「それでは、専用機持ち合同の実戦訓練を始めます。」
グリフィン・レッドラムを迎えた月曜日。第3アリーナに集まった生徒たちを見渡して欠員が居ないことを確認した山田真耶の号令によって、今ではすっかり珍しい授業となってしまったISを使う実習が始まった。
もちろん、いつ隕石が降って来て
「レッドラムさんは今日が転入初日でしたね。早く授業に慣れて頂くためにも、実演をお願いしたいと思います。どなたか、対戦を希望する人はいますか?」
「はい!ぜひお願いしたいです!」
「私も、私も!おもしろそー!」
「私も……興味、津々……。」
真耶の呼びかけにヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーと凰乱音、更識簪が手を挙げた。
「え?そんなに大勢とは、さすがにちょっと……。」
授業的にあんまり良くない。そんなことを考えながら困った顔をした真耶に、グリフィンがストレッチをしながら了承の声を出した。
「私はオッケーですよ。スタミナには自信ありますから。」
「そ、そうですか?」
本人が良いならと真耶の了承も得られたところで、グリフィンは3人に楽しそうに笑顔を向けた。
「さー、みんな、かかっておいで!いっちょ、お姉さんの良いところを見せてあげよう!」
そう言いながらISを展開しPICで浮かび上がったグリフィンを追って、まず最初に手を挙げたヴィシュヌが飛び上がった。
『ここで立候補するとブラジルと戦えますが、この加入イベントでは最後にある
『ちなみにボクたちがブラジルをブラジルって呼んでるのは名前も苗字も呼称として微妙だからだよ。』
『そもそも加入時期的にろくに話に登場しないからなぁ。嫌いじゃないけど好きになるほど愛着がなぁ。』
『機体もビット積んでるぐらいしか情報ないからねぇ。その癖、謎のエネルギー弾蹴って来るし。』
『ダイヤモンド・シュートってなんなんだ一体。』情報少なすぎて戦闘書けない
「ふう、いい汗かいたー。さすが代表候補生、みんな強いね!」
合同訓練後のシャワールーム。シャワーで汗を流しながら、グリフィンはにこやかに笑いながらそう言った。
ヴィシュヌ、乱、簪の3人とグリフィンの連戦は、シールドエネルギーが尽きられても困るということでそれぞれが少し短めの試合時間ではあったが、どれもが一進一退の見映えのいい戦いだった。
「楽しい試合でした。またぜひお手合わせ願いたいです。」
「私も、貴重なデータが取れて、嬉しい……。」
ヴィシュヌも簪も大満足の結果に笑顔でシャワーを浴びている。
「でも、あれだけ連戦してまだこんなに元気なんてすごい体力よね。自慢するだけの事あるわ。」
同じくシャワーを浴びながら、3連戦をやってのけたグリフィンのスタミナを乱が褒めた。
当たり前ではあるが、ISバトルとは運動である。PICとスラスターで飛び回ってはいるが、剣を振るなり銃を撃つなりでも体力と集中力は消耗する。というかハイパーセンサーの全方位視界を見ているだけで割と疲れる。
特に第三世代ISはイメージ・インターフェースの操作に思考が割かれるのも相まって、第二世代IS以上に操縦時の疲労があることで有名だ。もちろん、専用機として第三世代ISを操縦している専用機持ちたちは慣れているが、それでも連戦するとなると話は変わって来る。
それなのに3連戦を苦も無くこなして見せたグリフィンのスタミナは、乱たち専用機持ちをしても驚くべきものだ。
「ふふ、スタミナ作りのコツはたくさん食べてたくさん運動することだよ。特にオススメはお肉かな~♪チカラがつくしお腹もふくれるし!お肉サイコー!」
シャワーで泡を洗い流しながらグリフィンはみんなにそう言った。
「ふむ、一理あるな。私も身体の稼働効率を考え、朝食にステーキを摂るようにしている。」
ラウラ・ボーデヴィッヒもグリフィンの言葉に賛同し、自身の食生活を明らかにした。もちろん普段から食事を共にしている面々は知っている情報ではあるが、その理由を知ったのは今回が初めてである。
その情報に流石軍人と口々にみんなが言う中、セシリア・オルコットが昨日のことを思い出した。
「そういえばグリフィンさんは昨日、『キング・メガ・ビッグバーガー』を完食してらっしゃいましたわね。」
セシリアの証言に一同に衝撃が走った。
「ええっ!?あの巨大バーガーを全部食べたの!?」
「あれはものすごいカロリーのはずだ。なぜこんなスタイルを維持できるのだ……!?」
シャルロット・デュノアが驚き、篠ノ之箒が思わず身を乗り出して隣の個室に入っていたグリフィンの身体を見た。
箒の視線に僅かに身体をよじって恥ずかしそうにしながら、グリフィンはその疑問に答えた。
「あはは、小さい頃はお腹空かせてばっかりだったから、食べ物はすぐ栄養にしちゃう体になってるのかもね。」
「え~?それって~、どういうこと~?」
グリフィンの話に布仏本音が泡で身体を羊のように覆い隠しながら聞いた。
「実はさ、私の家ってすごく貧乏だったんだよね。その上、子どもが多い大家族だから、昔から『食べ物にお金を出すならお肉!』って感じでさ。」
この場には金銭的事情で食料に苦労した人間が居ないため共感こそ得られなかったが、グリフィンの話を聞いて全員が事情を察した。
「今は代表候補生として国から支給金が出てるから、大分生活は楽になったけどね。でも下の子たちはまだ小さいし、お姉ちゃんとしてはもっと成績上げて、ガンガン稼ぐつもりだよ!」
「へえー、苦労してるのねえ。」
「苦労と思ったことはないよ。大好きな家族のためだからね。」
安物のシャンプーを泡立てながら、グリフィンは笑ってそう言った。
「あ、そういえば飛鳥がどこかに行っちゃったけど、どこに行ったの?」
そんな中、グリフィンがこの場に居ない唯一の専用機持ちの所在についてを聞いた。それについて1番詳しい人物に凰鈴音が声をかけた。
「なのは、飛鳥がどこに居るか知ってる?」
「寮に戻って部屋のお風呂使ってる。飛鳥は人混み苦手だからね。」
「いつも居ないと思ったら、そんなことをしてましたのね飛鳥さん……。」
実技の後の恒例である混み合うシャワーでいつも見かけないと思えば、寮まで戻って部屋の浴室で汗を流していることが露見した。
「そう言えば、街で天羽さんを見かけることってないよね。それも人混みが苦手だから?」
「遊びに行かないだけで買い物しには行ってるよ。まぁ服選びでもない限り即行で帰って来るけどね。」
シャルロットの問いに、ふわふわの茶髪を時間を掛けて洗いながら葉加瀬なのはがそう答えた。
「理由に検討は付くけど、あんたらも難儀なもんね。」
「ボクと違って、飛鳥は受け流すのが苦手だからねぇ。」
「そういえば、わたくしそれで困ったことはありませんわね。」
「イージスの2人も大丈夫そうだし、比率的に飛鳥がおかしい、いや飛鳥はおかしいんだけど。」
なのは、鈴、セシリアの3人が何やら話し始めた横で、事情を知らない面々がそれに聞き耳を立てているとシャワーの個室の外から声が掛けられた。
「お前ら、あんま時間かけてっと髪乾かす時間無くなるぞ~。」
「ダリル~、髪乾かしてほしいっス~。」
「おーう。」
ダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアの2人によって急かされた専用機持ちたちは、急いでコンディショナーに手を伸ばした。グリフィンはコンディショナーを持っていないのでそのまま髪にタオルを巻きつけ水気を取りにかかった。
一方その頃、寮の自室に量子ジャンプで帰っていた天羽飛鳥は。
「しまった、シャンプー詰め替えてない。」
いそいそとシャンプーの詰め替え作業をしていた。
テンカラット・ダイヤモンドとかいう、ビット以外の機能が全く分からない機体。
それはそれとしてグリフィン呼びがすごくしっくり来ない件。