IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第14話 セシリア・オルコット、変わっていく

『はいおはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』

 

『天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』

 

『前回やっと5巻に触れた、ってところで終わったんだっけ。あとセシリアの強化。』

 

『普通はセシリアのビットを使う訓練に付き合うだけで完全体になってくれるよ。前回はビット開発の実績でブルー・ティアーズを改造したから一気に強化されたけどね。』

 

 

 

 

「模擬戦に付き合ってほしい?」

 

「えぇ。」

 

 フランス代表候補生、シャルロット・デュノアは友人であるセシリア・オルコットのお願いに首を傾げた。

 

 昨日、2組と合同で行った実戦訓練。専用機持ち達による模擬戦の結果、セシリアは燃費最悪の機体、白式・雪羅に唯一負けてしまい落ち込んでいた。それを心配して学食カフェで励ましたのだが、お開きとなった後気付けばセシリアは居なくなっていた。

 

 最初は部屋に戻ったのかと思ったが、どうやらそうではなかったらしく、一人訓練でもしてるのかと心配した。

 

 だが今日、教室にやって来たセシリアは以前にも増してその存在感とも言うべきものが大きくなっており、あの織斑先生にすら二度見をされていた。

 

 一体何が有ったのか気になっていた矢先にセシリアからの模擬戦の誘い。

 

「どうしたの?昨日学食カフェから居なくなった後、何かあったの?」

 

 焦っているようには見えない。どちらかと言えば自信に満ちている。その方が『らしく』はあるが、一体何があればここまで変わるのか。

 

「実は昨日、3組のなのはさんにブルー・ティアーズを見て貰えたのですわ。」

 

「3組のなのはさんって、確か3組の日本代表候補生の天羽さんの専用機作ってるっていう、あの?」

 

「そのなのはさんですわ。ビットを作ったと昨日耳にしまして、事の真偽を聞きに行ったのです。」

 

「ビットを?第三世代技術を個人で作ったの!?」

 

「実物を見せてもらいましたが、アレは確かにビットでしたわ。その技術を見込んでブルー・ティアーズのビットを見て貰ったのですが、見違えるように動きが良くなりまして。それで、どれだけ実戦で戦えるのかを知るためにシャルロットさんに是非模擬戦をお願いしたいのですわ。」

 

「うん、いいよ。僕もその新しいビット気になるし。」

 

「では放課後、第三アリーナで。」

 

 

 

 

『勝てると思う?』

 

『善戦はするかな。せめてリンカネなら勝ち目もあったけど。』

 

『強化セシリアはねぇ。機体の性能が低いとステータス高くても負けるし、性能高くても普通に負けることあるし、正直ゲーム内最強だよね。』

 

『あの弾幕は頭おかしい。』

 

 

 

 

「セシリア・オルコット、ブルー・ティアーズ、行きますわ!」

 

 ピットのカタパルトから飛び出したセシリアは、その速度のまま機体の動きを確かめた。

 

 実際の所、葉加瀬なのはに弄って貰ったのはビットだけではない。データ面の数値や、装甲を開いてスラスターや駆動部のパーツを直に調整して貰っていた。

 

「エネルギー効率37%向上……!素晴らしい腕ですわね、なのはさん!」

 

 エネルギー兵器ばかりを装備しているブルー・ティアーズは、白式ほどではないが燃費が悪い機体に分類される。普段からあれこれと調整して最適化を図っているブルー・ティアーズのエネルギー効率を37%も向上させてみせたなのはの技術力にセシリアは感嘆した。

 

「おーい!」

 

 飛び回っていたセシリアにオープン・チャンネルでシャルロットから声が掛けられる。

 

「セシリア、昨日とは動きが全然違うね。」

 

「えぇ!なのはさんにスラスターや駆動部の調整もして貰ったのですが、今までとは動き易さが全然違いますわ!」

 

「いいなぁ、僕も頼みたいよ。」

 

 そんなことを話し合ってから、2人は距離を離してそれぞれ武器を取り出して構えた。

 

 システムからカウントダウン機能を連動させて起動する。

 

 10から始まるそのカウントを待ちながら、セシリアは己の愛機へと意識を向けた。

 

「(ブルー・ティアーズ。わたくしはまだまだ未熟な身ですわ。)」

 

 機体の相性が最悪だったとはいえISに乗って数ヶ月の織斑一夏を相手に負け、最新鋭の第四世代に乗っているとはいえ代表候補生と言う訳でもない篠ノ之箒に負け、代表候補生の友人たちにも負けた。

 1対1で無類の強さを発揮するAICを搭載したシュヴァルツェア・レーゲンを操るラウラ・ボーデヴィッヒ。

 第二世代のカスタム機に乗っているとは思えない程武器の扱いや操縦と立ち回りが巧い、数多の武器を持つラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡに乗るシャルロット・デュノア。

 威力と連射性が任意で変えられる衝撃砲を携えた甲龍を僅か1年で受領した凰鈴音。

 

 誰もが代表候補生と言われて納得の技量と才覚を持っていた。

 

「(わたくしはたまたまIS適正がAだったから、代表候補生になれました。たまたまBT適正がAだったから、ブルー・ティアーズを受領することが出来ました。)」

 

 才能はあった。努力もしてきた。それでも、他の代表候補生たちに負けた。なら、未熟という他ないのだろう。

 

「(ブルー・ティアーズ。)」

 

 BT兵器試作一号機。ただのデータ取りの為だけに作られた機体故に、二号機とは違い固有の名前は与えられず武器の名前がそのまま付けられた機体。それがブルー・ティアーズ。

 

 第三世代機の専用機持ち達は、第三世代技術の試行活動のためにIS学園にやってくる。セシリアもその口だった。BT兵器を操る試作一号機によるBT兵器の試行活動をするためにイギリスから送り出された。

 

 故に期待されたのはBT兵器を扱うことだけ。それ以外は何も求められなかった。最初から微塵も変わることの無い言葉を言われ続け、成長を求められなかった。

 

 だからといって、そのままで良いのか?

 

「(いいえ……。)」

 

 セシリアは昨日なのはに言われた言葉を思い出す。

 

『ブルー・ティアーズは変わったよ。セシリア、君はどうなの?』

 

 脳量子波でのビット操作が出来るようになり、ブルー・ティアーズはビットを今まで以上に扱えるようになった。

 

 なら、わたくしは?

 

 滑らかに動くビットは単に専用の脳波に対応したからで、自分が何か成長した訳ではない。ただ上手く動くようになっただけで、上手く動かせるようになった訳じゃない。

 

 そんなことでいいのか?

 

(いいえ!)

 

「っ?(今の、セシリアの声?でも、オープン・チャンネルもプライベート・チャンネルも開いてないし……空耳?)」

 

 突然頭の中に響いたセシリアの声にシャルロットは困惑した。そうしている間にカウントダウンは進み、

 

「(わたくしは、わたくしたちは!)」

 

――変わるのですわ!

 

 ゼロになる。

 

「ブルー・ティアーズ!」

 

 4つのレーザービットを展開する。シャルロットを取り囲もうと飛翔するその蒼い雫に合わせ、()()()()()()()()()

 

「機体とビットの同時操作!?」

 

 取り囲まれないように動いたシャルロットがそれを見て驚く。

 

 少なくとも昨日は出来なかった高等技術。

 

「(機体を見て貰って出来るようになった?いや、そんな筈ない!)」

 

 操縦者のテクニックに依存した技術だ。機体を弄っただけで出来る筈が無い。

 

「(でも今機体とビットは同時に動いてる!どうして出来るようになったかは分からないけど、それならそれで!)」

 

 シャルロットは操縦テクニックや武器の扱いが代表候補生の中でも上から数えた方が早い強者である。機体こそ第三世代機が開発出来ていないため第二世代機をカスタムした物だが、その世代差を技量で覆せる人間だ。

 

 セシリアが行った機体とビットの同時操作に驚きこそしたが、それだけでシャルロットは落とされない。自分を狙うビットの砲門から放たれるレーザーをその操縦技術を駆使して回避し、両手に銃器を持ってビットを破壊しようと狙いを定めた。

 

「(ここっ!)」

 

 レーザーを発射する瞬間、セシリアはビットの動きを止める。ビットが具体的にどういう操作で動いているのかシャルロットは知らないが、セシリアは動きを止めると同時に照準を瞬時に合わせてレーザーを発射しているのだろうという漠然とした考えがあった。

 動きが止まっている時は照準を合わせること、その後のレーザーの発射に意識が向いているため、咄嗟のビット操作に遅れが出る。それを今までの模擬戦や訓練でセシリアの動きを見て気付いていたシャルロットは、その明確な隙を狙って引き金を引いた。

 

 だが、放たれたその銃弾は丸で転がるように射線からビットが外れたことで当たらなかった。

 

「(外れた!?動き出しが速い!)」

 

 今までのビットであれば確実に破壊できていたタイミングで撃ったのに、綺麗に銃弾を避けたビットにシャルロットは警戒度を上げる。

 

「(ビットを見て貰ったって言ってたけど、ここまで変わるものなの!?)」

 

 ビットの動き出しの早さ、何よりも動きの滑らかさが昨日とは雲泥の差だ。ウサギとカメほど違う。

 

「(ビットの大きさで動き回るのを撃つのはちょっと厳しいかな。ショットガンに換えよう。)」

 

 そう思考すると共に高速切替(ラピッド・スイッチ)でショットガンに武器を持ち替え、先程と同じように動きを止めたビットに素早く銃口を向けてトリガーを引く。ショットガンはある程度の向きさえ合っていれば、飛び出した散弾が勝手に的に当たってくれる。動き回る上に的の小さいビットを破壊するのに適した武器を選んだのだ。

 

 実際、セシリアがただ強くなっただけならばそうやってビットを破壊することが出来ただろう。だが、ブルー・ティアーズが変わって、自分もまた変わろうとしているセシリアに、そんなことは通用しなかった。

 

 ショットガンの発砲とほぼ同時に放たれたビットからのレーザー。それが丸で盾に変わったかのように発射されると同時に()()()()()()、ビットに当たるショットガンの弾を全て撃ち落としたのだ。

 

「うそっ!?」

 

 流石のシャルロットもこれには驚きの声が出る。BT兵器の最終奥義、BT偏光制御射撃(フレキシブル)。発射されたレーザーさえも操るその技が、考え付いても出来ない方法でビットを守ったのだ。

 

 シャルロットの驚きによって生じた一瞬の意識の空白。そこでビットがシャルロットを取り囲んだ。

 

「やばっ。」

 

 シャルロットを中心に衛星の様に移動をしながらレーザーを発射する4つのビット。それに混じってシャルロットにスターライトmk-Ⅲから銃撃をするセシリア。放たれるレーザー全てがBT偏光制御射撃(フレキシブル)によって複雑な軌道を描いてシャルロットに殺到する。

 

「くっ!」

 

 拡張領域(バススロット)から取り出したシールドでレーザーを辛うじて防ぐシャルロットだったが、ジリジリとシールドエネルギーが削られていく。

 

「これが、わたくしたちの!」

 

「(──えっ?)」

 

 ハイパーセンサーに映し出されたセシリアを見て、シャルロットは違和感を覚えた。

 

「ブルー・ティアーズですわ!」

 

 そんなことはお構いなしに、スターライトmk-Ⅲから放たれたレーザーがラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡのシールドエネルギーを削りきった。

 

 

「セシリア。」

 

「シャルロットさん、付き合っていただいてありがとうございましたわ。」

 

 機体のシールドエネルギーが無くなり地面に降り立ったシャルロットにセシリアは頭を下げた。

 

「ううん。僕の方こそ、実りのある模擬戦だったよ。見違えたね、セシリア。」

 

「そう言っていただけると嬉しいですわ」

 

 微笑むセシリアの目を見て、シャルロットは先程感じた違和感が勘違いであると決めつけた。

 

「(()()()()()()()()()()気がしたけど……気のせいだよね。)」

 

 その後、更識楯無に連れられてやって来た織斑一夏とラウラたちの前で2人はシューター・フローで円状制御飛翔(サークル・ロンド)をすることとなり、いつものドタバタした日常へと戻っていった。

 

 

 

 

『『……は?』』




 セシリアがやったこと
・ビットと機体を同時に動かすことでシャルロットに本体への攻撃をさせにくくした
・単発の射撃は脳量子波を用いたビットの即時操作で回避した
・散弾による攻撃は偏光制御射撃(フレキシブル)で発射したレーザーを屈折させまくって当たりそうなのを全て撃ち落とした
・4つのビットを衛星の様に動かしながら自分と一緒にレーザーを撃ち、その全てを偏光制御射撃(フレキシブル)で操った

 分かりやすく言うと?
・変態軌道で自在に折れ曲がるレーザー×5がずっと自分を狙ってくる。しかも発射口は攻撃を躱すし攻撃を迎撃するので壊せない
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