バディファイトif〜臥炎キョウヤに弟がいたら〜 作:楠木東弥
2007年にDSで発売されたやつがSwitchに移植され、14年ぶりの新作という事で半額セールをやっていたので買いました。
まだ全クリはしてませんが、面白いですね。
特にバッジを使用してサイキック能力を使用するところに浪漫を感じた。
衝動的にハーメルンで検索したら、まさかのバディファイトより投稿数なくて草。
あとソロモンプログラム楽しい。
「この戦い、一体どちらが勝つのかしらねぇ?」
観客席。
一目で豪華とわかる椅子に腰掛けながら、花薔薇エルフはそう問いかけた。
同じく腰掛けているディザスターメンバーに向けたそれに答えたのは、グレムリン。
「……相性だけで言えば、荒神ロウガが有利だ。奴はモンスターに頼らん、自身の力しか信用していない」
「自分の力だけでとか……どれだけ脳筋なんですし……」
「ロウガがモンスターを召喚するのは、”魔装合体”する時のみだ。必然的に、ダビデが喰らう機会は少なくなる」
ディザスターメンバー全員のデッキを作成、一人でチューニングしているグレムリンは、この場で誰よりも対戦する二人を識っている。
どちらのデッキも最良を尽くした以上、後に残る要素は相性だ。
ロウガの使うデンジャーワールドは、ただ打撃力を追求して速攻でケリをつけるコンセプト。
対しダビデの使うダークネスドラゴンワールドは、対戦相手の力を利用するものが多い。
例えば潜影。
相手センターにいるモンスターを無視し、ファイターに直接ダメージを与えられる。
攻撃力を捨てていることから”変身”や”装着”能力の多いヒーローワールドに弱いが、耐久型……特にエンシェントワールドに対しては無類の強さを発揮する。
例えば今ダビデの使ってる霊撃。
相手の場のモンスターを破壊する事でファイターにもダメージを与えることができ、これもまたエンシェントワールドに対して無敵だろう。
グレムリンの言った喰う、とは霊撃の事である。
どちらも、相手にモンスターがいてこそ真価を発揮するタイプだ。
それゆえ、武器をメインとして戦うロウガとは相性が悪いと言わざるおえない。
しかし、
「対策など、既に済ませている」
そんな事は百も承知。
不利を埋める……むしろ有利になるカードを、グレムリンはデッキに仕込んである。
あとはそれを、ダビデが使いこなすだけ。
(そんな上手くいくとは思えんが)
いつぞや虎堂ノボルが吐いたように、バディファイトとは究極的には運ゲーだ。
どれだけ運要素を減らそうが、必要になる場面は多々ある。
そんな思考を胸の裡にしまい、グレムリンは視線をファイティングステージに移した。
◆◇◆◇
「俺のターンだべ。ドロー、チャージアンドドロー」
ダビデは自分の手札を見やる。
そこにグレムリンの仕込んだ札はなかったが、しかし今は無くても問題ない。
なにせ、今ロウガのセンターには
「センターに《死竜騎兵 カース》をコール。ライトに《アーマナイトデスゲイズ》、レフトに《死竜 デスゲイズ・ドラゴン》をバディコールだべ」
「ハハハハ……!ぶっ壊そうぜ、ダビデ」
死してなお、死霊術師の手により蘇った竜と竜騎兵。
サイズ1相応のアンデット・ドラゴンと、それに跨ったアンデット・キャバリィがダビデのセンターに現れる。
ライトにはアーマナイトらしく武装したデスゲイズと、レフトには禍々しい鎌腕を持つデスゲイズ。
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《死竜騎兵 カース》
ワールド:ダークネスドラゴンワールド
属性:[死][黒竜]
サイズ:1
打:0/攻:5000/防:1000
コールコスト:ゲージ1とライフ1を払う。
■”霊撃”:このカードの攻撃で相手のモンスターを破壊した時、相手にダメージ1。
■霊撃で相手にダメージを与えた時、君のライフ+1。
■ このカードが攻撃された時、攻撃してきたカードの『貫通』を、そのターン中、無効化する。
『アンデッドは、殺した相手の怨念を喰らう。気を付けよ、生者は奴らの好物だ』
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《アーマナイトデスゲイズ》
ワールド:ダークネスドラゴンワールド/デンジャーワールド
属性:[アーマナイト][黒竜]
サイズ:1
打:1/攻:6000/防:1000
■“霊撃”相手の場のモンスターが攻撃で破壊された時、君のデッキの上から1枚をゲージに置き、相手にダメージ1!
『平和ボケしている貴様らに思い出させてやる。弱者が辿るべき運命をな!』
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《死竜 デスゲイズ・ドラゴン》
ワールド:ダークネスドラゴンワールド
属性:[黒竜][死][深淵]
サイズ:1
打:1/攻:6000/防:1000
コールコスト:ゲージ1を払う。
■”霊撃”:相手の場のモンスターが破壊された時、相手にダメージ2!
『命あふれるこの世界。我らの贄に相応しい』
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「キャスト、《アブソリュート・アタック》!ロウガァ、テメェはこのターン中、
「貴様のアタック中、だろう。誇張表現をするな」
「テメェら!《ワーウルフ》にアタックだべ!」
ロウガの言葉を遮るように、ダビデが攻撃命令を下す。
《カース》、《アーマナイトデスゲイズ》、《デスゲイズ・ドラゴン》が《ワーウルフ》に殺到する。
各部位を噛み砕かれ、カードの破片となって散った後。
何も残らないはずのそこに、球体の”何か”があった。
それは水の雫のようで、何かを濃縮したように水色に濁っていて、それは――《ワーウルフ》の魂だった。
瞬間、球体はひとりでに動き出す。
ふよふよと漂い、ロウガに触れると、ダメージ判定だけを残して消え去った。
☆荒神ロウガ ライフ:10→6
これが、霊撃。
モンスターの守りを無為に、相手の努力を無駄にする能力。
実にダビデらしいと、ロウガは内心悪態をつく。
「ヒャハハハ!気分はどうだよロウガちゃぁん!」
「屁でもないな。これで終わりか?貴様の攻撃は」
「ケッ、ターンエンドだべ」
そう、つまらなそうに吐き捨てターンエンド。
☆山崎ダビデ ライフ:11/ゲージ:2/手札:4/センター:《死竜騎兵 カース》/ライト:《アーマナイトデスゲイズ》/レフト:《死竜 デスゲイズ・ドラゴン》
「ドロー、チャージアンドドロー」
「……わっかんねぇなぁ。やっぱわかんねぇべ」
「《崩滅槍 天抉り》を装備。わからない、とは何だ。俺からしてみれば、弱者をいたぶろうとする貴様の感性もわからんが」
「テメェが強くなりてぇ理由だべ。あぁ、キョウヤちゃんの剣になりたいのは知ってんべ。だけどまぁ、改めて考えるとこりゃおかしいんだよ」
ロウガはダビデの言葉を聞き流しながら、《闘気暴走》でライフ3を払いゲージを+6し、《危竜同舟》でドロップゾーンの《アーマナイト・デーモン”A”》を《天抉り》のソウルへ。
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《危竜同舟》
ワールド:デンジャーワールド/エンシェントワールド
属性:[竜王番長][闘気]
使用コスト:ライフ1を払う。
■君のデッキの上から1枚をゲージに置き、君のドロップゾーンのモンスター1枚を、君の場のモンスターかアイテムのソウルに入れる。
『昨日の敵は今日の友ってほど単純じゃあないが、とりあえず休戦』
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その後、《餓狼深気功》でライフを10にまで回復。
そのプレイングを視界に据え、つまらなそうに首に手を置きながら、ダビデはさらに言葉を紡ぐ。
「強くなる必要なんかねーべ。なんせ《アジ・ダハーカ》は最強のモンスター……ロウガちゃんなんて剣にも盾にもなんねー」
アタックフェイズに移行するも、ダビデの口車は止まらない。
ロウガも、異様なほどに口を出さないでいる。
(すぐに反論してくると思ったが……拍子抜けだべ。ま、好都合だ)
「なぁ、なんでそこまで強さを願う。どう足掻いても世界最強になんてなれやしねーのに、なんでキョウヤに追いつこうとしてる?黙秘権はナシだべ」
「『神に近付くために鍛えるのではない。神すらねじ伏せるために、己を練り上げるのだ』。《烈神呼法》のフレーバーテキストだ」
あ? とダビデは疑問を、威圧と疑問を7:3に混ぜた息を吐いた。
唐突に知らないカードについて語られたのだから当然だ。
だが、まだ話は続くようでダビデに攻撃する様子はない。
「《アジ・ダハーカ》を打破し、最強と成る。それが俺の目的だ」
「……ヒャハッ」
目を伏せ腕を組み、尊大な態度を崩さずにそう言い切ったロウガの言葉を、
(なるほどなぁ。そういう事か、って)
そう、ダビデは”嘘”と断定した。
「ヒャハハハハ!どうしても言いたくねぇってか!?いいぜ、このファイト、俺が勝ったら包み隠さず吐け、条件追加だべ!荒神ロウガァ!」
「フン、良いだろう。俺が勝ったら、二度と追求するなっ!」
『グォルォォォォォ……!』
天抉りの攻撃で《カース》が破壊され、ダビデのセンターが開く。
そのままセンターエリアに降り立ったロウガは、腰を大きく捻って三又槍を投擲した。
「チィッ!」
☆ダビデ ライフ:12→10
「もう一度くれてやる。ゲージ1を払い、再攻撃!」
「くらってやんよ!」
☆ダビデ ライフ:10→8
3回攻撃。
《アーマナイト・デーモン”A”》の能力、『このカードが君の《武器》のソウルにあるなら、ゲージ1を払う。払ったら、その《武器》を【スタンド】する』によるものだ。
他の《”A”》がソウルに入ってないため、ダメージは4で済んだ。
まだ、まだマシだった。
「ターンエンドだ」
☆荒神ロウガ ライフ:10/ゲージ:7/手札:3/装備:《崩滅槍 天抉り》
最初はジェネシスに出番をやるためにディザスター会議始めたはずなのに、こんな展開になるなんてたまげたなぁ。
あと、前篇後篇で終わらす予定だったのに無理そうだったので中篇を挟みました。もしかしたら後篇は5000字を超えるやもしれません。
あと最近、ほんとにバディファイトを投稿する人減ったなぁ、とつくづく思います。
牙王達がちゃんと出てくる作品なんてもう2作ほどしかないという末期。
だからこんなふざけた小説をお気に入り登録してくれる人が多いのだと思います。
読者兄貴も投稿してくれよなー、頼むよー。
俺もやったんだからさ?