バディファイトif〜臥炎キョウヤに弟がいたら〜 作:楠木東弥
相変わらず時間の流れが早すぎて草も生えない。
ちなみにあれからポケモンユナイトにハマり、学校も楽しくなって来たので毎日が充実してます。
友達の恋愛相談受けてる時が最高ってそれ一番言われてるから。
あとほぼ初対面の男子、女子と良い感じになる方法って何ですかね? クリスマスまでに彼氏彼女を作って一緒に居たいとよく相談されるんですが、何より俺に彼女が居ないので知ってる方はぜひ。
自分の読者には何故か高校生兄貴が多いので聞きました。
決してコメ稼ぎではない(断言)
第24話 積み重なる課題
声が、感触が、映像が、水泡のように浮かんで消える。
僕の知らないそれらが、まるで僕の記憶だと主張するように脳にこびりついて離れない。
未知の海を揺蕩っているようだった。もしくは、深海に沈んでいるような。
そんな中、一際大きな声が響く。
「ひねりつぶせ! ギアゴッドⅤ!」
聞いた事がない声音だった。
厳格そうな男の声。
そして数秒遅れて、映像が脳裏に映る。
歯車が何十何百と重なり合った形容し難い異形が、アジ・ダハーカと激突していた。
しかしそれも一瞬だけ。
すぐさま別の映像と音声に切り替わる。
どこかの島に立っていた。
兄さんの記憶では無人島らしいが、眼前には明らかに人が彫った巨大な石板がある。
『分かたれたバルソレイユの魂、ドラゴンフォースとなりてここに眠らん』と、読めはするが意味不明な単語の羅列。
その内容を吟味する間もなく、次はどこかの執務室。
いや、ここは……
「悠斗、僕はこの世界を壊そうと思っている」
全ての始まりとも言える、あの部屋の記憶だった。
何故、こんな昔の事を兄さんは思っていたのか、それはわからない。
けれどやはり……兄さんにとっても印象深かったのだろう。
と、今度は映像が切り替わらず、真っ暗な闇に包まれる。
果心居士が読み取れた記憶はここまでかと思考したその時、アジ・ダハーカと兄さんの声が聞こえた。
『奴らはお前を殺す気でいる。キョウヤよ、お前はあまりにも不穏分子すぎるのだ』
「フフ、僕もただの一般人に過ぎないよ。ただ種を蒔いているだけさ。彼らに届きうる不穏分子を芽生えさせるための、ね」
直後、意識が引っ張られる感覚と共に、明るい光が網膜を焼いた。
「……ソフィア」
「悠斗様っ」
保健室……か。
失血で倒れてから、ずっと寝こけていたらしい。
体を起こし、ソフィアに視線を向ける。
微かに瞳が揺れている……心配させてしまったのか。
「あー、……取り敢えず、お互い無事で良かったよ。あと、いくつか重要な情報が手に入ったんだ。きっと僕らの助けになる……きっと……」
正直なところ、僕が兄さんを止められるのか、わからない。
僕が学園生活やABCカップにうつつを抜かしている間にも、兄さんは戦力を揃え、仲間を集め、情報を仕入れている。
正直、どう足掻いても止めるのは不可能なのではないだろうか……兄さんの記憶を覗いて、そう思ってしまう。
「いざとなれば、どこまでも――」
「言うな」
ソフィア、それは、『どこまでも逃げましょう』なんて、それだけは言ったらダメだ。
今の僕では、その甘い誘惑を断れない。
兄さんの前に立ち塞がると決めたのに、その決意が無駄になってしまう。
……ダメだな、本当に参ってしまってる。
「……少し、一人で考えたい」
「ダー。外で待機してますので、御用件があれば」
そう言って、ソフィアは部屋から出て行った。
瞬間、張っていた虚勢がなくなり、無力感が全身を支配する。
そのままゆっくり、ゆっくりと意識の海に沈もうとすると、
『おい、マスターよ。今暇か?』
ヴィーからの念話が脳内に響いた。
「客観的にはな。内情はそうでもないけど、何か話か?」
『紹介したい者がいる。保証は出来んが、其方の役に立ちたいと言うのだ』
「名前」
『明かせん』
「……チッ、呼んでくれ」
ヴィーが情報を明かさないのは、楽しんでいるが故だ。
堅物に見えて意外な側面だと驚いた記憶がある。
まぁ、その僅かな道楽に付き合ってやろうじゃないか、バディなのだし。
「ジャンジャジャーン、呼ばれて飛び出て登場。禍津ジンやで」
「私の事は気にしなくていいわよ、ただの付き添いだから」
ヴィーが出したワームホームから現れたのは予想外の客人であったが、想定内ではあった。
禍津ジンとそのチューナー、真間雁メグミ。
さて、この二人が話したい事とは一体何なのか。
「おぉ、めっちゃ顔色悪いやん。何や悪い事でもあったんか? 例えばそう、貧血とかな」
……こいつ、素で言ってるのか? 当たらずとも遠からずなのが恐ろしい。
「……僕の事はいいだろう。君らの話を聞きたい」
「自分、専属のデッキビルダーおらんやろ。そこでや、俺が紹介したる。もちろんタダやで」
「怪しい。裏がありそう。お前にメリットがない。以上を統合して、胡散臭いな」
「カッカ、予想通りボロクソやな。俺ん中では理屈通っとるんやけど」
ジンの過去については、彼の口から聞かせてもらったことがある。
金や希少価値の高いカードを賭け、バディポリスの目を掻い潜りながら行われる闇ファイト。
ジンはそこの運営の雇われ……つまり、サクラ。
既に闇ファイトからは足を洗ったらしいが、それでも黒い噂は絶えない。
そんな者の中で、どんな整合性を取れば僕にデッキビルダーを紹介するなんて話になる?
意図が読めない。
「もう少しだけお天道様を見ていたい。そんな所や」
「はぁ……?」
わかるようでわからない例えだな、それ。
「……一応、招待を受けよう。で、そのデッキビルダーの名は?」
「自分もよーく知っとる人物で、俺たちが思う世界最高のビルダーや」
「だから誰――」
「爆坊。牙王をABCカップ優勝に導いた、影の功績者やな」
「……へぇ」
その時、自分の中に並々ならぬ興味が湧いたのを感じた。
◆◇◆◇
ジンらの来訪を知っていたソフィアを連れ、僕らは牙王の家に向かう。
何故かとジンに問うと、どうやら今牙王の家でABCカップ優勝の祝賀会が行われており、それに爆も出席しているかららしい。
ABCカップ、か。
「なんや悔しいんか?」
「牙王と再戦出来ないのがな。出来れば公式戦で戦いたかった」
「ほーん」
それからは特に会話もなく、牙王の家の前まで来た。
夜7時だが、中からは賑やかしい喧騒が聞こえている。
「じゃ、いっちょやりますか。闇狐」
「了解した」
「何を……おい」
ジンのバディ、闇狐が手の平に浮かべた炎を消す。
すると、眼前の家の明かりも消えた。
喧騒が悲鳴まじりの声に変わる。
「ほら、早よ中に入るんや。目が慣れたらおもろなくなるで!」
「真間雁。あいついつもあんな感じなのか?」
「違う。けど、未門牙王と出会って変わった」
またか。
未門牙王、最近、彼の名をよく聞くようになった。
フューチャーフォースは強い人間に宿る。やはり、彼には適性がある。
「いっそ、全部吐くか……?」
兄さんの計画も、僕がやろうとしている事も、イーターも、何もかもを託して。
ただの傍観者に成り下がるのも悪くないと、思ってしまった。
「何か言った?」
「いや、何でもない」
そんな汚い、逃げ腰の妄想を捨てて、ソフィアと共に牙王の家に乗り込んだ。
見知った靴から推測するに、牙王とその親族、そして天野鈴鈴羽がいるのは間違く、他は小学生のものだろう。
と、そうしている間に電気がついた。
「なんだよ脅かすなよ、禍津先輩」
「かっ、遅れとるんやしギョーギ良く来んのもつまらんやろ? ちょっとしたサプライズや」
「これじゃサプライズじゃなくてドッキリだyo……」
おい、ジン。
この後どうすれば良い、この流れの中出ていくなんて嫌だぞ。
「で、こちらが本日の主役。臥煙悠斗君や!」
そんな掛け声と共に、廊下に立つ僕に視線をやるジン。
渋々、重い足を引きずって牙王達の前に出た。
ふむ、小学生の面子は黒岳テツヤ、パル子、青髪の大人しそうな少年か。
「……あー、どうも。僕が臥煙――」
「悠斗先輩! なんで本戦に出なかったんだよ!?」
自己紹介を終える前に牙王に肩を掴まれた。
「想像を絶する腹痛が起きてな。出たくても出れなかったんだよ」
「話では、貴方が窓から飛び降りる姿が確認されているのですけれど?」
おい、話をややこしくするな天野鈴鈴羽。
「ハッハッハ、まぁ終わった事は良いじゃねぇか。それよりセンパイはどうしてここに来たんだ? 」
テツヤのバディ、アスモダイにそう問われ、皆が僕の発言に耳を傾ける。
あぁ、たった一言で話が進んだ、非常に助かる。
「大盛爆、君に頼みたい事がある」
皆の視線が僕から一人たこ焼きを貪っている大盛に移った。
まさか自分に要件があると思わなかったのか、彼の双眸は見開かれ、頬が引きずっている。
「……え、俺?」
彼の言葉に、僕は軽く頷いた。
悠斗くんのメンタルは結構脆いです。
まぁ打倒兄貴のハードルが高すぎるので致し方ないですが。
あ、ちなみに最初の描写ですが、果心居士が読み取ったキョウヤの記憶を悠斗が追体験してる感じです。
これの他にも色々見たのですが、流石にそれら全ての風呂敷を畳むのは無理だろうと言う事で描写するのは上記のやつのみにしました。