IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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もはや12時に更新できてないことが当たり前になって来ましたね……


第119話 天柱、それは文字通り

「これは流石に、やってられませんわね。」

 

 赤道付近での絶対天敵(イマージュ・オリジス)との戦闘開始から約1時間。一撃必殺の零落白夜を持った織斑一夏と織斑千冬が居てもなお、その時間で倒せた相手の数が10分の1にさえ届かないという事実にセシリア・オルコットは思わず愚痴を零した。

 

 使用して空間中に散ったBTエネルギーを回収できる【B.E.A.U.T.I.E.S.(ビューティーズ)】を持つため、武装が破壊されない限りは残弾を気にせず戦えるセシリアではあるが、それでも体力の限界はある。

 

 あまり移動せず固定砲台気味に弾幕を張るのを優先しているセシリアでも多少なりとも疲れを感じている今の状況は、つまり前衛はそれ以上に疲れているということの証明だ。それで10分の1も倒せていないとなれば、本当にやってられない。

 

「グリフィンさん、わたくしのフォローに動き回っておりますけど、疲れてはいませんの?」

 

「全然!って言いたいけど、ちょっと疲れて来ちゃったかな。セシリアは大丈夫?」

 

「わたくしはビットとビームを動かしているだけですから、それほど疲れてはいませんが……一夏さんが心配ですわ。」

 

「あ、確かに。一夏って、頑張り過ぎちゃうところあるからね。それが一夏の良いところでもあるんだけど。」

 

 こうして会話をするのは気分転換だ。息の詰まるこの戦場で、せめて精神的疲労だけでも何とかしようという苦肉の策。グリフィン・レッドラムも、体力自慢ではあるものの疲労を感じないわけではないのでそれに乗ってくれた。

 

「あとはファニールさん、オニールさん、クーリェさんたちも。戦闘教員と同じ場所で戦っているとはいえ、あそこが楽という訳ではありませんし。」

 

「あそこはヴィシュヌが大活躍してるみたいだけど、そのヴィシュヌも疲れ始めてる頃だろうね。」

 

 絶対天敵(イマージュ・オリジス)の数が多すぎて他の場所で戦っている専用機持ちたちの様子はあまり見えないが、ハイパーセンサーに映されるエネミー数の減少とそこそこの頻度で送られてくる報告を合わせると、撃破数・アシスト数を合わせたMVPは間違いなくヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーだ。

 

 拡散弓【クラスター・ボウ】とキック・スラスター・コンボでの突貫が絶対天敵(イマージュ・オリジス)の『雲』に対して相性が良く、撃破に至らずとも弱らせた相手を戦闘教員や近くの専用機持ちが堕とす。今では撃破数こそ千冬が上回ったが、アシスト数込みの数字はまだヴィシュヌがトップ。それで疲れていないはずがない。

 

「鈴さんの所も、乱さんが心配ですし。」

 

「調子に乗って動き回ってバテてないといいけど。」

 

 最前線の1つを任せられている凰鈴音と凰乱音の2人もセシリアは心配していた。というより、鈴と一緒に居る乱を心配していた。

 

 今回、鈴は最初から本気を出している。絶対天敵(イマージュ・オリジス)の数を減らすのを重視して万能さが強味である単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ―)【天之四霊】は攻撃力増強の【朱雀】のみしか使っていないし、1対1が最も機体性能を発揮できるのもあって険しい顔をしながら戦ってはいるものの、それでも活躍している方に分類される。

 

 それを間近で見ている乱が変に対抗心を燃やして動き回って、挙句の果てに疲れるというのが何だか容易に想像できる。対抗心でなくとも姉に良いところを見せようとして無駄な動きを多くすれば同じことだ。

 

「飛鳥さんが来るまで、あと1時間ほどですけれど……。」

 

 どこかの戦線が崩れそうな気がしてならない。イノベイターの勘ではなく、人としてのセシリアの心がそう不安にさせる。仲間たちを信頼していない訳ではないが、それでも心配せずにはいられない。

 

「流れを変える一手が欲しいですわね――――。」

 

 

「あるじゃないですか、お嬢様。とっておきが。」

 

 

 突然聞こえた声に慌てて振り返る。そこには今まで居なかった筈のセシリアの従者、チェルシー・ブランケットがIS【ダイブ・トゥ・ブルー】を纏ってそこに浮かんでいた。

 

「チェ、チェルシー!?なぜここに!?」

 

「もちろん、お嬢様をお助けするためです。微力ながら、私たち姉妹も戦わせてください。」

 

 驚きの声を上げるセシリアとは裏腹に、チェルシーは薄く笑いながらそう言った。

 

「う、嬉しいですけれど……って、()()?」

 

「はい。それではお嬢様、『オペレーション・エクスカリバー』と言ってください。」

 

「え、えっ?」

 

「さぁ!さぁ!!」

 

 どこかテンションの高いチェルシーに推され、セシリアは困惑しながらもその言葉を口にした。

 

「オ、オペレーション・エクスカリバー?」

 

 その瞬間。

 

 

【Operation"Exia Caliburn"】

 

 

 セシリアの見ているIS【ブルー・ティアーズ・オーバーライト】のハイパーセンサーの視界に、そんなウィンドウが表示された。

 

「ふぇっ!?」

 

「エクシア!お嬢様の許しが出ました!放ちなさい!」

 

「ちょ、ちょっと、チェルシー?チェルシー!?」

 

 訳が分からないセシリアを余所に、あとついでに「この人誰だろう?」と思いながら前衛を務めるグリフィンも余所に、チェルシーは通信の向こうに居る妹へと叫んだ。

 

「これが、オルコット家最後の剣です!」

 

 瞬間――

 

 

――空から、光の柱が降ってきた。

 

 

――――バッッッシャアアアアアンッッッ!!!

 

 

「キャーーー!!!??」

 

「な、なにこれーーー!!!??」

 

 絶対天敵(イマージュ・オリジス)の『雲』を突き破り、空から海までを縫い留めて見せたその光はもはや爆発音に等しい音と共に盛大な水しぶきを上げた後、次第に細くなり姿を消した。

 

 体勢を立て直し、すぐさまハイパーセンサーで状況を確認したセシリアが見たのは……。

 

「……うそ。」

 

 ごっそりとその数を減らした、絶対天敵(イマージュ・オリジス)の姿だった。

 

「約2ヶ月の自己修復期間を経て、生体融合型IS【エクスカリバー】は砲撃能力を取り戻しました。しかし使い道がありません。何せ衛星兵器ですから。ですが、丁度良くこんなことが起こりましたので。」

 

 聞いてもいないのに饒舌に語り始めたチェルシーの声が右から左へ通り抜けながら、セシリアは思った。

 

「(これ、怒られるやつでは……?!)」

 

 セシリアがブルリと身を震わせたその時。

 

「この、バカセシリアァ!!!」

 

「ひぇっ!?」

 

 エクスカリバーからの砲撃によって絶対天敵(イマージュ・オリジス)の『雲』に開いた巨大な穴を通って瞬時加速(イグニッション・ブースト)で真っ直ぐすっ飛んできた凰鈴音がセシリアを怒鳴りつけた。

 

「あんたねぇ、あんなもの撃つなら撃つって先に言いなさいよ!」

 

「わ、わたくしもあんなことになるだなんて知りませんでしたの!」

 

「いつもの勘の鋭さ発揮しなさいよそこは!脳死で撃ってんじゃないわよ!」

 

「チェ、チェルシー!チェルシーのせいですわ!ほらチェルシー、貴女も何か――いない!?」

 

 怒り心頭といった風に怒る鈴にセシリアは原因であるチェルシー・ブランケットを売ろうとして、そのチェルシーが既にそこにいないことに気が付いた。

 

【それではお嬢様、わたしはあちらの亡国機業(ファントム・タスク)の戦線に加わってきますので。】

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

 びゅーんと飛び去って行った従者を引き留めることは出来ず、セシリアは普段より精彩の欠いたビット操作で絶対天敵(イマージュ・オリジス)を撃ち落としながら、同じくいつも以上に苛烈な攻撃で絶対天敵(イマージュ・オリジス)を倒している鈴の文句の言葉を聞き続けた。

 

 

 

 

 一方その頃、IS学園の整備室。

 

「なのはー、私これ間に合わない気がする―。」

 

「奇遇だね飛鳥、ボクもそう思う。」

 

 イノベイター2人は遠方で発射された衛星砲【エクスカリバー】によるレーザー攻撃を感じ取りそうぼやいていた。

 

「なになにー、どうしたのー?」

 

「エクスカリバーで3分の1が消し飛びました。」

 

「わーお。3分の1かー……ギリギリ間に合うんじゃない?エクスカリバーは1発撃ったらしばらく撃てないし。」

 

「そうなんですか?」

 

「太陽光を収束してのレーザー攻撃だから、1発撃つごとにレンズ部分の整備が必要なんだよ。ISの自己修復で時間が経てばまた撃てるけど、連射はしないよ。」

 

 話しながらも作業の手を止めない束の言葉を受けて一先ず出番はあることに安堵する飛鳥だったが、しかしこのまま行くと本当に最後の最後にちょっと出て終わるのではないかと不安になっていた。

 

「真打登場にも限度はあるんだよなぁ……。」

 

「美味しいところを掻っ攫うだけだしねぇ。」

 

「世界ってそんなもんだよ。」

 

「やだなぁ大人のそう言う言葉……。」

 

 ほんの少し人間嫌いが加速した飛鳥を尻目に、2人の天才はダブルオークアンタへの量子型演算処理システムの搭載を進めるのだった。

 

 

 

 

「あっ……んのっ、英国面!!!危ねぇじゃねぇか!!!」

 

 場所は戻って赤道付近の海上。

 

 衛星砲【エクスカリバー】の砲撃によって開いた戦場の空白地帯ギリギリの場所で、盛大に水しぶきを被ったダリル・ケイシーがブルブルと頭を振って水気をまき散らしながら怒りを(あらわ)にしていた。

 

「あとフォルテ!オレのことも守ってくれよ!ずりーぞお前1人だけ氷で守りやがって!」

 

 そんなずぶ濡れのダリルの横で、ダリルとは反対に水しぶきをイメージ・インターフェースで生み出した氷で完全ガードし全く水に濡れなかったフォルテ・サファイアが白々しい笑顔で水に濡れたダリルを見つめていた。

 

「いやー、咄嗟に出せた氷が自分の分だけだったんス。別にダリルが水被って風邪ひいたら看病プレイできるとか考えてた訳じゃないっスよ?」

 

「自白してるじゃねぇかそこに直れ!あと看病は普通にしろ!風邪が移るだろ!ああクソっ、髪がギシギシする……!」

 

 ダリル自身、咄嗟にイメージ・インターフェースの炎で水しぶきを防ごうとしたのだが、砲撃によって上がった水しぶきの水量が水量だけに炎を消してもお釣りが来る量の水でずぶ濡れになった。なのに相棒であるフォルテはちゃっかり自分だけを守れる大きさの氷の殻に閉じ籠り、水を一滴も被っていない。

 

 その事について小言を言うと返ってきた戯れ言にIS【ヘル・ハウンド】の両肩にある猛犬の頭のような部分から出したイメージ・インターフェースの炎で濡れた髪と身体を乾かしながら応答するダリルは、海水に含まれる塩やら何やらで大変なことになっている自分の髪にここ数年でトップクラスに不機嫌になった。

 

「フォルテ!帰ったら風呂だ風呂!」

 

「はいはい。」

 

 その感情を叩きつけるように生み出した火球を絶対天敵(イマージュ・オリジス)と戦い始めたダリルを横目に、フォルテは状況確認のために情報収集が得意な更識簪に通信回線を開いた。

 

【こちらフォルテ、こちらフォルテ。聞こえてるっスかー。】

 

【こちら簪。フォルテさん、今の砲撃、大丈夫でした……?】

 

【砲撃は当たらなかったっスけど、ダリルが盛大に水しぶき浴びてすっごい不機嫌っス。】

 

【うわぁ……。】

 

 通信越しに聞こえた渾身の『うわぁ……』にフォルテが笑い転げていると、簪が通信をした意図を汲み取ったのかエクスカリバーの砲撃前後で起こった変化のデータをフォルテに送った。

 

【あの砲撃で絶対天敵(イマージュ・オリジス)の後方から中心にかけて、およそ3分の1が撃破されています。ちょうどこちらの戦力が配置されていない位置への砲撃で、味方への損害は0。少し陣形が乱れてるけど、再編する必要はありません。多少防衛線を厚くするのはありだけど……。】

 

【おーけー、それじゃその情報をオープン・チャンネルで戦場全域にばら撒くっス。防衛線には無敵のイージスコンビが加わるっスから、他は臨機応変にってことで。】

 

【分かりました。】

「おーい、ダリル―!」

 

 通信を終えたフォルテは必殺技たる最大火力の火球で絶対天敵(イマージュ・オリジス)を吹き飛ばしているダリルを呼び、IS学園へ近付かせないための防衛線の方に移ることを話して空白地帯を利用して一気に移動するのだった。

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