やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。   作:佐世保の中年ライダー

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嵐を呼ぶ男は爆音と共に去りぬ。

 極限流空手道場日本支部を訪ねた俺達だったが皆一旦帰宅した後のその日の夕方、今度は俺が何時も鍛錬に利用させてもらっている(近所の私有地であるにもか関わらずオーナーのご厚意により開放されている)雑木林公園へと、ジョーあんちゃんの希望により再度集合する事と相成った。

 

 「よう皆態々また集まってもらってすまないな、まぁ皆も知っての通り俺は明日タイへ戻るから、最後にもういっぺん皆の顔を見ておきたいと思ってな。」

 

 ジョーあんちゃんのたっての希望によりこの場に集まってくれた皆を前に別れの挨拶を行う、この場に集まってくれた皆はそれを神妙な面持ちで聞いてくれている。

 今ここに集ったメンバーはと言うと、本日共に極限流空手道場へと赴いた人達とプラス川崎の妹けーちゃんと俺の初めての男の娘友達である戸塚のダブルマイエンジェルズとあーしさん&腐女子さんコンビ、そして。

 

 「中には今初めて会った人も居るが、その人達とははじめましてと同時にまたなって感じになっちまうけど、一応自己紹介させてもらうとだ……。」

 

 そう言ってジョーあんちゃんは初対面の三人の方を向くと、右手親指を突き出してズビシッと自らを指し示し。

 

 「俺様が嵐を呼ぶ男ハリケーンアッパーのジョー・ヒガシだよろしくな!」

 

 男臭くニカッと笑顔で挨拶をする、因みにその三人と言うのは、夏休み前から俺と材木座の昼練を見てくれている春日野さくら先生と格闘鍛錬仲間の材木座義輝の二人、そして娘と並んでいてもとても母娘とは思えない程に若さを保っており、もしかするとこの人波紋使いなんじゃねと思う今日この頃、俺の大切な人の御母上にして俺達奉仕部四人の母ちゃんネットワークに連なる癒やし系ママ、そう由比ヶママその人だ。

  

 「あっ、イエイエまさかあのムエタイチャンプのジョー・ヒガシさんと会えるなんて思ってもいませんでした、総武高校で女子の体育の授業を受け持っています春日野さくらです、よろしくお願いしますヒガシさん!」

 

 春日野先生は朗らかな笑みの中に僅かにだが挑戦的な感情が交ざっている感じに見えるんだよな、何せ昔はリュウさんやケン・マスダーズさん達とストリートファイトでブイブイ謂わせていたらしいし、そう言った感情があっても可笑しくはないかもな、つか今時ブイブイとか言わねえか。

 

 「いやぁコッチこそ弟分が世話になってる様で本当にありがとうございます、どうかコレからもこの小僧共を見守ってやって下さい。」

 

 『ハイ!』と元気一杯に春日野先生はジョーあんちゃんへ返事をする、この人って確か平塚先生より少し歳上なんだよな、なのに何か何処か元気爆発少子って感じが身体全体から溢れてるって言うか何て言うか……っとイカン又誰かに女性の年齢の話題をするもんじゃ無いとか怒られそうだからこの話題はこの辺にしといてやるんだからね……て誰に対する負け惜しみのツンな逃げ口上だよ。

 

 次は材木座の番だ、ジョーあんちゃんが材木座の前で止まりその顔をしっかり見据える。

 

 「わ、わ、我…俺はざ、ざ、材も、材木座義輝です……。」

 

 材木座はまたもや持ち前のコミュ症気質とヘタレっぷりを存分に発揮しているのか自己紹介一つに吃りに吃る、いくらあんちゃんが有名だからって言ってもお前はもう少し精神的安定感って物を身に着けろよ、とまた今度直接本人に言ってやろう。

 

 「おう!よろしくな、所でお前は拳豪将軍とかって二つ名を名乗ってるらしいじゃ無ぇか。」

 

 「へっ、ぃゃその……何と言いますかですか、我は……モハは………。」

 

 ジョーあんちゃんの口からついて出た拳豪将軍との単語を聞くと材木座は顔を青くして冷や汗を流し始め、そしてしどろもどろに返答しようとするがキチンハートの材木座に返す言葉などある筈も無く。

 

 「へっ、もっとビッとしろよお前ぇはよぉ、まぁ一見太って見えるがよしっかり付くべきところには筋肉も付いてんじゃねぇかよ、コイツはお前のこれ迄の鍛錬の成果なんだろう、もっと自信を持てよ、それにいいかよそうやって二つ名を名乗んならそれに見合った強さって奴を身に付けろよ坊主力だけじゃ無ぇぞ、ハートもだぜっ!」

 

 バシッと材木座の胸を叩き発破を掛けると、さっき迄の厳しい顔付きを止め何時ものガキ大将の様な人好きのする笑顔を見せる、これには材木座のヤツもヤラれた様で感激成分増々で『はいっ!』と返事を返した。

 

 「いやぁ二人にはイキナリこんな場所に呼び出しちまって申し訳無い、日本を発つ前に会っておきたいと思ってたんだが快く応じてくれてありがとうな。」

 

 ジョーあんちゃんは腰を折って頭を下げて二人に礼の言葉を述べると次へ向かう、結衣と共に並ぶママさんの元へ。

 

 「はじめまして結衣嬢ちゃんの……本当にお袋さんなのか!?姉ちゃんじゃ無くて、かあ〜っマジ若けえし凄え綺麗だなぁ!。」

 

 結衣ママの前に立ちその若々しい姿にジョーあんちゃんは驚きを隠しえず、そう疑問と感嘆の声を漏らす。

 うん俺も去年の入学式の日初対面の時はそう思ったもんな、だからあんちゃんがそう思うのも仕方無いね、ないったら無い。

 

 「あらあら、どうしましょう結衣、こんなにワイルドで男らしい方に若くて綺麗だって言われちゃった、ママもまだまだイケるってことよね結衣うふふっ。」

 

 うふふって結衣ママさん貴女は人妻なんですから自重しましょうね、でないと旦那さん可哀想じゃないですか。

 いや、この人を奥さんに出来た時点で由比ヶパパは人生の勝ち組だよな、こんな奥さん居たら俺絶対残業とか断って速攻家帰って二人でイチャイチャするわ。

 

 「もうッ!ヒガシさんは平塚先生の大切な恋人なんだからママはその気になっちゃ駄目だかんねっ!」

 

 結衣がプリプリと怒って結衣ママを嗜める、よく解らんけど娘としては母ちゃんのこう言うトコ見てらんないとかって感じてんのも知れんな。

 しかし良くぞ言ってくれた流石だよ結衣、おかげでさっき迄般若の形相を浮かべていた平塚先生が結衣の一言で乙女顔になったしな、ふぅ。

 

 一通り三人にお初の挨拶を済ますと、ジョーあんちゃんは再び集まった皆へと語り掛ける。

 

 「まぁ何てかな今回日本へ来てみて本当に良かったって今俺はしみじみと思っているんだが、それは今迄ダチの一人も居なかった八幡によこんなに沢山のダチと彼女まで出来てたんだからなハハハハッ、まぁそれを知る事が出来てよ俺ぁ安心して日本を去る事が出来るってもんだぜ皆コレからも俺の弟分の事をよろしく頼むぜッ。」

 

 とまぁこんなふうに碎けた感じの挨拶をする所がジョー・ヒガシのジョー・ヒガシたる所以ってトコだろうな。

 てか寧ろこうでなきゃジョーあんちゃんじゃ無いまである、形式張って畏まりまくったジョー・ヒガシとか中身が入れ代わった転生者じゃねえのとしか思えないからな。

 

 それからジョーあんちゃんはこの場にの参じてくれた人達一人一人を声を掛けてゆく、この十日余の日本滞在で出会った人達の表情はある人は笑顔を浮かべ再びの再会を約し、ある人はと涙を浮かべその別れを惜しむ。

 

 「ぐすっ、じょーおいちゃんいっちゃやだ、もっとけーかとあそぶの。」

 

 ジョーあんちゃんとの別れを惜しみ涙するけーちゃん、オノレ天使なけーちゃんに涙を流させるとはこのオッサンには後で俺が天誅を加えてやらねばならん、と思ったがそれは許してやろう。

 ジョーあんちゃんはけーちゃんに目線を合わせる為にしゃがみ込む、所謂昭和の時代のヤンキー座りの体勢をとりけーちゃんの頭を撫で優しくゆっくりと慈しむ様に、そして語り掛ける。

 

 「悪りいなけーちゃん、けどまたきっとけーちゃんに会いに来るからな、そしたらまた一緒に遊ぼうぜ、なっ!」

 

 「ほんとに?またあそぶ!?」

 

 健気にも寂しさを抑え涙を拭いけーちゃんは尋ねる、その小さな瞳は少し赤味がさしているが。

 

 「おう!絶対にまた遊ぼうぜ。」

 

 その言葉を聞くとけーちゃんは機嫌を直し右手の小指をジョーあんちゃんへ差し出し二人は指切りげんまん、再会の約束を交わした。

 ジョーあんちゃん、その約束違えようものならば例えけーちゃんか許そうとも俺が許さん、だから絶対にまた皆に会いに来いよなあんちゃん。

 

 「彩加坊、八幡とダチになってくれてありがとうなこれからもよ八幡の事よろしく頼むぜ、まぁアレだ八幡も彩加坊も男同士だからな時にゃあ喧嘩の一つもするかも知れねぇが、事が終わりゃあ直ぐに仲直り出来るってそんな関係になれりゃ良いな、ナ〜ッハハハッ!」

 

 戸塚の肩に優しく触れてそのような事を宣う三十路超えのオッサン(怒)おのれッ畏れ多くも俺の大天使トツカエルにその様に軽々しく触れるとは何て罰当たりなオッサンなんだっ、ダッ、Da!!

 ちょつといやかなりムッとしたから最後の“だっ”を強調してやったぜ。

 

 「ハイ、ヒガシさん僕はこれからもよずっと八幡の友達で居ます、絶対に!」

 

 戸塚あ〜っ!!(泣)戸塚の俺に対するズッ友発言に全世界の俺が泣いた、この発言が貰えただけで八幡はあと十年は闘える!

 やっぱり俺、総武高校を選んで正解だったんだな、入学式の日に結衣といろはと雪乃と出会って交流を持つ様になって体育の授業で材木座と組んだのが縁で共に昼の鍛錬をやる様になって、雪乃達と共に奉仕部を立ち上げて戸塚や川崎と出会って、うん俺格闘の鍛錬だけじゃ無くて勉強の方もやってて良かったわ、そうじゃ無きゃ総武に行けなかったからな。

 

 「優美子嬢ちゃんもありがとうな元気でいろよ、そんでよ嬢ちゃんのち持ちがいつかあの坊主にもちゃんと伝わると良いな!」

 

 お次は結衣の友達であるあーしさんと腐女子さんだ、ジョーあんちゃんの言葉にあーしさんは瞳を潤ませる。

 ジョーあんちゃんの言う坊主ってのはやっぱり葉山の事だろう、そしてあーしさんはその葉山に惚れてるって事は言葉に出さずとも周りに居る者達には丸わかりだしな。

 

 「ん、ありがとうヒガシさん、あーし頑張る!」

 

 頑張れその意気だぜっ、とジョーあんちゃんは最後にあーしさんに声援を贈り続いて声を掛けたのはあーしさんの隣に居るその相棒の腐女子さんだった。

 

 「姫菜嬢ちゃんも元気でな……それとよ俺にはよく解かんねえけど嬢ちゃんは何かを抱えている様に俺には思えんだがよ、まぁそれは俺にゃどうもしてやれ無ぇけど嬢ちゃんには直ぐ側に一緒に居てくれるダチも居るんだしよそう言った時ゃダチを頼れよ、そいつが本物ならきっと嬢ちゃんを悪い様にはしねぇ筈だぜきっとよ。」

 

 ジョーあんちゃんの贈る言葉を腐女子さんは一見神妙に聞いている様にも見えるが、確かに俺にも何だかそれを聞く腐女子さんの表情に言い知れない影の様な物を感じる、出来ればそれは俺の杞憂でありゃいいんだけどな。

 

 「ヒガシさん……けど私、腐ってるから……。」

 

 俯き呟く腐女子さん、まぁ確かに彼女の趣味は腐ってるけどな、でもこの場合の腐ってるってのは何か別の意味合いなんだろうな、今のがどう言った意味合いなのかは解らんけど。

 

 「まぁ直ぐに解れなんて言わ無ぇよ、そう言った事も踏まえて手前ぇの目とハートで確りソイツを見極めて行きゃ良いんだよ。」

 

 トントンと拳で己の胸を軽く打ちつつ格好付けてジョーあんちゃんは腐女子さんへ助言する、俺には腐女子さんの思いとかそんな事はちっとも解らないしそれはジョーあんちゃんも同じな筈、それでもそんな助言を与えられるだけジョーあんちゃんはその人生で色々な経験を積んで来からこそなんだろうな、それをどう受け止めるかは腐女子さん次第なんだけどな。

 

 「さぁてそんじゃあ沙希嬢ちゃんと留美嬢ちゃんだな、沙希嬢ちゃんはまぁ八幡のヤツには思う処もあるだろうけどよ同じ格闘家仲間として八幡やあの義輝とよ切磋琢磨して強くなれよ、身近にライバルって呼べる様なヤツが居ると居ないとじゃ成長の速度もダンチだからな、それと八幡と一緒にコレからも留美嬢ちゃんの面倒見てやってくれよな、頼んだぜ未来の最強の虎!」

  

 ジョーあんちゃんはグッと拳を持ち上げ川崎に対してサムズアップを決める、そして川崎は微笑みジョーあんちゃんへうなずいて見せる。

 

 「はい、ヒガシさん、また会いましょう絶対に。」

 

 川崎は返事を返しながら拳を突き出しジョーあんちゃんの拳と打ち合せ、ジョーあんちゃんも再会を約し頷き返す。

 

 「留美嬢ちゃん、八幡や沙希嬢ちゃんの言う事を聞いて学んで強くなれよな、次に会うとき嬢ちゃんがどんだけ強くなったか楽しみにしてるぜ、それと学校が始まったら嬢ちゃんがやるべき事やるって決めた事をやり抜けよ、それは嬢ちゃんにとってもしかすっと辛い事かもだけど負けるなよ。」

 

 膝に手を付き目線を留美と合わせてジョーあんちゃんは留美に語り掛ける、留美は真剣にあんちゃんの言葉を胸に刻み込む様に静に頷く。

 俺が留美に与えてやれる強さなんて、人生を生きる上でたかがしれている程度の物かも知れない、だから俺は川崎に共に留美を鍛える為の手伝いを頼んだ訳なんだが、川崎なら格闘家としても留美と同じ女性としても信頼がおけるヤツだしな、留美はきっと強くなれるよ。

 あんちゃん、その時を楽しみにしてくれよあんちゃん達が俺を鍛えてくれた様に俺達が留美を鍛えるよ、フッおう言うのを継承って言うんだろうな。

 心と技と体それは時を越えて未来へと伝わるんだ、兄貴達から俺へそして俺達から留美へとそしていつかは留美も誰かにそれを伝える時が来るのかもな。

 

 「あの、ヒガシ老師ありがとうございます。」

 

 あまり大きく無い声で留美はジョーあんちゃんに感謝の言葉をかける。

 『おう!』と一言だけジョーあんちゃんは留美の言葉に応えるとフッと笑って片手を上げ留美から離れ、最後は雪乃達の元へ。

 

 「ヨッシャ!そんじゃあ最後は雪乃嬢ちゃんと結衣嬢ちゃんといろは嬢ちゃんだな。」

 

 あんちゃんは三人の前へと歩み寄り、静かにゆっくりといろはを結衣を雪乃を感慨深い表情で見やる。

 時間にするとそれは然程長くは無かったが、ジョーあんちゃんはまるで三人の顔を自分の脳裏に植え付けようとするかの様に見つめる。

 

 「三人共よ、コレからも八幡の事をよろしく頼む、まぁ普段からアホなネタばっか繰り出すどうしようも無いヤローだけどよ、けどこいつの結衣嬢ちゃん、雪乃嬢ちゃん、いろは嬢ちゃん、三人に対する気持ちだけは何の雑じりっ気も無い本物の気持ちだぜ、間違い無くな。  

 だからまぁ八幡の事を見捨てないでやってくれよな、頼んだぜ。」

 

 最後にジョーあんちゃんは三人に対して軽く頭を下げる、このオッサン人の事をアホだとかどうしようも無いとか、酷い言い様だな全くさ、けどあんちゃんが言う様に俺の三人に対する気持ちは、まぁ確かにその通りなんだけどさ何かこう改めて人の口からそれを俺の想い人達に言われるってのはなぁ、公開処刑されてるっぽい感じだよな。

 

 「はいヒガシさん約束します私達はこれからも八幡君と共にあり、病める時も健やかなる時も彼を愛し支え続ける事を誓います。」

 

 三人を代表して雪乃が………って何々何なのさ今のは!? やっべぇッ今のってアレを引用してんだよな、いくら俺が鈍感でもコレは解るわ、もう八幡思わず赤面しちゃうよ。

 

 「ですですヒガシさん!まぁ法的にはまだ先の話ですけど、私達の心はもうとっくにはちくんの元に嫁いでいますからね、だから絶対に見捨ててなんかやらないですよ。」

 

 「うん!ヒガシさんハッチンはあたし達に沢山いっぱい色んなものをくれたから、だからあたし達もハッチンにいっぱい色んなものをあげちゃいます。」

 

 お次とばかりにいろはと結衣が続けて宣言する、いろはさん……そのですね、何と言いましょうか貴女達はいつの間に嫁いでたんですか俺の元へ、いやね今日俺は決意して君達に思いを告げたよ、告げましたもと。

 でもその日の内に嫁がれるとか……その、うん頬が緩むわ緩むわ使い古したパンツのゴムみたいに、ってこの喩えはあんまり過ぎるか、あんまり過ぎてエシディシが泣き叫ぶまであるな。

 

 そして結衣………ヤバい、今俺は結衣の顔をまともに見る事が出来ない、だってなぁ俺達しちゃったんだよな。

 つかまぁしてもらったってのが正解なんだが、軽く触れただけの接触だったけど柔らかくって暖かでそれで優しくていい匂いがして……。

 俺は意を決し結衣を見る……事が出来ずチラッと見るにとどまる、その俺の視界に入ってくるのはやはりぷっくりとしていて薄く塗られたリップに彩られた可愛い口唇だった。

 色んなものをあげちゃいます、その宣言通りに結衣は俺にしてくれて………うわあっマジかぁ。

 俺はまた結衣からまぁ厳密には結衣の口唇から視線を逸らす、ヘタレのチキン野郎とか言わんといてや本人自覚してるからね……言われても仕方無いか!?

 

 「ハハハハッ!こりぁ良いや八幡の嫁って事は俺にとっての妹分が三人一辺に出きたってこったな!」

 

 ジョーあんちゃんは豪快に笑い飛ばしこの場に集った皆の顔をたちまちの内に笑顔に変える、やっぱり俺がこの人を超えるには今少しどころかまだまだ時間が掛かりそうだな、そりゃそうだわな。

 

 

 

 

 「え〜っ、改めて皆ありがとうな、俺からの細やかな礼って程でも無いんだがよ、パオパオカフェに予約を取ってるから時間がある人は是非来てくれよな、お代は勿論俺が持つからよ!」

 

 ジョーあんちゃんの締めの一言にこの場に集った皆からの拍手が沸き起こる、皆この後の予定も無い様で皆揃ってパオパオカフェへと向かう事となった。

 

 「あ〜、けど少しだけ待ってくれ、一つやり残しがあるからな、行くのはソイツを片付けてからだ。

 すまんが皆少し此処から距離をおいてくれ、おい八幡今からやるぞ!」

 

 皆に離れる様に促しつつ俺に呼び掛けるとジョーあんちゃんは上着のアロハを脱いでTシャツ一枚に短パン姿となり、軽く身体をほぐし始める。

 

 「ああ、了解。」

 

 俺も返事を返して同じ様に身体をほぐす、昼間のロバート師範との仕合いのダメージも多少残っちゃ居るが、まぁ問題ないだろう。

 

 「留美嬢ちゃんも確り見といてくれよな。」

 

 ああ、俺が留美に格闘の技を教えるからには当然俺があんちゃんから学んだ物も伝える訳だからして、そうすると留美はあんちゃんにとっては孫弟子って事になるんだよな。

 留美はあんちゃんの言葉に頷くとその瞳で俺達を見つめる、これから起こる事を何一つ見逃すまいと、その目に焼き付けようと思っているのだろうか。

 コイツは俺も下手打てないよなって言っても俺はこれからもジョーあんちゃんが放つ技を留美と同じ様に見せてもらう立場なんだけどね。

 

 「おい八幡、お前さっきの仕合いだがよまさか勝った何て思っちゃ居ねぇだろうな。」

 

 身体を解しつつジョーあんちゃんは俺に呼び掛ける、それはロバート師範との仕合いでの事を言っている訳で、当然俺も感じている事でもある。

 

 「……ああそうだよな、解ってるよあんちゃん、あの時覇王翔吼拳を食らって立ち上がった時点でロバート師範に詰め寄られたら俺は防御もままならずヤラれてたかもな。」

 

 それも十分に俺は理解している、あの時ロバート師範は俺の力を見極める為にああやって俺に回復する時間を与えてくれたんだって事をな。

 

 「フッ、まぁそれが手前で解ってんなら俺からはそれに付いてはもう言う事は無ぇな、ヨッシャあそんじゃあ行くぜ構えろ八幡!」

 

 俺に呼び掛けると同時にあんちゃんも自らも構えをとる先ずはオーソドックスなムエタイの構えから、そして。

 

 「今から見せんのは俺のスクリューアッパーに潜在パワーを上乗せした技だ、コイツはまだお前に生で見せた事は無かったからな、行くぜ名付けてその名もスライドスクリュー。」

 

 オーソドックススタイルから右の拳を下へ下ろしてアッパーを放つ体勢をとりそしてジョーあんちゃんは叫ぶ。

 

 「ヨッシャアーッ!これでも喰らえぇぇーっ!!」

 

 その叫びとともに右腕を下から上へと大きく振り上げ続け様に左腕も同じく振り抜く、そして発生する巨大な紅い竜巻は轟音を響かせ速度を上げながら俺へと向かい迫りくる。

 地に落ちている小石や葉っはなどを巻き上げつつ迫る、俺はそれに吹き飛ばされない様に防御を固めるがその勢いに俺の脚は一歩二歩と後退る。

 その竜巻はおそらく数十メートル程も空高く伸び上がっている事だろう、コイツをまともに食らっちゃひとたまりもない防御をしていてもコレだからな。

 

 「くっうっっ!?」

 

 耐えて、耐え抜く、そしてやがてその勢いは緩まり消え去る、俺の身体にその威力の残滓を残して。

 

 

 

 「……はぁ〜、あんちゃん…確かに見せてもらったよ、そんで確りこの身に刻んだよスライドスクリュー、凄え技だったよ。」

 

 俺はジョーあんちゃんへ技を受けてみての感想とその思いを伝える、俺もいつかこの技を身に付けなければとの誓いの思いも新たに。

 

 「ヘッ!そうかよ……良いか八幡強くなれよ、俺よりもアンディよりも、そしてテリーよりも絶対に強くなれ!」

 

 ジョーあんちゃんは俺の胸に拳をトンと当て、またしても俺に大きな課題を与えて来た。

 いや当然それは俺の目標なんだけど、それを改めて言われるとな、しかもそれが俺の目標の一人の口から出てんだからな。

 

 「……おう、そりゃあそれが俺の目標だし、そうなるつもりだけど。」

 

 そいつはまだ当分先の話だろうな。

 

 

 

 それから俺達はパオパオカフェにてジョーあんちゃんの送別会を時間の許すギリギリ迄行った。

 別れを惜しみつつも湿っぽくなる事無く、笑いに包まれた楽しいひと時を過ごす事が出来た。

 これもまたジョー・ヒガシって男がもつ人徳ってヤツの為せる技なんだろう。

 

 

 

 そして翌日早朝、ジョーあんちゃんは平塚先生が我が家まで自分の車で迎えに来てくれて共に空港へと向かうって段取りになっているからな。

 

 「「行ってらっしゃいジョーさん、平塚先生。」」

 

 「またなあんちゃん、平塚先生このオッサンの事を頼みます。」

 

 親父と母ちゃんそして俺の三人で旅立つ二人を見送る、平塚先生は俺の言葉に頷き、珍しくあんちゃんはオッサン発言に食って掛かってくることも無く拳を付き上げニッと笑うだけに留めた。

 

 挨拶が済むと平塚先生の車は轟音を上げ発車する、住宅街に朝っぱらから迷惑なレベルの爆音を残して。

 

 

 

 




いろはすの誕生日に間に合いませんでした。
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