいと思っているんだが、それは出来るかな!」
えっ!?何やってえ〜!
何処ぞの関西弁のパン職人の様な叫び声を、心の中で上げた俺、ジャぱん!
「テッ、テリーさん本気なんですか、うちの子の八幡の為にそこ迄して下さるのですか……。」
俺と同じ様にテリー兄ちゃんの発言に驚いたのか、母ちゃんは言葉に詰まりながらもそう尋ねる。
「そうじゃ無いさお袋さん、してやるんじゃあ無い、俺がそうしたいんだ。
俺がハチマンの成長を見たいんだよ、と言っても、さっきも言ったがそんなに長くは無い…そうだな一年位居ようかと思っている。」
テリー兄ちゃんの母ちゃんへの返事は
、まるで俺の願いを知っていてソレを叶えてくれたかの様な、そんな俺にとってとても、素晴らしい贈り物の様だった。
八極聖拳の修行の件は捏造です、その辺りの設定が無いか探してみましたが、見つけられませんでした。
又テリーとロックが一年ほど日本で八幡の修行に付き合うと云う流にしましたが、もう一つの案として八幡がテリー達とアメリカに渡って修行を行い、その間に留学中の雪乃と出会うと云う流れも考えたのですが、それだと進学校の総武高校に入学出来るか疑問だったので日本で修行ルートにしました。
外国人の日本での居住や学校への入学には、現実には色々な手続きが必要な筈だと思いますが、ぶっちゃけその辺りは判りませんので、その辺りの手続きは完了した物とします。