バディファイトif〜臥炎キョウヤに弟がいたら〜   作:楠木東弥

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暇な時間に書き溜めてあったので投稿。
以前『フューチャーカードバディファイト 俺たちの最強バディ!』をやっていると言い、実際今でもやってます。
そして、一番早く決着をつける事ができ、一番ポイントを稼げるはずのザ・カオスを使う事に躊躇いが出てます。

躊躇い、というよりも嫌悪。
単調でやる事が決まっていて、パターンがない。
使いたくない、気持ち悪いってはっきりわかんだね。
病、アイン、五角超騎竜 砂塵杖のアルカイドデッキの方が使ってて遥かに楽しい。
以上、以前よりカオスが嫌いだったがもっと嫌いになったという報告。


世界はまた一歩、カオスへと相成りて

「フンフン♪ フフン♪ フンフフフフ~ン♪」

 

レジェンドワールドの一角、地球のそれとは違う色合いの湖に妖精が集う理想郷にて、一匹のシルフが花の冠を編んでいた。

ピンク髪のツインテールに、海や空よりも澄んだ瞳、白のワンピースに透明な羽は、一般的なシルフの姿形だ。

 

全は個にして、個は全なり、個は孤にあらず。

シルフとはそういうもので、意思と呼べるものはなく、妖精王の手足として生まれた存在。

けれどその個体、【風の精 シルフ】は喜んでいた。

胸の奥で弾けて沁みて、体がぽかぽかとして思わずにやけてしまうこの感覚。

 

彼女が妖精ではなく精霊であった頃に、悠斗に教えてもらった鼻歌を口ずさみながらその可愛らしい幼顔を破顔させている。

それほど嬉しかったのだ、悠斗に会えたことが。

 

彼には不思議な魅力がある。

仲間のシルフや妖精、精霊たちと楽しく暮らしていた普遍の日常に侵入してきた、イレギュラー。

ズケズケと清浄の領域に侵入し、強いモンスターはいないかと妖精王に直談判したあの姿に、シルフは不思議と喜んだ。

 

この人のおかげで、何かが変わるかもしれない。

その予感の通り、悠斗は面白い少年だった。

邪竜退治に始まり、妖精王試験、神獣探索と、最近はイーター討伐。

 

普通に生きてるだけでは決して味わえない経験を、悠斗は何度も体験させてくれる。

まるで白馬に乗ってプレゼントを配ってくれる王子様だと、シルフは本気で思っていた。

次はいつ来てくれるのだろうと、そう無邪気に思った時。

 

「んっ……」

 

ふと、胸の奥にチクリとした痛みが走った。

焦燥感、違和感、不快感。

シルフの語彙では言い表せないその感覚に、すぐさま冠を置いて空に飛び立つ。

 

「みんな〜!どうしたの〜!?」

「シルフ!ヤバいやつが出たらしいの!早く逃げろってオベロン様が言ってる!」

「早く逃げよぉよ〜!ここにいたら危ないよ〜!」

 

【妖精界の靴職人 レプラコーン】、【春風の運び手 シルフ】達がシルフに危機を知らせる。

妖精の長であるオベロンが戦わなければならない相手に、彼らは恐れていた。

故に逃げようとシルフを促したわけだが、それは彼女にとっては逆効果だ。

 

「あたし!ちょっと見に行ってくるね!」

「えぇぇ!?話聞いてた〜!?」

 

シルフは変わった。

元より好奇心が強かった気性が、悠斗のせいで増長されていた。

 

(事件だ! また事件だ! 何が起きてるのかな!? 楽しみだな〜!)

 

それは誰が見ても愚行であり、けれど彼女は気付かない。

気付く時があるとしたらそれは、

 

「シルフッ!逃げっ――」

 

残酷な現実が、目の前に横たわった時だろう。

そしてそれは、今だった。

【妖精騎士 ディナンシー】が”何か”に纏わりつかれているのを視認した瞬間、シルフの目の前で爆発が起きた。

突然の出来事に理解が追いつかず、何故かさらに痛くなる胸を押さえて顔を青くする。

 

「嘘……嘘……」

 

妖精達が住まう楽園の番人、【ディナンシー】。

そんな彼女達が死んだ事が認められず、何度も戯言を呟く。

 

その行動が、シルフの運命を確定させた。

彼女はすぐさま逃げるべきだった、ディナンシーが爆死した時点で、なりふり構わず逃げるべきだったのだ。

けれど、もう遅い。

魔の手は既に、シルフの羽を掴んでいる。

 

『妖精個体、発見。妖精個体、発見。シルフ、固有名【風の精 シルフ】』

「何……これ……」

 

視線を上空に向けると、ユグドラシルに重なるように見える機械の塊が空を覆っていた。

四本の腕に、赤、黒、オレンジ、緑と様々な色の胴体、そして無機質なセンサーアイ。

幾百の歯車が組み合わさったようなその歪な姿が、変に噛み合っているせいで気味が悪い。

 

それだと、シルフは本能的に理解した。

 

あの機械モンスターの大軍がディナンシーを殺し、この胸の痛みの正体なのだとシルフは悟った。

それと同時に、ディナンシーの最後の言葉が想起される。

 

「逃げ、なきゃ……」

 

羽を震わせ、低空飛行でみんなが逃げた方向へと向かう。

瞬間、背筋に熱い感覚が走ったかと思えば、シルフは地面に這いつくばっていた。

顔がより青ざめ、全身がカタカタと震え出す。

 

わからない。

機械、ミニギアゴッドがセンサーアイから熱線を発したことなんてわからない。

その熱線が自身の羽を焼いた事なんてわからない。

もう逃げる事が出来ないなんて、わかりたくなかった。

 

「あ……」

 

そして、シルフの細い胴体がギアゴッドの機腕に掴まれた。

軽々と持ち上げられ、彼女の大きな瞳から涙が溢れ出す。

可愛らしい手で機腕を叩いても、大声で助けを求めても、ギアゴッドがその手を離すことはない。

 

「あっ、ぐぁぅぅ……!?」

 

モンスターをカードに押し込める、最悪の人工魔法。

悠斗がイーターに対し使用したそれが、シルフにかけられる。

魔力でなんとか抗おうとするも、彼女は実に呆気なく、カードとなった。

イーターのような化け物でもない限り、カードの外に姿を現す事は出来ない。

つまり今のこの瞬間、シルフは死んだも同然だった。

 

『捕獲完了』

 

そして、その一部始終を見る者が一人……いや、一匹。

 

「ま、マズイニャ……これは僕ちんでもどうしようもないニャ……助けを呼ぶしかないのニャ!」

 

この日、レジェンドワールドは甚大な被害を受けた。

理想郷で行われた大量殺戮、さらに多くの行方不明モンスターを出し、極め付けには【妖精王 オベロン】の消失。

 

また、その地域一帯を任せられた守護者、【トイレの花子さん】も、

 

「チィィッ!キャスト、【開かずの間】!」

 

同時、危機的な状況に陥っていた。

発動した魔法障壁に、異形の腕が突き刺さる。

黒く筋肉質な腕に、灰色の毛、鋭い爪、人間のそれより遥かに巨大なサイズ。

どこかイーターににたモンスターが、花子さんを攻め立てる。

 

「貴様が誰かは知らんが、俺は今腹が立ってしょうがねぇ。喰らえ!ヤミゲドウ!」

「GROOOAAA!!」

 

時間は、シルフが囚われる前に遡る。




描写不足を感じていますが、疲れたので気が向いた時に修正します。
なお今回の件、普通に当代ウィズダムの仕業です。

なぜ彼がレジェンドワールドを狙ったのかについては次回。
それと、あと少しでお気に入り登録者100人いきそうで感謝感激です。
別小説の宣伝をまたも忘れたのでこれも次回します。
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