バディファイトif〜臥炎キョウヤに弟がいたら〜 作:楠木東弥
2話以降はプロットすら作っていない見切り発車です。
第一話 初っ端からバディファイトをしない作品があるんだってよ
「悠斗、僕はこの世界を壊そうと思ってる」
ふと、そんな声がどこからか聞こえてきた。
ゆっくりとまぶたを開けると、正面には見覚えのある人物がいる。
世界的にも有名な臥炎財閥の御曹司、臥炎キョウヤだ。
しかし小さい、今の15歳とは思えないほど小さいが、相変わらずその表情からは何を考えているのかわからない。
あぁ、またこの夢か……。
夢はほとんど場合夢と認識できないが、この夢は見過ぎてすぐに夢と認識できる。
数年前、僕は兄である臥炎キョウヤにそんなことを言われたのだ。
兄さんは臥炎財閥の後継者として休む暇がないので、話す機会は必然的に兄さんの事務室、それも夜と限られてくる。
しかし、世界を壊す、か。
何回聞いても全く理解できない。
こんな思想を持つ人間が臥炎財閥を継いでいいのかと思う反面、権力を持った人はこうなるのかという納得がある。
「世界を壊すだなんて、兄さんもおかしなことを言うんだな。ゲームの魔王みたいだ」
僕の意思とは無関係に、当時の僕がそんな事を言う。
体は動かしたくても動かせないし、言葉だって自然と出てくる。
「魔王……フフ、あながち間違いでもないだろうね。少なくとも、僕の計画を悪と断ずる人にとって僕は間違いなく悪だ」
当時の僕は、兄さんの言っていることがこれっぽっちも理解できなかった。
まぁ、小学生に世界を壊すなんて言って理解できるわけがないけど。
「と、話が逸れたね。悠斗、君にも世界を壊す手伝いをしてもらいたいんだ」
「そんなのしたくない」
「まぁ、悠斗じゃまだ僕の理想を理解できないだろうね」
その言葉に、夢の僕がムッとしたのがわかった。
まぁ、わずか1歳しか変わらない兄さんに馬鹿にされたらわからないでもない。
だけど、14歳になった今でもその理想とやらは理解できないよ、兄さん。
「この世界を視るんだ。そうすれば、僕の言っていることがわかる」
「……あぁそう……ん?」
と、そこで気付いた。
いつの間にか、僕自身の声が出ていることに。
この夢の時のような高い声じゃなくて、低い声で兄さんに言葉を投げかける。
「喋れる……こんなことは初めてだな……。と、兄さん。兄さんはまだ世界を壊すなんて願望を抱いてるのか?」
「心配しなくても、この思いは全く風化してないよ。いや、することはない。この願望は僕が存在する意味なんだよ、悠斗」
兄さんも低い声になっている。
これは夢なのに、まるで今の兄さんと会話してるみたいだ。
そして兄さんの背後には、兄さんのバディ、アジ・ダハーカの三つ首が浮いている。
邪悪な気配を纏っていて、赤黒い竜のシルエットに鋭く光る眼が不気味だ。
「じゃあやっぱり、僕の願望も変わらない」
「フフ、悠斗もいずれ、僕の計画を理解する時が来る。その時が楽しみだよ。悠斗がいれば百人力だ」
心配しなくても、僕が兄さんの計画を理解する時はこない。
だからただ首を洗って待っていろ、僕が兄さんを止めるから。
と、そこで視界と意識がブラックアウトした。
◆◇◆◇
『お……ろ……マ……ターよ』
また、誰かの声がする。
寝起きはあまり気分が良くないので、その声を煩わしく思いながら顔を上げる。
しかし久しぶりに見たなぁ、兄さん関係の夢なんて。
『やった起きたか、マスター』
「あぁ、おはよう。まだ昼休みだろう? 疲れてるからまだ寝ていたいんだが」
僕の机に座っているバディ、エーヴィヒカイトにそう愚痴を漏らす。
エーヴィヒカイトは薄い琥珀色の胴体にライトグリーン色の近未来的な線が走っていて、さらにその背後には一対の砲のようなものが浮かんでいる。
今はSD化してるので問題ないが、SD化を解けば巨大なサイズ3のモンスターに早変わりだ。
しかし最低なことに、視覚情報が大変うるさい。
スタードラゴンワールドが混じっているので仕方ないと言えば仕方ないのだが、もう少しなんとかならなかったものだろうか。
……いや待てよ、僕の使用するワールドはスタードラゴンワールドじゃないから、ワールドを変えられる可能性がある。
『我はこの姿が究極にして完璧なのだ。悪戯に手を加えれば、改悪は免れんだろうよ』
「知ってるよ。やるならとっくにやってるさ。それと、ナチュラルに心を読むなよ」
『マスターとは4年が経過している。それくらいは容易いものよ』
あぁそう。
さて、
次の授業の準備をしようと席を立ったところで、このクラスの異変に気付く。
「……おいヴィー。何があった」
『我は知らんよ。マスターが寝ている間にこうなっておった。しかしマスター、お主は本当に睡眠が好きだな。あれほどの騒ぎで目が覚めんとは』
……まぁ、確かに僕はあまり目覚めがよくないが、昨日は忙しかったんだから仕方ないだろう。
しかしクラスの人間が全員いなくなるとは、本当に何があった。
緊急避難訓練? 流石に起こされる。
いや、クラスの人間がいなくなったことはどうでもいい。
「ソフィアは?」
『同じく知らん』
「……ちゃんと見てろと言ったはずだが」
『本人が言うたのだ。着いてこなくて良い、マスターを見ていろとな。っと、噂をすればなんとやら。帰って来たぞ』
ヴィーに合わせてクラスの出入り口に視線を移すと、水色と青を基調とした服に身を包んだソフィアがいた。
いつもはドライな無表情を浮かべているのだが、今はわずかに息が乱れていて銀髪が数本立ってしまっている。
それに気付いたのか、手で直しながら近付いて来た。
「起きていたのですね、悠斗様」
「あぁ。で、何があった?」
自分で言うのもなんだが、ソフィアが僕に何も言わず側を離れるのは異常だ。
一体何があったのだろうか。
「ここ相棒学園に、また新たなバディモンスターが発生しました」
「……本当か?」
「ダー」
つい1週間前も、ここの生徒がバディモンスターを引き当てたばかりだろう、いくらなんでも早すぎる。
その生徒はバディモンスターを引き当てたことを秘匿にしたから話題にはならなかったが、臥炎財閥の情報網にかかればその程度の情報はすぐ手に入る。
「やっぱりこの学校はおかしいな。で、バディモンスターの情報は?」
「武装騎竜です。この世界に適応していなかったので能力はわかりませんでした。申し訳ございません」
「いや、それだけわかれば十分だ。ありがとう、ソフィア」
「光栄です、悠斗様」
ソフィアは嬉しそうに僅かに口角を上げてそう言った。
表情豊かとなったソフィアの微笑みは万人を魅了するものがあり、僕も例外ではなく彼女から目を逸らせない。
と、思考が逸れた。
バディモンスターが武装騎竜とわかれば、あとは能力を視るだけだ。
タイミングとしては放課後がベストだな。
「悠斗様」
「ん?」
「放課後、件のバディモンスターの持ち主、未門牙王と竜炎寺タスクの対戦が行われます」
竜炎寺タスクというと……あぁ、最年少バディポリスか。
彼のバディモンスター、ジャックナイフドラゴンは僕のデッキとは相性がよくないからすっかり忘れていた。
世界に一枚だけのオリジナルカード、ガルガンチュアパニッシャーも僕のフラッグでは使えないから興味がなかった。
けれど、彼の実力は相当なものだと聞く。
「……折角だ。観戦していこうか」
「ダー。席を取っておきます」
「ん? そんなに人気なのか、その対戦」
「はい。竜炎寺タスクが公式に対戦するのは初めてだそうです」
「……あぁ、それは注目されるわけだ」
龍炎寺タスクは《ガルガンチュア・パニッシャー》を持っていることもあり、世界的に有名な存在だ。
しかし、そのプレイスタイルやデッキはバディポリスの尽力もあり明らかにされていない。
注目されるのも当然だろう。
「……色々と都合が良いな。あぁ、タイミングが良すぎる」
龍炎寺タスク、そして未門牙王。
彼らの実力が同時に知れるのは、大変都合が良い。
思わず口角が上がるのも、仕方がないことだろう。
「未門牙王。彼のとこに向かう」
「ダー……悠斗様、その手は」
ソフィアが疑問を呈した通り、僕の手は彼女に差し出されている。
その行動原理がわからないのだろう。
「いや、嬉しくてな。幸福は共有したくなるものだろう?」
「……では。失礼します」
そんな改まった言い方をする必要もないだろうに、と思いながら、ソフィアの小さな手が僕の手に乗せられる。
恥ずかしさを誤魔化すように目を逸らし、けれど白い肌がわずかに赤く染まるのはバレバレで、握っている手からは僕を受け入れてくれているのがわかる。
かくいう僕も、先程より上がった口角を隠せない。
あぁ、幸せだ。この瞬間のために生きているのだと、再確認させてくれる。
ソフィアとの確かな幸福を感じながら、僕らは誰もいない教室を出た。
『クックック。相変わらず、見ていて微笑ましいものよ』
そんなヴィーからの念話を聞き流しながら。
ちなみに、悠斗が言った”この瞬間のために生きている”は誇張表現でもポエムでもありません。
普通にガチで思ってます。ソフィアも同じように思ってます。
重い(確信)
じゃあ俺は受験勉強があるので、後任兄貴はこの作品の続きを書いてください。
ちなみに悠斗のフラッグはドラゴンツヴァイで、バディは超越竜王エーヴィヒカイトです。
なぜ超越星竜王じゃないのかと言うと、進化フラグを立てるため。
じゃあ(ここまで読んでくれて)ありがとナス!