IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第111話 生誕、それは一瞬の別れ

「ああもうっ!なんでこんなに硬いのよコイツ!?」

 

 葉加瀬なのはと篠ノ之束の居る整備室まで続く通路。人間であれば十分に道幅のあるそこをその巨体で進もうとする新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)に、大型実体剣【角武】を叩きつけた凰乱音が苛立ったようにそう愚痴る。

 

 かつて街中に現れた植物型よりは攻撃が通るが、普段相手にしている他の大型絶対天敵(イマージュ・オリジス)よりは遥かに硬い。これで本来なら見た目通り空中を飛行するであろう相手なのだから嫌になる。

 

「無駄口叩かない!一夏、今よ!」

 

「おう!【零落白夜】!」

 

 愚痴る乱を怒鳴りつけた凰鈴音が作った隙を逃さず、織斑一夏が零落白夜の刃で斬り掛かる。

 

【グルルァ!!!】

 

 だが、一夏が剣を振りぬくより早く新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)が狭い通路の壁を削りながら無理矢理身体を捻り致命傷を回避した。

 

「くっ、すまん浅かった!」

 

「十分よ!食らいなさい!!」

 

 PICも合わせた身軽なバックステップで間合いを取り直した一夏と入れ替わるように、鈴が新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)に向かって肉薄する。単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)天之四霊(ティェンヂィースーリン)】の【玄武】で相手の一部を拘束し、そこに双天牙月の一撃を叩き込む。

 

「重っ……!でも、一夏ぁ!」

 

「任せろ!!」

 

 再び鈴が新型の体勢を崩させ生み出した隙に、一夏が瞬時加速(イグニッション・ブースト)で切り込む。

 

「今度は逃がさねえ――!!」

 

 鋭い踏み込みと共に、零落白夜の刃が新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)を切り裂いた。

 

【グ、ル…………!?】

 

 呻き声のようなものを最後に、新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)は床に倒れ伏した。

 

「やった!倒した!」

 

「こっちに有利な狭い場所でこれだけ時間かかるとか、もし広い外でやり合ってたらもっと苦戦してたわね……。」

 

 乱と鈴が武器を拡張領域(パススロット)に仕舞いながら一息吐く。同じく一夏も雪片弐型を仕舞うと、戦闘が始まった時に別れた更識楯無と更識簪の向かった方を見てPICで浮かび上がった。

 

「もう1体を相手してる簪たちが心配だ。急ごう!」

 

 

 

 

清き激情(クリア・パッション)!!」

 

 空気中に散布されたアクア・ナノマシンが一斉に熱を持ち、辺り一帯を覆っていた霧が水蒸気爆発を起こす。

 

 その中心部に居た新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)はその爆発をまともに受けたが、その堅牢なエネルギーシールドによってダメージはあまり与えられずに終わった。

 

【グルァ!!】

 

「うーん、攻撃力不足ね。」

 

「【春雷】!」

 

 突っ込んで来た新型を回避しながら楯無は攻撃力不足を嘆き、荷電粒子砲【春雷】を撃ちながら前に出た簪と立ち位置を入れ替える。

 

「っ、硬い……!」

 

 超振動薙刀【夢現】で斬り掛かった簪が、相手に当たる寸前で触れたエネルギーフィールドの硬さに顔を顰める。

 

「ちょーっと、相性が悪いわねぇ。ミストルテインなら通るかしら?」

 

「【山嵐】が使えれば……。」

 

 威力のある攻撃がない訳ではないが、使用に何かしら制限のある2人はこの新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)との相性が悪かった。それもあってじりじりと戦場が移動しており、もう整備室まであと少しというところまで後退させられている。

 

「不味いわね、これ以上は下がれないわ。」

 

「一夏たちは、もう終わったかな……。」

 

「零落白夜ならもう終わっててもいい頃ね。」

 

 話しながらも位置を入れ替えながら新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)に連撃を叩き込み続ける更識姉妹。それを鬱陶しそうにしながらも新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)は追い払うように身をよじるだけで、前進するのを優先し始めた。

 

「くっ、目的地が近付いて私たちを無視し始めたわね!」

 

「止められない……!」

 

 本来空を飛ぶだろう巨体が床を這うように通路を進み、引き留めようと攻撃する楯無と簪を踏み越えて遂に整備室の前に辿り着いた。

 

【グルル!】

 

 扉を突き破ろうと、新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)が翼の付いた腕を伸ばす――。

 

 

 

 

「――ママ。」

 

 ダブルオークアンタのコア人格が居る花畑。そこで祝福の歌を口ずさんでいた天羽飛鳥を、レクイ・コンべが呼んだ。

 

「うん、分かってるよ。」

 

 そのレクイの頭を撫でて、飛鳥はコア人格に顔を向けた。

 

「クアンタ、外に出して。」

 

「もういいの?」

 

「うん。またすぐに会えるから。」

 

「……分かった。」

 

 外に出る了承を得た飛鳥の視界がぼやけていく。

 

「ママ……。」

 

「レクイちゃん、行ってくるね。」

 

「うん……行ってらっしゃい。」

 

 娘との一時の別れをして、飛鳥は現実へと帰還した――。

 

 

 

 

 ――扉を突き破ろうと伸びた腕が、扉を突き破って飛来した6つの刃に斬り刻まれる。

 

【グルッ!?】

 

 それに驚き腕を引っ込めようとする新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)に、そのまま6つのGNソードビットが襲い掛かり全身を細かく裁断されていく。

 

【グ、ル、ル……。】

 

 ものの数秒で達磨となった新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)が沈黙し、床に転がる。

 

「やっぱりここに居たのね、飛鳥ちゃ……ん……?」

 

 新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)が倒れたことで緊張を解いた楯無が斬り刻まれた扉から整備室を覗くと、

 

「ママ!」

 

「うん、ママだよ。ハッピーバースデイ、レクイちゃん。」

 

 新緑色の髪と眼を持つ、幼い少女を抱えた飛鳥がそこに居た。

 

 

 

 

 なのはと束の居る整備室に進撃する新型絶対天敵(イマージュ・オリジス)は見事撃退され、第3アリーナに大量に現れた絶対天敵(イマージュ・オリジス)の群れも飛鳥によって殲滅された。

 

 そうして倒された絶対天敵(イマージュ・オリジス)の残骸と壊された通路の後片付けを職員に引き継いだ飛鳥は、レクイを伴ってIS学園作戦本部にやってきた。

 

「天羽、その子どもがレクイ・コンべか?」

 

「はい。」

 

 入って開口一番に織斑千冬が聞いてきた言葉を飛鳥は肯定した。

 

「ただ、この身体を持つに当たって記憶を無くしてるみたいで、事情を聞くのは無理そうです。」

 

「そうか。……これは独り言だが、その子の事情を考えれば拘束後速やかに研究所送りが妥当だ。」

 

 飛鳥から視線を逸らしながら千冬がそんなことを言い始め、レクイは不安そうに飛鳥と繋いでいた手をぎゅっと握る。

 

 そんなレクイを安心させるように頭を撫でながら、飛鳥は千冬の言葉を待った。

 

「だが、IS学園にはエネミーコアなんて物を保管していた記録はないし、そこからレクイ・コンベなんて子どもが出てきた証拠もない。今ここに居るのはいつの間にかIS学園に迷い込んでいた子どもだけだ。」

 

「IS学園では、そう言う子への対応はどうなっているんですか?」

 

 生徒側に提示されている校則には『不審者発見時は近くの職員に速やかに報告』としか書かれていない。職員側の対応はどうなのかという飛鳥の問いに千冬はすぐに答えた。

 

「保護者の捜索が済み次第保護者の元に帰すが、それまでは学園内で面倒を見ることになっている。IS学園(ここ)には機密が多いからな、契約書で情報漏洩しないことを確約させないと外には出せん。3ヶ月探して見つからなければ施設行きだが、そこは心配いらないだろう。」

 

「はい。」

 

「なら今日の所はもう戻って良い。食堂で美味しい物でも食べさせてやれ。」

 

「ありがとうございました、織斑先生。ほら、レクイちゃんも。」

 

「ありがとう!」

 

「ああ、いっぱい食べてこい。」

 

 大きく手を振りながら飛鳥と一緒に作戦本部を出て行ったレクイを見送って、千冬は一息ついた。

 

「まったく、入って早々に剣気を飛ばして威嚇してくるとはな……()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 口角が上がろうとするのを必死に取り繕って、千冬は淹れたコーヒーに口を付けた。

 

 

「ママ、どうしたの?」

 

「いや、ちょっとね……。ゼロが死の未来で埋まった……こわっ。

 

「???」

 

 

 

 

「さて……。」

 

 IS学園食堂。教室、アリーナ、整備室に続く生徒たちの第4の溜まり場と名高いそこで、専用機持ちたちが本日2度目の尋問を始まっていた。

 

「とりあえずこれだけは言っとこうかしら。」

 

 飛鳥の目の前にカツ丼を出した鈴がズビシッとレクイを指差した。

 

「誰よその女ぁ!!!」

 

「うちの子。可愛いでしょ?」

 

「後で撫でさせなさい!」

 

「お姉ちゃん!?」

 

 鈴とのコントのようなやり取りの後、改めて楯無による尋問が始まった。

 

「まずはその子について話してもらいましょうか。」

 

「レクイ・コンベちゃんです。可愛いでしょ?」

 

「ええ可愛いわ。で、どこから連れて来たの?」

 

「地下、になるのかなぁ。発電所の所に居たのを見つけてなのはの所に置いてたので。ほら、可愛いでしょ?」

 

「ええそうね可愛いわね。それで、いつから匿ってたのかしら?」

 

「今月の11日だから、大体半月前からですね。頬っぺたとかもちもちで可愛いでしょ?」

 

「飛鳥ちゃん、その子が可愛いのは十分わかったから、まずはカツ丼でも食べて真面目に答えてくれない?」

 

 膝の上に抱えたレクイを今までに見たことのない満面のニコニコ笑顔で構い倒す飛鳥にさしもの楯無も困っていた。

 

「飛鳥さんが触れているということは、それだけ親しいということですけれど。」

 

「何か、なのはが相手の時以上にべったりしてない?」

 

「あれはもう親子っスね、親子。」

 

 そんな飛鳥を見てセシリア・オルコットたちも困惑している。表現としてはフォルテ・サファイアの親子がしっくり来る距離感だ。妹を可愛がるような感じですらなくそう感じるのだから、構い方というのは奥が深い。

 

「それじゃあ、正直に言って。その子は一体何者?」

 

「イマージュ・オリジスですね。」

 

「「「!?」」」

 

「ぶっちゃけたなあオイ。」

 

 本題と言わんばかりにされた楯無の質問に飛鳥はさらりと爆弾発言をして、専用機持ちたちに衝撃が走った。1人コーラフロートを飲んでいたダリル・ケイシーはそんな飛鳥にむしろ呆れたように言った。

 

「それ、危険じゃないの?!」

 

「外装がない以上、今のレクイちゃんに出来るのはせいぜい空間転移ぐらいだから大丈夫。」

 

 凰乱音が叫ぶように聞いた事に対して、飛鳥はレクイを撫でながら何でもないようにそう答えた。

 

「それに記憶――ログデータもないから、戦う理由がない。」

 

「ログ?」

 

「コアからの復旧時に個体識別のための名前以外、全部忘れちゃうんだって。だから今、この子には戦う理由になるような遺恨もない。」

 

 遺恨。その言葉に疑問符を浮かべる専用機持ちたちの中で、楯無は生徒会長として前に出た。

 

「安心していいのね?」

 

「何かあれば私が止めます。私の子ですから。」

 

「そう……であればいいわ。」

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