IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第116話 出現、それは最終決戦の始まり

 それは突然の出来事だった。

 

「「「――――!」」」

 

 IS学園の食堂で談笑しながら昼食を楽しんでいた天羽飛鳥、セシリア・オルコット、フォルテ・サファイア、ダリル・ケイシーたちイノベイターと、飛鳥の隣でミートソーススパゲティを美味しそうに食べていたレクイ・コンベの5人が、突如その動きを止めた。

 

「エッ、なに?どうしたのみんな?」

 

 様子のおかしい5人を一緒にテーブルを囲んでいた凰乱音が心配そうに見つめる横で、同じくテーブルを囲んでいた凰鈴音は視線を鋭くしていた。

 

「あんたたちがそうなるってことは、それだけヤバいってことよね。」

 

「ええ。今までの比ではありませんわ。」

 

「まだまだ感覚が馴染んでないオレにも分かるってことは相当なことだからな。」

 

「しかもこれ、近場じゃないっスね。かなり遠い……海?」

 

 鈴の言葉に頷くセシリア達イノベイター。ダリルはまだ感覚の定着がし切っていない状態ながらも分かったという事実にそれだけの規模であると警戒し、一足先にイノベイターの感覚を掴んでいるフォルテは漠然としながらも場所を口にした。

 

「ママ、ママ……っ!!」

 

「大丈夫だよ、レクイちゃん。」

 

 縋りついてくるレクイを宥めながら、飛鳥はIS学園の作戦本部に通信を入れた。

 

『どうした、天羽。』

 

「今すぐ赤道周辺の広域探索をしてください。」

 

『なに?……わかった。山田先生!』

 

 通信に出た織斑千冬に手短に用件を伝えて、飛鳥は残っていた自分とレクイの分の食事全てを凄まじい速さで食べ終えてから席を立った。

 

「なのはたちを起こしてクアンタの最終調整してくるから、それまでよろしく。」

 

「どれくらい掛かりますの?」

 

「分かんない。なのはも束さんも、作業明けで長時間寝た直後は低血圧で作業効率が下がるから。1、2時間は覚悟してて。」

 

「それは別に構いませんけれど……早くしないと、わたくしたちが全部倒してしまいますわよ?」

 

「飛び切り目立つ大型は残しといて―。」

 

 制服を掴んで離さないレクイを抱き上げた飛鳥が食堂から駆け出して行ったところで、専用機持ちたちに作戦本部から通信が入った。

 

『みなさん、こちら作戦本部です。至急集まってください。イマージュ・オリジスが現れました。』

 

『街に出ている者はISを展開を許可する。すぐに戻ってこい。』

 

「飛んで戻ってこいって、本当にヤバイじゃない!」

 

 食堂に残されたセシリア達は、申し訳なく思いながらも自分たちが食べていた食事をそのままに作戦本部へと駆け出した。

 

 

 

 

『どういう……ことだ……?』

 

『最終決戦だとぉ!?』

 

『なんで……どうして……。』

 

『束さんでの強制最終決戦始動はやってないから、通常条件でのイベント進行?確かレクイ・コンベの出現から一定日数経過後だった筈だけど、今何日目だっけ。』

 

『19日目……だから1日早い。おかしい。』

 

『……飛鳥、Wiki見たら最終決戦は【レクイ・コンベ出現から約20日】ってある。これ19日目も入ってるぽい。』

 

『Wikiが横着するなあ!通常発生だとレクイちゃんがあああ!!!』

 

 

 

 

「全員……ではないな。オルコット、天羽はどうした。」

 

 5分と掛からずに集合した専用機持ちたちを見て1人居ないことに眉をひそめた千冬がセシリアに飛鳥の行方を聞いた。

 

「なのはさんの所で最終調整をしてくる、と。場合によっては1、2時間かかると言っていましたわ。」

 

「あいつはまた……。まあいい、お前たち、よく聞け。」

 

 セシリアの答えにため息を吐きそうになりながらもグッと堪えた千冬が口を開いた。

 

「5分前、赤道上にイマージュ・オリジスが出現した。」

 

「そんなに遠くに!?」

 

 東京から計って約3900Km。それが赤道までの距離だ。日本の全長が3500Km以上とされているため、日本を縦断するほどの距離を隔てた先に現れたことになる。

 

「正確には、すでに赤道上を離れている。軌道から見て、恐らくIS学園を目指して高速移動中だ。」

 

「衛星からの映像では、かなりの数の大型に引き連れられて多数の小型イマージュ・オリジスがいます。これがその映像です。」

 

 山田真耶が作戦本部のディスプレイに衛星からの映像を表示すると、専用機持ちたちは息を呑んだ。

 

「なにこれ……。」

 

「まるで、雲……。」

 

 それは小型絶対天敵(イマージュ・オリジス)の群れ。衛星から見ても明らかなほどの密集率と数が、それをまるで雲かのように映していた。

 

 その小型絶対天敵(イマージュ・オリジス)の雲の中に大型絶対天敵(イマージュ・オリジス)がいるが、何体居るのかがその雲によって正確に分からない。それほどまでの数。

 

 映像を見て声も出ない専用機持ちたちに、千冬は渋々といった様子で、それでありながら確かな口調で言った。

 

「学園にて迎撃すれば甚大な被害が予想される。よって今回は専用機持ちを海上に配置する。全員、出撃準備だ。」

 

「「「はいっ!」」」

 

 慌ただしく作戦本部から出て行って更衣室に向かった専用機持ちたちを見送った千冬は、隣にいる真耶に声を掛けた。

 

「山田先生。戦闘教員に同行して、現場で小型イマージュ・オリジスの撃破に協力してくれ。」

 

「えっ!?あの、許可は大丈夫なんですか?私はIS学園の外じゃ……。」

 

「学園長に何とかして貰う。政府もこの状況で許可を出さない筈がない。すぐに準備を。」

 

「は、はいっ!」

 

 生徒たちと同じように駆け出して行った真耶を見送った千冬は、周囲の職員が情報収集や各所への情報共有に動く中、人知れず作戦本部を後にするのだった……。

 

 

 


「――あら、あなたから連絡してくるだなんて珍しい。何の用かしら、共犯者(アコンプリス)ちゃん?」

 

「……今から送るポイントに全員で行って欲しい?ちょっと、まさか赤道上に出たっていうイマージュ・オリジスの大群と戦えって?冗談じゃないわ。」

 

「隊長命令?あなたまだ隊長じゃないでしょう。……明日からなる?せめて今からって言いなさいよそこは。」

 

「はぁ……分かったわ。ただし、協力は出来ない。私たちは私たちで勝手にイマージュ・オリジスと戦う。それでいいわね?」

 

「それじゃ、明日からよろしく頼むわよ?新隊長さん。」


 

 

 

「起きてください、束さん!ほら、なのはも起きて!」

 

 雲と見紛う量の絶対天敵(イマージュ・オリジス)が赤道上に現れ、専用機持ちたちが作戦本部に集まって説明を受けている頃。IS学園のとある整備室で、タオルケットに包まって眠る葉加瀬なのはと篠ノ之束の2人を起こそうとする天羽飛鳥の姿があった。

 

「ふぁぁ~~~…………なぁにぃ、あすか……ボクねむいんだけど…………。」

 

「最終決戦が始まっちゃったの!すぐにクアンタの最終調整して!」

 

「……にゃんてぇ~…………?」

 

「ダメだ、完全に思考が死んでる……。」

 

 なんとか起こせたなのはに事情を説明し作業を頼むが、普段では考えられないほどの中身がない以前に器さえないかのような声で聞き返される。そして束は依然眠ったままで起きる気配がない。

 

「え、詰んだ?」

 

 飛鳥が軽く絶望していたその時、整備室の扉が開けられ呆れたような声が響いた。

 

「何をしているんだ、まったく。」

 

「織斑先生!」

 

 飛鳥が振り返った視線の先にはやれやれと言った風体の織斑千冬が立っていた。千冬は声をあげる飛鳥の横を通り過ぎて気持ち良さそうに眠る束の元に辿り着くと、その寝顔にかかった髪を丁寧に払いながら、見つめてくる飛鳥に対して口を開いた。

 

「良いか天羽。いくら呼び掛けても起きてこないバカにはな──。」

 

 すっ、とどこからともなく取り出した愛用の出席簿を手に取った千冬は、それを頭上に構えてから円を描くように思いっきり振りかぶった。

 

────バッシィィィン!!!

 

「ごふぅっ!!!??」

 

「この手に限る。」

 

「たっ、束さーん!?」

 

 

 

 

「映像でも凄い量だったけど、実際に見るともっと凄いな……。」

 

 圧倒されたような織斑一夏の声が、オープンチャンネルを伝って専用機持ちたち全員の耳に届く。

 

 ISスーツへと着替え、かつてないほどの早さで装備の確認を済ませた一夏たちはIS学園を目指す絶対天敵(イマージュ・オリジス)を迎え撃つために編隊を組んでIS学園を飛び立った。

 

 速度に秀でる白式や紅椿は他を引き離さないように多少抑えつつ、遅い者には凰鈴音の甲龍・黄帝の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)【天之四霊】の【青龍】による空間圧での後押しで全員がほぼ同時に現場に着いたところで目にしたのは、圧巻の『雲』だった。

 

「うへぇ、こりゃ相手するのかったるいぞ。」

 

「百でも千でもなく万とか。セシリア、これ全部倒せそうっスか?」

 

「倒すだけなら、なんとか……。ですが、IS学園に到達させないとなると少し厳しいですわね。」

 

 ISのハイパーセンサーが表示する絶対天敵(イマージュ・オリジス)の反応は、()()()()()1()()。もちろん、下四桁には0以外の数字もある。

 

「箒の絢爛舞踏のおかげで、エネルギーの心配をしなくてもいいのが唯一の救いね。」

 

「ああ。だがシールドエネルギーが満タンでも、機体ダメージが蓄積されれば動けなくなる。なるべく攻撃を受けないようにするのがいいだろう。」

 

「1万を相手に被弾なしは流石に骨が折れるね。だが!私たちならば大丈夫さ!」

 

「例えどれだけの数が居ようと、私たちなら勝てます!」

 

 しかし、その数を前にしても誰も臆することはなかった。最年少であるクーリェ・ルククシェフカも、小学生のコメット姉妹も、震えこそしてはいるが後退しない。

 

 今までの経験が、結んできた絆が、自分たちなら勝てると鼓舞してくれる。

 

「みんな、今回の戦いは山田先生たち戦闘教員の方々も戦ってくれるけど、撃ち漏らしの掃討に専念してもらうからあんまり頼り切らないようにね。」

 

「フフン、十分よ!よーするにいっぱい倒せばいいんでしょ?」

 

「大型との戦闘を考えると、山嵐は使えない……でも、みんなと一緒なら。」

 

「かんちゃんは~、私が守るよ~。」

 

 剣を、銃を持った専用機持ちたちが眼前の『雲』に切っ先を向ける。

 

「みんな、行くぞ!」

 

 一夏の掛け声と共に、全員が『雲』に飛び込んだ。

 

 

 

 

『うっわ空腹ペナ付いてる。飛鳥、朝食。』

 

『えぇい!食堂まで遠いんじゃぁ!』

 

『寝起きつらー……。これ間に合う?』

 

『正直好感度稼ぎ過ぎたの後悔してる。』

 

 

 


「あー、やっぱりここにあったんだ。」

 

「頼んだぞ、束。」

 

「うんうん、直ぐにやっちゃうよ。()()()()()()()は事前に作ってあったしね。ちょっと待ってねー。」

 

「……さて、鈍ってないといいが。」




最後の部分抜けてたので加筆
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