IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第104話 篠ノ之束、弟子を手伝う

『どうも皆さん、おはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』

 

『はいはーい。天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』

 

『前回は温泉に行って束さんの協力を取り付けたところで終わりました。もうここに用はないので帰ります。』

 

『あの温泉、バフとか付かないからねぇ。みんなが戻ってくればそのままお開きだよ。』

 

『温泉仕様の立ち絵も所詮バスタオル巻いてるだけだしなぁ。学園の浴場でも同じだから見どころないんだよなぁ。』

 

 

 

 

「会いたかったよ~~!ちーちゃ~ん!」

 

「やかましい。」

 

 飛び掛かって来た篠ノ之束の頭を鷲掴みにしながら、織斑千冬は頭が痛そうに顔を歪めて束を連れて来た天羽飛鳥に視線を向けた。

 

「天羽、どこでこのバカを見つけて来た。」

 

「温泉施設の近くにいたので連れて来ました。今回の件の犯人です。」

 

「ほう?」

 

「ちーちゃん?束さんの頭はリンゴじゃないからそんなに力を籠めちゃいけないんだよ?」

 

 飛鳥の言葉に千冬は束の頭を鷲掴みにする手に力を入れ、ギチギチと締め上げながら片手で持ち上げる。その腕をタップしながら束がブラブラと宙に浮いた足を動かして遊んでいた。

 

「ふんっ!」

 

「ぐへぇ!」

 

「それで、天羽。束にはもうISコアを弄らせたのか?」

 

 束を部屋の隅に投げ捨て、千冬は飛鳥に向き直って本題を聞いた。

 

「それなんですけど……。」

 

「まだやってないよー。」

 

「なに?」

 

 言い淀んだ飛鳥の代わりに軽い調子で答えた束に千冬は顔をしかめる。

 

「イマージュ・オリジスがやってくる理由は、ISコアが奴等の世界のエネルギーを勝手に使っているからだろう。何故その対処をしない?」

 

「いやあ、別にやっても良いんだけどさ。盗電されてた電気が突然盗まれなくなったら、ちーちゃんはどうする?」

 

 ムクリと起き上がりながらされた束からの質問に千冬はしばし考え、口を開いた。

 

「………………確認しに行く、か?」

 

「少なくとも『あー良かったー』って放置はしないよね。だって気になるもん。」

 

 10年にもおよぶ盗電が突然なくなったからといって、そのまま水に流れるなんてことはない。絶対天敵(イマージュ・オリジス)は別世界までデモ活動をしに来るようなバリバリの行動派である。まず間違いなく状況把握のためにこちらの世界に来るだろう。

 

「で、その被害者は世界人口とほぼ同規模な訳だけど――どれだけの数が来ると思う?」

 

「…………全面戦争か。」

 

「ちーちゃんの予想も同じかあ。ちなみに私の予想も、ついでにあーちゃんのゼロシステムの予測も同じだよ。なーちゃんのはまだ聞いてないけど、多分同じ。ワラワラ湧いてくるよー、サバクトビバッタみたいに。」

 

 『大攻勢』。向こうにその気はないだろうが、そう判断されるだろう事が起こる。そしてそれが起これば、人類は戦わない訳にはいかない。国連による人類の総意が、絶対天敵(イマージュ・オリジス)と戦うことを決めてしまっている。

 

「でもそれ自体は問題じゃないんだよ。いくら来ようが殲滅できるから。問題はイマージュ・オリジスちゃんたちがこっちに来るのを止める切っ掛けがないこと。」

 

「切っ掛けがないだと?エネルギー問題が解決すれば――いや、そうか。()()()()()()()。」

 

「そっ。根本的な問題――イマージュ・オリジスちゃんたちの怒りをどうにかしない限り、戦いは続く。」

 

 ことの発端は束の作ったISコアが絶対天敵(イマージュ・オリジス)たちの世界からエネルギーを奪っていたことが原因だ。それに抗議するために隕石という宇宙船に乗って絶対天敵(イマージュ・オリジス)はこの世界に飛来し、ISがある場所でデモ活動をしているというのが【イノベイター】である飛鳥の絶対天敵(イマージュ・オリジス)評だ。

 

 その飛鳥の言葉に全幅の信頼を置き、束はそれが事実であることを前提として考えた。仮に全てのISコアに束のコード・ヴァイオレットで命令し、絶対天敵(イマージュ・オリジス)たちの世界からエネルギーを奪わないようにしたとして、果たして絶対天敵(イマージュ・オリジス)は現れないようになるのか。

 

 答えは否。正確にはその未来に至るためのピースが足りていないと言った方が良い。

 

「言葉も交わさないまま、互いに見つければ即戦闘。そんなのを相手にしてて怒りが収まる訳ないじゃん?」

 

 結局のところ、意思疎通が出来ないのが問題なのだ。どれだけ声を上げても聞いてもらえない相手と仲良くなど出来ない。

 

「互いの主義主張を知るべきなんだよ。良かれ悪しかれ、長い付き合いをしたいならね。」

 

「お前がそれを言うのか?」

 

「束さんは長い付き合いしないからいいんだよ。でも、あーちゃんはそうじゃないからさ。」

 

 千冬と軽口を叩き合っていた束は、会話に混ざれずにいた飛鳥を引き寄せ後ろから抱き締めた。

 

「レクイ・コンべちゃんだっけ?もー、娘が出来たなら束さんにも教えてよね!」

 

「なら群咲の連絡先下さいよ。あれが無かったせいでなのはが缶詰する羽目になったんですから。」

 

「うんうん!いくらでもあげる!これからはママ友だね、あーちゃん!」

 

「はい!」

 

 束のママ友発言を清く受け入れた飛鳥に頭を痛めながら、千冬は部屋を出ていく2人を見送るのだった。

 

 

 

 

「んー、完成率は4割行かないぐらいかな?」

 

 葉加瀬なのはの工房にやって来た束は空中に投影された画面の様子を見てそう言った。

 

「あとは組み上げてシステムの構築をすれば終わるんだけど、手が足りないんだよねぇ。」

 

「おーけーおーけー、2月中には終わらせよっか。3月まで伸びると進級に響くし。」

 

 言いながら、束は持ち込んだ機材を拡張領域(バススロット)から取り出し、それを駆使してなのはの作業を手伝い始めた。

 

「完成図は?」

 

「あーちゃんから作りたい物は聞いてるから大丈夫。量子型演算処理システムでしょ?」

 

「束さんには隠したかったんだけどねぇ。クアンタの能力も、これも。」

 

 互いに手を止めないまま2人は世間話を続けていく。脳内では互いの進捗状況を考慮した最短での製作スケジュールが更新され続け、その情報に酔った飛鳥は早々に退散した。

 

「京都で白騎士に飲まれたいっくんを助けた時にはもう分かってたけどねー。ツインドライヴシステムも意識共有の媒介になるGN粒子の生産量を増やすためでしょ?ゼロシステムだってこれとリンクさせてあーちゃんの処理能力を底上げするのを見越して積んでた。いやー、騙されたよ。最初からそっちが主目的だったんだもん。」

 

 3年前――時期的にはそろそろ4年前のこと。束と出会ったことで資金や設備の制限を一時的に脱したなのはは、ダブルオークアンタに至るための技術ツリーを一気に解放するかのように研究を加速させた。

 

 そう、なのはは束と共に研究していた時からダブルオークアンタという形を見据えていた。

 

 早々にGN粒子が持つ意識共有の媒介になる性質を解明していたなのはは、それを生産するGNドライヴとその生産量を2乗化するツインドライヴシステム、それによって大量に飛鳥に流れ込む情報を処理するための量子型演算処理システムの草案とそれを行うための入出力装置となるゼロシステムを、束にそうと気付かれることなく作り上げた。

 

 束をして飛鳥が京都でクアンタムシステムのタイプレギュラーを作動させなければ気付けなかった程、巧妙にそれぞれの繋がりを断っての開発だった。途中でガンダムエクシアやらGNソード系列の武器やらを作っていたのもあって、稀代の大天才である束を欺いて見せた。

 

「最初の方の束さん、信用は出来ても信頼は出来なかったからねぇ。3年目辺りはそうでもなかったけど、クアンタのことを知って何するかちょっと想像できなかったから隠してたんだよね。」

 

「うーん確かにあの頃は心(すさ)んでたから変なこと考えたかもだけど、あーちゃんのお弁当食べて2ヶ月ぐらいでかなり真っ当になってたと思うんだけど。」

 

「筋子おにぎりに絆されたね?」

 

「だって美味しかったんだもん。」

 

 シリアスなのか緩いのか判断に困る会話を続けながら、2人の作業は寮の門限が来るまで止まることはなかった。

 

 

 

 

『はい、これ以降は束さんが協力して量子型演算処理システムを作ってくれます。何なら寮の門限とか授業のない束さんが主導してくれます。』

 

『この分ならバレンタインが過ぎた頃には出来上がるね。やる気出てきたよ。』

 

『ミニゲームの連続で完全に燃え尽きてたもんね、なのは。』

 

『ちょっと大掛かりなのを作ろうとするとすぐこれだから誰も整備科ルート進まないんだ……!』

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