IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第102話 温泉、波乱の始まり

『はいみなさん、おはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』

 

『はいはーい、天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』

 

『温泉が来ました。勝ちです。』

 

『これで3月と言わず2月に最終決戦が出来るようになったからかなり楽になったよねぇ。』

 

『尺稼ぎに必死にならなくて済むから本当に良かった……。』

 

『空白期間を丸々カットは流石に憚られるからねぇ。』

 

 

 

 

 1月20日火曜日。過去にISコアの保管記録がないにも関わらず絶対天敵(イマージュ・オリジス)が現れた大型温泉施設の調査のため、織斑一夏たち専用機持ちは平日の授業を免除される代わりに山中の温泉施設までやって来ていた。

 

「温泉なんて、久しぶりね~♪」

 

 和モダンな内装のロビーを見渡して、凰鈴音は嬉し気に声を弾ませた。

 

「山に囲まれて、景色の良いところですわね。」

 

「今、女性に大人気の、癒しスポット……。」

 

 ロビーの窓から望める大自然の景色を見たセシリア・オルコットが感嘆の声を上げ、それに更識簪が補足を付ける。

 

「僕、1度ここに来てみたかったんだあ。」

 

「このような場所での任務なら、悪くないな。」

 

「温泉まんじゅうというのはどこで買えるのだ?」

 

 シャルロット・デュノアと篠ノ之箒が笑顔で歓談し、ラウラ・ボーデヴィッヒがどこで知ったのか温泉まんじゅうを探す。

 

 そんな女性たちを見かねて、一夏は2つのカバンを両手にそれぞれ持ちながら注意した。

 

「おいおい。みんな、遊びに来たんじゃないんだぞ?先生や他の専用機持ちは学園の警備で動けないから、今回の調査は俺たちだけに任されてるんだ。気を引き締めていかないと。」

 

「そういうあんたこそ、荷物の中にタオルやら石鹸やらが入ってんじゃないのよ。」

 

「うっ!なぜそれを!?」

 

「あんたも昔からお風呂大好きだもんね~。楽しみにしてるのバレバレよ?」

 

 笑顔で一夏にそう指摘する鈴。温泉ということではしゃいでいるのは何も女性陣だけではない。一夏も風呂好きの1人として大はしゃぎしていた。何なら山の景色も取ろうと愛用のカメラも持ってきている程だ。

 

 家計を気にして一夏はしなかったが、昔から旅行好きなのだろうというのは修学旅行を何度も共にした鈴の印象である。キラキラとした目で周囲に視線を向ける彼の輝く顔が鈴の好きなポイントの1つだ。

 

 そんなことを考えながらも喋っていると、ロビーに引率者としてついて来た更識楯無が戻ってきた。

 

「はいは~い!みんな、お待たせ―♪おねーさんが迅速に簡潔に、ここのオーナーに話を聞いてきたわ!」

 

「さすがお姉ちゃん、仕事が早い……。」

 

「それで、オーナーは何と?」

 

 話を聞きに行って僅か数分で戻ってきた楯無にもはや驚かないどころか呆れる簪。その横でセシリアが楯無に何か情報はあったのかを聞いた。

 

「ISに関しては何も知らないし、隕石落下の理由も見当がつかないそうよ。過去に専用機持ちが来たこともないみたいね。ちなみに隕石の落下地点はここからすぐの山の中よ。そっちは今飛鳥ちゃんが調べに行ってるわ。」

 

「ああ、それで天羽さん、俺にカバンを預けていったんですね。」

 

 2つ持っているカバンの片方、天羽飛鳥から預かったそれを持ち直しながら一夏が納得いったという風に頷いた。

 

 ここに到着するや否や自分のカバンを一夏に預けどこかに行ってしまった飛鳥は、事前に聞いていたらしい隕石落下地点に向かっていたようだ。

 

 それを知った一夏も気を引き締めて調査に乗り出そうと、楯無に予定を聞いた。

 

「それで、俺たちはどこを調べるんですか?」

 

「あら一夏くん、やる気満々ね♪それならもうひとつ、仕事が増えちゃってもいいかしら?」

 

「え?」

 

「最近、ここの露天風呂にのぞき魔の目撃情報が出ていて、オーナーが困っているらしいの。そんな女の敵、放っておくわけにはいかないわよね!調査のついでに、私たちで捕まえちゃいましょう!」

 

 いつもの扇子に達筆な『成敗!』の文字を描き、楯無は鋭い目でそう声を上げた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。確かにのぞき魔は許せませんが、私たちは学園の任務に集中すべきでは?」

 

 そんな楯無に向かって箒が抗議する。箒の言葉にシャルロットも乗っかり、楯無に抗議しようと声を上げた。

 

「僕もそう思います。今回の件は謎が多いですし――。」

 

「この依頼を引き受ければ、調査期間中は温泉貸し切り、入浴し放題よ?」

 

「「やりましょう!」」

 

 お風呂好き2人はすぐ陥落した。

 

「おいおい……。」

 

 一夏もこれには苦笑いをするしかない。しかし一夏ものぞき魔は許せないし、何より温泉貸し切り入り放題は魅力的だったため、何も言わなかった。

 

「話は纏まったわね。それじゃあ早速、温泉をじっくり堪能――とと、調査開始しましょう!」

 

「お姉ちゃん、心の声が漏れてる……。」

 

「(あれ?今天羽さんが居ないのって、まさか止められるのを見越した楯無さんの策略なんじゃ……いや、楯無さんもここに来て初めて知ったことだろうし、そんなわけないか。)」

 

 楯無の本音を聞いてふと考えた疑念を振り払い、一夏は荷物を預けようとロッカーの方へと歩を進めるのだった。

 

 

 

 

「へえー、本当に広いところだな、ここ。」

 

 ロビーに置いてあったパンフレットを見た一夏は、そこに載っている浴槽の種類のあまりの多さに驚いていた。

 

「露天風呂だけでも、10種類くらいの浴槽に別れてるみたいだよ。」

 

 同じくパンフレットを見ていたシャルロットが笑顔でそう言った。色々なものがあって楽しみらしい。しかしその多さに箒は顔をしかめた。

 

「こう数が多くては、すべて調べて回るのは大変だな。」

 

「全部の温泉に浸かってたら、体がふやけちゃうわ。」

 

 箒の言葉に鈴も賛同する。全部回りたいところではあるが、長風呂は身体の水分が抜けて肌の乾燥に繋がってしまうため避けたいという乙女心が邪魔をする。

 

「そうね、大勢で行動するとのぞき魔も警戒するかもしれないし、少人数で順番に入浴していきましょう。まずは箒ちゃんとセシリアちゃん、お願いできる?」

 

「はい。」

 

「承知しましたわ。」

 

 楯無の言葉に箒とセシリアが頷く。

 

「ラウラは僕と一緒でいいかな?」

 

「ああ、そうだな。」

 

「あ、あたしは出来れば1人で入りたいんだけど……。」

 

 シャルロットはラウラを誘い、楯無と簪は姉妹仲良く入浴するだろう。この場で1人残されると読んだ鈴は単独での入浴を希望したが、それは楯無によって止められた。

 

「ダメよ。絶対天敵(イマージュ・オリジス)との戦闘の可能性がある以上、単独行動は認められないわ。」

 

「飛鳥は今思いっきり1人じゃない!ってそうだった、それならあたし、飛鳥と一緒でいいわ。」

 

 言ってから気付いた鈴はこの場に居ない飛鳥とのペアを提案した。それならいいわ、と引き下がった楯無は、鈴の言葉で思い出したように、あっ、と声を出した。

 

「そうだ、飛鳥ちゃんにも温泉貸し切りと入り放題のこと教えないと。……あら?」

 

「どうしたの、お姉ちゃん?」

 

「変ね、オープン・チャンネルで呼びかけてるのに反応がないわ。……もしかして私、着拒されてる?」

 

「さ、さすがにそれはないでしょう。俺もかけてみます。」

 

 しかし、一夏が呼びかけても反応はなかった。

 

「ダメだ、繋がらない。」

 

「何かあったとみるべきね。みんな、行きましょう!」

 

「「「はい!」」」

 

 ――しかし専用機たちの捜索も(むな)しく、飛鳥を見つけることは出来なかった。

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