IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第121話 完成、それは幕引きの剣

 ――長く苦しい戦いだった。

 

 小型絶対天敵(イマージュ・オリジス)の数は多い上に、大型絶対天敵(イマージュ・オリジス)も決して侮れない力を持っている。それらすべてを防衛ラインの後ろに通してはならないという制限は、本当に苦しい戦いだった。

 

 何せずっと動きっぱなしだ。呼吸を整えられはするがそれだけで、水分補給やタオルで汗を拭うことさえ難しい。昼食の途中だったのもここで災いし、空腹も感じ始めていた。

 

 ISのハイパーセンサーが映し出す絶対天敵(イマージュ・オリジス)の残数を示す数字の減りが徐々に落ち始める。変わらず戦えているのは織斑千冬と山田真耶を始めとする熟練のIS乗りぐらいだ。ロシア国家代表である更識楯無でさえ動きが悪くなっている。

 

 その点で言えば、亡国機業(ファントム・タスク)は見事としか言いようがない。国際テロリスト集団の戦闘部隊【モノクローム・アバター】というだけあって体力も実力も一定水準を越えており、2時間ほど戦った現在でも疲労こそ見せてはいるが動きが悪くなっていないし、脱落者もいない。

 

 高火力で薙ぎ払いながら小型絶対天敵(イマージュ・オリジス)の攻撃を歯牙にもかけないスコールはもちろん、獲物に飛び掛かる蜘蛛のような動きで粘着性エネルギーネットを使い小型絶対天敵(イマージュ・オリジス)を駆逐しまくっているオータムや、ビットで一息に串刺しにして順当に撃破数を稼いでいる織斑マドカなどもそうだ。

 

 しかし、主力となるIS学園の専用機持ちたちの動きが悪くなってきた以上、遠からず戦線は崩壊するだろう。体力自慢のグリフィン・レッドラムはまだまだ動けるにしても、凰乱音やコメット姉妹、クーリェ・ルククシェフカなどの体力は既に尽き欠けている。

 

 今は「いい加減面倒になって来たな」と言って篠ノ之箒の側で【絢爛舞踏】の補助を受けながら【零落白夜】の斬撃を飛ばしてバッタバッタと絶対天敵(イマージュ・オリジス)を切り飛ばしている千冬のおかげで戦線は保てているが、それも局所的な空域でのことだ。撃ち漏らしはいずれ出るだろう。

 

 ――しかし。

 

「ふ、ふふ……。」

 

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「あー、つっかれたぁ。」

 

 凰鈴音は双天牙月を拡張領域(バススロット)にしまい、うんっと伸びをしていた。

 

「お前等ぁ!撤収だ撤収!」

 

「帰ってお風呂入るっスよ~!」

 

 ダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアはオープン・チャンネルでこの空域にいるすべてのIS乗りにそう呼びかけた。

 

「ちょ、ダリル先輩!?何言ってるんですか!?」

 

「何言ってるんだはお前だエロガキ。」

 

「エ……!?」

 

 ここを突破されたらIS学園、ひいては街にも被害が出る可能性が高い。それなのに帰ろうとするダリルを織斑一夏が引き留めようとするが、エロガキ呼ばわりされ言葉を詰まらせた。

 

 そんな一夏に向かって、ダリルは晴れやかな笑顔で言い放った。

 

「――もうオレたちの勝ちだよ、ばーか。」

 

 ダリルが見ているハイパーセンサーには、今までなかったIS反応がIS学園に現れ、唐突に消える様が映っていた。

 

 

 

 

『終ぅわったぁぁぁ!!』

 

『勝った!アーキタイプ・ブレイカー完!』

 

『とはいえこれ今回要らないっていうね。』

 

『言わないで……ああ、レクイちゃん……。』

 

『自力で最終決戦のフラグ立てないと帰っちゃうからねあの子。しかもそうなると対話系装備も要らないっていう。』

 

『盛り上がりもないからなぁ、最終決戦……。』

 

『殴ってりゃ終わるからねぇ。絆で突破とかそんなギミックもないし。』

 

『雑魚の数が多くて大型のシンボルエネミーがいてやたらHPバーの長いラスボスがいるだけのほぼソロである。なめとんのか。』

 

『しかも耐久すれば時間でシナリオ進むからね。防衛ラインだけ意識してればなんとかなるし。』

 

『だから対話で一発終了させたかったのに、自然発生の最終決戦だと結局戦闘必須って言う。』

 

『ま、頑張れ。』

 

 

 

 

「コア・ネットワークとの接続……コンプリート。」

 

「コード・ヴァイオレット発令。量子型演算処理システム承認。」

 

「GNT-0000、ダブルオークアンタ、起動。」

 

 

 

 

 戦場に新たなIS反応が現れた。それと同時に、オープン・チャンネルで全てのISに注意が飛んだ。

 

「軸線上のイマージュ・オリジスを一掃します!退避してください!」

 

 その言葉と共にハイパーセンサーに映し出されたこれから行う攻撃の範囲に戦場の全員が目を剥いた。

 

「これは……!」

 

「ははは!面白いじゃないか、飛鳥!」

 

「わ~い!にっげろ~!」

 

 蜘蛛の子を散らすように、防衛ラインすら投げ捨てて戦闘空域からの離脱を始めたIS学園の専用機持ちたち。

 

「新隊長からの退避命令よ!現時点をもって戦闘を終了!帰投するわ!」

 

「ッチ、まだ暴れ足りなかったんだがなあ!」

 

「……わかった。」

 

 亡国機業(ファントム・タスク)もそれに続くように離脱していく。

 

 それを追おうとする絶対天敵(イマージュ・オリジス)に向かって、声が掛けられた。

 

「(さぁ、最初で最後の対話をしよっか!)」

 

 戦闘空域の端も端。そこにいつの間にか現れた青と白を基調とした機体からの声に、絶対天敵(イマージュ・オリジス)は他のISを無視してそこに引き寄せられるように向かい――――

 

「GNソードⅤ・バスターライフルモードスタンバイ。トランザム!

 

 

「ライザーソード!!」

 

 

 ――この決戦を幕引く剣が、すべてを切り払った。

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